結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2001−30438(T2001−30438/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4403605号商標(以下「本件商標」という。)は、商標の構成を標準文字により「LUBRI−LOY」とするものであり、平成11年5月25日に登録出願され、指定商品を第4類「工業用油、液体燃料」として、平成12年7月28日に商標権の設定登録がされたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
1.パリ条約同盟国で本件商標と同一又は類似の商標権を有する者
請求人は、潤滑油及び潤滑油添加剤を含む工業用油、液体燃料を製造・販売することを目的として設立されたアメリカ合衆国所在の法人であって、アメリカ合衆国において、商標の構成を「LUBRI−LOY+缶の図形」とし、指定商品を米国分類第15類(国際分類第4類)「エンジン・バルブおよびエンジン・リング、油圧リフトの粘りを取り除くため、摩擦を少なくするために用いられる潤滑油添加剤」として、1955年8月30日に登録されている登録第611569号(甲第2号証)、及び同じく、商標の構成を「LUBRI−LOY」とし、指定商品を国際分類第4類(米国分類 第1,6,15類)「自動車内燃機関およびトラック、工業用内燃機関、ギヤー・ボックス、トランスミションおよび油圧潤滑に使用される潤滑油用石油系添加剤」として、1997年8月12日に登録されている登録第20872286号(甲第3号証)の各商標権を有する権利者である。
(1) 甲第1号証に係る商標は、オイル缶の図形の略中央部には、「LUBRI−LOY」の文字が表示されており、本件商標とは、同一の称呼及び観念が生ずる類似の商標である。また、甲第2号証に係る商標は、「LUBRI−LOY」の欧文字よりなるところ、本件商標とは完全に同一である。そして、本件商標に係る指定商品は、「工業用油、液体燃料」であるのに対し、請求人が本国において所有する商標権に係る商品は、国際分類の第4類に分類される「潤滑油用添加剤」である。
(2) 「潤滑油用添加剤」には、添加油と化学剤を主とするものがあるが、請求人が有する本国の商標権に係る商品は、「国際分類第4類」に分類されていることからも明らかなように、潤滑油用の添加油に関するものであり、特許庁類似商品・役務審査基準においても、「工業用油」の範疇に属するところの商品である。すなわち、本件商標に係る指定商品「工業用油」と、請求人が有する本国商標権に係る商品「潤滑油用添加剤」とは、同一・類似の商品であることは明らかである。
また、「液体燃料」と、「潤滑油」とは、前記審査基準においては形式上類似関係に分類されていないが、いずれも機械設備や自動車並びに重機メンテナンスには不可欠の商品群であり、現実の取引場裡においては、これらの商品がガソリンスタンドやカー用品販売店など同一の店頭において組み合わせられ、陳列・販売される機会の多いところの、密接な関係を有する商品である。
2.代理人としての地位を有していた者
商標権者は、少なくとも、平成11年(1999年)2月25日頃までは、請求人の製造に係る商品「潤滑油、潤滑油強化剤」の日本国内における総販売元であった者であり、請求人の代理人としての地位を有する者であった。これらの事実を証明する証拠として、請求人は甲第4号証ないし甲第11号証を提出する。
(1) 甲第4号証は、商標権者が営業拡販用に使用していた潤滑油添加剤、潤滑剤、グリースのパンフレットである。甲第5号証は潤滑強化剤(添加剤)の商品説明書である。また、甲第6号証は、商標権者が販売していた商品の現物写真である。
これら商標権者が作成した商品パンフレット等には、いずれも商標「LUBRI−LOY」が使用されているとともに、「製造元 ザ・ルブリロイ・カンパニー」及び「総販売元:株式会社新ダイヤクリエイティブ」、「AUTHORIZED BY THE LUBRI‐LOY COMPANY」の文字が明記されている。
以上の甲第4号証ないし甲第6号証によれば、請求人が本国で生産した商品の日本国市場での販売は、総て商標権者に委ねていたという事実が明らかである。すなわち、請求人の商品の販売に関する代理権を有する者であったことは明白である。
(2) 甲第7号証は、請求人から「日豊通商株式会社」(以下「日豊通商」という。)に輸出した商品「潤滑油(LUBRI−LOY)」の船積証券であり、甲第8号証は、日豊通商に宛てた請求書である。
日豊通商は、貿易商社であり、請求人商品を日本へ輸出するに際しての輸入手続に関する代理人であった者である。すなわち、請求人は、日豊通商との貿易手続により日本国内に商品を輸出し、輸出商品は、日本国総販売元である商標権者によって一般ユーザに販売するという流通経路をもって、日本市場への商品供給を行っていたのである。
したがって、甲第7号証、甲第8号証の船積証券及び請求書に記載された宛名は、形式的は日豊通商となっているものの、実質的には、日本国総販売元である商標権者への商品の出荷を意味するものである。
以上の契約関係は、請求人と日豊通商及び商標権者との間の信頼関係によるものであり、契約書等の合意文書は存在しないが、甲第9号証ないし甲11第号証の請求人に宛てられた日豊通商からの通信文書により、日豊通商と商標権者とは、実質的には一体的な存在として請求人との取引がなされていた事実が裏付けられる。
(3) 甲第9号証は、日豊通商から、請求人に宛てられた、製造物責任法(PL法)に基づく商品への表示方法に関する通信文書であって、商標権者の商品ラベルの写しを添付して、日本におけるPL法対応の表示方法の確認を求めている。また、甲第10号証は、請求人に対して、製品保険の効果について問い合わせる通信文書である。ここで問題となっているのは、請求人が商標権者に供給した「GEAR−LOY」という商品についてであるが、日豊通商と商標権者とが、共同して問題に対処している様子が示されている。さらに、甲第11号証は、商標権者の商品の、新規ラベルに関する承認を請求人に求めるものである。
以上の通信文書から、日豊通商は、請求人商品を日本国内に輸入することのみを担う者であって、日本国内での販売は、商標権者のみであること、及び、商標権者と日豊通商とは、実質的に一体的な存在として、日本国内市場への輸入・販売を行っていた請求人の代理人であることが証明される。
したがって、甲第9号証ないし甲第11号証の取引書類は、形式的には日豊通商との取引事実に関するものではあるが、実質的には商標権者との取引実績を証明するに十分な証拠である。そして、これらの取引書類から、商標権者は、平成11年(1999年)2月25日まで、請求人の代理人としての地位を有していたものであることは、甲第8号証の1の請求日付から明白であり、本件商標の出願日に照らしても、商標法第53条の2の「当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であったものによってなされたもの」に該当することは明らかである。
3.登録出願の正当性
請求人が商標権者に対して、本件商標の登録出願及び権利取得を承諾した事実、その他のこれを正当なものとする理由は存在しない。
4.弁駁の理由
(1) 代理人としての地位を有していた者
被請求人は、総輸入販売元の日豊通商とは直接の取引関係にないことを理由として、請求人との関係において商標法第53条の2にいう「代理人」に該当しないものと答弁しているが、輸入元の日豊通商との間で形式的な直接取引がないということをもって「代理人」たる地位を失うものではない。輸入代理人である日豊通商が、パイオニア株式会社(以下「パイオニア」という。)なる仲介業者を介して被請求人に請求人の製造に係る商品が流通していたとしても、商品の販売方法等、商品の取り扱いについて特別の慣行上の関係に基づいて請求人の製造に係る商品を扱う被請求人は、上記の「代理人」にほかならない。
(2) 登録出願の正当性
被請求人は、請求人が有していた商標登録第784996号について更新登録の事実がなかったことから、請求人が本件商標を放棄し、かつ日本国における本件商標の取得及び使用の意思もないものと判断したと答弁しているが、請求人は、更新登録を失念後も継続して日本国内、すなわち、被請求人への商品の供給を行っていた事実を十分に認識していたにもかかわらず、単に更新登録を失念していたという事実のみをもって、請求人が「本件商標の取得及び使用の意思のないもの」とすること自体、両者の信頼関係を踏みにじるものといわざるを得ない。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証(枝番を含む。)を提出した。
1.代理人としての地位を有していた者
被請求人は、請求人の代理人としての地位を有したとする事実はなく、日豊通商が請求人の製造に係る商品「潤滑油、潤滑油強化剤」の日本国内における総輸入元及び総販売元であり、日豊通商のみが商標法53条の2に規定する代理人であって、被請求人はパイオニアから請求人の製造に係る商品を購入し、第三者に販売する仲介業者にすぎず、被請求人と日豊通商の間に直接の商取引が行われたとする事実は全く存在しない。
被請求人は、これらの事実を証明するため、乙第1号証ないし乙第14号証及び参考資料1を提出する。
(1) 乙第1号証の1は、日豊通商に宛てられた請求人からの通信文書であり、日本国における販売代理店としての請求人が地位を承諾した事実が記載されている(乙第1号証)。
日豊通商が単なる貿易会社ではなく、日本国における販売代理店であることを次に証明する。
(ア) 乙第2号証は、銀河産業株式会社に宛てた日豊通商の請求書・明細書(控)の写しであり、日豊通商が請求人の製造に係る商品を販売していた事実が記載されている。
(イ) 乙第3号証は、椿本チエイン株式会社に宛てた日豊通商の請求書・明細書(控)の写しであり、日豊通商が請求人の製造に係る商品を販売していた事実が記載されている。
(ウ) 乙第4号証は、株式会社エノモト本社及び該社各事業所に宛てた日豊通商の請求書・明細書(控)の写しであり、日豊通商が請求人の製造に係る商品を販売していた事実が記載されている。
(エ) 乙第5号証は、株式会社アルプス商会に宛てた日豊通商の請求書・明細書(控)の写しであり、日豊通商が請求人の製造に係る商品を販売していた事実が記載されている。
(オ) 乙第6号証は、株式会社埼玉オートパーツに宛てた日豊通商の請求書・明細書(控)の写しであり、日豊通商が請求人の製造に係る商品を販売していた事実が記載されている。
(カ) 乙第7号証は、ナショナル貿易株式会社に宛てた日豊通商の請求書・明細書(控)の写しであり、日豊通商が請求人の製造に係る商品を販売していた事実が記載されている。
(2) 被請求人が請求人の製造に係る商品を購入販売していた経緯を乙第8号証を用いて説明する。乙第8号証は、パイオニアに宛てられた日豊通商の請求書・明細書(控)の写しであり、日豊通商がパイオニアにも請求人の製造に係る商品を販売していた事実が記載されている。
なお、乙第8号証の商品名欄には乙第2号証と同様に「<レギュラー> F−1」、乙第4号証と同様に「<レギュラー> EP−LUB」の各商品名が記載されているが、請求人から輸入した製品を日豊通商が直接販売する際に商品名として付けた名称であり、日豊通商が営業拡販用に使用していた製品パンフレット(乙第10号証の1、同の2)に記載されている。また、「<A> ダイヤEP−LUB」「<A> ダイヤ リバイブ」「<ダイヤ> スーパー」の各表示は、日豊通商の特約店であるパイオニアの販売先である被請求人が自社商品として販売する際に、商品に付していた「LUBRI−LOY DIACREATIVE REVIVE」等を略して表記したものであり、請求人が提出した甲第4号証の製品パンフレットに記載されている。
(3) 乙第9号証は、被請求人に宛てたパイオニアにからの本件商品の請求書・明細書(控)の写しであり、パイオニアが請求人の製造に係る商品を被請求人に販売していた事実が記載されている。また、その事実は乙第8号証の3の商品の請求書・明細書(控)において、パイオニアの商品の販売先として、商品名が記載されている部分の上に「*** ...***(株)新ダイヤクリエイ」として記載されている。
(4) したがって、被請求人は、日豊通商より請求人の製造に係る商品を直接的に購入していたわけではなく、パイオニアから請求人の製造に係る商品を購入し、第三者に販売していたに過ぎず、乙各号証による請求人の商品輸入ないし販売ルートを示すものを纏めたのが参考資料1である。
(5) 以上のとおり、日豊通商は、請求人の主張するように単なる貿易会社ではなく、請求人から輸入した商品を販売していた輸入販売代理店である。これに対し、被請求人は、パイオニアから請求人の製造に係る商品を購入し、第三者に販売する仲介業者に過ぎず、請求人の主張する代理人の地位を有するとはいえないものである。
したがって、被請求人は、商標法第53条の2に規定する代理人若しくは代表者ではなく、請求人の主張は失当である。
(6) 請求人提出に係る甲各号証について
請求人は、被請求人が請求人の製造に係る商品を販売していたことしか証明することができない証拠として甲第4号証ないし甲第11号証を示し、その審判請求の理由において「日本国総販売元である商標権者」なる語を使用し、あたかも被請求人が商標法第53条の2の「当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であったものによってなされたもの」に該当するかのような主張をしている。
(ア) 請求人は、甲第4号証ないし甲第6号証を根拠に請求人が本国で生産した商品の日本国市場での販売は全て被請求人に委ねていたと主張しているが、甲第4号証ないし甲第6号証(パンフレット、商品説明書、写真)に記載された「総販売元:株式会社新ダイヤクリエイティブ」の文字は、「DIACREATIVE SUPER」「DIACREATIVE REVIVE」等の商標を付した商品の販売に供するためのパンフレットにおいて、被請求人が請求人の製造に係る商品を販売していた事を証するに過ぎず、請求人の商品の日本国市場での販売を全て被請求人に委ねていた事を証するものではない。すなわち、被請求人は、日豊通商及びパイオニアを介して購入した請求人の製造に係る商品を自社で販売する際に他社との差別化を図るべく、「DIACREATIVE SUPER」「DIACREATIVE REVIVE」等の商標を付した商品に対してのみ「総販売元」と表記したに過ぎず、被請求人が請求人の製造に係る商品全ての販売に関する代理人たる地位を有していた事を証するものではない。
(イ) 請求人は、甲第7号証ないし甲第8号証(船積証券、日豊通商宛ての請求書)を示し、請求人は、日豊通商の手続きにより日本国内に商品を輸出し、輸出商品は日本国総販売元である被請求人によって一般ユーザに販売する流通経路をもっていたと主張しているが、該甲各号証は、単に、請求人の製造に係る商品が日豊通商を介して請求人に供給されていたことを証するだけであって、被請求人が日本国総販売元であることを証する記載は一切なく、請求人の「甲第7号証、甲第8号証の宛先が日豊通商となっているものの実質的には被請求人である」との主張には根拠がなく、失当である。
(ウ) 請求人は、甲第9号証ないし甲第11号証(通信文書)を根拠に、日豊通商は請求人の製造に係る商品を日本国内に輸入することのみを担うものであって、日本国内での販売は被請求人のみであること、及び、被請求人とは実質的に一体的な存在として輸入及び販売を行っていた請求人の代理人であると主張しているが、該甲各号証には、被請求人名が記述されているものの、販売元である被請求人が日本国内で請求人の製造に係る商品を販売する際のPL法の表示方法の確認等を日豊通商を介して行っていたことを示唆するものに過ぎず、これをもって被請求人が日豊通商と被請求人とが実質的に一体的な存在として輸入及び販売を行っていた請求人の代理人である事を証するものではない。このことは、乙第13号証の1の日豊通商に宛てた請求人の通信文書に、日豊通商とナショナル貿易株式会社とが共同で、独自に作成したラベルである「C&Gオイルフオート」を商品に付して出荷することの承諾を請求人に求めている記載がされている。すなわち、請求人の製造に係る商品に関し、問題が生じた場合や、請求人の承認が必要とされる場合には、対象となる販売業者と日豊通商が共同して問題に対処することが通例となっていることからも、請求人の主張が失当であることは明白である。
また、甲第9号証ないし甲第11号号証の取引書類の日付から、少なくとも、平成11年(1999年)2月25日頃までは、被請求人は請求人の代理人としての地位を有するものであるとの主張をしているが、被請求人は少なくとも、本件商標を登録出願した日より1年以上前から本件商標を出願した日の期間において、請求人の代理人でないことは、乙第2号証ないし乙第9号証の請求書に示されている日付において明白であり、この主張も失当である。
2.登録出願の正当性
商標登録第784996号の閉鎖登録原簿(乙第14号証)によれば、請求人は、昭和43年7月8日に設定登録された商標の構成を「LUBRI−LOY」とする当該商標権の権利者であったが、商標権存続期間の更新登録申請を行わず、商標権を消滅させたものである。
被請求人は、これらの時期において請求人の製造に係る商品を日豊通商並びにパイオニアを通じて購入及び販売を継続しており、請求人が前述の更新期間内及び閉鎖登記された後も本件商標の出願をしていない事実から、請求人が本件商標を放棄し、かつ、日本国における本件商標の取得及び使用の意思もないものと判断した。そのため、被請求人は本件商標について、第三者に商標登録出願された場合、自らが販売していた商品にも多大な影響を及ぼす虞があると判断し、これを回避するために、やむなく商標登録出願を行ない、本件商標の登録を受けたものである。
したがって、この行為は商標法53条の2に規定する「正当な理由」に該当するといわざるを得ない。
3.まとめ
以上のように、商標権者である被請求人は、商標法第53条の2における請求人の代理人としての地位を有したことはなく、かつ、被請求人が本件商標について商標登録出願することに正当な理由があることは明らかであるため、商標法第53条の2の規定には該当しないものと確信する。
4.弁駁に対する答弁の理由
(1) 代理人としての地位を有していた者
被請求人は、請求人から何ら制約を受けることなく、また請求人に対して何らの報告も要求されない関係にあり、被請求人と請求人が特別の慣行上の関係にあるとはいえないものである。
(ア) 請求人の「請求人が被請求人の要求に応じて必要量の商品を供給していた」との主張は、被請求人がパイオニアに発注した商品をパイオニアが日豊通商に発注し、製造者(請求人)が日豊通商を介してパイオニアに納入した商品を、パイオニアの取引業者である被請求人に販売するという通常の商業行為を示すだけであって、このことをもって被請求人が請求人の商品の販売体系に組み込まれているという主張は失当である。
更に、「請求人の商品に関し、問題が生じた場合や請求人の承認、が必要とされる場合には、対象となる販売業者と日豊通商が共同して問題に対処することが通例となっている 」との主張は、請求人の商品に問題が生じた場合にPL法等により責任を問われる輸入業者である日豊通商と問題商品を販売した販売業者である被請求人が共同して問題の対処にあたるのは当然のことであり、被請求人が請求人の代理人であるという主張は失当である。
しかも、被請求人は、請求人が主張する代理人の立場ではなく、また請求人と直接連絡をとることができないため、このような問題が生じたときは、購入先であるパイオニアに問い合わせを行い、パイオニアを介して輸入販売業者である日豊通商が請求人との間で商品の問題対処を行っており、被請求人はその結果を日豊通商の取引先であるパイオニアを介して受け取り、問題が生じた顧客に応対していたものである。このことは、請求人が提出した甲第10号証の請求人に送られた生産物保険の効果についての書類の差出人が日豊通商のみであって、被請求人は含まれていないことからも理解されるものと思料する。
(イ) 請求人は、弁駁書において、被請求人が請求人の商品に対するラベルデザインについての承認を申し入れていることを根拠に被請求人が請求人の実質的な支配下にあったと主張しているが、そのラベルには商標「LUBRI−LOY 」の表記が含まれており、また商品内容の説明が記載されていることから、パイオニアを介し、日豊通商を通じて、当時の権利者であり、製造者である請求人にラベル内容の確認と商標使用の承認を求めたのであり、このような請求人の商標権を尊重した商標を含むラベルの使用許諾を得ることが、実質的に請求人の支配下にあるとの主張は失当である。
(ウ) 請求人の製造に係る商品は、日豊通商が、複数の取引先に販売するために一括して輸入し、複数の取引先毎に、詰め替え又はラベルを貼りかえる等して、複数社の取引先に販売していることは、請求人から日豊通商に宛てた甲第8号証で示す各請求書や、日豊通商が複数の取引先に宛てた乙第2号証ないし乙第8号証で示す各請求書からも明らかであって、被請求人の「総販売元」という表記は、被請求人の冠を付したオリジナルブランドという意味での「総販売元」であることは明らかであり、被請求人が取り扱う一部の商品に関して請求人の日本国における請求人の代理人であるとの請求人の主張は失当であり、被請求人が請求人の代理人として本件商標に係る商品を販売する法律上及び商取引上の関係もなく、特約店,輸入総代理店等日本において本件商標に係る商品を販売するについての特別の慣行上の関係が存したものではなく、その間に格別の信頼関係も生じていたとも云えず、被請求人が法で規定する「代理人」に該当するとの主張は根拠がなく、失当である。
(2) 登録出願の正当性
被請求人は、請求人が日豊通商との直接の取引を平成11年4月に一方的に中止し、その後も商品の供給がなされていないとの情報を知り、請求人の商品に関する商標登録の権利状況を調べたところ、請求人の登録商標の更新手続きが行われておらず、平成10年7月8日に存続期間が満了し、平成11年3月17日に閉鎖登記が行われていたとの事実を知った。そのような事情から、被請求人は、請求人には本件商標の日本国内における使用意思がないものと判断し、また本件商標に係る商品は被請求人のみばかりか、日豊通商やパイオニアにも多数の在庫があり、また、被請求人においても本件商標に係る商品は売れ筋の商品であったため、第三者により当該商標が登録された場合、在庫商品の販売に支障が生じるおそれがあると考え、これを防御するために本件商標の出願を行ったものである。したがって、この登録出願は、商標法第53条の2に規定する「正当な理由」を有するものである。
なお、被請求人と請求人とは何の面識もなく、また、法律上の関係はもとより取扱商品に関して何の指示,説明又は報告が行われることのない製造元と得意先との関係であって、被請求人が、更新を失念したとの請求人の事情を知り得ることは不可能であったことから、両者の信頼関係を踏みにじるものとの主張自体も失当である。
(3) 商標法第53条の2の規定が制定された趣旨
該規定の制定された趣旨は、本来我が国で登録されておらず、また、周知商標でもない外国の商標権者等の権利について、その外国商標権者等の権利に係る商標と同一又は類似の商標登録を取り消す権利を与えるものであり、属地主義、登録主義の例外をなすものである。本来このような事柄は契約で定められるものではあるが、契約で定められていない場合や契約期間が終了した場合にその後の自己の商品についてのコントロールを図ることを目的とした規定である。
したがって、それまで商標登録を受けていた者が自己の権利を守るために必要且つ極めて簡単な手続きを踏まなかった場合、旧商標権者と法律上の関係が何もない得意先である被請求人が自己の名義で商標登録を得たことを不当とする合理的な理由は全くない。また、自己の商標管理の拙劣さにより生じた結果は、自己責任を負うべきが当然の理であり、商標法第53条の2の規定はそのような拙劣な外国商標登録者を属地主義、登録主義という我が国法制度の根本原則を覆してまで保護するものとは認められるべきではない。
本件審判請求は、商標法第53条の2の規定による本件商標の登録についての取消審判事件であるところ、この規定は、パリ条約の同盟国等における商標に関する権利者の承認なしに、その代理人等が我が国に当該商標と同一ないしは類似の商標を登録出願し、それが登録されたときは、商標に関する権利を有する者がその登録を取り消すことについて審判請求をすることができる旨を定めたものである。これは公正な国際取引を確保することの必要性から、他の同盟国等で商標に関する権利を有する者の保護を強化することを目的として、パリ条約6条7の規定を実施するため制定されたものである。
そこで、本件商標の登録についての該規定における取消の要件、すなわち、請求人が本件商標の取消理由において大旨述べる、1.請求人はパリ条約同盟国における商標権を有する者であること、2.被請求人(商標権者)は請求人の代理人としての地位を有していた者であること、3.被請求人には登録出願の正当な理由は存在しないことの点について検討する。
1.パリ条約同盟国で本件商標と同一又は類似の商標権を有する者
請求人提出の甲号証によれば、請求人は、パリ条約の同盟国であるアメリカ合衆国において、本件商標の登録出願前に、商標の構成を「LUBRI−LOY+缶の図形」とし、指定商品を「エンジン・バルブおよびエンジン・リング、油圧リフトの粘りを取り除くため、摩擦を少なくするために用いられる潤滑油添加剤」として、1955年8月30日に登録されている登録第611569号(甲第2号証)、及び商標の構成を「LUBRI−LOY」とし、指定商品を「自動車内燃機関およびトラック、工業用内燃機関、ギヤー・ボックス、トランスミションおよび油圧潤滑に使用される潤滑油用石油系添加剤」とする、1997年8月12日に登録されている登録第20872286号(甲第3号証)の各商標権を有する権利者であることが認められる。
そして、本件商標「LUBRI−LOY」と請求人がアメリカ合衆国において所有する甲第1号証及び甲第2号証に係る各商標(以下「本国商標」という。)は、その構成中に「LUBRI−LOY」の文字を顕著に有するもの、及び該欧文字よりなるものであって、本件商標と本国商標とは、同一の称呼及び観念が生ずる類似の商標である。
また、本件商標に係る指定商品は、第4類「工業用油、液体燃料」であるのに対し、本国商標に係る商品は、上記のとおり国際分類の第4類に分類される「潤滑油用添加剤」についての商品であって、その用途、販売店、需要者等を共通にするものであるから、両商品は類似する商品とみて差し支えないというべきである。
そうすると、本件商標は、商標法第53条の2に規定される取消の要件である「登録商標がパリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって、当該権利に係る商品に類似する商品を指定商品とするものであり」に当てはまるものと認め得るものである。なお、この点に関しては当事者双方に争いはない。
2.代理人としての地位を有していた者
商標法第53条の2における代理人の地位にある者の範囲は、パリ条約6条7の規定趣旨、すなわち、公正な国際取引を確保することの必要性からみて、外国メーカーの日本支社、ないしは輸入元又は総代理店の立場をとる我が国の商社等の特別な契約上の関係を有する者に限定されることなく、これらから当該外国製品を供給されて販売する際に、販売(発売)元、代理店又は特約店を名乗ることを黙示的といえど外国メーカーから許された者についても含まれると解すべきであるというのが相当である。
(1) 潤滑油添加剤、潤滑剤、グリースのパンフレット(甲第4号証)、潤滑強化剤(添加剤)の商品説明書(甲第5号証)及び潤滑剤 兼 防錆・防蝕剤の写真(甲第6号証)によれば、「LUBRI−LOY」、「製造元 ザ・ルブリロイ・カンパニー」及び「総販売元:株式会社新ダイヤクリエイティブ」、「AUTHORIZED BY THE LUBRI‐LOY COMPANY」等の各文字の記載があるところから、商標権者(被請求人)は、「総販売元」の表示の下、請求人の製造に係る商品を販売した事実があったと認められる。
(2) 日豊通商から請求人宛の製造物責任法(PL法)に基づく商品への表示方法に関する通信文書(甲第9号証の1)とするものに、被請求人(商標権者)の商品ラベルの写し(甲第9号証の2)が添付してあり、上記(1)と同様に「LUBRI−LOY」、「AUTHORIZED BY THE LUBRI‐LOY COMPANY」及び「総販売元:株式会社新ダイヤクリエイティブ」等の各文字の記載があるところから、「総販売元」の表示を含めてその各表示については、請求人と被請求人との間に直接的な契約がないとしても慣行的な了解がされていたものというべきである。
(3) 被請求人は、上記の「総販売元」の表示について、日豊通商及びパイオニアを介して購入した請求人の製造に係る商品を自社で販売する際に他社との差別化を図るべく、「DIACREATIVE SUPER」「DIACREATIVE REVIVE」等の商標を付した商品に対してのみ「総販売元」と表記したに過ぎない旨述べているが、該パンフレット(甲第4号証)等には随所に請求人の製造に係る商品であることを認識させる各表示があり、たとい被請求人が請求人の製造に係る商品全ての販売に関する代理人たる地位を有していた事を証するものではないとしても、「総販売元」の表示の下、請求人の製造に係る商品について販売していた事実は否定し得ず、代理人(販売元)たる地位を有していた事実を証するに足りるものである。
(4) 被請求人の提出に係る日豊通商に宛てられた請求人からの通信文書(乙第1号証)、我が国の各取引先に宛てた日豊通商の請求書・明細書(控)の写し(乙第2号証ないし乙第8号証)、及び日豊通商が輸入総代理店、又は輸入発売元とするカタログ(乙第10号証)からは、日豊通商が請求人の製造に係る商品を販売していた事実を認め得る。
しかし、例えば、乙第10号証の5(カタログ)のように、輸入発売元と表示された「日豊通商」の住所、電話及び販売店の店判等は、該乙第2号証ないし乙第8号証の各請求書・明細書(控)の写しにある表示とは異なり、かつ、その作成、頒布時期は特定できず、当該カタログを現在も使用しているものともいい難いところである。むしろ、被請求人は、乙第1号証ないし乙第8号証の取引書類等を写しといえど入手できる程に日豊通商との間に密接な関係にあるといえる。
さらに、被請求人に宛てたパイオニアの請求書の写し(乙第9号証)から、被請求人とパイオニアとの間に請求人の製造に係る商品に関し取引があったことは認め得ても、パイオニアが「特約店」の立場にあることを窺わすような証拠の提出はないところであり、パイオニア自体は名目的な特約店であるといわざるを得ない。
(5) 被請求人は、請求人の製造に係る商品を日豊通商とパイオニアを経由して引き渡され、本件商標の登録出願日である平成11年(1999年)5月25日前1年以内に販売したであろうことは、1998年(平成10年)4月14日に貨物を積み込んだ旨の船積証券(甲第7号証の1)、1999年(平成11年)2月25日付日豊通商宛ての請求書(甲第8号証の1)、1999年(平成11年)5月31日付パイオニア宛ての日豊通商の請求書・明細書(控)(乙第8号証の5)及び1998年(平成10年)11月20日付被請求人宛てのパイオニアの請求書(乙第9号証の12ないし15)からして、推測させるに十分である。
(6) 以上のとおり、被請求人は、請求人の製造に係る商品を販売するに際し「総販売元」であることを標榜し、本件商標の登録出願の日前1年以内に、日豊通商とパイオニアを経由し取引をしていたものであるから、当該「LUBRI−LOY商品」に関して、代理人(販売元)たる地位を有していた者というべきである。
そうすると、商標法第53条の2の「当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であったもの」に該当すると認められる。
3.登録出願の正当性
(1) 被請求人は、本件商標の登録出願の正当性について、「請求人が日豊通商との直接の取引を平成11年4月に一方的に中止し、その後も商品の供給がなされていないとの情報を知り、請求人の商品に関する商標登録の権利状況を調べたところ、請求人の登録商標の更新手続きが行われておらず、平成10年7月8日に存続期間が満了し、平成11年3月17日に閉鎖登記が行われていたとの事実を知った。そのような事情から、被請求人は、請求人には本件商標の日本国内における使用意思がないものと判断し、また本件商標に係る商品は被請求人のみばかりか、日豊通商やパイオニアにも多数の在庫があり、また、被請求人においても本件商標に係る商品は売れ筋の商品であったため、第三者により当該商標が登録された場合、在庫商品の販売に支障が生じるおそれがあると考え、これを防御するために本件商標の出願を行ったものである。・・・被請求人が更新を失念したとの請求人の事情を知り得ることは不可能であったことから、両者の信頼関係を踏みにじるものとの主張自体も失当である。」旨述べている。
しかし、商標法第53条の2の規定は、パリ条約の同盟国等における商標に関する権利者の承認なしに、その代理人等が我が国に当該商標と同一ないしは類似の商標を登録出願し、それが登録されたときは、商標に関する権利を有する者がその登録を取り消すことについて審判請求をすることができる旨を定めたものであって、当該商標がその権利者によって我が国において商標登録された場合に、商標法第53条の2の適用が除外されるとの定めはなく、かつ、我が国においての当該商標権存続期間の更新手続を失念したとの請求人の係る事情を考慮しなければならないものとすることはできない。
(2) 被請求人は、当該商標権存続期間の更新手続を失念したとの請求人の係る事情をもって請求人には、本件商標の日本国内における使用意思がないものと判断した旨述べているが、1999年(平成11年)5月31日付パイオニア宛ての日豊通商の請求書・明細書(控)(乙第8号証の5)及び1998年(平成10年)11月20日付被請求人宛てのパイオニアの請求書(乙第9号証の12ないし15)からして、該更新手続を失念した当該商標権の存続期間満了日(平成10年7月8日)以後も取引は継続していたものであって、被請求人はこれを知り得る立場にあったものと推認でき、また、被請求人の「本件商標に係る商品は被請求人のみばかりか、日豊通商やパイオニアにも多数の在庫があり、また、被請求人においても本件商標に係る商品は売れ筋の商品であったため、第三者により当該商標が登録された場合、在庫商品の販売に支障が生じるおそれがあると考え、これを防御するために本件商標の出願を行ったものである。」旨述べるところからも、日豊通商と被請求人とは密接な関係にあるといえるばかりでなく、被請求人は、「LUBRI−LOY商品」であること、すなわち請求人の製造に係る商品を標榜するため、ないしは請求人が更新登録をしていないことを奇貨として請求人の商標を剽窃的に登録出願したものといわざるを得ない。
被請求人のこの行為は、請求人の我が国における取引を阻害するものであるから、これが公正な国際取引を確保することを前提として制定された本条にあって、登録出願の正当な理由になるとはいえない。
(3) その他、被請求人の主張及びその証拠(乙各号証)により、本件商標の登録出願及び権利取得が正当なものとする事情は見出せない。
4.まとめ
以上のとおり、本件商標は、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標と類似する商標であって、当該権利に係る商品又はこれに類似する商品を指定商品とするものであり、かつ、正当な理由もないのに当該権利を有する者の承諾を得ないでその代理人によって出願されたものと認めざるを得ないから、本件商標の登録は、商標法第53条の2の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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