結論テキスト
その余の第35類の指定役務についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2002−35235(T2002−35235/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4328657号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成10年11月20日登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,仮装用衣服」を指定商品及び第35類「広告,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,職業のあっせん,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与」を指定役務として、同11年10月22日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録の無効理由に引用する登録商標は、以下のとおり。
(a)登録第785680号商標(以下「引用商標1」という。)は、「CHANEL」の欧文字を横書きしてなり、昭和40年11月2日登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同43年7月10日に設定登録されたものである。
(b)登録第860151号商標(以下「引用商標2」という。)は、「CHANEL」の欧文字を横書きしてなり、昭和40年11月2日登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同45年6月12日に設定登録されたものである。
(c)登録第1218150号商標(以下「引用商標3」という。)は、「CHANEL」の欧文字を横書きしてなり、昭和45年9月18日登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同51年9月13日に設定登録されものである。
(d)登録第1431169号商標(以下「引用商標4」という。)は、「CHANEL」の欧文字と「シャネル」の片仮名文字を2段に横書きしてなり、昭和48年7月20日登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同55年8月28日に設定登録されたものである。
(e)登録第1458925号商標(以下「引用商標5」という。)は、「CHANEL」の欧文字を横書きしてなり、昭和47年4月20日登録出願、第23類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同56年4月30日に設定登録されたものである。
(f)登録第1824054号商標(以下「引用商標6」という。)は、「CHANEL」の欧文字を横書きしてなり、昭和58年1月25日登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同60年11月29日に設定登録されたものである。
(g)登録第2153054号商標(以下「引用商標7」という。)は、「CHANEL」の欧文字を横書きしてなり、昭和57年12月24日登録出願、第27類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成1年7月31日に設定登録されたものである。
(h)登録第2581618号商標(以下「引用商標8」という。)は、「CHANEL」の欧文字を横書きしてなり、昭和57年12月24日登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成5年9月30日に設定登録されたものである。
(i)登録第3009777号商標(以下「引用商標9」という。)は、「CHANEL」の欧文字を横書きしてなり、平成4年4月20日登録出願、第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同6年11月30日に設定登録されたものである。
(j)登録第3009778号商標(以下「引用商標10」という。)は、「CHANEL」の欧文字を横書きしてなり、平成4年4月20日登録出願、第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同6年11月30日に設定登録されたものである。
(k)登録第4420812号商標(以下「引用商標11」という。)は、「CHANEL」の欧文字を横書きしてなり、平成11年10月29日登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年9月29日に設定登録されたものである。
(l)登録第4507078号商標(以下「引用商標12」という。)は、「CHANEL」の欧文字を横書きしてなり、平成12年10月18日登録出願、第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年9月14日に設定登録されものである。
以下、一括して「引用各商標」という。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第144号証を提出した。
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、第10号、第11号、第15号及び同第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。
請求人は、著名なデザイナーである「Gabrielle coco CHANEL」により創設され、高級婦人服、香水、化粧品、ハンドバッグ、ベルト、靴、アクセサリー、宝飾品、時計等の製品のデザイン、企画並びに製造販売を目的とする企業により構成される企業グループ(以下「シャネル・グループ」という。)に属し、シャネル・グループの商標権等の知的財産権を有し、その管理を行なうスイス法人である。
請求人の創設者の名に由来する「CHANEL」ブランドは、創設者「Gabrielle coco CHANEL」により1920年代から成功をおさめ、1922年には「CHANEL No.5」の香水を発表して大成功を収めている。また、「Gabrielle coco CHANEL」亡き後はフィリッブ・ギブルジェやカール・ラガーフィールドなどのデザイナーにより「Gabrielle coco CHANEL」の意思を受け継いで、服飾業界及び化粧品業界において高い信用、評判、名声を獲得するに至っている。シャネル・グループは、いわゆるパリ・オートクチュールの老舗として世界的に知られており、請求人の創設者の名に由来する「CHANEL」ブランドは、請求人の営業を表示するものとして、また請求人の業務に係る商品を表示するものとして、世界的に極めて高い信用、評判、名声が形成されているものである。
日本においても、「CHANEL」の表示は昭和30年代の初めころには周知となり、シャネル製品は、一般消費者に高級品としてのイメージを持たれるものとなっている(甲第95号証)。また請求人の長年の継続的な努力によって、請求人の業務に係る商品はいずれも洗練された高品質の商品として、一般需要者間に広く認識され高い知名度を有しており、世界の超−流品としての極めて高い信用、評判、名声が日本においても形成されているものである。これらの事実は、本件商標登録出願前に刊行された各種刊行物により「CHANEL」ブランドが数多く紹介されていることからも明らかな事実である(甲第99号証ないし甲第106号証)。
また、これら請求人の著名なブランドである「CHANEL」については、引用商標1について防護標章登録第1号ないし第9号、引用商標2について防護標章登録第1号ないし第6号、及び引用商標3について防護標章登録第1号ないし第3号が認められていることからも、これらの指定商品に関する分野における引用各商標「CHANEL」の著名性は、特許庁においても、顕著な事実と思料する(甲第3号証ないし甲第26号証及び甲第98号証)。
さらに、引用各商標の著名性については、特許庁における多数の商標にかかる拒絶理由及び登録異議の申立についての異議決定及び審決において認められている(甲第46号証ないし甲第94号証)。
本件商標は、「CHANNEL」の構成部分が要部として認識されるというべきであるから、本件商標の要部というべき「CHANNEL」の文字部分と引用各商標「CHANEL」を比較し、両者の類否について検討する。
(1)外観について
本件商標中、独立して認識され得る部分というべき「CHANNEL」の文字部分と引用各商標「CHANEL」においては、外観上、7文字と6文字との構成文字数の差異は有するものの、その構成文字は「C」「H」「A」「N」「E」「L」の6文字において共通であり、しかも、その文字配列は、比較的印象の薄らぐ中間部において「N」の文字が一文字であるか二文字であるか以外の差異は有さないものである。
したがって、時と所を異にして本件商標及び引用各商標を観察した場合、それぞれの商標の使用された商品に接する需要者、取引者は、両商標を混同し同一視するおそれが十分にあるといえ、本件商標は引用各商標とその外観において極めて類似する商標として認識されるというべきである。
また、実際の取引においては「CHANNEL」と「CHANEL」は互いに誤って表記されている例が見受けられる(甲第107号証、甲第108号証)。
(2)称呼について
本件商標は、その各構成部分から自然に「CHANNEL/チャンネル」部分より「チャンネル」、「COMME CA」(別掲のとおり「C」の文字の下には小さい「▲」が付されているが、以下省略する。)及び「コムサ」部分より「コムサ」の各称呼が生ずるといえる。
また、本件商標は、フランス語で一つのまとまった意味を持つ「COMME CA/コムサ」の文字部分を含んでいることから、前半部の「CHANNEL」においても、後半部「COMME CA」との組み合わせにおいてフランス語読みである「チャネル」との称呼が生ずるものとして認識され得る。
したがって、本件商標から生ずる称呼は、本件商標の構成において独立して認識され得る要部というべき「CHANNEL/チャネル」の文字部分から単独で「チャンネル」、「チャネル」の称呼を生ずるというべきである。
これに対し、引用商標1ないし引用商標3及び引用商標5ないし引用商標12は、それぞれ「CHANEL」の欧文字を横書きにしてなる構成であり、引用商標4は「CHANEL」の欧文字を上段に「シャネル」の片仮名文字を下段に二段に横書きにしてなる構成であるから、自然と「シャネル」の称呼が生ずるというべきである。
そして、引用各商標は、請求人の業務に係る商品に使用される商標として認識され、著名性を獲得しているものであり、また、請求人による著名なファッションブランドを想起させるものである。
そこで、引用各商標から生ずる称呼「シャネル」と本件商標から生ずる称呼「チャネル」を比較すると、両者は「ネ」「ル」の各音を共通にし、異なる部分は、語頭の「シャ」「チャ」にすぎないものである。両称呼の唯一の差異部分においても、両音「シャ(sya)」「チャ(cya)」は母音「a」及び子音「y」を共通にする極めて近似した音であるから、それぞれを称呼するときには、語調、語感が極めて近似するものであり、それぞれを聴取識別し難いものというべきである。
したがって、本件商標は、引用各商標と称呼において類似する商標というべきである。
指定商品に関しては、本件商標の指定商品は、引用商標2の指定商品と同一であり、また引用商標1、引用商標4、引用商標6及び引用商標10の指定商品と類似のものである。なお、引用商標1ないし引用商標3はそれぞれ本件商標の指定商品と同一又は類似の指定商品につき防護標章登録を有しているものである。
本件商標は、請求人の業務に係る商標として需要者の間に広く認識されている引用商標1、引用商標2、引用商標4、引用商標6及び引用商標10と類似する商標というべきであって、かつ、指定商品も同一又は類似の指定商品に使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び第11号に反して登録されたものである。
引用各商標は、請求人が自らのブランドとして「高級婦人服、香水、化粧品、ハンドバッグ、ベルト、靴、アクセサリー、宝飾品、時計」等のファッションに関係する商品に使用して、極めて広く知られ著名性を獲得するに至っている商標である。
本件商標は、その指定商品「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,仮装用衣服」に使用されるものであるところ、これらの指定商品は引用各商標が著名性を獲得している商品と同一若しくは類似の商品である。さらに、請求人の業務において「被服」は、その根幹をなす最も重要な業務にかかる商品であることはいうまでもない。したがって、本件商標の指定商品と引用各商標の指定商品は非常に高い関連性を有するというべきである。
また、上述したように、本件商標は、引用各商標「CHANEL」と外観及び称呼において類似する商標というべきである。なお、引用各商標「CHANEL」は、請求人のハウスマークであり、創業者の名前に由来する創造商標である。
また、本件商標の指定商品である「被服」等が日常的に消費される性質の商品であることや、その需要者が特別な専門的知識を有さない一般大衆であることからすると、これを購入するに際して払われる注意力はさほど高いものではないとみなければならない。本件商標の出所混同のおそれの有無の判断の際には、この取引者、需要者の注意力を基準として判断すべきである。
以上の要素を総合的に勘案すると、引用各商標「CHANEL」の著名性に鑑みれば、これら引用各商標と類似する構成部分「CHANNEL」を要部とする本件商標が、請求人の業務の根幹を成す商品と同一の本件商標の指定商品又は役務について使用された場合、その商品又は役務に接する取引者、需要者は、請求人若しくは請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務にかかる商品又は役務であるかの如く、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」にあたり、商標法第4条第1項第15号に反して登録されたものである。
商標法は、不正競争防止法と並ぶ競業法であって、登録商標に化体された営業者の信用の維持を図ると共に、商標の使用を通じて商品又はサービスに関する取引秩序を維持することが目的とされている。
引用各商標「CHANEL」は、請求人の使用に係る著名商標であり、高い名声、信用、評判がその商標に化体しているものである。他方、「CHANNEL」の文字部分が構成中において要部として独立して認識されるというべき本件商標は、この著名な引用各商標「CHANEL」と類似するというべきであることは上述したとおりである。
上述したように、本件商標の登録出願時である平成10年において、引用各商標は請求人の業務にかかる被服等の商品に使用される著名商標として認識されていたことは明らかであって、本件商標の登録出願は、この引用各商標に化体した高い名声、信用、評判にフリーライド(ただ乗り)する意思のもとに出願したものとみるのが相当である。
以上のように、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきであることから、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
本件商標は、上述したように、本件商標の登録出願日以前から我が国の取引者、需要者の間で著名となっている引用各商標に類似するというべきであり、本件商標の登録出願時である平成l0年において、引用各商標は請求人の業務にかかる被服等の商品に使用される著名商標として認識されていたことは明らかであって、同じ業界に属する本件商標の出願人が著名性を有する引用各商標の存在を知らずに本件商標を登録出願したとは考えにくく、また、偶然に著名な引用各商標と類似する本件商標を採択したとみることは妥当ではない。
また、本件商標と類似するというべき著名な引用各商標は、請求人の創業者の名称に由来するものであり、造語よりなる商標というべきである。
よって、本件商標は、請求人の著名な引用各商標の有する信用力、顧客吸引力を不正の目的をもって使用するものと推認されるというべきである。
したがって、本件商標は、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている著名な引用各商標と類似する商標であって、不正の目的をもって使用するものと推認されることから、商標法第4条第1項第19号に反して登録されたものというべきである。
(1)本件商標においては、審判請求書でも主張したように以下の様々な要因により、本件商標は、「CHANNEL」、「チャンネル」の構成部分が要部として認識されるというべきである。
まず、本件商標はその構成全体である「CHANNEL COMME CA」、「チャンネルコムサ」の語句は、なんら特定の意味合いを有する成語ではない。このことから、本件商標は常に全体で一体不可分の商標と理解されるとは決して言い切れず、本件商標は全体で認識されるほか、それぞれの構成部分が独立して認識され得るものである。
そして、これら両構成部分が共に他の商標との類否判断又は商品(役務)の出所混同の可能性の有無を判断すべき対象となるものというべきである。
また、本件商標の構成中、「COMME CA」の「CA」の文字部分には符号が付されていることからも明らかなように仏語である。
また、本件商標の指定商品である「被服」等はフランスと非常に関連深い商品として一般において認識されているというべきであり(甲第133号証)、特に被服等を扱う服飾業界における取引者、需要者においては、一般に比して、さらに仏国及び仏語に対しての認識度が高いというべきである。
したがって、本件商標は、常に一体不可分の商標と理解されるとは決して言い切れないものであり、全体として認識されるほか、各構成部分がそれぞれ独立して認識され得るものである。各構成部分においては、上述した理由から「COMME CA」、「コムサ」の構成部分に比して「CHANNEL」、「チャンネル」の構成部分が強く印象に残り、本件商標の構成部分における要部として認識されるというべきである。
(2)さらに、被請求人は称呼について「本件商標の場合には、上記欧文字『CHANNEL』の称呼を特定する片仮名文字『チャンネル』が併記されていることとも相俟って、当該欧文字『CHANNEL』は、『チャンネル』の称呼を生じる」と主張する。
しかしながら、下段に併記されている片仮名文字から称呼が生ずることを否定するわけではないが、必ずしも当該称呼に特定されるとはいえないものである。
本件においては、上述したように、本件商標の構成中に明らかに仏語と認識できる「COMME CA」の構成部分を有しており、また、本件商標の指定商品である被服等の取引業界においてとりわけ仏語の理解度が高いといえる。
したがって、本件商標の構成上の要部というべき欧文字「CHANNEL」からは、「チャンネル」との称呼よりも仏語読みの称呼が生ずるというべきである。
してみれば、本件において上記事情を考慮すると、本件商標の構成上の要部というべき「CHANNEL」からは、「シャネル」又は「シャンネル」との称呼が生ずるといえ、引用各商標「CHANEL」、「CHANEL/シャネル」から生ずる「シャネル」との称呼と類似するというべきである。
また、構成中に「CHANNEL」の文字を有する別件商標に係る異議申立の決定において、各登録商標が引用各商標と類似すると認定されている判断例に鑑みても、本件商標と引用各商標は類似のものと判断されるべきである(甲第57号証、甲第59号証、甲第64号証、甲第73号証)。
以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とすべきものである。
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第39号証を提出した。
請求人の主張は、要するに、「本件商標『CHANNEL COMME CA/チャンネルコムサ』が、請求人の所有に係る引用各商標と類似することから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当し、無効にすべきものである。」との点に存する。
しかしながら、本件商標「CHANNEL COMME CA/チャンネルコムサ」と、引用各商標「CHANEL」、「CHANEL/シャネル」とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても一切相紛れることのない非類似の商標であるから、請求人の上記主張は失当といわざるを得ない。以下、理由を述べる。
(1)請求人は、「本件商標は、その構成全体での『CHANNEL COMME CA』或いは『チャンネルコムサ』の語句は、なんら特定の意味合いを有する成語ではないことから、『CHANNEL』或いは『チャンネル』の構成部分と『COMME CA』或いは『コムサ』の構成部分とがそれぞれ独立して認識される」と主張している。
しかしながら、本件商標を構成している欧文字「CHANNEL COMME CA」は、同書、同大で横一連に表示されていることから、当該欧文字「CHANNEL COMME CA」は、外観上まとまり良く、一連一体にのみ把握される構成態様となっている。
同様に、本件商標を構成している片仮名文字「チャンネルコムサ」も、同書、同大、同間隔で横一連に表示されていることから、当該片仮名文字「チャンネルコムサ」も、外観上まとまり良く、一連一体にのみ把握される構成態様となっている。
しかも、上記片仮名文字「チャンネルコムサ」は、上段に表示された欧文字「CHANNEL COMME CA」から生じる自然な称呼を表示しているものであることから、当該片仮名文字「チャンネルコムサ」は、欧文字の称呼を特定した「振り仮名」であると容易に理解されるものである。
このように、本件商標を構成する欧文字「CHANNEL COMME CA」及び片仮名文字「チャンネルコムサ」が、外観上、一連一体にのみ把握される構成態様であると共に、片仮名文字「チャンネルコムサ」が、欧文字「CHANNEL COMME CA」の称呼を特定した「振り仮名」として容易に理解されるものである以上、本件商標に接する取引者、需要者が、わざわざ本件商標を「CHANNEL/チャンネル」と「COMME CA/コムサ」とに分断して把握することは有り得ず、「CHANNEL COMME CA/チャンネルコムサ」の構成全体を、常に一体不可分の商標として認識、把握するとみるのが自然である。
(2)本件商標から生じる「チャンネルコムサ」の一連の称呼も冗長なものではなく、かえって、その語呂、語調が良いことから、一気一連に淀みなく称呼可能なものである。
以上のとおり、本件商標は、外観構成及び称呼上、「CHANNEL COMME CA /チャンネルコムサ」の構成全体が常に一体不可分の商標として認識されるものであるから、本件商標からは、欧文字「CHANNEL COMME CA」の称呼を特定した片仮名文字「チャンネルコムサ」に対応して、常に「チャンネルコムサ」の称呼のみ生じるものである。
一方、引用各商標「CHANEL」或いは「CHANEL/シャネル」からは、「シャネル」の称呼を生じるものである。
しかして、本件商標から生じる「チャンネルコムサ」の称呼と、引用各商標から生じる「シャネル」の称呼とは、その構成音数(7音と3音)を全く異にし、共通する音は僅かに2音(ネル)にすぎないから、両者は、称呼上、明らかに非類似である。
また、「CHANNEL COMME CA/チャンネルコムサ」の構成全体が常に一体不可分である本件商標は、構成全体として特定の観念を生じることのない一種の造語として理解されるものであることから、引用各商標「CHANEL」或いは「CHANEL/シャネル」とは、その観念においても相紛れることのない商標である。
さらに、本件商標は、上記のとおり、「CHANNEL COMME CA」の欧文字と、「チャンネルコムサ」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなることから、「CHANEL」の欧文字を横書きし、或いは「CHANEL」の欧文字と「シャネル」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなる引用各商標とは、その外観においても明らかに非類似の商標である。
以上述べたとおり、本件商標と引用各商標は、外観、称呼、観念のいずれにおいても非類似の商標である。また、本件商標中の「CHANNEL /チャンネル」の文字部分に関しても、上記のとおり引用各商標「CHANEL」、「CHANEL/シャネル」とは非類似であり、したがって、当該「CHANNEL/チャンネル」の文字部分から、各引用商標を想起させることも有り得ないものである。
したがって、本件商標が、商標法第4条第1項第11号及び同第10号に該当しないことは明白である。
引用各商標と非類似である本件商標「CHANNEL COMME CA/チャンネルコムサ」は、不正の目的をもって使用するものではないこと明らかであり、商標法第4条第1項第19号に該当するものでもない。
さらに、引用各商標とは非類似の本件商標を、その指定商品又は指定役務に使用しても、その商品又は役務が請求人又は同人と関係がある者の業務に係る商品又は役務であるかの如く出所について混同を生じるおそれは全く存在せず、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当することもない。
さらにまた、引用各商標と非類似であり、引用各商標を想起させることのない本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害することは有り得ず、商標法第4条第1項第7号に該当しないことも明らかである。
(1)請求人より提出された甲第99号証(主婦と生活社、1978年刊、「世界の逸品百科事典」)、甲第100号証(サンケイマーケティング、1982年刊、「’82ザ・ブランド」)及び甲第102号証(読売新聞社、1986年4月17日発行、「The 一流品」)によれば、以下の事実が認められる。
「CHANEL」は、フランスの服飾デザイナー「ガブリエル・シャネル」(通称「ココ」)が創業した「シャネル社」の商標である。
ガブリエル・シャネルは、1883年フランスのソミュールで生まれ、パリに出てコスチューム・デザインの仕事をはじめ、デザイナーとして認められるようになり、1910年にはパリ・カンボン通りに初めて店を開いた。
以来、当時としては革命的ともいえる機能性を重視したシンプルなデザインで独自のスタイルを築き上げ、それまで紳士用の素材であったジャージーを使ってドレスを仕立て、一躍脚光を浴びた。また、黒いドレスは喪服とされていたが黒を基調としたドレスを日常のものにしたり、カーディガン風ジャケットとスカートを組み合わせたシャネル・スーツを発表し、ひとつの生活様式といわれるほどになった。
さらに、香水事業に進出し、1924年に「CHANEL NO.5」を市場化した。
(2)そして、上記甲第99号証、甲第100号証及び甲第102号証のほか、甲第101号証(株式会社世界文化社、昭和58年11月1日発行、「世界の特選品’84」)、甲第103号証(株式会社婦人画報社、1989年1月1日発行、「25ansヴァンサンカン」)によれば、引用各商標は「婦人用衣料品、バッグ、靴、ネクタイ、ベルト、時計、アクセサリー、香水、化粧品」等の商品に使用されているものであることが認められる。
以上によれば、引用各商標は遅くとも本件商標の登録出願時には、前記の商品について使用された結果、取引者、需要者間において著名商標となっていたものと認められる。
本件商標は、その構成に係る上段及び下段の「CHANNEL COMME CA」及び「チャンネルコムサ」の語は、その構成文字全体としては特定の意味合いを有する親しまれた熟語等を表したものとはいえないものである。
そして、その構成中の前半部の「CHANNEL」の欧文字部分が、英語の「水路、(放送の)チャンネル」等を意味するものであるのに対し、「COMME CA」の欧文字部分は、「CA」の文字部分の「C」の欧文字に、前記のとおり、その下に小さい「▲」が付されており、仏語の符号「セディーユ」を表したものと認められることから、この文字部分は仏語の「COMME CA」を表示したものと看取される場合があるといえるものである。
してみると、本件商標は、常に全体を不可分一体の商標として認識されるとはいえず、漠然と全体の構成文字をもって認識されるほか、それぞれの文字部分が分離独立しても看取されるものと認められる。
特に、本件商標を外観上からみると、上段に書された欧文字部分はゴシック体の文字で表されていて、下段に書された片仮名文字が細書きで表されていることから、上段の欧文字部分が一段と着目され易く、かつ、上述した理由から、この欧文字部分も常に不可分一体のものとして把握、認識されるとは限らず、むしろ、前半部にあって目に付く「CHANNEL」の文字部分がより強く印象付けられるとみるのが相当である。
そうとすると、本件商標の「CHANNEL」の欧文字部分と引用各商標の「CHANEL」の欧文字部分を比較した場合、外観において子細にみれば、7文字と6文字との構成文字数の差異は有するものの、その構成文字は「C」「H」「A」「N」「E」「L」の6文字までを共通にするものであり、しかも、その文字配列は、比較的印象の薄らぐ中間部において「N」の文字が一文字多いか否かの微差にすぎないものである。
したがって、両商標を時と所を異にして離隔的に観察した場合、それぞれの商標が使用された商品に接する需要者、取引者は、上記の文字部分において両商標を混同し同一視するおそれが十分にあるといえ、両商標はその外観において極めて相紛らわしい商標として認識されるというべきである。
(1)本件商標は、前記認定のとおり、全体の文字が一体となって特定の意味を有する熟語等を構成するものでなく、外観上、ゴシック体をもって書された上段の欧文字にあって、その前半部の「CHANNEL」の文字部分は特に印象に残ると認められるものである。
(2)そして、本件商標の指定商品は「被服、バンド、ベルト、履物」等であり、一方、引用各商標に係る商品も「婦人用衣料品、バッグ、靴、ネクタイ、ベルト、時計、アクセサリー、香水、化粧品」等であって、これらは同一又は類似する商品である他、いずれもファッションに関係する商品である。
したがって、本件商標に係る指定商品と引用各商標の商品との間には密接な関連性があるといえるものである。
(3)そうすると、本件商標がその指定商品「婦人用衣料品、靴」等に使用された場合には、引用各商標「CHANEL」が著名であること及び本件商標が付された商品と引用各商標に係る商品との間に密接な関連性があることから、本件商標に接した取引者、需要者は、本件商標の「CHANNEL」の文字部分に着目し、これから引用各商標を連想、想起し、本件商標を付した商品が請求人又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、その結果、請求人の業務に係る商品との間に出所の混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
また、本件商標の登録出願後、登録査定日までの間に、前記出所の混同を生ずるおそれが消滅するような事情は窺えないから、上記登録査定日においても前記出所の混同が生ずるおそれは継続していたものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号及び同第19号に違反して登録されたものかどうか判断するまでもなく、その指定商品(第25類)「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,仮装用衣服」については、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
しかしながら、本件審判請求に係るその余の指定役務(第35類)については、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定によって、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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