sokuhyo

Trademark Appeal Case

周知商標と印刷物の混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2002−90634(T2002−90634/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第4574983号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4574983号商標(以下「本件商標」という。)は、平成10年3月2日に登録出願され、別掲のとおりの構成よりなり、第16類「印刷物」を指定商品として、同14年6月7日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立の理由

申立人は、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に違反してされたものであるから取り消されるべきである旨主張し、甲第1号証ないし甲第84号証を提出している。

3 本件商標に対する取消理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)の理由及び提出に係る甲第10号証ないし甲第65号証によれば、申立人は、アメリカ合衆国カリフォルニア州在のカジュアル衣料メーカーであり、1969年(昭和44年)にジーンズショップとして「GAP」を開業以来急成長し、1997年(平成9年)には、日本、カナダ、フランス、ドイツ、イギリスなどに1,900店舗を構え、我が国においても、1995年(平成7年)に、銀座数寄屋橋阪急百貨店に第1号直営店を開店し、現在は全国で139店舗を展開している。また、我が国における平成9年から平成10年1月31日までの「GAP」及び「GAP」を含む「GAPkids」「babyGAP」「GAPSHOES」の1年間の売り上げは約90億9千5百万円であることが認められる。

以上のとおり、「GAP」の文字からなる商標(以下「引用商標」という。)は、申立人が被服、下着、ベルトかばん類等のファッション関連商品に永年使用した結果、我が国において本件商標の登録出願時には、取引者、需要者の間に広く知られていたもの認められる。

また、近年、ファッション雑誌、ファッションに関連する商品カタログ等が多数出版され、ファッション商品の消費者は、ファッション雑誌、商品カタログ等において最新の商品情報を得たり、カタログ販売によって購入することも少なくない事情よりすれば、ファッション雑誌、商品カタログ等の印刷物と申立人らの使用するファッション関連商品とは、需要者を共通にするものであって、相互に関係を有する商品というべきである。

さらに、本件商標と申立人が使用する引用商標とは、「ギャップ」の称呼を共通にするばかりでなく、欧文字の綴りを同じくする類似の商標であるから、本件商標に接する取引者、需要者は、申立人の使用する引用商標を想起、連想するものというのが相当である。

そうとすれば、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用した場合、申立人又は申立人らと経済的、組織的に関係ある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見要旨

前記取消理由に対し、商標権者は要旨次のように意見を述べ、証拠資料として乙第1号証ないし乙第6証を提出している。

(1)前記取消理由通知における認定のうち、本件商標と申立人が使用する引用商標とは、「ギャップ」の称呼を共通にし、欧文字の綴りを同じくする点は認める。

(2)本件商標は、ファッション雑誌の世界的発行社として知られるフランス国のリエゾン・エ・コンベルジャンス社(LIAISON ET CONVERGENCE社、以下「コンベルジャンス社」と称する。)が、1950年頃から使用し、同国において商標権を有していたものである。一方、ジャパン・プランニング・アソシエーション株式会社(Japan Planning Associasion社、以下「JPA」 と称する。)は、我が国において本件商標を正当に使用すべく、このコンベルジャンス社と一手販売契約を交わした(乙1号証)。この契約書の期間は、1986年(昭和61年)1月1日〜1990年(平成2年)12月31日となっており、自動契約更新される旨の条項が存在する。この契約に基いて、JPAは「gap」誌を発行してきた。

その間、コンベルジェンス社は、我が国においても「雑誌」を指定して「GAP」を出願(1987年7月30日)、1993年(平成5年)に登録された権利(商標登録第2580745号)を所有していた(乙2号証)。

JPAは、前記契約の保障の下、我が国においてgap誌を年間10数万部から70万部と多数頒布し(乙3号証)、商標「gap」は、少なくとも平成9年には、JPAの発行するファッション雑誌の題号として業界で周知となっていた。

以上の経緯の如く、商標権者は1986年から契約に基いて使用を継続し、1990年以降も契約の自動更新を続けた状態で行っていたのである。

(3)そして、1998年(平成10年)頃、フランス国のコンべルジャンス社の倒産の報を得たため、登録商標「GAP」の権利の消滅による第三者の登録申請を危惧し、また、JPAの永年の使用による信用の毀損、延いてはそのための業界や需要者の混乱を避けるために、1998年(平成10年)3月2日付にて「株式会社ギャップ・ジャパン」(株式会社ギャップ・ジャパンは、gap誌の企画・編集会社として、JPAの一事業部から新たに発足された法人であり、両社の代表者が同一人である。乙第4号証)名で商標「gap」の出願を行ったものである。

そして、この審査段階で、前記コンベルジャンス社の商標(商標登録第2580745号)が引用されたため、不使用取消審判を請求したところ、2000年(平成12年)10月26日付でこの権利の消滅が確認され(乙2号証)、本件が登録となった(2002年(平成14年)6月7日)ものである。

以上のように、本件登録は正当に行われたものであることを証明するとともに、異議申立人が主張する1997年(平成9年)から1998年(平成10年)には、本件商標権者が取り扱っている「gap」誌はフランス国のコンベルジャンス社の「GAP」ブランドの名声を後ろだてにして日本においても著名となっていたのであり、決して、カジュアル衣料メーカーである米国のギャップ・インコーポレーテッド社の行為によって著名になったものではない。

(5)仮に、カジュアル衣料に関して「GAP」が有名になっていたとしても、本件の指定商品「印刷物」たるgap誌に関しては、上記JPA及びフランス国のコンベルジャンス社の業績によって有名になっていたのであるから、需要者は両者を明確に区別し、商品の出所について誤認混同を起こすことはありえない。

すなわち、株式会社ギャップ・ジャパンは、永年の間一貫してパリ・ミラノ・ロンドン等、ヨーロッパのデザイナーによるファッション雑誌について商標「gap」の使用を続けており(乙5号証)、これらに掲載された衣料のデザイン・色調等は、申立人が使用する「アメリカン・カジュアル」と明らかに一線を画している。かかる相違は、ファッションに特に詳しくない一般需要者においても一目瞭然である。まして、本件指定商品の主たる需要者と考えられるファッション雑誌を講読する流行に敏感な女性等において、商品の出所の混同が生じる余地はない。雑誌と衣料ではもともと商品の内容が全く異なる上に、商品の出所の混同についてかかる拡大解釈をすることは、商標権者の権利を不当に制限するものである。

また、商品の需要者が共通するとしても、需要者は雑誌の出版元とそこに掲載された製品のメーカーを区別して考えるのが通常であり、ファッション雑誌の出版元とそこに掲載された衣料関連商品販売者が常に相互に関係を有すると考えるのは、取引の実情に沿わない不自然な解釈である。

したがって、商品の出所について混同を生ずるおそれはなく、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(6)さらに、上述のような経緯の下、「gap」誌が有名、著名になっていることは出願人が十分に認識しており、決してカジュアル衣料メー力ーたるギャップ・インコーポレーテッド社の信用にフリーライドする必要はない。

したがって、不正の目的があって出願したのではないことは明らかであり、商標法第4条1項第19号に該当することもない。むしろ、ファッション雑誌の世界的発行社として知られるフランス国のコンベルジャンス社の業務上の信用こそが我が国でも法的保護に値するものだったということができ、その倒産前から同社と我が国における一手販売契約を締結し、本件商標を継続して使用してきた商標権者株式会社ギャップ・ジャパンの業務上の信用こそ、商標登録により保護されるべきなのである。

(7)以上詳述した通り、本件商標「gap」は、商標権者がフランス国における著名商標の商標権者との契約に基づいて永年にわたり使用し、我が国でも出願時において既に周知性を獲得していたものである。したがって、申立人の商標と商品の出所の混同が生じる余地がないことは明らかである。

よって、本件商標は商標法第4条1項15号に該当するものではない。

5 当審の判断

(1)本件商標は、前記のとおりの構成からなるところ、申立人が、その業務に係る商品「被服、下着、ベルトかばん類」等のファッション関連商品に使用している「GAP」(以下「引用商標」という。)と大文字と小文字の相違があるものの、同一の綴りからなるものであり、「ギャップ」の称呼を共通にするものである。

(2)商標権者が意見書において主張及び乙各号証についてみるに、以下の事実が認められる。

ア 商標権者は、「本件商標は、ファッション雑誌の世界的発行社として知られるフランス国のコンベルジャンス社とJPAが、1986年(昭和61年)1月1日〜1990年(平成2年)12月31日の期間(但し、自動契約更新される旨の条項が存在する。)一手販売契約を交わし、この契約に基いて、JPAは「gap」誌を発行してきたこと。

イ gap誌の年間頒布部数をみるに、1990年(平成2年)は、gap1、gap2、gap eyeを併せると約423.000部、同じく1991年(平成3年)は約227.000部発行されており、1997年(平成9年)は、gap1、ギャッププレス1、ギャッププレス2を併せ約170.000部、1998年(平成10年)は、約180,000部発行されていたこと。

ウ コンべルジャンス社が倒産したことにより、1998年(平成10年)3月2日付で、JPAの関連会社である商標権者は、本件商標を出願し、この審査段階で、前記コンベルジャンス社の登録商標が引用されたために、不使用取消審判を請求し、この権利が消滅した後に登録となったこと。

エ gap誌は、パリ・ミラノ・ロンドン等ヨーロッパの世界のトップデザイナーによるファッション雑誌であり、最新のモード、プレタポルテ、ファッションショー、コレクション等を内容とするファッション雑誌(以下「ファッションコレクション雑誌」という。)であり、一般のファッション雑誌とは内容を隔するものであること。

以上の事情及び申立人の主張を総合勘案すれば、申立人が我が国においてその業務に係る商品「被服類」について引用商標の使用を開始(1996年)する以前の1990年より、本件商標は、商標権者の関連会社(JPA)によって相当数頒布された「ファッションコレクション雑誌」について使用され、遅くとも本件商標の出願時までには、ファッション関連業界あるいは世界のトップファッションに興味を有する者において広く知られていたものといわなければならない。

また、該「ファッションコレクション雑誌」と申立人が引用商標を使用する商品「カジュアル衣料」とは、取引者、需要者を異にするものである。

してみれば、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用したときに、申立人又は申立人らと経済的、組織的に関係ある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものということはできない。

さらに、本件商標は、商標権者の関連会社であるJPAが、ファッション雑誌の世界的発行社として知られるコンベルジャンス社と一手販売契約を交わし使用してきたが、1998年(平成10年)頃、コンべルジャンス社が倒産したことにより、商標権者が出願、登録を受けたものであるから、不正の目的をもって使用するものということもできない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に違反してされたものと認めることはできないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。