Trademark Appeal Case
周知商標「POLO」との類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年審判第11371号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「ポロクィーン」の文字を上段に、「POLOQUEEN」の文字を下段に書してなり、第25類「靴類(「靴合わせくぎ・靴のくぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く)」を指定商品として、平成8年9月20日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「この商標登録出願に係る商標は、ザ ポロ/ ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップがラルフローレンのデザインによる紳士スーツ、ポロシャツ、ネクタイ等に使用して本願出願前より広く需要者に認識されていた商標『POLO』の文字を含むものであるから、これを出願人が指定商品に使用するときは需要者は上記会社もしくは上記会社と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨の理由で本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)「POLO」の文字からなる商標について
▲1▼ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)と「ポロ・ファツションズ社」について
「男の一流品大図鑑」(株式会社講談社昭和53年7月20日発行)、及び、「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」(サンケイマーケティング(サンケイ新聞データシステムマーケティング事業部)昭和58年9月28日発行)によれば、以下の事実が指摘できる。
(ア)ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)は、1967年ネクタイメーカーのボー・ボランメル社にデザイナーとして迎えられ、幅が広いネクタイをデザインし、これが若者に支持され、世界に広まったこと。
(イ)ラルフ・ローレンは、翌年独立し、社名を「ポロ・ファッションズ」として、ネクタイ、スーツ、シャツ、セーター、カバンなどのデザイン製作を開始し、1971年には婦人服デザインにも進出したこと。
(ウ)ラルフ・ローレンは、アメリカのファッション界では最も権威のある「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞するとともに、他にも賞を受賞し高い評価を受け、そのブランドを世界に通用させたこと。
(エ)そして、ラルフ・ローレンは、自己の取り扱いに係る商品に使用する商標を「ポロ競技」にヒントを得て採択したこと。
(なお、当審が職権を持って調査したところ、ラルフ・ローレンが関係する会社は、現在では、「ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ」であることが認められる。)
▲2▼「POLO」及び「Polo」、「ポロ」の文字からなる商標について
原査定が引用した商標のうち「POLO」の文字からなる商標は、その配列すべてを大文字で表示したものであるところ、前掲の「男の一流品 大図鑑」、「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」、及び、「世界の一流品大図鑑’80年版」(株式会社講談社昭和55年6月20日第二刷発行)、「別冊チャネラー ファッション・ブランド年鑑’80」(株式会社チャネラー昭和54年9月20日発行)、によれば、「Polo」と、第2文字目以降を小文字で表示した商標、及び、「ポロ」の文字よりなる商標が、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして使用されていることが認められるものである。
これら「Polo」、「ポロ」の文字よりなる商標は、「POLO」の文字からなる商標と、相互に同一の称呼(「ポロ」)及び観念(「ポロ競技」)が生ずるものと認められ、本願の出願時においても、両者は社会通念上同一の商標であったとみなして差し支えないといえるものである。
▲3▼そこで、以下、本件審判請求事件を審理するにあたり、「POLO」、「Polo」、「ポロ」の文字からなる商標を一括して「POLO商標」という。
▲4▼「POLO商標」の我が国での使用・紹介について
「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」(株式会社洋品界昭和55年4月15日発行)の「ポロ」の項、「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」(ボイス情報株式会社昭和59年9月25日発行)の「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」の項、及び、昭和63年10月29日付日経流通新聞の記事を総合すれば、我が国においては、ポロ・ファッションズ社(あるいは、ラルフ・ローレン)との契約に基づき、西武百貨店が昭和52年にラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴の取り扱いを、同53年からは婦人服の取り扱いを開始したことが認められる。
また、前掲の書籍・新聞の外、「男の一流品大図鑑’81年版」(株式会社講談社昭和56年4月25日第二刷発行)、「世界の一流品大図鑑’81年版」(株式会社講談社昭和56年6月20日第二刷発行)、「流行ブランド図鑑」(株式会社講談社昭和60年6月25日第2刷発行)によれば、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、ジャケット、シャツ、ネクタイ、眼鏡に「POLO商標」が使用されていることが認められる。
▲5▼「POLO商標」の著名性について
以上、認定の事実を総合して検討すれば、「POLO商標」は、遅くとも本願出願時までにはラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するもの、あるいは、ポロ・ファッションズ社又は、「ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ」の取り扱いに係る商品に使用する商標として、被服類、眼鏡等のいわゆるファッション関連の商品分野の取引者、需要者の間において広く認識され、かつ、著名になっていたものと判断され、その状態は現在もなお継続しているというのが相当である。そして、他にこの判断を覆すに足りる証拠はない。
(2)本願商標の構成について
本願商標は、前記のとおり、「ポロクイーン」の片仮名文字を上段に、「POLO QUEEN」の欧文字を下段に横書きしてなるものである。
そして、本願商標を構成する文字が「ポロ競技の女王」の意味合いが認識される場合があるとしても、我が国において「ポロ競技」が盛んに行われて一般に親しまれているとはいえないばかりでなく、本願商標を構成する文字が一体的に把握されるという具体的事情があるとの証左も認められない。
(3)出所の混同のおそれについて
本願商標は、その構成中に「ポロ」、「POLO」の文字を有するものである。
一方、前記のとおり、「POLO商標」は、我が国において、本願出願前には、「ラルフ・ローレン」のデザインに係る商品、あるいは、「ザ ポロ/ローレン カンパニー」の取り扱いに係る商品である被服類、眼鏡等のいわゆるファッション関連の商品を表示するものとして、当該商品に関する取引者、需要者の間において著名となっていたといい得るものであって、本願指定商品は「靴類」であって、この商品は、身体に着用するものであり、実用性のみならず、ときどきの用途に応じたファッション性を有する商品でもあることから、これに係わる取引者、需要者が、本願商標に接した場合には、「POLO商標」との構成上の相違があったとしても、その著名性ゆえ「ポロ」、「POLO」、の文字部分に着目することで、「POLO商標」を連想・想起し、それがあたかも、「ラルフ・ローレン(あるいは、「ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ」)」の事業と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(4)請求人の主張について
請求人は、本願商標を「ポロ」「POLO」と「クイーン」「QUEEN」とに分断して観察し、称呼することは到底あり得ないし、不自然である旨主張をしてる。
しかしながら、本願商標は、「POLO」、「ポロ」の文字を含み、これをその指定商品に使用するときには、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあると判断したこと前記のとおりである。
また、請求人は、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとの原査定の認定・判断に関し、本号は私益保護規定であって、二つの商標が似ている、あるいは共通点があるということだけでは足りず、具体的に、取り引きの実際において、出所の混同を生ずるおそれがあるか否かについて考慮すべきであり、判例の態度でもある旨主張し甲第3号証を提出し、また、本願商標の指定商品と、引用商標が使用されている商品とは相互に全く非類似商品であることを考慮すれば、単に、広く需要者に認識されていた商標「POLO」を含むとの理由による本件判断は慎重になされなければならない旨述べている。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号の趣旨は、ある者が自己の業務に係る商品又は役務について特定の商標を使用した結果、当該商標(以下「特定商標」という)を通して、その使用者の業務上の信用が蓄積されている状態になっている場合、他人による他の商標(以下「他者商標」という)の使用が、結果として、特定商標に化体されている使用者の業務上の信用、あるいは、利益を損なうおそれがあると認められるときには、その業務上の信用あるいは利益を保護する観点から、他者商標を、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標に該当するものとして、その商標登録を拒絶するものと定めていると解するのが相当である。
したがって、特定商標に係る商品又は役務と、他者商標の使用に係る商品又は役務が互いに類似しない場合であっても、そのことをもって出所混同のおそれが生じないとすることは、出所混同の範囲を指定商品・役務の類似の範囲に固定化することとなり、特定商標に化体される使用者の業務上の信用が保護されない結果となって、前記の商標法第4条第1項第15号の制定の趣旨に悖ることにもなりかねない。
それゆえ、ある商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かは、特定商標に係る商品と他者商標に係る指定商品・役務間の類否を基準とすべきではなく、特定商標の周知・著名性の程度を基準にして総合的に判断されねばならないというべきであって、本件においては、「POLO商標」の著名性の程度を考察して検討すれば、本願商標が出所の混同を生じさせるとの判断は前記のとおりである。
また、甲第3号証は、「ラルフ・ローレン」の「POLO」、「Polo」、「ポロ」の商標に関する東京高等裁判所の判決(平成2年(行ケ)183号、平成3年7月11日判決言渡)であるが、この判決の内容は当審の判断とほぼ同様のものであって、これをもって請求人の前記主張に妥当性があるということはできない。
さらに、請求人は、商標「ポロ」、「POLO」を含み、本願指定商品と同一又は類似する商品を指定商品とする登録商標が多数存在する旨主張している。
しかしながら、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当すると認定・判断したこと前記のとおりであり、他の登録商標の存在をもって、本願商標が前記法条に該当しないとすることは困難であり、この点に関する請求人の主張は採用できない。
4 結語
以上のとおり、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものといわざるを得ないから、この理由をもって本願を拒絶した原査定の内容は妥当なものであって取り消すことはできない。
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