Trademark Appeal Case
商標の先使用と悪意
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年異議第90668号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4096355号商標(以下「本件商標」という。)は、平成6年6月7日に登録出願され、「レイデント」の片仮名文字を横書きしてなり、第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),高級脂肪酸,非鉄金属,非金属鉱物,原料プラスチック」を指定商品として、平成9年12月26日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
本件商標は、甲第2号証ないし甲第4号証、甲第5号証ないし甲第287号証及び甲第288号証ないし甲第310号証から明白なように、商標法第4条第1項第11号、第8号、第10号及び同法第4条第1項第7号の規定に該当するものである。
よって、商標法第43条の2第1号の規定により、本件商標の登録は取り消されるべきである。
3 取消理由
(1)本件商標は、「レイデント」の片仮名文字よりなり、平成6年6月7日に株式会社吉崎メッキ加工所(以下「吉崎メッキ」という。)により登録出願され、その後、吉崎晴好(本件商標権者)へ出願人名義変更がなされ、第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),高級脂肪酸,非鉄金属,非金属鉱物,原料プラスチック」を指定商品として、同9年12月26日に設定登録されたものである。
(2)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が提出した甲第1号証、甲第5号、甲第48号ないし甲第53号、甲第288号ないし甲第310号証によると、以下の事実を認めることができる。
(ア)申立人は、大日表面工業研究所を組織変更し、冷電鍍工業株式会社の業務(機械部品及びその材料の表面処理並びに調質)を承継し、昭和39年12月17日に設立された株式会社であり(甲第5号証)、金属材料の表面を黒色被膜して、金属材料の表面を防錆(銹)する表面処理の方法について研究し、金属材料の表面を真黒色化して、良好な防錆(銹)力等を得ることができる技術を新たに開発し、自社のこの金属表面処理剤の商品の販売及び金属表面処理法についての役務提供を業とし、遅くとも昭和46年ころまでには、その商品である「黒色金属表面処理剤」及びその役務である「黒色金属表面処理法」の商標として「レイデント」(以下「引用標章」という。)を創作し、使用を開始していたこと。
また、申立人は、昭和50年6月20日に指定商品を旧第1類「金属材料の表面黒化並びに防銹処理のための金属表面処理剤、その他の化学剤」として「レイデント」の文字標章からなる商標の登録出願をしたことが認められること(甲第288号証)。
さらに、申立人は、引用標章を用いた黒色金属表面処理等についての広告宣伝を、昭和46年10月、同59年11月から同60年9月にかけて、新聞や雑誌により行っており、たとえば、日刊工業新聞紙上において「レイデント工業株式会社は、自社開発でクロムメッキ法の十倍以上の防錆力をもつ金属表面加工技術・黒色防錆薄膜処理法(レイデント処理法)の自動化ラインを完成した」、「吉崎メッキが『レイデント』処理の受注獲得に本腰をいれる方針」、「黒色防錆薄膜処理法=レイデント処理法が半導体の分野で注目され、引き合いが活発化している」旨の記事が掲載され(甲第48号証ないし甲第51号証)、日本工業技術新聞紙上においても「半導体分野で脚光 防錆薄膜処理法『レイデント処理法』ーレイデント工業」、「レイデント工業の開発した画期的な表面処理法である黒色防錆薄膜処理法『レイデント処理法』がクローズアップされてきており関係ユーザーに大きな注目を集めている」旨の記事が掲載されていること(甲第52号証ないし甲第53号証)。
(イ)申立人と吉崎メッキとは同業者であり、昭和59年5月ないし6月当時、両者の間には、「レイデント処理」の契約に関する書簡のやりとりがあり、この時の吉崎メッキ側の書簡発信人名が同社総務部長吉崎晴好であること(甲第307号証ないし同第308号証)。吉崎メッキのパンフレット(表題「金属表面処理新技術 LAYDENT レイデント」)において、「本技術は昭和47年より京都のレイデント工業(株)の支援を得まして研究を続けて参りました」旨の説明があること(甲第290号ないし同第291号証)。
(3)以上によれば、商標権者は、本件商標の登録出願前において、申立人と一定の売買取引があった吉崎メッキの総務部長として申立人と吉崎メッキとの間の「レイデント基本契約」に関する書簡を申立人宛に送付していた者であり、申立人の使用に係る引用標章及び申立人の出願に係る商標及び指定商品等を知り得る立場にあったということができ、その上で、吉崎メッキ名義で本件商標の登録出願をし、その後、商標権者(吉崎晴好)への出願人名義変更がされたものと推認できる。
また、引用標章である申立人の「レイデント」の標章は、本件商標の登録出願前から、申立人の開発した黒色金属表面処理剤及びその処理剤を用いる黒色金属表面処理に継続的に使用され、本件商標の登録出願時には、既に当業界及び取引者・需要者の間で、一定の信用及び顧客吸引力が引用標章に形成(化体)されていたものということができる。
そして、「レイデント」の語は、一般の辞書・辞典類において、金属表面処理剤あるいは金属表面処理法に関する一般名称や品質・加工方法等を示すものであるとする証左もないこともあり、申立人の引用標章「レイデント」は、本件商標の登録出願以前に申立人が創作した造語というべきであって、その使用に係る黒色金属表面処理剤あるいは黒色金属表面処理について、自他商品・役務の識別標識としての機能を十分に果たしていた商標と認めざるを得ない。
さらに、本件商標は、上記のとおり、申立人が先に登録出願した商標「レイデント」(最終的に昭和55年5月9日、出願無効処分となった)と同じ片仮名文字であるばかりか、指定商品も申立人の開発した黒色金属表面処理剤、又はこの処理剤を用いる黒色金属表面処理と密接な関係にあると認められる上記申立人の商標の指定商品である「金属材料の表面黒化並びに防銹処理のための金属表面処理剤、その他の化学剤」を含み、これと関連のある商品であること。
そして、申立人の創作した「レイデント」が造語と認められることも考慮すると、商標権者の採択に係る本件商標がこれと偶然に一致したものとは認め難いものである。
そうとすれば、商標権者が引用標章と同じ片仮名文字である「レイデント」の文字よりなり、前記商品を指定して本件商標を登録出願して商標登録を受けたことは、上記引用標章に形成(化体)された信用や顧客吸引力を利用し、あるいは希釈化させるなどの不正競争の目的があったものといわざるを得ず、公正な商取引秩序を乱すおそれがあるといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものである。
4 上記3の当審の取消理由に対して商標権者は何ら意見を述べていない。
5 当審の判断
当審では、平成15年2月7日付けで取消理由を通知し、期間を指定し意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何の応答もなかった。
そして、上記3の取消理由は妥当なものと認められるから、本件商標登録は、この取消理由によって、取り消すものとする。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。