Trademark Appeal Case
称呼の類似性と語尾音の差
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2001−90328(T2001−90328/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4449222号商標(以下「本件商標」という。)は、平成11年2月15日に登録出願され、商標の構成を標準文字により「AERO」の欧文字とし、指定商品を第20類「膨らませ式ベッド・マットレス及びまくら,クッション,座布団,まくら,マットレス,膨らませ式家具,その他の家具」を指定商品として、平成13年1月26日に商標権の設定の登録がされたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、登録異議の申立ての理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
<申立の要旨>
本件商標は、申立人の引用に係る登録商標、すなわち、1994年5月31日アメリカ合衆国への登録出願に基づくパリ条約第4条による優先権を主張して、平成6年8月15日に登録出願され、商標の構成をゴシック風書体により「AERON」の欧文字とし、指定商品を第20類「事務用家具及び椅子」として、平成11年4月30日に商標権の設定登録がされた登録第4267086号商標(以下「引用商標」という。)と称呼上類似するものであり、その指定商品も同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 本件商標に対する取消理由
当審において、平成13年11月20日付取消理由通知書をもって商標権者に対して通知した本件商標の取消理由は、要旨次のとおりである。
<取消の要旨>
本件商標は、「AERO」の欧文字よりなるところ、これよりはその構成文字に相応して「エアロ」の称呼を生ずるものである。
これに対し、申立人の引用に係る引用商標は、「AERON」の欧文字よりなり、該構成文字に相応して「エアロン」の称呼を生ずるものである。
そこで、本件商標より生ずる「エアロ」の称呼と引用商標より生ずる「エアロン」の称呼とを比較するに、両称呼は語頭より「エアロ」の3音を共通にし、語尾において「ン」の音の有無の差があるにすぎず、該「ン」の音が語尾に位置し、かつ、鼻音として明確に聴取し難い音であることと相俟って、両者の称呼を一気に称呼した場合、その語調、語感が近似し、彼此聞き誤るおそれがあるものといわなければならない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼において紛れ得るものであり、かつ、両者の指定商品はいずれも「家具」に属する商品を指定するものであって、本件商標は、その指定商品中の「膨らませ式ベッド,膨らませ式家具,その他の家具」において、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むものである。
したがって、本件商標は、その指定商品中の「膨らませ式ベッド,膨らませ式家具,その他の家具」については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわなければならない。
4 商標権者の意見
上記取消理由に対して、商標権者は、その意見を要旨次のとおり述べ、証拠方法として参考資料1ないし参考資料20を提出した。
<意見の要旨>
(1)引用商標が本件商標よりも先願に係り、かつ現在も有効な登録商標であり、その指定商品も本件商標の指定商品中「膨らませ式ベッド,膨らませ式家具,その他の家具」と類似関係にあることは商標権者も認めるが、本件商標と引用商標とはその称呼において何ら混同するおそれのない非類似の商標である。
(2)本願商標の称呼と引用商標の称呼とを比較すると、語尾における「ン」の音の有無が両者の唯一の相違点であるが、引用商標は「ン」が存在することによって、1音節のみからなる本願商標の称呼と異なり2音節からなる称呼を生じることになり、跳ねるようにリズミカルな「ロン」の発音を生じ、そのアクセントも本件商標とは明白に異なる位置に置かれることになる。そして、本件商標の称呼は3音からなり引用商標の称呼は4音からなるという、共に少ない音構成であることから、1音の多寡はその称呼を区別し聴別する上で大きな意味を持ち、印象に与える影響も極めて大きいというべきである。したがって、語尾音「ン」の有無は、本件商標及び引用商標の称呼を比較する上で極めて大きな意味を有することになる。
すなわち、「ン」の有無という音構成の相違により、本件商標と引用商標とはその音節数、発音方法、アクセントの位置という、称呼に多大な影響を及ぼす要素に顕著な相違を生じているのである。
この結果、本件商標の称呼「エアロ」と引用商標の称呼「エアロン」とは、明確に区別して称呼されるものとなり、その語調や語感において相互に近似して聴取されることなどあり得ない。
(3)さらに、本件商標及び引用商標の観念が、両商標の称呼に与える影響も看過できない。すなわち、引用商標は、何ら特定の観念を想起させることのない造語に過ぎず、単に「エアロン」という称呼を生じさせる構成からなる欧文字を書しているに過ぎない。
これに対し、本件商標は「空気の、航空の」さらには転じて「酸素の」等の幅広く多様な意味を有するものとしてそれ自体広く我が国一般に知悉されている英単語 「aero」と同一の欧文字から構成されており、本件商標に接する一般の取引者・需要者は当該観念を本件商標から認識するのが通常である。
したがって、本件商標は上記のような幅広く多様な固有の観念と結びついて認識されることにより、称呼においても、英単語「aero」から生じる称呼である「エアロ」が、明瞭かつ明確に称呼されることになり、他の称呼と紛れるという事態は生じ得ない。
このように固有の観念と結びつき関連づけられている称呼は、他の称呼とは明確に区別して称呼されるものであり、語調や語感においても近似して聴取されることなどない。
(4)特許庁における過去の審判例においても、3音構成と4音構成からなる称呼における語尾音「ン」の有無に関し、称呼について類似しないとした例が参考資料6ないし参考資料19等々がある。
ここに明らかなように、3音の称呼と4音の称呼とを比較した場合、その短い音構成において1音の有無という差異がもたらす影響は小さくなく、音節にも相違が生じることになる。また、当該商標が明確な観念を有している場合には、当該称呼はより一層明瞭に発音されることになる。
そして、本件商標と引用商標とが称呼において明確に区別されるということは、本件商標の審査過程での拒絶理由通知において、他の登録商標が類似するものとして審査官によって引用されたにも関わらず、引用商標は類似するものとして引用されていなかったという事実にも明白に顕在化している(参考資料20)。
(5)したがって、本件商標と引用商標とは、その称呼において紛れ得るものではなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
5 当審の判断
(1)本件商標についてした先の取消理由は妥当なものであって、本件商標と引用商標とは、称呼において互いに相紛らわしく、その外観、観念の点を考慮するとしても、なおその出所について混同を生ずるおそれのある類似の商標といわなければならない。
すなわち、簡易迅速を尊ぶ商取引の実際にあっては、口頭又は電話による商取引が普通一般に行われているというべきであり、商標より生ずる称呼を重要な取引指標とする取引事情があることを勘案すれば、本件商標をその指定商品について使用することにより、需要者はその商品の出所を混同するおそれがあるといわざるを得ないから、結局、本件商標は、引用商標と類似し、かつ、その指定商品中の「膨らませ式ベッド,膨らませ式家具,その他の家具」と、引用商標の指定商品「事務用家具及び椅子」とは、いずれも「家具」に属する商品を指定するものであって、両者は同一又は類似するものであるから、その登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものといわざるを得ない。
(2)商標権者は、意見書において、引用商標は「ン」が存在することによって、1音節のみからなる本願商標の称呼と異なり2音節からなる称呼を生じることになり、跳ねるようにリズミカルな「ロン」の発音を生じ、そのアクセントも本件商標とは明白に異なる位置に置かれることになり、その音構成の相違により、本件商標と引用商標とはその音節数、発音方法、アクセントの位置という、称呼に多大な影響を及ぼす要素に顕著な相違を生じている旨主張しているが、引用商標は「AERON」の欧文字にのみにより構成されているものであって、かかる構成からなる綴り字を常に前半部と後半部とに分断して「エア」と「ロン」とに分離して発音されるとするのが通常であるとの点を俄に認め難く、その主張は採用できない。
(3)取消理由は、本件商標から「エアロ」の称呼を、引用商標から「エアロン」の称呼をそれぞれ生ずることを前提として、両称呼を比較したものであって、その差異音である「ン」の音は、語尾に位置し、かつ、鼻音として明確に聴取し難い音であることと相俟って、両者の称呼を一気に称呼した場合、その語調、語感が近似し、彼此聞き誤るおそれがあるものと認定し、かつ、前記取引事情を総合勘案した結果、両商標を類似としたものであり、この認定、判断に誤りはない。
また、商標権者が提出した審決例(参考資料6ないし参考資料19)をみるに、商標の構成その他において、本件事案とは自ずと事情を異にするものであるから、それら提出の審決例をもって本件の類否判定の基準とするのは必ずしも適切でなく、そして、本件商標の審査過程での拒絶理由通知(参考資料20)において、引用商標は類似するものとして引用されていなかったという事実によって、その非類似性が是認されたものとすることはできないから、その主張も採用することができない。
その他、前記認定を覆すに足りる証左は見出せない。
(4)そうすると、本件商標の登録は、前記法条の規定に違反してされたものといわざるを得ないから、商標法第43条の3第2項の規定により、その指定商品中の「膨らませ式ベッド,膨らませ式家具,その他の家具」についての登録は、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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