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Trademark Appeal Case

著名商標の類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2002−35087(T2002−35087/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4270500号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4270500号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成9年5月1日に登録出願され、第21類「食器類(貴金属製のものを除く。),ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,アイスペール,泡立て器,魚ぐし,携帯用アイスボックス,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),米びつ,ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,食品保存用ガラス瓶,水筒,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓ぬき,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,魔法瓶,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,家事用手袋,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,ブラシ用豚毛,洋服ブラシ,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,かいばおけ,家禽用リング,アイロン台,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,家庭用燃え殻ふるい,紙タオル取り出し用金属製箱,霧吹き,靴脱ぎ器,こて台,小鳥かご,小鳥用水盤,じょうろ,寝室用簡易便器,石炭入れ,せっけん用ディスペンサー,貯金箱(金属製のものを除く。),トイレットペーパーホルダー,ねずみ取り器,はえたたき,へら台,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),花瓶(貴金属製のものを除く。),ガラス製又は陶磁製の立て看板,香炉,コッフェル,水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴」を指定商品として、平成11年5月7日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用商標

本件商標が商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当するとして、請求人が引用する標章(以下「引用商標」という。)は、「フローラ ダニカ」の片仮名文字又は「FLORA DANICA」の欧文字よりなるものである。

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第16号証(枝番を含む。)を提出している。

1 本件商標の商標法第4条第1項第10号違反の理由について

(1) 引用商標「FLORA DANICA」の歴史

最初の「FLORA DANICA」(フローラ ダニカ)の陶磁器は、1790年、当時デンマークと密接な関係にあったロシアの女帝エカテリーナ2世への贈り物として製作が始められたといわれている。時代の自然科学への志向を反映、デンマークに生育する植物を実物そのままに器に再現するという着想のもとに生まれた。現在まで210余年、手描きの陶磁器を職人たちによって作り続けてきたロイヤル コペンハーゲン ポーセリンが王室御用達製陶所としてデンマーク王室庇護のもとに開設されたのは1775年、そして、その15年後、1790年に「フローラ ダニカ」と呼ばれるディナーサービスの製作は始められた。フローラ ダニカは、17世紀のデンマークで最もよく知られた書物のひとつ「フローラ ダニカ デンマーク植物図鑑」の木版画、1761年に刊行された続編「フローラ ダニカ植物図鑑」の挿絵を元絵として作られたディナーサービス、その名の示すとおりデンマークの草花が図鑑そして実物に忠実に描かれている。当時のヨーロッパでは、陶磁器窯を所有し、質の高い器を作り出すこと自体が、国の文化や技術を表すひとつの目安となり、国家の威信につながっていた。実際に、国内外の要人との公式の晩餐会にはたびたびフローラ ダニカが使用されている。

二度目に「FLORA DANICA」(フローラ ダニカ)の陶磁器が作られたのは、デンマーク女王アレクサンドラとプリンス オブ ウェールズ(後のエドワード7世)との結婚のためで、1863年に納められている。最初に作られたものが植物図鑑の全ての植物を忠実に器に再現することを目的としていたことに比べると、二度目のものは、器としての美しさを重視していた。その後、フローラ ダニカは定期的に作られるようになり、現在では、約700種類の植物が描かれている。熟練した職人による手作業で、植物図鑑を再現していることは、200年経た現在も同じで、完成度の高い美術工芸品である。

フローラ ダニカの真の価値は、デンマークの全ての植物を実物に忠実に描こうとした試みが、器に一種の国家象徴としての意味を与えている点であり、また、当時の人々の自然や自然科学への探求心を常に最高の技術で今に伝えている姿勢にある。1990年に製作200週年を経た現在、フローラ ダニカの陶磁器は、デンマークの文化的遺産として、生き続けている(甲第14、第15号証参照)。

(2) 引用商標の周知、著名性

引用商標を付した陶磁器等は、上記のとおりの長い歴史を誇る伝統のある商品であり、高級ブランド品を紹介する我が国の雑誌にしばしば掲載されている。例えば、「家庭画報1990年9月号」(1990年9月1日発行、甲第3号証参照)にはその歴史を含め詳細な内容が掲載され、既に、世界的に陶磁器の有名高級ブランドとしての地位を獲得している事実が認められるものである。その後、「家庭画報1993年6月号」(1993年6月1日発行、甲第4号証参照)に、他の有名高級ブランドと共に引用商標が紹介され、我が国において周知・著名な商標として認識され、その周知・著名性は現在においても維持されているものである(甲第5、第6号証)。

また、引用商標を付した陶磁器は、我が国の有名百貨店において展示、即売会がたびたび実施されている。例えば、平成2年(1990年)10月に日本橋高島屋においてフロラダニカ200年記念「ロイヤルコペンハーゲンフェア」が開催(甲第7号証参照)、1996年5月に横浜高島屋において「ロイヤルコペンハーゲン展」(甲第8号証参照)、1998年6月に日本橋三越本店「ロイヤルコペンハーゲン フローラダニカ展」(甲第9、第12、第13号証参照)、1999年5月大阪、6月東京で西武百貨店が他の高級ブランドと共に「フローラダニカ」の展示販売会(甲第10号証参照)、同年9月に伊勢丹がホテルニューオータニで他の高級ブランドと共に「フローラダニカ」の展示販売会(甲第11号証)が開催されているところである。かかる事実からして、引用商標が、我が国取引者、需要者の間において陶磁器の高級ブランドとして周知・著名な商標と認識されていることは明らかである。

しかして、本件商標の出願日は、平成9年(1997年)5月1日であるところ、引用商標は、我が国において陶磁器について使用された結果、遅くとも本件商標の出願時には、取引者・需要者の間に周知・著名な商標と認識されていたものであり、その周知、著名性は現在においても維持されているものである。

(3) 本件商標と引用商標の比較

(ア) 外観

本件商標は、上記のとおりの構成よりなるところ、その構成中の顕著に表示されている「FLORAE DANICAE OLD」の欧文字は、その構成中の「OLD」の文字が、構成中の下段の「1750」の数字との関係からみて1750年以来の年代のものであることを看取させるものであり、また、その構成上、図形部分が文字部分と一体として把握、認識しなければならない事由はないから、本件商標に接する取引者、需要者は、顕著に表示された「FLORAE DANICAE」の文字部分に着目して取引に資する場合も決して少なくないものである。

他方、引用商標は、上記のとおり「FLORA DANICA」の欧文字を書してなり、陶磁器等に使用し、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識され、周知、著名な商標となっているものである。

そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、本件商標における「FLORAE」及び「DANICAE」の末尾の2文字「A」と「E」の文字が重ねて表示されているため、その記載が一見すると、「FLORA DANICA」と書されているように容易に看取し得るものである。このことは、前記において主張したとおり引用商標の周知・著名性という取引の実情を併せ考慮すると一層そのように認識されるのが自然である。特に、「FLORA」の文字が「ローマ神話の花と春の女神」を意味する英語の成語があることから、「FLORAE」の文字が「FLORA」のように理解される可能性は高いものである。

そうすると、時と所を異にして、両商標に接する取引者、需要者は、引用商標が「FLORA DANICA」の文字をもって、周知、著名であるため、両商標について外観上近似した印象、記憶、連想を生じさせるというべきである。

(イ) 称呼

本件商標は、上記のとおりの構成よりなるところ、その構成文字に相応して「フローラエダニカエオールド」「フローラダニカオオルド」の称呼が生ずる他、前記したとおりその記載が一見すると、「FLORA DANICA」と書されているように容易に看取し得るものであるという事由により「フローラダニカ」の称呼をも生ずるものである。このことは、後記のとおり、本件商標権者が実際に「フローラダニカ」の称呼をもって取引に当たっているという事実に鑑みても裏付けられるところである。

他方、引用商標は、前記したとおり「FLORA DANICA」の欧文字を書し「フローラダニカ」の称呼をもって、周知、著名な商標である。

そうすると、両商標は「フローラダニカ」の称呼を共通にするものである。

(ウ) 観念

当該「FLORA」の文字部分は、「ローマ神話の花と春の女神」の意を認識させるが、両商標のその余の構成文字部分からは、我が国の需要者の間では特定の語義は生ずるものとは認められないので、両商標とも、全体として特定の観念は生ぜず、両者は、観念については比較することができない。

(エ) 結び

以上のとおり、本件商標と引用商標とは、観念については比較することができないが、称呼を共通にし、外観上類似する商標であって、また、本件商標の指定商品中食器類、陶磁製の包装用容器等と引用商標の使用する商品陶磁器等とは同一又は類似の商品である。

したがって、本件商標と引用商標とは類似する商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。

2 本件商標の商標法第4条第1項第15号違反の理由について

上記で主張、立証したとおり、引用商標「FLORA DANICA」は、陶磁器等について我が国において使用され、その結果、遅くとも本件商標の出願時には取引者、需要者の間に広く認識されていたものである。

他方、本件商標は、その構成中に、引用商標「FLORA DANICA」と極めて紛らわしい「FLORAE」及び「DANICAE」の末尾の2文字「A」と「E」の文字が重ねて表示されている「FLORAE DANICAE」の文字を有するものである。そして、本件商標の指定商品は、引用商標「FLORA DANICA」の使用商品陶磁器等を含むものであり、その余の指定商品も引用商標の使用する商品と関連のある商品である。

のみならず、本件商標の実際の使用においては、甲第16号証(本件商標権者のちらし広告)に表示されているとおり、本件商標を表示すると共に、「フローラダニカシリーズはファーストリビングの登録商標です。」と記載し、甲第16号証の下段には「(株)フローラダニカジャパン 御相談下さい。フローラダニカオールド店開設御希望の皆様へ。」と記載している事実に照らすと、本件商標の文字部分「FLORAE DANICAE」は、末尾の2文字「A」と「E」の文字が重ねて表示されているものではあっても、「フローラダニカ」の称呼をもって取引に資されていることは明らかである。

そうすると、本件商標を、被請求人(商標権者)がその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者をして、周知、著名な引用商標「FLORA DANICA」を連想、想起させ、本件商標が付された商品が引用商標の一種ないし兄弟ブランド、ファミリーブランドであるなどと誤解し、あたかも請求人又は同人と組織的・経済的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

3 本件商標の商標法第4条第1項第19号違反の理由について

本件商標と引用商標が類似であることは、既に主張したとおりである。

ところで、本件商標は、前記のとおりの構成よりなるところ、その構成中の文字部分「FLORAE DANICAE」は、既に述べたとおり「FLORAE」及び「DANICAE」の末尾の2文字「A」と「E」の文字が重ねて表示されているが、容易に「FLORA DANICA」の文字を読み取ることができるものである。

しかも、引用商標「FLORA DANICA」の語は、前記で述べたとおり請求人が陶磁器等に1790年から200年以上に亘って使用してきたものであり、世界的に周知著名性を獲得した特別の語よりなる商標である。

のみならず、本件商標の下段の「1750」の文字は、請求人が引用商標「FLORA DANICA」の商標と共に、フローラ ダニカの陶磁器が1790年に製作が始められたことに因み表示している「Since 1790」に倣って表示したものとの疑念を生じさせる表示であり、また、本件商標の構成中の「本」の図形は、「フローラ ダニカ デンマーク植物図鑑」をイメージさせるものであって、本件商標の構成に鑑みると、本件商標と引用商標とのかかる共通点は、とうてい偶然の一致とはいえないものである。

さらに、前出甲第16号証に示すとおり、本件商標権者は、本件商標の「FLORAE DANICAE」の文字を表示すると共に「フローラダニカ」の片仮名文字を表示して自己の商品(陶磁器等)を広告・宣伝している事実よりみて、「FLORAE DANICAE」を「フローラダニカ」と称呼しようとする商標権者の意図は明白であるから、現実に不正の目的をもって本件商標を使用しているものといわなければならない。

したがって、被請求人の本件商標の使用は、請求人が引用商標の使用によって獲得した高い業務上の信用にただ乗り(フリーライド)するものであり、商標法第4条第1項第19号にいう「不正の目的をもって使用をするもの」といわざるを得ない。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

4 本件商標の商標法第4条第1項第7号違反の理由について

本件商標が請求人の使用する周知著名な引用商標「FLORA DANICA」と極めて紛らわしい商標であることは、既に上記において詳述したとおりである。本件商標の使用は、請求人が引用商標を付した品質の高い商品を長年に亘り需要者に提供することよって獲得した請求人の高い業務の信用(good will)にただ乗り(free ride)するものであり、それは、他方において請求人の業務上の信用を希釈化(dilution)するものに他ならない。本件商標は、請求人の業務上の信用を僭用するという不正の意図をもってなされたものであり、商取引の秩序を乱し、ひいては、国際信義に反するものであるから、公序良俗を害するものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。

5 結語

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同10号、同15号、同第19号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号に該当し、無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判請求は成立しない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べている。

1 被請求人としても、請求人(の一人たる)ローヤル コペンハーゲン アー/エス(以下ロイヤル コペンハーゲン社という)が、日本国内において、その扱う商品陶磁器に関して著名な企業であること自体を否定するものではないこと、また、ローヤル コペンハーゲン社が、上記商品陶磁器に、「フローラ ダニカ」ないし「FLORA DANICA」なる「標章」を使用していることも否定するものではない。

しかしながら、以下にはその余の事項につき反論を加えたい。

2 ローヤル コペンハーゲン社の上記標章は、単に、同社の取り扱い商品のうちの、一つのシリーズものを表示したものにすぎず、例えば、同社が展開している、「ブルーフルーテットシリーズ」、「ブルーフラワーシリーズ」、「ローズシリーズ」、等々や、他社が多く展開している、例えば、「ドイツの花シリーズ」、「英国アンティークシリーズ」や「ボタニカル アートシリーズ」等々、と全く同様に「フローラ ダニカ シリーズ」として用いられているにすぎず、狭義における(実質的概念としての)商標としての機能を有してはいない、という事実である。

けだし、「FLORA DANICA」ないし「フローラ ダニカ」なる標章は、(英語では「Flowers Danish」となる)デンマーク語で、単に、「デンマークの草花」ないし「デンマークの植物」というだけの意味を有しているものに過ぎず(この点、そもそも、デンマーク在日大使館自身でも認めていることを、被請求人は直接同大使館との応答によって確認している)、例えば「日本の草花」や「日本の植物」「フランスの草花」や「フランスの植物」、また「ドイツの草花」ないし「ドイツの植物」等々というのと全く同列に評価されるに過ぎない。すなわち、ローヤル コペンハーゲン社の当該「標章」は、ただ単に商品陶磁器の模様、図柄の内容自体をまさに直接的に説明・表示しているに過ぎない、いわゆる「記述的標章」である。

そして、請求人は、皮肉にも、このことを、請求書において、「フローラ ダニカ」が「デンマークの植物」図鑑としての意味しか有していないことを自ら認めている表現をしている。

したがって、いくらロイヤル コペンハーゲン社の「フローラ ダニカ シリーズ」が広く知られているとしても、それは、ローヤル コペンハーゲン社製品中特定のシリーズ(本件でいえば「ローヤル コベンハーゲン社のフローラ ダニカ シリーズ」)が広く知られているというだけのことに過ぎないのである。

同社が長年該標章を使用してきたにも拘わらず、「商標」としての出願すらしていないという事実は、同社自身が、当該標章をもって、単に商品陶磁器の図柄の内容を直接的にまた、説明的に表示する機能しか有していないものである、と理解していることを雄弁に語っているものといえるであろう。

したがって、上述のとおり、引用「商標」自体が、特定人の商品の出所を表示するものとは到底いえないのであるから、この点のみにおいても、請求人の主張は、既にその根拠を失ってしまっているものといえる。

3 本件商標の構成について

本件商標は、

第一に、文字としても、「FLORA DANICA」、ないしは「フローラ ダニカ」という文字のみより成る単純な構成をとってはおらず、欧文字の「FLOR」と「DNIC」なる文字に続く末尾二ヶ所の部分を重ね合わせて格別に「図案化」ないし「図形化」しているものであり、単なる文字とは見られない点(請求書には、恣意的に、この構成をもって、「FLORA DANICA」と書されている、と一方的に述べているが、何の根拠も有さず誤りである)。

第二に、上記に続けて「OLD」なる欧文字をも更に加えている点、

第三に、これらの図案化ないし図形化された欧文字ないし欧文字的部分(OLD以外の部分)と欧文字「OLD」を組み合わせた表示を、ただ直線的に連続させただけでなく、アーチ状に描いている点、

第四に、これら一連の文字ないし図案化も含めた文字を、特段分割して考察すべき必然性が特段存しないこと、

第五に、数字「1750」をも表示している点、

第六に、「本」を図案化したと見える模様が描かれている点、

の諸点において、単に記述的標章であるに過ぎない請求人の引用「商標」(といっている)とは全く異なる、自他商品識別性のある法上の「商標」なのである。

これらを一言でいうならば、上記のような構成を有する本件商標からは、特定の称呼が取引者・需要者を基準として、一見して直ちに生じることはなく、却って常に全体として一つの図形ないし図案化された出所表示機能を有するもの、として認識されている、といわざるをえない。

なお、外観において、また、観念(本件商標からは、特定の意味あいを直感させることはない)において、両者間には何の類似性もないことは明らかであるので、ここであらためて詳細に述べる煩は避けることとする。

4 請求人は、「本件商標の現実の使用態様」(といっている)をも述べているが、現実の本件商標所有者による使用態様がどうであるかについては、仮に使用上にいくつか誤った場合があったとしても、侵害訴訟の場においてならばともかく、本件商標の登録無効性を主張する無効審判請求の場にあっては、当をえない主張であって、請求人はあくまでも登録された本件商標自体の構成の点のみを主張するべきことが法律上正しいものである。

更に、本件商標中「1750」の文字をもって「「Since 1750」に倣って表示したものとの態様を生じさせる」と述べ、更には、「本件商標の構成中の「本」の図形は、「フローラ ダニカ デンマーク植物図鑑」をイメージさせるものであって、...(中略)...、とうてい偶然に一致とはいえない」とも述べている。

のみならず、「...(中略)...「フローラ ダニカ」と呼称しようとする商標権者の意図は明白である」とさえ記している。

これらは全て、請求人が、自己に都合がよくなるよう一方的な推測ないし見方をしているところであって、商標法上の客観的解釈からは完全に外れる非法律的な記述である、といわざるをえない。

また、何の客観的資料もなしに、本件商標をもって、請求人の「Good will」に「Free Ride」し「Dilution」するもの、請求人の業務上の信用を僭用するという不正の意図をもつもの、などと、一方的な批判を述べているが、これも恣意的、というよりむしろ悪意をもっての誹謗中傷である、としか考えられない。

5 上記述べてきたところにより判るように、請求人の主張は、全て、自己に都合のよいようにする、所謂「為にする」論そのもであり、また、仮に譲ってもしもそうでないとしても、余りにも主観的に過ぎるものであり、法解釈上何も客観的根拠を有さない不適なものである、といわざるをえない。

すなわち、上記してきたところにより理解しうるように、本件商標は、請求人の主張する商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号、同第19号の各規定の何れにも該当するものではありえない。

第5 当審の判断

1 本件商標と引用商標の比較

本件商標は、別掲のとおり文字と図形の組み合わせよりなるところ、その構成に照らし、「FLORAE DANICAE OLD」の文字を書したと思しき文字部分自体が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものといえる。しかして、「FLORAE DANICAE OLD」の文字部分中の「OLD」の文字は、図形と共に中央に表されている「1750」の数字と相俟って、年代ものであること、ないしは、古くから伝えられたものであること等を看取させるといえるものであって、自他商品の識別機能の乏しいものであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、「FLORAE DANICAE」の文字部分に着目して取引にあたる場合も決して少なくないものとみるのが相当である。

そして、「FLORAE」と「DANICAE」の語尾部分は、「A」と「E」の文字が重ねて表示されているとしても、「FLORAE」及び「DANICAE」の綴りからなる既成語が存在しないことや、後記のとおり、引用商標が周知であることからして、「FLORA DANICA」と書されているように看取し得るものと認められるから、本件商標は、これより「フローラダニカ」の称呼をも生ずるものといわなければならない。

他方、引用商標は、前記のとおりの構成よりなるものであるから、「フローラダニカ」の称呼を生ずること明らかである。

してみれば、本件商標と引用商標とは、その称呼を共通にする類似の商標といわざるを得ない。加えて、本件商標の「FLORAE DANICAE」の文字部分をみれば、引用商標の欧文字と外観上酷似するものともいえる。

2 引用商標の周知性について

請求人の提出に係る証拠についてみるに、甲第3号証の「家庭画報」(1990年9月1日 株式会社世界文化社発行)には、引用商標に関する歴史を含め詳細な内容が掲載され、甲第4号証「家庭画報」(1993年6月1日 株式会社世界文化社発行)には、他の高級ブランドと共に引用商標が紹介されている。

また、平成2年10月に日本橋高島屋においてフローラダニカ誕生200年記念「ロイヤル コペンハーゲン フェア」(甲第7号証)が、1996年5月に横浜高島屋において「ロイヤル コペンハーゲン展」(甲第8号証)が開催されており、引用商標を付した陶磁器は、高島屋百貨店において展示、即売会が実施されている。

さらに、甲第14号証の「FLORA DANICA 1790‐1990」(1989年12月 株式会社ロイヤルコペンハーゲンジャパン発行)には、「フローラ ダニカ 200年の軌跡」として引用商標に関する歴史を含め詳細な内容が掲載されている。

してみると、請求人の提出に係る上記証拠及び他の甲各号証を総合勘案すれば、引用商標は、本件商標の登録出願時には、請求人ローヤル コペンハーゲン アー/エス(以下「ロイヤル コペンハーゲン社」という。)の業務に係る商品「陶磁器」の商標として取引者、需要者の間において広く認識されていたものと認められる。

3 本件商標の商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について

上記1のとおり、本件商標と引用商標とは少なくとも称呼上類似するものであり、また、引用商標は、上記2のとおり、商品「陶磁器」について使用する商標として需要者間に広く認識されているものである。そして、本件商標の指定商品中の「食器類、こしょう入れ・砂糖入れ・塩振り出し容器、陶磁製の包装用容器、植木鉢」等と引用商標が使用されている「陶磁器」とは類似するものといえる。

そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものといわなければならない。

また、本件商標を上記以外の指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「FLORAE DANICAE」の文字部分に着目して容易に引用商標を想起、連想し、該商品がロイヤル コペンハーゲン社の業務に係る商品、又は、ロイヤル コペンハーゲン社と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。

そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当するものといわなければならない。

4 被請求人は、「FLORA DANICA」ないし「フローラ ダニカ」の標章は、単に、ロイヤル コペンハーゲン社の取り扱い商品のうちの一つのシリーズものを表示したにすぎず、狭義における商標としての機能を有していない旨主張している。

しかしながら、「FLORA DANICA」「フローラ ダニカ」の文字が一般によく知られた語であるとはいい得ないから、これに接する取引者、需要者が直ちに「デンマークの草花」「デンマークの植物」の意味を有するものとして認識するものとは認められず、しかも、被請求人は、前記のとおり主張するのみで、商標としての機能を有していないとする証拠を何等示していないものであるから、それに基づく被請求人の主張は採用の限りでない。

また、被請求人は、本件商標の構成について、「FLOR」「DANIC」の文字に続く末尾二カ所の部分を重ね合わせて格別に「図案化」ないし「図形化」している点、「OLD」の文字を加えている点、数字「1750」を表示している点、「本」を図案化したと見える模様が描かれている点等を挙げ、引用商標とは全く異なるものである旨主張しているが、本件については上記のとおり判断するのが相当であるから、被請求人の主張は採用の限りでない。

5 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は商標法第46条第1項の規定により無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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