結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2002−35154(T2002−35154/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第3294970号商標(以下「本件商標」という。)は、「花祭壇」の文字を横書きしてなり、第42類「葬儀の執行」を指定役務として、平成5年1月21日登録出願、同9年4月25日に設定登録され、その後、平成14年5月22日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証(枝番を含む。)を提出した。
1.請求の理由
(1)「花祭壇」の語は、花で飾った葬儀用の祭壇の意味を持つにすぎず、葬儀執行の「役務の提供の用に供する物」の名称である。したがって、この語を普通に用いられる方法で表示した本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
以下に、「花祭壇」の語が、花で飾った葬儀の祭壇を表す語として、本件商標の査定日以前に使用されていた事実を証拠に基いて説明する。
(2)ア.「花祭壇」の形式、使用する花、歴史、沿革等については、1997年11月10日、株式会社三水社発行「亡き人への花−葬儀・法要・墓参の花ガイド」に写真入りで解説されている(甲第1号証、119頁ないし127頁)。同書第126及び127頁によれば、本格的な花祭壇が初めに使われたのは、1967年(昭和42年)10月31日に日本武道館で行われた、吉田茂元総理大臣の国葬であるとし、従来の葬儀という言葉の持つ暗さからの脱却を望んでいる風潮に適合する葬儀用祭壇として大型葬儀から一般家庭の葬儀にまで次第に普及して行ったことが紹介されている。
イ.上記事実を裏付けるものとして、1993年3月1日、株式会社立風書房発行「ドキュメント現在の葬式事情」(甲第2号証、69頁、71頁、73頁、162頁、163頁)には、「花祭壇」の名称が使用されており、特に162頁及び163頁には、生活協同組合コープこうべの提供する葬儀執行の役務に使用する「祭壇」として「花祭壇」を紹介している。
ウ.本件商標の査定以前に発行された以下の葬儀業界の新聞には、「花祭壇」が使用された葬儀の記事、「花祭壇」の広告、「花祭壇」に関する書籍の広告が掲載されている(甲第3号証ないし甲第6号証(枝番を含む。))。
エ.請求人は、自らの提供する葬儀執行の役務に使用する祭壇の名称として「花祭壇」を古くから使用し、現在も使用している。これは、請求人の発行する事業案内に関するパンフレット等の印刷物、及びインターネット上のホームページに見られる(甲第7号証)。
また、請求人と同様に、業務案内に関するホームページに「花祭壇」を使用している葬祭業者は数多くある(甲第8号証の1ないし12)。
2.答弁に対する弁駁
(1)商標法第3条第1項各号は、標章自体が自他役務(又は自他商品、本件においては、以下役務についていう。)を識別する機能を持っているかどうかを問題としているのであって、第3号から第5号までに該当する商標であっても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるとして、商標登録を受けることができるのは第3条第2項の問題である。
答弁の理由の2.ないし4.は、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当しないという主張なのか、それとも第3号に該当するが、使用によって自他役務識別力を獲得しているという主張なのか明確でなく、請求人の主張に対する反論になっていない。
(2)そこで、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当し、また、同条第2項に該当しないことを明らかにする。
第3号は、役務に関し、「提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」と規定する。本件の場合、「花祭壇」は、役務の「提供の用に供する物」、すなわち、葬儀の執行に供せられる「花で飾った祭壇」を表示する標章であることは標章自体から明らかである。
また、甲第1号証ないし甲第6号証(枝番を含む。)には、「花祭壇」の語が「花で飾った祭壇」の意味で、本件商標の査定前に広く使用され、需要者に知れわたっていた事実が明らかにされているから、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当することに疑う余地はない。特に、甲第5号証の36ないし40、43ないし52、56ないし60が示すように、「花祭壇のすべて」と題する書籍シリーズさえ、査定前に出版されていた。
ある標章が第3号に該当しないというためには、標章自体が原始的に「役務の提供の用に供する物」等を表示する標章でないことを主張し、立証することを要するが、被請求人は何らそのような主張、立証をしていない。
(3)被請求人は、本件商標は、商標法第3条第2項の「使用による識別性」を査定時に獲得していたと主張しているように見える。しかしながら「使用による識別性」を得るためには、その標章が商標として登録を受けようとする者によって、現実に独占的にかつ継続的に使用されている事実を明らかにするとともに、それによってその商標を使用している自己の役務を他の役務と識別することが、その商標に具備されていることを証明しなければならない(網野誠著、「商標」第4版、168頁15行〜最終行参照)。
本件の場合、本件商標が現実に独占的かつ継続的に使用されていた事実はなく、以下のように、被請求人以外の多数の者によって使用されていたことは証拠によって明らかである。
株式会社牧野総本店(甲第3号証)、株式会社西日本互助センター、東都祭典、多摩式典(甲第4号証の1ないし3)、稲垣葬儀社、児玉葬儀社(「青山斎場サービス」の誤記と認める。)、株式会社新和商会、有限会社生花千草園、株式会社晃聖札幌善光社、株式会社東洋経済研究所(甲第5号証の1ないし3、13、16、18、20、21、23、25ないし27、29ないし34、36ないし40、43ないし60)、群馬県渋川市の葬儀社、須藤花店、網代屋葬儀社、浦和市内生花組合、中村葬儀社、高知県葬儀業協同組合(甲第6号証の1ないし4、9、16)。
以上のように、「花祭壇」標章の使用は、被請求人及びその暗黙の許諾を受けた中央花壇による独占的使用ではないから、需要者が本件商品(「本件商標」の誤記と認める。)を被請求人の提供する役務を表す商標として他の者の提供する役務から識別することができる状況になかったことが明らかである。
さらに、前記したように、商標法第3条第2項の適用を受けるためにはその商標が自他商品(役務)の識別力を有することを査定時までに証明することを要する。本件ではそのような証明がなされていないから、法第3条第2項の適用はない。また、乙第1号証ないし乙第105号証がこれに代り得るものでもない。
乙第4号証ないし乙第104号証は、被請求人が納品先の葬儀業者に宛てた請求書である。このような請求書は一般需要者の目に触れるものではないから、そこに「花祭壇」の記載があったとしても、本件商標が使用により識別力を有するに至ったことの証明にはなり得ない。乙第1号証ないし乙第3号証(パンフレット)及び乙第105号証(宣誓供述書)についても同様である。
3.むすび
以上述べたとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当することは明らかである。
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第105証を提出した。
1.本件商標は、株式会社中央花壇(甲第15号証の4ないし12、14、15、17、19、22、24、28、35、42、53ないし55、甲第6号証の3、5ないし8、10ないし15、17ないし19の広告主。なお、上記「甲第15号証」とあるのは、「甲第5号証」の誤記と認める。また、上記「株式会社中央花壇」は、以下「中央花壇」という。)の代表者である宮沢桂三氏の宣誓供述書(乙第105号証)にて宣誓されているように、中央花壇に、茨城県つくば市山中492−2(現住所)の水城佑幸氏が昭和48年ころから同50年ころまで勤務していたとき、葬儀の執行の業務に「花祭壇」の標章を使用することを発案し、これを中央花壇に対して使用することをすすめたところ、中央花壇は、この使用を承諾し、本日に到るまで「花祭壇」標章を葬儀の執行の業務について継続して使用している。上記水城佑幸氏は、昭和50年ころ中央花壇を退職したが、自己が発案・選択した「花祭壇」の標章を葬儀の執行に当たり、この葬儀の執行を受ける者の利用に供する物に付して商取引を継続して行い、その後、昭和59年ころに被請求人である株式会社花創美を設立した後も、被請求人に「花祭壇」標章の使用を事実上許諾し、被請求人は、本日に到るまで継続してこれを葬儀の執行の業務について使用しているのである。
すなわち、「花祭壇」標章は、昭和50年ころから、被請求人の創立者によって葬儀の執行の業務について使用され、被請求人の創立後は、被請求人が引き続き、葬儀の執行の業務について使用されている。そして、その間、需要者はこの「花祭壇」商標を葬儀の執行の業務について単に品質表示であると誤認しているものはいない。本件商標は、特定人の業務に係る商標として認識されているのであり、需要者には、葬儀の執行の業務と本件商標との相対的な関係から、本件商標の有する個性と相俟って、必然的に本件商標が葬儀の執行の業務に関し、特別顕著性を有する標章として認識されていることは当然である。
2.本件商標は、前述したように、永年に及んで使用してきた結果、葬儀の執行の業務について、仮に品質表示の標章にすぎなかったものと仮定しても、少なくとも本件商標の出願時には需要者間に、特定の者の標識として認識されていたことは当然である。
すなわち、本件商標は、当初は、昭和50年以前より使用許諾者である前記中央花壇によって使用されて今日に及んでおり(乙第1号証ないし乙第104号証)、その間中央花壇は、甲各号証に示すように刊行物に宣伝広告されている(前述した甲各号証を被請求人の利益に援用する。)。
さらに、前述したように、本件商標は、被請求人の創立者及び被請求人も永年に及んで使用されてきたのであり、その間、同業務において他人の標章と誤認混同されたことはない。
3.本件商標の使用の事実を証するものとして提出した上記乙第4号証ないし乙第104号証は、被請求人の花創美サービス網(乙第3号証)中の単に一店の有する大量の請求書中から各年毎であって、かつ、任意の月を選択し、その中から任意に抜粋したものを提出したものにすぎないのである。
なお、乙第1号証は、被請求人が昭和60年ころに作成したパンフレットであるが、このパンフレット作成当時から使用して「葬儀の執行」の業務について平成9年ころまで継続して使用していた。また、乙第2号証は、本件商標が平成9年4月に登録された当時、被請求人が上記乙第1号証のパンフレットの表紙に記載されている「花祭壇」の商標の後に登録商標の記号であるところの正円で囲んだ「R」の記号(以下「丸R」という。)を追加表示して印刷したものであり、その余の表示は乙第1号証と全く同一であるが、本件商標の登録後は、乙第2号証のパンフレットを用いて今日に到るまで継続して葬儀の執行の業務の提供に当り、その提供を受ける者の利用に供するものに本件商標を付して販売していた。さらに、乙第3号証は、被請求人は、花創美サービス網として、松戸花創美、船橋花創美、茨城花創美、野田花創美、花小金サティ一店、千葉姉妹店、八千代姉妹店、東京花創美を構成して、本件商標の登録前より本日に至るまで本件商標を「葬儀の執行」の業務について継続して使用しているのであるが、上記花創美サービス網のうちの東京花創美のパンフレットとして、本件商標の登録以前に大量に印刷した関係上、今日に到るまでこのパンフレットを用いて葬儀の執行の業務についての取引をしている。
乙第4号証ないし乙第104号証は、被請求人が顧客に宛てた平成6年1月31日から同14年2月20日までの請求書である。
4.叙上のとおり、本件商標は、本件商標の登録出願日以前より今日に至るまで、被請求人及びその創立者並びに使用許諾者である中央花壇によって継続して使用されており、しかも、本件商標自体の有する個性、すなわち、葬儀の執行の業務との関連において、仮に本件商標が普通名称と思われるものと仮定しても、取引者間においては商標として使用されているのである。そこで、普通名称であると認定するためには、特に本件商標の場合は希望的な観察では足りないのであり、少なくとも一般需要者が普通名称であると認識することが必要であって、単に、刊行物等において普通名称であるかのような記事の所在のみでは足りないのであり、かつ、本件商標が葬儀の執行の業務について普通名称として一般的に使用されている事実の存在自体も必要となるのである。しかるに、請求人は、前記要件を満足し得るに足る証拠を提出していない。
1.甲第1号証ないし甲第6号証(枝番を含む。)によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)甲第1号証(株式会社三水社、1997年11月10日第一刷発行「亡き人への花−葬儀・法要・墓参の花ガイド」119頁ないし127頁)の「花祭壇」の項には、花祭壇の一例として写真が掲載され、その説明文に「仏式に限定されない自由な形式の花祭壇 文字どおり花に埋もれた印象。」、「こぢんまりしたしつらえで自宅葬に適した花祭壇 故人が女性ということもありカラフルな花が使われている。」、「半輿を最上段に据えた花祭壇 祭壇全体を白い輪ギクで統一している。」、「キリスト教式葬儀の花祭壇 主な花材:クロス=カーネーション、コチョウラン、デンファレ」、「燭台や香炉などの祭具を含め、青竹を多用した花祭壇 全体を白い輪ギクでまとめ、遺影の右上部飾りはカトレアなど。」の記載がある。
また、花祭壇で使用される花の説明とともに、花祭壇が使われるようになった時期の説明として、「『本格的な花祭壇は、吉田茂元総理の国葬で初めて使われたのではないでしょうか。・・・吉田さんはクリスチャンでしたから、仏葬や神道の祭壇は使えない・・・協議に協議を重ねた末に花祭壇が造られたのです』ちなみに、・・・吉田茂首相は1967年(昭和42年)10月20日没、同月31日に戦後初めての国葬として日本武道館で葬儀が行われました。」の記載がある。
(2)甲第2号証(株式会社立風書房、1993年3月1日第二刷発行「ドキュメント/現代お葬式事情」)には、「花祭壇の目に眩しい鮮やかさ」、「花祭壇など大がかりなものを花屋が作った場合は、・・・」、「関西地方に独特の花祭壇。山の斜面のように、上後方から下前方までスロープ式になっており、その一面に白菊がベタ挿しに挿されている。あるいは、社葬などに使う『築山』と呼ばれるスギの葉を山なりに盛った花祭壇がある。」などの記載とともに、花祭壇の値段等の記載がある。
(3)甲第3号証(昭和53年7月1日付け現代葬祭新聞)には、「業者の業者による・・・/牧野総本店相談役・・の葬儀」の見出しのもと、「葬儀社の葬儀ということで、・・・祭段は写真のような“花祭壇”で祭壇を花で覆ったかたち。」の記載とともに、「花祭壇」の写真の掲載がある。
(4)甲第4号証の1ないし3(日本葬祭新聞)
ア.甲第4号証の1(昭和52年9月1日付け)には、「『冠婚葬祭博』開く」の見出しのもと、「八月二十日から三日間、福岡市中央区天神のスポーツセンターで、・・・(株)西日本互助センターが創立十周年記念行事として行ったもので、・・・三日間で一万九千人もの入場者で賑わった。」、「仏壇や花祭壇、有名人のお墓写真展、仏事のしきたり紹介などの『葬コーナー』・・・ユニークな企画で、老若男女を問わず多くの人の足を止めるものとなった。」、「菊の花七百余本を使った花祭壇」などの文字とともに、「心やすらぐ『花祭壇』全景」として写真の掲載がある。
イ.甲第4号証の2(昭和53年8月1日付け)には、「柴田錬三郎氏死去」の見出しのもと、「黒幕と白菊一色の花祭壇」、「請負業者の東都典礼では『・・今日のような簡素な花祭壇の依頼を多く受けます』」などの記載がある。
ウ.甲第4号証の3(昭和53年10月1日付け)には、「津田青楓氏の葬儀行なわる」の見出しのもと、「会場中央に半円型の花祭壇(白菊)が組まれ、・・」、「請負業者の東都典礼」などの記載がある。また、「中平康氏(映画監督)逝く」の見出しのもと、「白菊の花祭壇」、「請負業者、小金井の多摩式典」などの記載がある。
(5)甲第5号証の1ないし60(祭典新聞)
ア.甲第5号証の1(昭和56年4月20日付け)には、「異色の『文芸葬』」の見出しのもと、「白菊の花祭壇」、「施行業者は稲垣葬儀社」などの記載がある。
イ.甲第5号証の2(昭和56年8月20日付け)には、「無宗教葬で」の見出しのもと、「白菊にカトレヤが点々と朱を散らした花祭壇」、「施行は青山斎場サービス」などの記載がある。
ウ.甲第5号証の3(昭和59年7月15日付け)には、「花祭壇設営がラクラク/軽くて丈夫/新和商会」の見出しのもと、「一面幕のような豪華な花祭壇。・・・パイプの等間隔に並んでいる花差し口に生花をさし込むだけで花祭壇が出来あがる。」の記載がある。
エ.甲第5号証の4ないし12、14、15、17、19、22、24、28、35、42、53ないし55(昭和60年6月15日から平成4年7月10日にかけて発行されたもの)には、「株式会社中央花壇」の文字とともに、「営業品目」として「花籠(若しくは「花篭」)・花祭壇/スロープ花祭壇/ミニ庭園」と記載した広告がある。
オ.甲第5号証の13、16、18、20、23(昭和61年7月15日から同63年7月15日にかけて発行されたもの)には、「(有)生花千草園」の文字とともに、「各種 花祭壇/都内有名斎場御用承って居ります」と記載した広告がある。
カ.甲第5号証の21(昭和63年2月15日付け)には、「斬新、祭壇に鷲をデザイン」の見出しのもと、「(株)晃聖札幌善光社」が執行した葬儀において、「施主の意向」は「思い切った洋風花祭壇で飾りたいとの希望だった」旨の記載がある。
キ.甲第5号証の25ないし27、29ないし34、36ないし40、43ないし52、56ないし60(平成1年4月15日から平成4年12月10日にかけて発行されたもの)には、株式会社東洋経済研究所、祭典新聞・出版部の発行に係る「花祭壇のすべて」なる題名の書籍(第1巻から第6巻まで)の広告の掲載があり、「業界待望のアルバム版“生花”特集」、「祭壇や飾りのすべてを“生花”で特集しました」などの説明文の記載がある。
ク.甲第5号証の41(平成2年6月15日付け)には、「クレリ葬」の見出しのもと、「クレリ葬の最大の特徴は、その料金体系が極めて明瞭であり、しかも、一般消費者が容易に理解できるかたちで、料金体系の考え方と内容をパンフレットなどに徹底的に明示した点にある。・・・標準型『ともしび(花祭壇)』」の記載とともに、該花祭壇の写真の掲載がある。また、「クレリ葬」に関し、「生協と兵庫県葬祭事業協同組合連合会との業務提携によって実現したもの」との記載がある。
(6)甲第6号証の1ないし19(儀典)
ア.甲第6号証の1(昭和58年5月20日付け)には、「シリーズ日本の儀式」の表題のもと、群馬県渋川市の葬儀社「武内」の談話として、「徐々に花祭壇」の見出しにおける記事には、「全国的な傾向として、とくに有名人、知名人の葬儀となると、花祭壇が一般化している。・・・その傾向は徐々にではあっても一般の葬儀にも出てきているようで、いくつかの葬儀式写真にもそれがうかがえる。」の記載がある。
イ.甲第6号証の2(昭和59年2月15日付け)には、「故武見太郎氏」の見出しの記事中に「花祭壇」、「祭壇など諸設営は港区南青山の須藤花店」などの記載がある。
ウ.甲第6号証の3(昭和59年3月15日付け)には、「故石崎利一氏」の見出しの記事中に「花祭壇」、「祭壇等の設置は、葛飾区高砂の網代屋葬儀社」などの記載がある。また、同一紙面上には、「株式会社中央花壇」の文字とともに、「営業品目」として「花籠・花祭壇/スロープ花祭壇/ミニ庭園」と記載した広告がある。
エ.甲第6号証の4(昭和59年9月15日付け)には、「故大沢雄一氏」の見出しの記事中に「花祭壇の設営は、・・・『浦和市内の生花組合が』行ったとのことである。」の記載がある。
オ.甲第6号証の5ないし8、10ないし15、17ないし19(昭和59年10月15日から同61年7月10日にかけて発行されたもの)には、「株式会社中央花壇」の文字とともに、「営業品目」として「花籠・花祭壇/スロープ花祭壇/ミニ庭園」と記載した広告がある。
カ.甲第6号証の9(昭和60年3月15日付け)には、「今回のような花祭壇が徐々に増えていくのではないか、とみる関係者もいる。・・・葬儀の施行業者は・・中村葬儀社」の記載がある。
キ.甲第6号証の16(昭和60年11月15日付け)には、「高知県葬祭業協同組合/共同受注で組合財産ふやす」の見出しのもと、「白菊主体の花祭壇」の記載がある。
2.前記1.で認定した事実を総合すると、「花祭壇」なる語は、「生花を使用して飾り付けをした祭壇」の意を表すものとして、我が国においては、1967年(昭和42年)に、戦後初の国葬であった吉田茂元首相の葬儀に使用されたことを契機として、それ以後、知名人の葬儀に使用され始めたこと、平成元年4月から平成4年12月にかけて、葬儀業者等を対象にした「花祭壇」に関する書籍が第1巻から第6巻まで出版されたことが認められ、一方、吉田茂元首相の国葬を始め、知名人の葬儀で使用された花祭壇が一般の需要者の印象に強く残るであろうことは、疑いの余地はないところであり、加えて、昭和52年8月には、福岡市で開かれた「冠婚葬祭博」で「花祭壇」が一般の需要者を対象に紹介されことが認められ、「花祭壇」の語は、遅くとも昭和60年ころには既に、一般の需要者の間でも上記意をもって知られていたというのが相当である。
そうすると、「花祭壇」の語は、上記「生花を使用して飾り付けをした祭壇」の意を表すものであって、葬儀の一様式、あるいは祭壇の飾り付けの一態様として、本件商標の登録査定日である平成9年2月20日当時には既に、葬儀の執行を提供する業者及びその関連業者の間ではいうまでもなく、一般の需要者の間でも広く認識されていたというべきであるから、「花祭壇」の文字を普通に用いられる方法で書してなる本件商標は、これをその指定役務である「葬儀の執行」について使用しても、格別顕著なものとはいえず、これに接する取引者、需要者は、役務の質、ないし役務の提供の用に供する物を表示したと認識するにとどまるものといわなければならない。
この点に関し、被請求人は、本件商標は、昭和50年ころから今日に至るまで、中央花壇や被請求人等により、葬儀の執行について使用され、かつ、宣伝広告をしているものであり、本件商標の有する個性と相俟って、特定人の業務に係る商標として、需要者に認識されている旨主張し、乙第1号証ないし乙第105号証を提出し、甲第5号証の4ないし12、14、15、17、19、22、24、28、35、42、53ないし55及び甲第6号証の3、5ないし8、10ないし15、17ないし19を援用するので、以下検討する。
3.(1)乙第1号証は、カタログと認められるところ、その表紙には、「哀/カット造園 花祭壇 花かご」の各文字とともに「株式会社花創美」等の文字の表示がある。また、その1頁及び2頁には、「式場にて花祭壇/当店のいきとどいた会場づくりを、おすすめいたします。」、「社葬、合同葬など生花祭壇」、「ご家庭でも花を使って飾り付けができます。」などの文字とともに花で飾られた祭壇の写真の掲載がある。また、5頁には、「花かご」の文字とともに花器に盛られた花の写真の、6頁には、「花束」、「焼香花」、「写真額花」、「写真前飾」、「じか盛ミニ造園」、「枕花」の文字とともにそれぞれの写真の掲載があり、同頁右下の「営業品目」には「花籠/花祭壇/スロープ祭壇/カット造園/室内造園/花束/写真額花/枕花/じか盛生花/じか盛ミニ造園」の文字の記載がある。
(2)乙第2号証は、上記乙第1号証のカタログとその内容をほぼ同じくするカタログと認められるところ、異なるところは、表紙、1頁上段及び6頁の「営業品目」中に記載された「花祭壇」の文字の右下に小さく丸Rを付したことなどである。
(3)乙第3号証は、「東京花創美 仲卸部/営業のご案内」と題するリーフレットと認められるところ、見開き部分には、「葬儀業界にたずさわる専門店ならではの仲卸システムです。/下記品目を卸売りにて承ります。」の表題のもと、その左側と中央上部には「篭花」、「洋花」の文字とともに花器に盛られた花のそれぞれの写真の、また、中央下部には「大規模葬儀の花祭壇も実績のある当社で」の文字とともに花で飾られた祭壇の写真の掲載があり、さらに、右側には「花祭壇を卸売りでかざります。葬儀業者を同時に派遣しますので安心です。」の文字とともに「例1号 花祭壇(20万円上代)/葬儀諸費用・斎場使用料別」、「例2号 花祭壇(30万円上代)/葬儀諸費用・斎場使用料別」として、花で飾られた祭壇のそれぞれの写真の掲載がある。該リーフレットの裏面には、「営業品目」として「各種切花/特に葬儀に必要とされる花材を専門にご用意しています。/白菊 数量豊富/篭花・花祭壇」等の文字、及び「花創美サービス網」として「松戸 花創美」など7店舗の名称の記載がある。なお、乙第1号証ないし乙第3号証の発行日は明らかではない。
(4)乙第4号証ないし乙第104号証は、被請求人がその顧客に宛てた請求書であるところ、その日付は、平成6年1月31日から同14年2月20日までのものである。これら請求書の「品名」欄等には、「額」、「庭」、「看板下」、「御霊灯(左側 庭)」、「焼香花」、「写真まわり」、「ロビー飾り」、「提灯下」、「スロープ札」、「十字架」、「献花」、「花束(墓用)」、「芳名板」、「納棺用」、「火葬場用」、「ステージ花」、「生花」、「造園」、「スロープ」などの文字と併記されて「花祭壇」の文字の記載がある。
(5)乙第105号証は、平成14年7月24日付けの中央花壇の代表取締役である宮沢圭三の「宣誓供述書」であるところ、その内容は、被請求人の創設者である水城佑幸が中央花壇に勤務していた昭和48年ころから50年ころに、当時使用していた「生花祭壇」を、「花祭壇」とすることを提案し、以来中央花壇は、葬儀の執行について該「花祭壇」を水城佑幸の暗黙的承諾の下に現在まで使用してきた。また、水城佑幸が設立し、その業務一切を譲り受けた被請求人は、葬儀の執行について「花祭壇」を現在まで使用している、というものである。
(6)前記(1)ないし(5)並びに甲第5号証の4ないし12、14、15、17、19、22、24、28、35、42、53ないし55及び甲第6号証の3、5ないし8、10ないし15、17ないし19を総合すると、被請求人及び中央花壇は、葬儀の飾り付けに使用する花材を専門に取り扱う業者であり、葬儀業者等からの依頼を受けて、自己の主たる業務である生花を葬儀業者等に卸値で販売するとともに、葬儀会場等において、花を使用した祭壇づくり、各種葬儀用生花の備え付け、あるいは花や草木を利用したミニチュアの日本庭園の設営などを行っているものと推認することができる。
そして、中央花壇は、昭和59年3月ころより、祭典新聞、儀典といった葬儀に関する業界紙に、「株式会社中央花壇」の文字とともに、「営業品目」として「花籠・花祭壇、スロープ花祭壇、ミニ庭園」の文字を表示して、比較的頻繁に宣伝広告していたことが認められる。
しかしながら、前記認定のとおり、「花祭壇」は、「生花を使用して飾り付けをした祭壇」を意味し、我が国における葬儀の一様式を表示するものとして、1967年(昭和42年)に行われた吉田茂元首相の葬儀を契機として、葬儀業界で使用され始め、昭和52年ころから中央花壇以外の祭壇の設営者等により提供されていたことが認められる。そして、中央花壇が宣伝広告をし始めた昭和59年ころには、この種役務の業界では広く認識されていたと認められるのみならず、中央花壇が比較的頻繁に宣伝広告した昭和60年ころには、「花祭壇」の語は、一般の需要者の間にも知られていたと認め得るところである。
また、中央花壇が宣伝広告した昭和61年7月15日、同62年1月15日、同62年7月15日付けの祭典新聞には、中央花壇以外の業者である「(有)生花千草園」も同時に「花祭壇」の文字を表示して宣伝広告していた事実が認められる。
加えて、中央花壇が業界紙において宣伝広告した「花祭壇」の文字は、「花籠(若しくは「花篭」)・花祭壇/スロープ花祭壇/ミニ庭園」の文字とともに表示され、乙第1号証ないし乙第3号証の写真及びその説明文並びに「営業品目」に表示された「花籠/花祭壇/スロープ祭壇/カット造園/室内造園/花束/写真額花/枕花/じか盛生花/じか盛ミニ造園」の文字との関係からすると、葬儀に関する役務の提供の用に供する物、若しくは提供する役務の質・役務の方法等を表示したと理解されるにとどまるものであり、中央花壇が宣伝広告を始めた時期には、既に「花祭壇」の語が「生花を使用して飾り付けをした祭壇」を意味するものとして、葬儀に関連する取引者、需要者の間に広く認識されていた実情等を併せ考えると、自他役務の識別標識たる商標を表示したものとは認識し得ないものというべきである。
さらに、被請求人が発行した請求書からは、平成6年ころから顧客の注文に応じ、花祭壇に用いられる花の販売、花祭壇等の設営を行ったことが窺えるとしても、前記した葬儀に関連する業界の取引の実情及び一般の需要者の認識の程度を考えれば、被請求人が使用する「花祭壇」の表示は、本件商標の登録査定時までに、これより常に被請求人の提供に係る葬儀の執行であることをその需要者に想起させる程には至っていなかったものといわざるを得ない。
そうすると、中央花壇及び被請求人の使用に係る「花祭壇」は、昭和59年ころより使用されていたとはいえ、その使用は、自他役務の識別標識としての機能を発揮する態様のものとはいえないものであるから、その広告宣伝をもって、被請求人の使用に係る「花祭壇」が被請求人の業務に係る役務を表示するものとして、その需要者に認識されていたということはできない。
なお、被請求人は、本件商標は、昭和50年ころから今日に至るまで、中央花壇や被請求人等により、葬儀の執行について使用されていた旨主張し、乙第105号証を提出するが、本件商標を昭和50年ころから使用していることを立証する証拠は提出されていない。
4.以上のとおり、本件商標は、その登録査定時において、その指定役務である「葬儀の執行」の分野の取引者、需要者の間で役務の質、ないし役務の提供の用に供する物を表示するものとして、普通に使用されていたものというべきであるから、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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