Trademark Appeal Case
立体商標の機能性形状
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2001−336(T2001−336/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第28類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成11年4月26日に立体商標として登録出願されたものであるが、その後、指定商品については、平成12年5月24日付けの手続補正書によって、「釣針」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、本願指定商品との関係においては、釣針の結び軸の部分の形状を普通に用いられる方法で表したものと認められるから、単に商品の形状・品質を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法上の立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者・需要者は、当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうすると、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用された結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P.30においても、「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は、登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
そして、立体的形状からなる商標であって、商品等の形状をもって構成されるものについては、本来的又は直接的には他の知的財産制度で保護されるものであることなど、平面的な商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度導入に当たって、商標法第4条第1項第18号等が設けられ、前掲工業所有権審議会答申でも、「・・・指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること・・・」(前掲答申P.31参照)としている。
また、実用新案法、意匠法等により保護されている形状について重ねて又は権利消滅後商標登録することにより保護することは、知的財産制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなる。
(3)以上を踏まえて本願を検討するに、本願商標は、別掲のとおり、釣り糸を結ぶ釣針の軸(以下「結び軸」という。)を表してなると認められるところ、当該形状は「結び軸」の一形態を表すものであるから、これをその指定商品に使用しても、取引者・需要者は、単に「結び軸」の形状を表示するにすぎないものとして理解するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
請求人は、本願商標の特徴を種々述べ、これが「請求人の独創的なアイデアによるもので、現在も過去もこのような溝を設けた釣針は他に存在しない」から、「本願商標は、釣針の形状そのものの範囲を脱したものであり、自他商品識別力を充分に発揮している」旨主張する。
しかしながら、釣針を取り扱う業界においては、「結び軸」に特徴を持たせた多種・多様な形状の釣針が製造・販売されていることは周知の事実であって、本願商標を構成する「結び軸」の特徴は、商品等の機能(釣り糸のズレの防止等)や美感(見た目の美しさ)を効果的に際立たせるための範囲内で施されたものというべきであり、商品等の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標であるから、その形状に特徴を持たせたことをもって、自他商品の識別力を有するものとは認められないことは(1)で述べたとおりである。
確かに、請求人が当審において提出した第26号証ないし第622号証中には、釣針の「結び軸」とおぼしき立体図形とともに、「釣鉤の結び軸にタテ溝を入れ、糸の結び回数を少なくし、糸のゆるみ、回り、ハリス切れ、糸ズレなどを防止。」等の説明が多数記載されている。しかしながら、このようなタテ溝を入れる「結び軸」は、すでに広く一般に知られている(例えば、公開実用新案公報昭和47年第380号及び同59年第119160号等を参照)ばかりでなく、当該「結び軸」を有する商品「釣針」が市場に出回っている(例えば、株式会社カツイチ発行の2000年乃至2002年版商品カタログ、株式会社土肥富発行の2002年版商品カタログ及び株式会社がまかつ発行の2003年版商品カタログ等を参照)ことも明らかであるから、このタテ溝は、請求人の釣針のみが有する特徴とは認められない。
加えて、本願商標は、「V字溝」、「SP」又は「I−LINE」等の名で製造・販売されている各社の商品「釣針」の「結び軸」と同種のものと認められ、これらの各「結び軸」と明らかに識別されているとは認識することができないから、これをその指定商品に使用ても、取引者・需要者は、単に釣針の「結び軸」の形状そのものを表示したものと理解するに止まると判断するのが相当であり、また、たとえ微細な形状の相違を識別し得たとしても、それは、自他商品の識別性を有さない当該釣針の「結び軸」の形状そのものの相違としか認識し得ないものというべきである。
(4)請求人は、「請求人が継続して使用を行ってきた結果、本願商標は、一般需要者、取引者の間で広く知られるに至っており、その自他商品識別機能を有効に発揮しているものとみるのが自然であるから、商標法第3条第1項第1号(「商標法第3条第1項第3号」の誤記と認められる。)の規定には該当しないものである。」旨主張し、原審において第1号証ないし第201号証を提出し、さらに、当審において第1号証ないし第622号証を提出している。
そこで、請求人の提出に係る各号証について検討するに、原審において提出した第1号証ないし第201号証及び当審において提出した第2号証ないし第25号証は、表題を「証明願」とする証明書であるが、その証明者のほとんどが請求人の関連業者と認められるばかりでなく、あらかじめ文章が記載された一枚の用紙のみの画一的な証明書であるため、証明者が安易に署名、押印をしたのではないかという疑問も否定し得ないところであって、信憑性に欠けるといわざるを得ないものであるから、前記各号証は俄には採用し難い。
さらに、当審において提出した第26号証ないし第622号証中には、商品「釣針」の「結び軸」とおぼしき立体図形が多数表示されている。
しかしながら、商品等の形状に係る立体商標が、使用により識別力を有するに至っているとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られると解されるところ、本願商標とこれら各号証中の商標とは、同一のものであるとは認められない。
加えて、前記各号証中の「結び軸」とおぼしき立体図形には、ほぼ全てに亘って「KINRYU」及び「H・LINE」又はこれらに類似する文字商標が表示されているものである。
しかして、前示のとおり、商品の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、或いは、その美感を追求する等の目的で選択されるものであって、本来的(第一義的)には、商品の出所を表示し自他商品を識別する標識として採択されるとはいえないものであり、その識別機能を果たすものとしては文字、図形又は記号等が適しているため、もっぱらこれらが自他商品の識別標識として採択、使用されていることは顕著な事実であること、及び前示認定のとおり、本願商標に係る形状が商品「釣針」の「結び軸」の一形態を表示するに過ぎないものであること等からすれば、前記各号証中の商品「釣針」は、「KINRYU」及び「H・LINE」等の文字商標により識別されているというべきである。
また、請求人は、本願商標(釣針の「結び軸」)をその形状の一部とする釣針の製造販売数が以下に及んでいる旨主張する。
平成4年...約6300万本、平成5年...約5200万本、平成6年...約3200万本、平成7年...約2800万本、平成8年...約3100万本、平成9年...約1100万本、平成10年...約3100万本、平成11年...約2500万本、平成12年...約1400万本。
そして、前記の売上高は、平均して以下の釣針の総売上高の7割を占めている旨主張する。
昭和61年...約2.5億円、昭和62年...約2.5億円、昭和63年...約2.7億円、平成元年...約2.8億円、平成2年...約3.3億円、平成3年...約3.8億円、平成4年...約4.7億円、平成5年...約4.6億円、平成6年...約4.1億円、平成7年...約3.6億円、平成8年...約4.0億円、平成9年...約1.2億円、平成10年...約3.5億円、平成11年...約3.3億円、平成12年...約2.9億円。
以上の製造販売数、売上高及び使用に係る商品「釣針」の「結び軸」の形状が本願商標と同一のものであること等を前提とすれば、本願商標をその形状の一部とする釣針の市場占有率がかなりの程度のものであることは認められるとしても、先に述べたとおり、当該釣針は、「KINRYU」及び「H・LINE」等の文字商標により識別されているというべきであり、これらの釣針に接する取引者・需要者は、「結び軸」に注目をすることがあり得るとしても、それは機能又は美感の観点からのものといえるから、これをもって自他商品の識別力の取得を裏付けたものとはいえず、また、使用に係る商標が本願商標と同一のものであるとする証左もないから、請求人の主張は採用することができない。
その他、請求人の提出に係る各号証を総合してみても、本願商標それ自体が、使用により自他商品の識別標識としての機能を有するに至っているとするには十分とはいえないものであるから、先の認定を覆すに足りない。
4 結 論
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、かつ、使用により出願人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者・需要者の間で広く知られるに至っているとは認められないものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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