sokuhyo

Trademark Appeal Case

商標の複数形と同一性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2001−30430(T2001−30430/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4134768号商標の指定商品中第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電気アイロン,電気式ヘアカラー,電気式ワックス磨き機,電気掃除機,及び電気ブザー並びにこれらに類似する商品」についての登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4134768号商標(以下「本件商標」という。)は、「ドリームアート」の片仮名文字を横書きしてなり、平成8年11月21日に登録出願、第9類「理化学機械器具、測定機械器具、配電用又は制御用の機械器具、回転変流機、調相機、電池、電気磁気測定器、電線及びケーブル、写真機械器具、映画機械器具、光学機械器具、眼鏡、加工ガラス(建築用のものを除く。)、救命用具、電気通信機械器具、レコード、メトロノーム、電子応用機械器具及びその部品、オゾン発生器、電解槽、ロケット、遊園地用機械器具、電気アイロン、電気式ヘアカーラー、電気式ワックス磨き機、電気掃除機、電気ブザー、乗物の故障の警告用の三角標識、発光式又は機械式の道路標識、鉄道用信号機、火災報知機、盗難警報器、事故防護用手袋、消火器、消火栓、消火ホース用ノズル、消防艇、消防車、自動車用シガーライター、保安用ヘルメット、防火被服、防じんマスク、防毒マスク、溶接マスク、磁心、抵抗線、電極、映写フィルム、スライドフィルム、スライドフィルム用マウント、録画済みビデオディスク及びビデオテープ、ガソリンステーション用装置、自動販売機、駐車場用硬貨作動式ゲート、金銭登録機、硬貨の計数用又は選別用の機械、作業記録機、写真複写機、手動計算機、製図用又は図案用の機械器具、タイムスタンプ、タイムレコーダー、電気計算機、パンチカードシステム機械、票数計算機、ビリングマシン、郵便切手のはり付けチェック装置、計算尺、ウエイトベルト、ウェットスーツ、浮き袋、エアタンク、水泳用浮き板、レギュレーター、潜水用機械器具、アーク溶接機、金属溶断機、電気溶接装置、犬笛、家庭用テレビゲームおもちゃ、検卵器、電動式扉自動開閉装置、動力付床洗浄機、乗物運転技能訓練用シミュレーター、運動技能訓練用シミュレーター」を指定商品として、同10年4月10日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張

(1)請求の趣旨

結論同旨の審決を求める。

(2)請求の理由

本件商標は、その指定商品中「電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品、電気アイロン、電気式ヘアカーラー、電気式ワックス磨き機、電気掃除機、及び電気ブザー並びにこれらに類似する商品」について、継続して3年以上日本国内において使用した事実がないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

(3)答弁に対する弁駁

(ア)商標の同一性

本件商標は「ドリームアート」であるところ、乙第2号証乃至乙第4号証のカタログに表示されている商標は「DreamArts」である。

カタログに表示された商標の「DreamArts」は、最後に複数形であることを示す「s」を伴っており「DreamArt」とは異なる。

そして、その称呼も「ドリームアーツ」であり、「たくさんの夢の芸術品」、「たくさんの夢の技術」の意味を有するものである。

本件商標「ドリームアート」は、その称呼も「ドリームア−ト」であり、抽象的な「夢の芸術」を意味を有するものである。

したがって、カタログ記載の商標「DreamArts」は、最後尾の「s」の存在によって、本件商標「ドリームアート」とは、称呼及び意味が別個のものとなると考えるのが相当である。

以上のことは、「蛙」の文字商標や1匹の蛙を表示した図形商標と、複数の蛙を表示した図形商標との間に、同一性がないのと同じである。また、「矢」の文字商標と1本の矢を表示した図形商標と、3本の矢を表示した図形商標との間に、同一性がないのと同じである。

結局、本件商標「ドリームアート」とそれをローマ字書きした「DREAM ART」とは社会通念上同一と考えられるが、カタログ記載の「DreamArts」とは同一性がないと考えられる。

(イ)商標の使用者

乙第1号証は、使用権者による本件商標の使用を証明するものではない。

すなわち、乙第1号証もその添付書類も、「使用許諾を内諾する」という一方的な意思表示を記載する書類であり、当事者双方の意思の合致を内容とする使用許諾契約が成立したことを証明するものではない。しかも、被請求人側の担当者が作成したものにすぎず、その証明力にも問題がある。

さらに、乙第1号証およびその添付書類には、「貴社と契約の詳細については検討していきます」、「詳細につきましては別途締結する契約書に定めることとします」と記載されており、乙第1号証およびその添付書類自体が、使用許諾の契約の実質的な内容が確定していないこと、すなわち商標許諾の契約が成立していないことを証明するものである。

さらに、被請求人は、その答弁書のなかで「被請求人は、平成12年9月7日付けで株式会社ドリーム・アーツより『本件商標の使用許諾または譲渡の申し込み』を受け、同年9月12日付けにて本件商標の使用許諾をしております」と主張しているが、株式会社ドリーム・アーツから本件商標の使用許諾の申し込みを受けたことについては何ら立証していない。

結局、被請求人は、使用権者の使用許諾に基づく使用があったことを何ら立証していない。

(3)上申書

被請求人が、第1答弁書で主張する使用権者による使用がないことは、参考資料(株式会社ドリームアーツによる証明書)により明らかである。

3 被請求人の答弁

被請求人は「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証乃至乙第20号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)第1答弁書

(ア)被請求人は、平成12年9月7日付で株式会社ドリーム・アーツより「本件商標の使用許諾または譲渡の申し込み」を受け、同年9月12日付にて本件商標の使用許諾をしている(乙第1号証)。

事実、上記の会社は、請求人が本件審判において請求している指定商品中、第9類「電子応用機械器具」に属する商品のソフトウエアにつきカタログで本件商標を使用している(乙第2号証乃至乙第4号証)。そして、カタログでの本件商標の使用は社会通念上同一と認められる範囲である。カタログは、平成12年9月に使用していたものであり、被請求人の使用許諾開始日が本件商標の登録日(平成10年4月10日)であることから、過去3年以内の使用事実であることは明らかである。

(イ)以上の事実から、被請求人は本件商標を株式会社ドリーム・アーツに対し使用許諾しており本件商標の使用にあたるものである。

(2)第2答弁書

(ア)商標の同一性

請求人は、弁駁書にて「本件商標『ドリームアート』とそれをローマ字書きした『DREAM ART』とは社会通念上同一と考えられるが、カタログ記載の『Dreamarts』とは同一性がない。」としているが、該主張は本件商標と「Dreamarts」との比較においては、全くあてはまらない。

まず、弁駁書にて請求人は、「『Dreamarts』は最後に複数形であることを示す『s』を伴っており」「本件商標『ドリームアート』とカタログ記載の商標『Dreamarts』とは、カタログ記載の商標『Dreamarts』の最後尾の『s』の存在により、称呼および意味において別個のものと考えるのは相当である。」と主張している。

確かに、請求人が主張するような、単数形と複数形とを社会通念上異なるものとして認識する場合も少なからずあるが、該主張は本件のごとき欧文字表記の商標とカタ力ナ表記の商標にまでまかりとおるものではない。

ここで、本件と同等の例を挙げて鑑みるに、欧文字(アルファベット)では複数形で表示しつつカタカナ表記では単数形で表示する場合や、またはその逆の場合が多数存在し、社会通念上同一のものとみなされているものが少なからずある。

a)hurdle→ハードル b)goggle→ゴーグル

例えば、a)は、陸上競技のハードル競争で用いる「ハードル」は、何台あっても「ハードルズ」とは表記せず、単に「ハードル」と表示する。その場合、特に、「たくさんの」なる意味合いも生じない。b)のスキー等に用いられるゴーグルについても、欧文字での表記は「goggles」だが、カタカナではむしろ「ゴーグル」と表示して、一般的に広く認識されている。

さらには、欧文字(アルファベット)を単数形で表示しつつカタカナを複数形で表示する形が社会通念上同一のものとして扱っているものも多くある。

a)sport→スポーツ b)fruit→フルーツ

これらの言葉も前述の例と同様、一個のリンゴを指しても「フルーツ」であり、一競技である「野球」や「サッカー」もそれぞれ一つ一つがスポーツ(複数表示)なのであって、これらは、我が国の社会通念上からすれば、同一のものであること明白である。ここには、請求人が主張するような、単数形が抽象的、複数形が「たくさんの」なる主張は全く意味をなしていない。

これらの例から見て分かることは、たとえ単数であっても複数表示するものもあれば、その逆もしかりであり、その当否は個別具体的に判断すべきであって、この意味で請求人の該主張は失当であるということである。

ここで、本件商標「ドリームアート」と「DreamArts」の各々の構成要素「アート」「Arts」についてみると、カタ力ナ表示に対して欧文字(アルファベット)表示、単数形に対して複数形といった外観上の相違点があり、また、請求人は観念上「たくさんの」なる意味合いが「Arts」に生じるとしている。

しかしながら、本件についても、前述の例と同様、「アート」または「Arts」から生じる意味としては、単数形であっても複数形であっても、我が国において、本件商標の指定商品における需要者、取引者のみならず、それこそ、一般的な社会通念上の観点からも「芸術」「技術」等以上のものは直ちに読み切れないのであって、単数形を抽象的な「芸術」、複数形を「たくさんの芸術」と看取するとの請求人の主張は、到底許容できない。

上記の被請求人の主張を裏付けるものとして、インターネットの日本語のホームページ上においても、欧文字(アルファベット)にて「Arts」と表示しながらも、カタ力ナでは「アート」と表示しているものが多数存在している。

もちろん、被請求人は、全ての「Arts」の表示が「アート」であるなどと、述べるつもりは毛頭ない。実際、「Arts」を「アーツ」と表記する例もそれこそ多数ある。しかしながら、被請求人がここで強調したいのは、上記の例からも明白なとおり、こと本件商標の構成要素「アート」に関する限り、それが一般用語であっても商標であっても、欧文字の「〜Arts」または「Arts〜」を、「〜アート」または「アート〜」とカタカナで表わしたとしても、そこに社会通念上、単数形、複数形といった違いや異なる観念は生じ得ず、むしろ一般的に同一のものとして認識されているという事実である。

以上より、需要者、取引者ならずとも広く一般的に同一と看取しうるため、本件商標「ドリームアート」と「DreamArts」は、社会通念上同一であることは明白である。

b)使用権者による使用

請求人は、弁駁書にて「使用権者の使用許諾に基づく使用があったことは何ら立証していない。」としているが、乙第1号証は被請求人が株式会社ドリームアーツに対して本件商標「ドリームアート」を使用許諾していることを法的に立証するものである。

このことは、被請求人と株式会社ドリームアーツが乙第1号証の内容について合意し、契約の内容(対価等の条件面)について交渉している事実からも明白である(乙第13号証乃至乙第20号証(枝番号を含む。))。

このことから、被請求人は、本件商標を株式会社ドリームアーツに対し使用許諾していたことを立証していると判断する。

なお、乙第2号証乃至乙第4号証のカタログにて過去3年以内の使用事実を立証していることは明らかである。

(3)以上の事実から判断して、被請求人は、本件商標を株式会社ドリームアーツに対し使用許諾しており、過去3年以内に本件商標を使用していたことが明らかであることから、本件審判請求は成り立たない。

4 当審の判断

(1)被請求人と「株式会社ドリーム・アーツ」(以下「ドリーム・アーツ」という。)の関係について

乙第1号証及び乙第2号証、乙第14号証ないし乙第20号証(枝番号を含む。)及び上申書によれば、以下の事実が認められる。

(ア)乙第1号証は、平成12年9月12日付けの「貴社ご依頼の『商標権の使用について』の件」と題する一枚刷り及び「商標権の使用について」と題する一枚刷りである。

その内容は、被請求人の特許部長である大嶋宏が、ドリーム・アーツに対して本件商標の登録日以降の使用許諾を内諾するというものであって、契約の詳細については、今後検討していく旨述べられている。

(イ)乙第13号証ないし乙第18号及び乙第20号証(枝番号を含む。)は、被請求人とドリーム・アーツとの間で、2000年(平成12年)9月7日から2001年(平成13年)4月27日まで行われた本件商標の使用許諾に関する応答のメールのコピーであり、乙第19号は、平成13年1月18日付けの「弊社商標『ドリームアート』の対価の件」と題する一枚刷りである。

そして、乙第20号証は、被請求人がドリーム・アーツに本件商標の使用許諾をしたと主張している平成12年9月12日以降の2001年(平成13年)4月27日の日付であるところ、「商標の件ですが、弊社内で検討しておりましたが、『使用許諾』ではなく『譲渡』でお願いしたいとの結論になりました。」の記載がある。

(ウ)上申書に添付された参考資料は証明願である。

その内容は、ドリームアーツの代表取締役社長である山本孝昭が、「乙第2号証」に表示された「DreamArts」のロゴが、他人により許諾された、当該他人の商標権に基づく使用でないことを証明するというものである。

以上の事実を総合勘案すれば、被請求人とドリームアーツとの間で本件商標の使用許諾に関する話し合いが行われたことは認められるとしても、最終的な合意には至らなかったと推認し得るものである。

したがって、提出されている証拠よっては、ドリーム・アーツが使用権者であると認めることができない。

(2)本件商標とドリーム・アーツが使用する商標の同一性について

本件商標は、「ドリームアート」の片仮名文字よりなるものである。

乙第2号証ないし乙第4号証はドリームアーツ作成のソフトウエアに関するカタログのであるところ、当該カタログには、「DreamArts」の欧文字が表示されている。

しかしながら、「ドリームアート」の片仮名文字と「DreamArts」の欧文字とは文字の種類が異っているため外観が相違しているものである。また、「ドリームアート」からは「ドリームアート」の称呼が生ずるのに対して、「DreamArts」からは「ドリームアーツ」の称呼が生ずるものであるから、称呼も相違しているものである。

したがって、両商標は、社会通念上同一性を有する商標とは認めることができない。

(3)乙第2号証ないし乙第4号証に係る商品カタログには、「2000年5月現在のものです。」の記載があることから、当該カタログが、当年、当月における被請求人の商品カタログであることは認め得る。

しかしながら、当該カタログがどのような時期に、誰に対して、どのような方法で、どの程度配布されたかなど、具体的な取扱いについては、何ら証拠の提出がなされていない。

(4)結び

上記事項を総合勘案すれば、本件商標は、審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれもが、請求に係る商品について使用していなかったものといわざるを得ない。

また、使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品中、「電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品、電気アイロン、電気式ヘアカーラー、電気式ワックス磨き機、電気掃除機、及び電気ブザー、並びにこれに類似する商品」について、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。