結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第30762号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第1592075号商標(以下「本件商標」という。)は、「フジケミ」の文字を横書きしてなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和58年5月26日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
請求人は、本件商標の指定商品中「薬剤」についての登録を取り消す旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第3号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品中の「薬剤」について、継続して3年以上日本国内において、使用した事実を発見することができないから、商標法第50条の規定によりその指定商品中前記商品についての登録は取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
被請求人は、商品「薬剤」に含まれる「ヒドロキシエチルセルロース」に使用し、その事実を示すものとして乙第1号証ないし同第10号証を提出しているが、この主張は以下の理由により失当である。
被請求人は乙第1号証において、ロート製薬株式会社に「フジケミ HEC」の商標を付した商品「ヒドロキシエチルセルロース」を10Kg納品したことを立証しているが、それは該商品が「薬剤」の原材料として取り引きされたものとしての事実が示されていないばかりでなく、厚生大臣から医薬品製造業の許可を受けている事実の立証もない。また、乙第2号証は会社案内を示すものであり、商標と商品についての使用の事実を示す証拠とはなり得ないものである。また、乙第3号証は、「ヒドロキシエチルセルロース」が、セルロース酸化エチレンを負荷させることにより、水溶性とした高分子化合物である旨の説明にすぎず、更に、乙第7号証は、該商品が、ファイザー製薬株式会社 名古屋工場において、調剤用剤のうち軟膏基材に使用している事実を示す証拠として提出されているが、証拠能力を有する者による証明とは認められない。
被請求人が主張する使用に係る商品「ヒドロキシエチルセルロース」(以下「本件商品」という。)は、商品の区分第1類の「化学品」中、社会通念上「有機工業薬品」に属するものと認められる。一方、「薬剤」は、甲第2号証「商品及び役務区分解説」の解釈によれば、薬事法第2条1項、2項に定義する医薬品に該当する薬品、あるいは農薬である。そして、仮に本件商品が「薬剤」に属するものと仮定したとしても、甲第3号証に示す薬事法第12条によれば、医薬品の製造許可を受けた者でなければ、それぞれ業として、医薬品、医薬部外品の製造をしてはならない旨が規定されている。そこで、これを本件についてみるに、本件全証拠によっても被請求人が厚生大臣から医薬品の製造業の許可を受けている事実を窺わせるものはなく、また、本件商品は医薬品の用途に用いられるものとして、被請求人が同商品について薬事法の医薬品として製造の承認を受けたことを窺わせる証拠はない。
したがって、被請求人の主張及び立証からは、商品「薬剤」についての使用の事実を認めることはできない。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第10号証を提出した。
本件審判の請求に係る指定商品「薬剤」に含まれる「ヒドロキシエチルセルロース」について本件商標と社会通念上同一と認められる「フジケミ HEC」、「フジケミHEC」などの商標を審判請求の登録の日前3年の間に使用している。
乙第1号証は、被請求人が平成11年5月12日に、ロート製薬株式会社(大阪市生野区巽西1一8一1所在)に、本件商標と社会通念上同一と認められる「フジケミ HEC」との商標を付した本件商品を10kg納品している事実を証明する商品の取引書類である納品書(控)である。
乙第2号証、同第3号証は、被請求人の会社案内及び製品カタログである。製品カタログは、株式会社大洋堂(京都市右京区西院上花田町8−2所在)の製作に係るものであり、1995年3月22日に被請求人に納品されたものである。製品カタログ裏表紙には、1995年3月に株式会社大洋堂が2000部を製作したとの旨が「9503」、「TD」及び「20A(Aは100を表す)」との記号で印刷されている(乙第4号証)。会社案内及び製品カタログは、印刷会社より納品されて以降、被請求人が営業用に顧客に配布しているものである。被請求人は、「フジケミ HEC」及び「フジケミHEC」との商標を付した商品「ヒドロキシエチルセルロース」の製品カタログを1995年3月から現在に至るまで本件商品販売のために需要者、取引者に配布している。
被請求人はその販売する本件商品について、商標「フジケミ HEC」及び「フジケミHEC」を付して使用しているが、これらの商標と本件商標が社会通念上同一と認められる理由は、「フジケミ HEC」及び「フジケミHEC」のうち、「HEC」との部分は、請求に係る商品である「薬剤」を取り扱う業界において、ヒドロキシエチルセルロースを表すと一般的に理解されるからである。このことは、例えば薬局で販売されている目薬の有効成分の欄に「ヒドロキシエチルセルロース(HEC)」との記載があり、ヒドロキシエチルセルロースを(HEC)と表示していることからも窺える(乙第5号証)。また、化学工業日報社発行の「13197の化学商品」に、ヒドロキシエチルセルロースの別名が「HEC」であると掲載されている事実からも理解できる(乙第6号証)。これらの事実より、商標「フジケミ HEC」及び「フジケミHEC」中「HEC」との部分は、被請求人が取り扱う商品である「ヒドロキシエチルセルロース」を単に表すにすぎない部分であることがわかる。よって、「HEC」との部分は、識別力のない付記的な部分として取引者、需要者に理解される。したがって、「フジケミ HEC」及び「フジケミHEC」中、自他商品識別力を有し商標として機能する部分は「フジケミ」との部分のみであるため、「フジケミ HEC」及び「フジケミHEC」は、本件商標と社会通念上同一の商標であるといえるのである。
乙第7号証は、被請求人の一取引先であるファイザー製薬株式会社(愛知県知多郡武豊町字5号地2所在)が「フジケミ HEC」を「薬剤」中、軟膏基材に使用しているとの事実を示す証明書である。この証明書には、被請求人の取引先であるファイザー製薬株式会社が、被請求人が販売する「フジケミ HEC」を調剤用剤として軟膏基材に使用していると記載されていることから、被請求人の商品が医薬用に使用されるものであることが明らかである。
更に、被請求人が販売する商品は、被請求人の製品カタログに記載のとおり医薬品添加物規格に適合している物質であること。薬事日報社発行の「医薬品添加物規格 1998」には、投与経路として、「経口投与、一般外用剤、眼科用剤、歯科外用及び口中用」が明示されていること(乙第8号証)。また、被請求人の製品カタログにおいて、販売する商品が医薬品に使用されることに鑑み、経口急性毒性試験、皮膚刺激性試験、眼粘膜刺激性試験、皮膚接触感作性試験、微生物を用いた変異原性試験といった安全性試験を実施している旨明らかにしている(乙第3号証)ことより、被請求人の販売する商品は、その用途が医薬用であり、医療業界に流通している事実が窺える。したがって、その用途及び需要者、取引者の範囲に鑑みれば、被請求人が取り扱う商品は「薬剤」の一に該当する商品であるといえる。
被請求人が本件商標と同一と認められる商標を「薬剤」の一に該当する商品について使用した時期を証明する。商品の取引書類である納品書(控)からは、平成11年5月12日及び平成11年7月6日に商標「フジケミ HEC」を付した本件商品を納品した事実が確認できる(乙第1号証)。また、製品カタログは、1995年3月に印刷されて以来、現在も販売のために配布されているものであることから、1995年以降現在に至るまで使用していることが明らかである。(乙第4号証、同第9号証及び同第10号証)。
したがって、被請求人は、本審判請求の登録日である平成11年7月7日より前3年間において本件商標と同一と認められる商標を「薬剤」の一に該当する本件商品について使用していたことがわかる。
以上の立証のとおり、被請求人は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「フジケミ HEC」及び「フジケミHEC」を、審判請求の登録の日前3年間において、請求に係る商品「薬剤」に使用している事実から、本審判の請求は成り立たない。
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る商品について当該商標を所定の期間内(審判請求の予告登録日前3年以内)に使用していることを証明し、または使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れないところ、被請求人提出の書証を総合勘案すると、被請求人は、本審判請求の予告登録日前3年以内に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、本件商品(ヒドロキシエチルセルロース)について使用したことが認められる。そこで、この本件商品が本件取消請求に係る商品「薬剤」の範疇に含まれる商品であるか否かについて検討する。
ところで、本件商標の出願当時の「特許庁商標課編 商品区分解説(社団法人発明協会発行 昭和55年4月7日改訂版 平成2年4月25日改訂版2刷)」によれば、第1類の「薬剤」については、「この概念には次のものが含まれる。 (1)薬事法(昭和35年法律第145号)の規定に基づく“医薬品”の大部分 “医薬品”とは次に掲げるものをいう。 〔1〕日本薬局方に収められている物 〔2〕人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的されている物であって、器具器械(歯科材料、医療用品及び衛生用品を含む。以下同じ。)でないもの(医薬部外品を除く。) 〔3〕人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、器具器械でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)・・・」と説明されている。一方、同「化学品(他の類に属するものを除く)」については、「・・・この類でいう化学品には大体において(1)工業原料又は実験用として使用される薬品と、(2)他のどの類にも属しない化学的製品とが含まれる。・・・2.有機工業薬品 工業原料又は実験用として使用される有機の化学的基礎製品である。1.無機工業薬品と同様に、同物質であっても他の用途に限定された取引の段階にあるものは含まれないし、未だ用途が限定されていない取引段階にある場合は、それが後に大部分他の類の用途に使用されようと、現段階ではこの概念に属する。・・・」と概念付けられている。
次に、本件商品が如何なる商品であるか、被請求人提出の書証を徴するに、乙第2号証の「国内唯一のHEC(ヒドロキシエチルセルロース)メーカーとして、化粧品・医薬品・塗料・高分子・繊維染色・製紙・建築建材をはじめ、最近は半導体・セラミックなどさまざまな分野でご愛顧をいただいております。」との記載、乙第3号証第1頁の「HECとは」の見出しに「HEC(ヒドロキシエチルセルロース)は、セルロース酸化エチレンを付加させることにより、水溶性とした高分子化合物です。HECの水溶液は、増粘・保水・懸濁・分散・保護コロイドのすぐれた機能を有し、各分野で使用されています。」との記載、同第10頁の「安全性」の見出しに「HECは医薬品添加物規格および化粧品原料基準に収載されたグレードもあり、その安全性について充分評価されています。」との記載、乙第5号証のロート製薬(大阪市生野区巽西1−8−1所在)の目薬の成分の1つとして、「塩化カリウム」「塩化ナトリウム」と並び「ヒドロキシエチルセルロース(HEC)」が記載されていること及び乙第6号証の「13197の化学商品(化学工業日報社 1997年1月29日発行)」の写し中、ヒドロキシエチルセルロースに関する記事中、概説として「・・・工業的に種々の置換度および重合度のものが製造されており、・・・」との記載の後、用途として「ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどと一部共通の性質があり広範囲な用途がある。増粘剤として水溶性塗料、接着剤、化粧品、染色工業などに使われ、低粘度のものは主として酢ビ系エマルジョン重合保護コロイドとして用いられ、その他セメント混和剤、バインダーなどに使われている。」との記載があり、これらを総合的に判断すれば、本件商品は、医薬品に用いられることはあっても、単独で医薬品として取り引きされるものではなく、医薬品製造のための原材料(成分)の1つとして用いられるものであって、むしろ、その製品グレードにより様々な用途を持つ工業用薬品であるといわざるを得ない。
そうとすれば、上述の「薬剤」及び「化学品(他の類に属するものを除く。)」の概念に照らせば、本件商品は、本件商標の指定商品中「薬剤」の範疇に属する商品ではなく、「化学品(他の類に属するものを除く)」の範疇に属する商品と認められる。
したがって、被請求人提出の乙第1号証ないし同第10号証によっては、本件審判請求の登録前3年以内に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも「薬剤」について本件商標を使用していたとは認められず、かつ、使用をしていないことについて正当な理由があったものとも認められない。
以上のとおり、被請求人は、請求に係る指定商品について本件審判請求の予告登録日前3年以内に本件商標を使用したことを証明し得なかったものであるから、本件商標は、商標法第50条の規定により、指定商品中「薬剤」について、その登録を取り消すべきである。
よって、本件審判請求は、理由があるので認容することとし、審判費用の負担につき、商標法第56条第1項、特許法第169条第2項、民事訴訟法第61条を適用して、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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