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Trademark Appeal Case

複合商標の要部と混同のおそれ

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2002−90260(T2002−90260/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4537578号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

登録第4537578号商標(以下「本件商標」という。)は、商標の構成を後掲(1)のとおり「DURA-ACE」の文字を横書きしてなるものであり、第18類「かばん類」を指定商品として、平成12年11月16日に登録出願され、平成14年1月18日に商標権の設定登録がされたものである。

2 登録異議申立の理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に該当するとして、甲第1号証ないし同第75号証を提出し、その登録は取り消されるべきである旨次のとおりに述べている。

(1) 商標法第4条第1項第10号について

本件商標は、申立人の商標として広く一般に知られている商標「ACE」をその一部に含む商標であり、かつ、その指定商品「かばん類」は、引用商標の指定商品と類似するものである。

(2) 商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、その構成中に「ACE」の文字を有してなり、全体として一体のものとして把握されなければならない特別の事情はないものである。また、引用商標をはじめ、「ACE」の文字からなる商標は、申立人の業務に係る商品「かばん類」を表示するものとして周知・著名な商標であるから、本件商標と引用商標は類似の商標である。さらに、本件商標の指定商品「かばん類」は、引用商標の指定商品と類似するものである。

(3) 商標法第4条第1項第15号について

本件商標は、申立人の著名な商標「ACE」をその一部に含む商標であるから、これをその指定商品に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。

3 本件商標に対する取消理由

本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標を商標法第4条第1項第15号に該当するものとして商標権者に対して通知した取消理由は、次のとおりである。

(1) 申立人提出に係る証拠によれば、申立人であるエース株式会社は、1940年の創業以来かばんを製造しており、1963年に商号を現商号に変更し、「ACE」の文字からなる商標を採択し、長年に亘って使用していること(甲第3号証及び同第4号証)。

また、申立人は、「鞄・袋物産業年鑑」(甲第5号証ないし同第7号証)の「全国主要鞄卸売業者ランキング」で、昭和62年(1987年)度から平成11年(1999年)度まで常に第1位にランクされていたこと。そして、関連会社である株式会社エースインターナショナル及びエースラゲージ株式会社は、「全国主要鞄メーカー売上高ランキング」などで上位にランクされていたこと。

さらに、申立人の「ACE」商標には、後掲(2)に示す「ACE」の文字からなる登録第1778465及び後掲(3)又は後掲(4)に示す「ACE」の文字を含む登録第2709918号商標及び同第2709919号商標など「ACE」の文字あるいは「ACE」の文字を中核とする商標(以下、これらを一括して「引用商標」という。)が随時使用されていることがそれぞれ認められる(甲第3号証、同第4号証及び同第8号証ないし同第60号証)。

以上の事実を総合すれば、引用商標は、本件商標の登録出願の時には、申立人の業務に係る商品「かばん」を表す商標として需要者の間に広く知られ著名性を獲得していたものといわなければならない。

(2) そこで、本件商標をみると、本件商標はその構成後掲(1)とおり、「DURA」の文字と「ACE」の文字とがハイフン「-」を介して、「DURA-ACE」と表されているものであるところ、構成後半の「ACE」の文字部分は、引用商標の主要な「ACE」とその文字綴りを同じくし、かつ、そのレタリング手法(文字の書き方)もゴシック風に表された各字の角や先端部における差、及び「E」の幹線が上横線と中横線の間がカットされているか否かの差異はあるものの全体として類似した手法により描かれたものであって、その外観・印象は極めて近似するものである。そして、本件商標は、意味上においてその構成を常に一体不可分のものとして把握すべき格別の事情は存しない。

そうすると、申立人の業務に係る商品「かばん」を表す商標として需要者の間に広く知られた引用商標の主要部と近似する文字を有する本件商標は、これをその指定商品(かばん類)に使用した場合、これに接した取引者、需要者はこれより直ちに引用商標を連想、想起し、該商品を申立人又は申立人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同するおそれが少なからずあったとみるのが相当である。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ない。

4 商標権者の意見

上記3の取消理由に対し、商標権者は次のように意見を述べ、乙第1号証ないし同第14号証を提出した。

(1) 申立人の提出に係る会社案内(甲第3号証ないし同第4号証)、「鞄・袋物産業年鑑」の「全国主要鞄卸売業者ランキング」の写し(甲第5号証ないし同第7号証)、各種新聞及び雑誌等の広告欄の写し(甲第8号証ないし同第60号証)の証拠に鑑み、取消理由で述べるように申立人が1963年現商号に変更し、「ACE」の欧文字からなる商標を採択して、長年申立人の業務に係る商品「かばん」に使用し、登録第1778465号商標、同第2709918号商標、同第2709919号商標等の「ACE」の欧文字からなる文字商標が申立人の業務に係る「かばん」について取引者・需要者において広く認識されている商標であること、及び申立人の業務に係る「かばん」と本件商標の指定商品が同一ないしは類似することは商標権者も認めるところである。

しかしながら、申立人の商標として周知なのは、「ACE」の欧文字のみからなる文字商標であり、取消理由において引用商標として述べる「ACE」の文字を中核とする商標も、その片仮名文字「エース」又は図形との組み合わせの商標であり、他の文字との組み合わせに係る文字商標ではない。したがって、本件商標のように欧文字「ACE」が他の語と組み合わさり一連一体となった造語商標が本件指定商品に使用されるとき、あたかも申立人の業務に係る商品、あるいは同社と何らかの関係ある者の商品であるかのごとく認識され、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあったとの認定には承服することができない。

(2) 引用商標は、取消理由でも述べているように「ACE」の文字商標あるいは「ACE」の文字を中核とする商標であるが、上記のごとくいずれも文字部分は「ACE」欧文字のみからなり、他の文字との組み合わせに係る文字商標ではない。

ところで、「ACE」という話は、「トランプのエース」から転じて「名手、名人」、「優秀な、一流の」の意味を有する英単語であるが、わが国においてもその片仮名文字「エース」の語は、最高、最上等の意味を有する外来語として一般に広く親しまれており、「ACE」の語は、業界においても商品・役務を品質誇称する表示として最も普通に使用されている語の一つであり、識別力の非常に弱い言葉である。

(3) 本件商標は、「DURA」と「ACE」がハイフンにより組み合わされた構成よりなるが、これらは同書、同大で全体としてまとまりよく表されており、「デュラエース」または「デューラエース」の称呼も格別冗長ではないため一連一体の称呼として捉えられるのが自然である。また、たといハイフンにより分断して捉えられるとしても、「ACE」の文字部分は上述のとおり一般に「最高、最上」の意味を有し単独では識別力の弱い部分であるため、本件商標の要部はなんら意味を有さない「DURA」の部分であり、本件商標から「デュラ」または「デューラ」の称呼が生じ得るが、「ACE」の部分は独立して認識されるべき商標の要部とはなりえない。したがって、本件商標を指定商品に使用した場合、引用商標が本件商標の出願時申立人の商品「かばん」の商標として取引者・需要者の間において広く認識されていたとしても、その商品の出所について混同するおそれはまったくなかったというべきである。

(4) 商標審査基準〔改訂第7版〕には、商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であるかどうかの判断にあたって考慮するべき事項の一つとして「他人の標章が創造標章であるかどうか」という点が挙げられている。しかしながら、本件において引用商標とされる「ACE」の欧文字商標は上述のとおり「最高、一流」を意味する英単語で取引者が商品の品質を誇称するときに使用する最も一般的な言葉の一つであり、権利者の創造商標ではない。したがって、引用商標は、本来識別力の弱い商標であり、その混同が生じる範囲は非常に狭いというべきである。

(5) 本件商標は、上記のごとくその構成中「ACE」の部分は識別力の弱い部分であるから、本件商標からあえて「ACE」のみを抽出して判断するのは妥当ではないというべきである。特に本件商標は「DURA-ACE」の各欧文字が全く同じ書体、同じ大きさで表されており、また「DURA」の「A」の文字と「ACE」の「A」の文字が同書同大でハイフンを介して並んで表示されていることは本件商標の印象を特徴付けているものであり、本件商標は引用商標との比較においても全体として判断されるべきであって、両者の外観・印象は全く異なるものであるから、本件商標をその指定商品(かばん類)に使用した場合、引用商標とその商品の出所について混同を生ずるおそれは全くなかったというべきである。

(6) 以上述べたことは、指定商品「かばん類」について、引用商標以外に「ACE」ないしは「エース」の文字を含む商標が、異なる権利者により多数登録されている事実からも認められるべきである(乙第6号証ないし同第12号証)。また、申立人により本件と同様の異議申立がなされたが、申立人の引用商標が周知著名であったことが認められたものの出所について混同が生じるものではないとの判断がなされ、各々異議理由なしの決定及び登録維持の決定がなされたものであることは特筆すべきである(乙第13号証及び同第14号証)。

(7) 以上のとおり、本件商標は、引用商標と出所混同を生じさせるおそれのあったものではなく、商標法第4条第1項第15号には該当しないものである。

5 当審の判断

本件商標についてした取消理由の通知(上記3)は妥当であって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわざるを得ない。

ところで、商標権者の述べる意見は、大旨、本件商標の構成が同書、同大で全体としてまとまりよく表されており、その称呼も格別冗長ではないため一連一体の称呼として捉えられること、また、たといハイフンにより分断して捉えられるとしても、「ACE」の文字部分は一般に「最高、最上」の意味を有し単独では識別力の弱い部分であるため、本件商標の要部は「DURA」の文字部分であって、本件商標から「ACE」の文字部分は独立して認識されるべき商標の要部とはなりえないことから、引用商標が本件商標の出願時申立人の使用に係る商品「かばん」の商標として取引者・需要者の間において広く認識されていたとしても、本件商標をその指定商品「かばん類」に使用した場合において、その商品の出所について混同するおそれはなかったというべきであると述べている。

しかしながら、以下に述べる理由により、その意見は採用の限りでなく、先の認定を覆すことはできない。

(1) 商標権者は、「ACE」の欧文字からなる商標が申立人の業務に係る「かばん」について取引者・需要者の間において広く認識されていることを認める一方で、本件商標はその構成中の「ACE」の文字部分が識別力の弱い部分であるから、独立して認識されるべき商標の要部とはなりえない旨述べている。

確かに、「ACE」の語が「最高、一流」を意味するものとして、商品の品質を誇称するときに使用する場合があり、また、申立人の創造商標ではないとしても、取消理由で認定した申立人の「ACE」商標は、後掲とおりそのレタリング手法になるものを含め、スーツケース等のかばんに随時使用されているものであり、引用商標が現に使用されている商品にあっては、申立人の固有の商標と認識されているとみて差し支えないものといえる。

(2) 商標権者は、申立人の商標として周知なのは、「ACE」の欧文字のみからなる文字商標であるのに対し、本件商標は構成各文字が同じ書体、同じ大きさで表されていて一連一体のものとして捉えられるのが自然であるから、本件商標は引用商標との比較においても全体として判断されるべきである旨述べている。

しかし、本件商標は、構成後掲(1)のとおり、「DURA」の文字と「ACE」の文字とがハイフン「-」を介して表されていて、両文字は視覚上自ずと分離して看取されるばかりでなく、意味上においても両文字を常に一体不可分のものとして把握すべき格別の事情は存しないものであって、簡易迅速性を重んずる商取引の実際においては、その一部だけによって簡略して取引に資される場合も決して少なくない。

そして、申立人の業務に係る「かばん」と本件商標の指定商品「かばん類」は同一ないしは類似のものであって、その取引者、需要者を同じくし、これら商品が一般世人に購買される商品であり、その需要者の払う注意力はさほど高いものでないというべきである。

(3) 商標権者は、指定商品「かばん類」について引用商標以外に「ACE」ないしは「エース」の文字を含む商標の登録されている事実、また、申立人により本件と同様の異議申立がなされ、申立人の引用商標が周知著名であったことが認められたものの出所について混同が生じるものではないとの判断がなされた異議決定、さらに、インターネット上で「エース」の語を検索すると、申立人会社の商号だけではなく、さまざまな業界で「エース」が商号としてあるいはその一部として利用されていることを挙げて、引用商標とその商品の出所について混同のおそれはなかった旨述べている。

しかしながら、これら事情をもって、引用商標が本件商標の登録出願の時に申立人の業務に係る商品「かばん」を表す商標として需要者の間に広く知られ著名性を獲得していたことを否定し得ることにはならず、かつ、本件商標中「DURA」の文字が引用商標を凌ぐ程に、申立人以外の商品の出所を強く連想するとの事情ないしその関連性を打ち消すものともいえない。

してみれば、これら乙各号証によって、引用商標とその商品の出所について混同のおそれはなかったというような商取引の実情を具体的に示すものとは認め難く、商標権者の係る主張を直ちに採用することができない。

(4) したがって、引用商標が周知・著名であること、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品が同一ないしは類似のものであること、及びその取引者、需要者を同じくすることの事情を総合的に勘案すれば、本件商標は、構成後半の「ACE」の文字部分が、引用商標の主要な「ACE」とその文字綴りを同じくし、かつ、その書体も全体として類似した手法により描かれその外観・印象は極めて近似するものであり、また、この文字部分が分離して認識されることの少なくない商取引の実際にあっては、本件商標は、これをその指定商品(かばん類)に使用した場合において、これに接した取引者、需要者はこれより直ちに引用商標を連想、想起し、該商品を申立人又は申立人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同するおそれが少なからずあったといわなければならないから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものとした取消理由の認定・判断に誤りはない。

(5) 結語

以上のとおり、商標権者の述べる意見はいずれも是認し得るものでなく、本件商標の登録は前記法条の規定に違反してされたものといわざるを得ないから、その登録は商標法第43条の3第2項により、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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