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Trademark Appeal Case

不使用取消と証拠の信憑性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2001−30684(T2001−30684/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4141037号商標の商標登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4141037号商標(以下「本件商標」という。)は、「Yeti」の文字を左横書きしてなり、平成8年7月16日登録出願、第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次き,飲食物の提供,美容,理容,写真の撮影,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」を指定役務として、平成10年5月1日に登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第3号証を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定役務について使用されていないものである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消されるべきである。

2 答弁に対する弁駁

(1)被請求人が、本件商標の「飲食物の提供」(実体は「コーヒーの提供」及び「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」についての使用を立証すべく提出した乙第4ないし第7号証(甲第4ないし第7号証と表示しているが誤記と認める。以下同じ)についてみると、これら各号証に添付の「広告用チラシ」は、本件審判の請求の登録前に真正に成立していたものとは認め難い。

(ア)「広告用チラシ」に表われている店内に掲示の「Yeti」、「COFFEE」、「Namche Bazar」の文字と動物の図形よりなる標章は、全体の色調とその趣きを全く異にし違和感を拭いきれないから、その表示態様は、極めて不自然である。

(イ)広告用チラシをどの程度の量を制作するかは依頼者の裁量に任ねられているとはいえ、それにしても三年に満たない期間に40,000部(ちなみに、これが原本であったとして、これを通常のコピー用紙を積み上げた場合に換算すると、その高さは約3.6mにも達する。)を制作したということは、コーヒー店の広告物としては異常な量である。

このことは、コーヒーの提供を本業としてはいない被請求人の業務内容からみれば、なおさらのことである。

(ウ)乙第6及び第7号証に添付の「広告用チラシ」は、「ウインターセール」及び「スプリングセール」を銘打ったものでもあるところ、これらのチラシには、本来セールの対象となる商品及び価格等が紹介されているのが通常であるところ、これらのチラシには商品の一品すらも紹介されておらず、被請求人の本業とはいえないコーヒー店の紹介のウエイトが圧倒的に大きい。

したがって、これらの「広告用チラシ」は、商品の販売の宣伝を目的の一とする広告物としては、極めて不自然といわざるを得ない。

(エ)乙第4ないし第7号証に添付されている「広告用チラシ」に表示の被請求人である株式会社祐月本店(乙第2号証)の住所が、登記簿謄本におけるそれといずれも相違している。しかるところ、広告物に広告主やその住所を表示する以上、その広告主の住所を誤って印刷して了うというようなことは、この種の広告物にはあり得ないことである。

また、「広告用チラシ」では、いずれも「トレッキングツアー」の参加を募っているが(主催は、被請求人「株式会社祐月本店」)、これらへの応募あるいは照会は、郵便物によるものもあるといえるところ、このような広告チラシに申込先(主催者)の住所を誤って表示するなどということは、到底考えられないところである。

(2)そこで、請求人は、以下に表示の資料の提出及び疎明を求める。

(ア)乙第4ないし第7号証でいう「広告チラシ」の制作に関する企画書、注文書、納品書、請求書及び受領証等この取引が実際に行われたことを認めるに足りる資料

(イ)広告チラシが原本でないとすれば、その原本

(ウ)コーヒー店開業にあたっての営業許可書(営業許可を得ずしてコーヒー店を開業したとすれば、それは違法行為であり、違法行為について商標を使用したとしても、かかる使用は正当な使用とは認められない。)

(エ)トレッキングツアーに関する募集実績を示す書類、例えば、ツアー企画書、申し込みに要する書類、取り次ぎ先を示す書類、申込料金の受領証、取り次ぎ先への送金の事実を示す書類、取り次ぎ先からの受領証

(オ)広告チラシの頒布方法及びこれを証する書面

(カ)被請求人の住所を誤って表示するに至った首肯するに足りる理由

(3)コーヒーショップ「Yeti」の営業における本件商標の使用について

(ア)登録商標の使用の事実は、単にその事実があるだけでは足りず、登録商標を使用して商品の販売あるいは役務を提供する業務を行うためには法の定める許認可を必要とする場合には、その許認可を得ていることを要すると解される。

なぜならば、法の定める許認可を得ずして行っている商品の販売や役務の提供は、違法行為というべきであるから、このような行為によって提供される商標あるいは役務について商標が使用されたとしても、それは商標の正当な使用とはいえないからである(甲第2号証)。

また、商標法の第1条の(目的)でいう「商標を保護することにより...」における「保護する商標」、換言すれば保護されるべき商標は、それが正当に使用されている商標に限られると解するのが商標法の目的に照らして相当である。

(イ)しかるに、コーヒーショップ等の飲食店の営業を営もうとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなけれはならないとされているところ(食品衛生法第20条及び第21条)、被請求人は、「コーヒーショップの営業について正式な営業許可は受けていない、近々営業許可を受けようとしている」と述べている。

そうすると、仮に、被請求人が本件審判の請求登録の日前からコーヒーショップを営んでいたとしても、その行為は法の定める営業許可を得ないで行っていた違法な行為であったといわざるを得ない。

しかして、かかる違法なコーヒーショップの営業(「飲食物の提供」のうち「コーヒーの提供」)について本件商標が使用されていたとしても、このような行為は登録商標の正当な使用にはならないことは明らかである。

したがって、本件商標は、請求に係る指定役務「飲食物の提供」のうち「コーヒーの提供」について使用されていなかったものといわざるを得ず、他に「コーヒーの提供」以外の「飲食物の提供」について本件商標が使用されていたとする主張、立証はない。

(ウ)ところで、これが違法行為でないとした場合、それは業としてコーヒーを提供しているのではなく、被請求人が営むアウトドア用品の販売店舗「ナムチェバザール」に来店した客への文字どおりのサービス(すなわち、アウトドア用品の販売という業務に付随して、採算を度外視したあるいは原価程度の価格で提供しているサービス)と捉えることができる余地はある。

しかしながら、このように捉えたとしても、商標の使用とは業として商品あるいは役務を提供する者が、その商品あるいは役務について商標を使用することとされているから、上記のように業としてではなく、商品の販売に付随して提供されている役務「コーヒーの提供」について本件商標が使用されていたとしても、これをもって本件商標の「コーヒーの提供」についての使用ということはできない。

(4)「宿泊施設の提供」における本件商標の使用について

(ア)被請求人は、ホテルの営業を検討中とのことであるので、同人がホテルについて本件商標を使用していないことは明らかである。

そうすると、被請求人は、ホテルについて本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしなけれはならない。

しかして、商標法第50条でいう「指定商品又は指定役務について登録商標をしていないことについての正当な理由」とは、地震、台風等の天変地変、類焼、放火、破壊その他の第三者の故意又は過失による災害、法令による全面禁止、許認可手続の遅延等、指定商品又は指定役務について登録商標の使用を妨げる事情であって、商標権者の責に帰すことができないそのような事情をいうものと解される(甲第3及び第4号証)。

(イ)しかるところ、被請求人は、「ホテル経営を検討中」と述べているのであるから、被請求人が平成13年11月26日当時「宿泊施設の提供」なる役務を提供していないことは明らかである。

また、被請求人が平成13年11月26日提出の答弁書4頁の「計画案(2)」及び平成14年6月24日提出の答弁書でいうホテル建設に関する事情は、前記の登録商標をしていないことについての正当な理由には該当しない。

してみれば、被請求人が「宿泊施設の提供」について本件商標をしていないことについて、正当な理由はない。

(5)「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」における本件商標の使用について

(ア)乙第13ないし第19号証(これらのすべてが真正に成立しているものであるか否かについては後述)についてみると、乙第13号証は、「後立山、白馬岳登山教室」と銘打ったトレツキングツアー「参加者募集用のチラシ」とされるものであるところ、このツアーの日程は、8月18日〜20日の三日間である。

しかるに、このツアーの間における「お食事」は、14日の夕と15日の昼と表示されており、この両日は、上記の8月18日〜20日より前の日であるから、乙第13号証の成立には疑念を抱かざるを得ない。

ところで、乙第13号証における「お食事」の項の表示が不注意による誤りであったとしても、これによって判明するのは、被請求人が「主催旅行の実施」(第41類に属する役務であって「宿泊施設の提供の契約又は取次ぎ」を含むものではない。)なる役務を提供していたことが窺われるだけである。

また、乙第14号証は、乙第13号証の参加者募集に応じた者の氏名を表示した「登山届」と称するものであるが(かかる重要な書面に「届け出日を記入しなくともよいのかという疑念もあるが)、これも「宿泊施設の契約の媒介又は取次ぎ」についての本件商標の使用の事実を示すものではなく、このことは、乙第15ないし第19号証についても同様である。

(イ)しかして、自分で計画する場合でも、ツアーに参加する場合でも、旅行を計画する場合に、その日程の如何が計画を策定するための重要な要素となることは経験則上明らかである。

しかるところ、被請求人は、日程の矛盾は単なるミスプリントであり、このことはバスの中で参加者全員に正しく伝えたと主張するが、かかる書面の作成に関する前記の事情に照らせば、かかる主張は、日程の矛盾が請求人に指摘されて判ったことであるために、急拠なされた言訳といわざるを得ない。

したがって、乙第13号証は、真正に成立しているものとはいい難い。

他に、被請求人が「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取り次ぎ」なる役務について、本件商標を使用している事実を示す証拠の提出はない。

以上によると、本件商標は、請求に係る本件指定役務のうち「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」についても使用されていなかったといわざるを得ない。

(6)以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、請求に係る指定役務について使用されていないものであって、使用されていないことに正当な理由もないといわざるを得ない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判請求の申立ては成り立たない、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1ないし第13号証(枝番を含む。)を提出した。

1 被請求人は、本件商標を継続して3年以上、日本国内において、その指定役務について使用していたので、本件商標は、不使用の登録商標には当たらない。

すなわち、本件商標を、被請求人(平成9年9月10日、株式会社祐月を株式会社祐月本店に商号変更)が、その役務に使用し、現在に至っている事実は、乙第1ないし第7号証により立証できる。

(1)乙第1号証は、平成7年9月8日水戸地方法務局が交付した被請求人の登記簿謄本、乙第2号証は、平成9年10月21日水戸地方法務局が交付した被請求人の登記簿謄本及び乙第3号証は、平成12年9月5日水戸地方法務局が交付した被請求人の登記簿謄本であり、これら登記簿謄本の目的欄に「国内海外の旅行代理店業務」、「旅行業法に基つく旅行業」及び「飲食店、レストラン等の経営」等の記載が明記されていることから、乙第1号証ないし乙第3号証は、被請求人会社が、業として、「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」及び「飲食物の提供」に関与し、かつ、その役務が現在も継続中であることを立証するものである.

(2)乙第4号証は、1998年5月1日に印刷元から被請求人宛に納品され(乙第4号証中の印刷物納品証明書を参照)、同年7月1日の「Yeti Cafe」(コーヒーショップ)オ−プンに向けて、被請求人会社のアウトドア関連用品事業部であるナムチェバザールが、不特定多数人に頒布した宣伝用チラシの原本で、同証には、本件商標の表示、指定役務「コーヒーの有料提供」の表示、商標権者であり営業主である「株式会社祐月本店」の表示、本件商標を表示する看板を掲示した店内写真等が掲載されている。

また、同証には、被請求人の主催により開催された「Yeti トレッキングツアー」の参加会員募集広告が併載されている。

(3)乙第5号証は、1999年3月1日に印刷元から被請求人宛に納品され(乙第5号証中の印刷物納品証明書を参照)、同年4月23日の「Yeti Cafe」オープン翌年に、被請求人会社が不特定多数人に頒布した宣伝用チラシの原本で、同証には、本件商標の表示、指定役務「コーヒーの有料提供」の表示、商標権者であり営業主である「株式会社祐月本店」の表示、本件商標を表示する看板を掲示した店内写真が掲載されている。また、同証には、被請求人主催による「Yeti トレッキングツァー」と称するツァー参加会員募集広告が併記されている。

なお、この「Yeti トレッキングツァー」は、本件商標出願日の遙か以前より被請求人によって企画、運営されている毎年恒例事業のひとつとして、特に、水戸市周辺の登山愛好者、山岳グループ間に、その存在が知悉されており、被請求人は、毎年の「Yeti トレッキングツァー」実施に当たり、目的地宿泊施投との事前契約交渉、取り次ぎ(宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ)を行っている。

(4)乙第6号証は、2000年11月1日に印刷元から被請求人宛に納品され(乙第6号証中の印刷物納品証明書を参照)、同年12月8日〜31日に開催された「NAMCHE BAZAR WINTER SALE 2000」(MCHE BAZR=ナムチェバザールとは、被請求人のスポ−ツ用品販売部門をいう。)の事前宣伝用チラシの原本で、同証には、本件商標の表示、指定役務「コーヒーの有料提供」の表示、商標権者であり営業主である「株式会社祐月本店」の表示、本件商標を表示する看板を掲示したコーヒーショップの店内写真等が掲載されている。また、同証には,乙第5号証と同様、被請求人主催による「Yeti トレッキングツァー」の参加会員募集広告が併載されている。

乙第6号証として提出した「Yeti cafe」の広告用チラシは、被請求人会社のアウトドア事業部門を担うナムチェバザールが読売、朝日、毎日新聞への折り込み広告として使用した乙第9号証(ウインターセール商品案内広告チラシ)と並行して印刷されたものであり、因に、乙第6証の印刷納品日と乙第9号証の印刷納品日は同日であり、乙第9号証の印刷枚数は、200,000枚であった(乙第10号証を参照)。

(5)乙第7号証は、2001年3月1日に印刷元から被請求人宛に納品され(乙第7号証中の印刷物納品証明書を参照)、同年4月6日〜5月6日に開催された「ナムチェバザール スプリンクセール」の事前宣伝用チラシの原本で、同証には、本件商標の表示、指定役務「コーヒーの有料提供」の表示、商標権者であり営業主である「株式会社祐月本店」の表示、本件商標を表示する看板を掲示したコーヒーショップの店内写真等が掲載されている。また、同証には、乙第5及び第6号証と同様、被請求人主催による「Yeti トレッキングツァー」の参加会員募集広告が併載されている。

乙第7号証として提出した「Yeti cafe」の広告用チラシは、被請求人のアウトドア事業部門を担うナムチェバザールが読完、朝日、毎日新聞への折り込み広告として使用した乙第11号証(スプリングセール商品案内広告)と並行して印刷されたものであり、因に、乙11号証 の印刷枚数は、100,000枚であった(乙第12号証を参照)。

(6)乙第8号証の旅行業者、旅行代理業者登録名簿(写し)は、被請求人が旅行業者、旅行代理業者の登録業者であることを証明している。

(7)乙第9号証の広告チラシは、乙第6号証の広告チラシと同日の2000年11月1日に、印刷元から納品を受け(乙第20号証中の印刷物納品証明書を参照)、その直後、有力新聞の折り込み広告チラシとして使用したもので、頒布時期、頒布枚数、新聞名等は、新たに提出する乙第24号証の新聞折り込み広告取扱会社の頒布証明書を見れば一目瞭然である。

(8)乙第11号証の広告チラシは、2001年3月1日に、印刷元から納品を受け(乙第21号証中の印刷物納品証明書を参照)、その直後、有力新聞の折り込み広告チラシとして使用したもので、頒布時期、頒布枚数、新聞名等は、新たに提出する乙第25号証の新聞折り込み広告取扱会社の頒布証明書によって確認することができる。

(9)したがって、上記の各広告チラシは、真正なものであり、本件商標出願日の直後から現在に至るまで、彼請求人会社の役務を示す標識として継続的に使用してきており、また、被請求人の多額な広告宣伝費出費と弛まざる業務努力が効を奏し、本件商標の財産的価値は飛躍的に向上している。そのため、仮に、本件審判の請求が容認される場合は、被請求人は重大な損害を蒙り、被請求人の業務を知る者に混同を与えること必定であるから、その請求は失当であるといわざるを得ない。

2 広告用チラシの数量について

乙第20及び第21号証によれば、前記2(1)(イ)のように請求人が主張し、懸念されている広告用チラシの数量が妥当な数量であることが理解できる。

乙第6及び第7号証等の印刷枚数10,000枚は、乙第9号証、乙第11号証に比べれば、むしろ足りない位の印刷枚数であり、この印刷枚数量が何メートルに達するとか、印刷レイアウトに違和感はあるとかという指摘は、理由がない。

また、被請求人は、被請求人会社のアウトドア事業部門を担う「ナムチェバザール」が、コーヒーショップ「Yeti」を展開していることに関して、同ショップの1998年7月〜2000年10月間のコーヒー売上表を、乙第22号証として提出する。

したがって、乙第22号証によれば、被請求人において、過去3年間、コーヒーショップ「Yeti 」の店名でコーヒーの提供を行っていたとする被請求人の主張を証明することができる。

乙第23号証は被請求人が使用中の業務用封筒であり、同証に「ナムチニバザール」の表示がなされていることから、これにより「ナムチエバザール」が、被請求人のグループ企業に属していることを窺い知ることができる。

3 営業許可証について

請求人は、被請求人のアウトドア事業部門を担うナムチエバザールで、コーヒーショップ「Yeti」を開業している事実を営業許可書の提出によって明らかせよ、同ショップの営業は、都道府味知事の許可を受けていないため、登録商標「Yeti」の正当な使用には当たらない、とし、被請求人の提出した乙第4ないし第7号証等の成立を否認するとしているが、正式な営業許可は受けていない。

多数顧客からの要望(例えば、サンドウイッチ、調理パン等の提供)があるため、近々、営業許可を受けようとしている。

しかして、昨今のアウトドアブームは、「ナムチェバザール」に対し、1ケ月平均20,000人(内、売り上げ客数4,000人)の来客をもたらし、広い店内に多種多様のアウトドア関連用品を陳列し、販売しているために、来客が店内に滞留している時間も長い。

そこで、一般顧客が寛ぎ、県内外の登山愛好者グループ、カヌー愛好者グループ、スキー愛好者グルーブ、ハイキング愛好者グループらが自由に集い、情報交換のサロンとして機能しているのが店内コーナーの一角に設けたコーヒーショップ「Yeti」であり、そして、来客の注文により、実費程度のコーヒーを提供しているのが、被請求人のアウトア事業部門を担うナムチェバザールに併設されているコーコーヒーショップ「Yeti」に他ならない。

したがって、営業許可を受けていないことに固執している。

請求人は、被請求人のコーヒー提供(役務)について商標「Yeti」の使用を認めながらも、食品衛生法の規定を楯にして、商標の不使用を立証しようとしている。

しかして、商標の使用というのは、指定商品(役務)との相関関係において商品(業務)の出所を指標するものとして現実に用いられていることを立証するだけで足るもので都道府県知事の営業許可が必要であるとしているのは食品衛生法それ自体であって、食品衛生法の規制による営業許可と商標法とは必然的な連携がないから、登録商標の使用、不使用の判断は、商標法独自の見地から決せられて然るべきであろう。

してみれば、斯点の解釈を尊重すると、被請求人がコーヒー提供業務について商標「Yeti」を使用している事実は、被請求人が提出した乙第4ないし第7号証、乙第24及び第25号証等に徴して明白であり、敢えて食品衛生法を引用して、商標使用の違法性を説く必要性もない。

また、請求人は、「被請求人のコーヒー提供業務は、被請求人が営む、アウトドア用品の販売店舗(ナムチェバザール)の業務に付随したサービスであるから、被請求人会社のコーヒーショップ(Yeti)によるコーヒー提供は業務に当たらない。また、コーヒーの提供について商標「Yeti」が使用されていたとしても、それは商標の正当な使用といえない。」とも主張しているが、少なくともコーヒーショップの規模大小に関らず、¥200という価格設定により来客にコーヒーを提供して、多少なりとも被請求人の売上に貢献していることには変わらず、これは、正当な業務、正当な商標使用というものである。

4 ホテルの事業計画について

被請求人は、本件登録商標の出願日前に、新規事業として「Yeti」と銘打つホテルの経営を下記の経緯により推進してきた。

計画案(1)

この計画は、水戸市末広町2ー2ー10の約10 0 0坪の土地を利用するものである。

1992年:新規事業にホテル経営を行うことを検討し始める。生活産業研究所(株)に、コンサルを依頼する。

1992年:計画資料まとまる。常陽銀行(本店:水戸市)に、その資料の検討を依頼する。

1993年:常陽銀行から回答。今、バブル崩壊で環境が悪いので、時期をずらす方が良い、との回答。

計画案(2)

この計画は、水戸市南町3丁目の土地を利用するものである。2000年:(株)エフェツクスに、コンサルを依頼した。

現在、「Yeti」を表示するホテルの経営を検討中。

しかして、被請求人のホテル経営は、単なる試行錯誤の段階における設計図やプランの作成等に止まらず、一歩も二歩も進行したブロジェクトであり、巷間、プロジェクト事業の着工から完工までに3、4年を要していることを考え併せれは、被請求人のホテル「Yeti」の計画事業には客観性が認められる。

したがって、被請求人は、第42類の指定役務「宿泊施設の提供」についても、商標権「Yeti」を独占的に享有することができる。

請求人は「ホテルについて、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにする必要がある」と主張しているが、このことについては掲記したとおりであり、(バブル崩壊で一時は中断を余儀なくされたが)斯かるプロジェクトは、現在、設計段階の城に達し、関係官署、金融機関等とも接渉して着工の方向に推移している被請求人の継続事業であり、しかも被請求人は、事前にホテル名称として、「Yeti」を採択し、指定役務「宿泊施設の提供」にも本件商標を登録、取得しているので、被請求人の前記ホテル建設の準備経緯は正しく本件商標の使用に相当する。したがって、被譲求人は、指定役務「宿泊施設の提供」についても、本件商標の使用を専有できる。

5 トレッキングツーの募集について

被請求人のアウトドア事業部を担うナムチェバザールは、第42類の指定役務「宿泊施設の提供の契的の媒介又は取次ぎ」に関連して、トしッキングツアーに関する募集を行っている。その募集実績例を示す書類として、乙第13号証(会員募集用チラシ、申込書付き)、乙第14号証(登山届の写し)、乙第15号証(団体乗車券の写し)及び乙第16号証(宿泊施設発行の領収書写し)を提出する。

なお、トレッキングツア−の会員募集、宿泊施設への取次ぎ等は、上記ナムチェバザールが行った。

乙第4ないし7号証で告知しているトレッキングツアーは、夜行日帰りツアーが大半であったため、宿泊施設への取次ぎ等は不要であった。

上記トレッキングツアーは、平成12年8月18日〜19日に実施された。つまり、本件商標登録日経過後、3年以内の実施であり、目的地は、白馬、栂池方面であった。

乙第17号証は、乙第4号証の広告用チラシに掲載された「Yete トレッキングツアー」に関連する「ナムチェバザール Yeti トレッキング=花の百名山 早池峰山の山旅」の募集用チラシ(申込書付き)であり、乙第18号証は、登山計画書(登山者名簿)、乙第19号証は、交通費請求書である。

したがって、被請求人が第42類の指定役務「宿泊施設の取次ぎ」等について本件商標を使用していた事実は、乙第4ないし第7号証、及び乙第9ないし第19号証によって立証できる。

請求人は被請求人が提出した乙第13号証の成立に疑念をもっているので、この点を釈明すると、同証(トレッキングツアーの参加者応募用のチラシ)における「お食事」の表示「14日...夕」とあるは、ミスプリントであり、正しくは「19日...夕」である。また、「15日...朝、昼」の表示はミスプリントであり、正しくは、「20日...朝、昼」であり、このことについては、主催者がバス車中の参加者全員に正しく伝えていたので、乙第18号証の成立に疑念をもつ必要はない。請求人は、また、乙第14号証の登山届に日付の記入がないこと、宿泊施設の提供の契約媒介又は取次ぎについての本件商標の使用の事実がないことを懸念しているが乙第14号証の登山届の作成は、乙第18号証の登山教室参加申込書中に記載の参加者氏名を名簿的に移記したものであるから、乙第13号証に、日付の記入がなくても乙第18号証に登山日時のスケジュールが指記されているので乙第14号証は真正に成立するものである。

また、乙第13号証の登山教室参加申込書中に記載されている「Yeti トレッキングツアーへのご参加は」の文字は、本件指定役務のうち「宿治施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」について、本件商標が使用されている事実の一例を証左するものである。

6 被請求人の住所について

被請求人の名称表示「株式会社祐月」は、平成13年8月15日付け提出の答弁費と同時提出の登録名義人表示変更登録申請書により「株式会社祐月本店」と変更した。

また、被請求人の住所は「水戸市末広町2ー2ー10」であり、被請求人である株式会社祐月本店のアウドドア事業部門を展開している。ナムチエバザールの住所は「水戸市末広町2ー2ー7」である。したがって、請求人会社が懸念している住所表示の誤りはない。

第4 当審の判断

1 被請求人は、本件商標を本件審判の請求に係る商品について使用していると答弁し、証拠として、乙各号証を提出している。そこで、提出に係る乙各号証について検討する。

(1) 「コーヒーの提供」について

乙第9ないし第11号証によれば、「ナムチェバザール」「Namche Bazar」は、被請求人のアウトドア部門の商品を販売するための名称であることが認められる。

乙第4ないし第11号証、乙第22号証によれば、コーヒーショップ「Yeti cafe」「イエティカフェ」が、1998年7月1日にナムチェバザールの横の土蔵にオープンし、値段は「Yeti coffee」を200円で提供し、さらに、ナムチェバザールの2Fに移転し、その営業は1999年4月23日金曜日にオープしたことが認められる。

ところで、食品衛生法第20及び21条の規定によれば、都道府県は、飲食店営業その他の公衆衛生に与える影響が著しい営業について、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない旨規定している。

そこで、これを本件についてみるに、本件に係る全証拠によっても被請求人又は使用権者が「コーヒーの提供」の営業について都道府県知事の営業許可を受けていることを窺わせる事実はない。

また、被請求人は、「商標の使用というのは、指定商品(役務)との相関関係において商品(業務)の出所を指標するものとして立証するだけで足るもので都道府県知事の営業許可が必要であるとしているのは食品衛生法それ自体であって、食品衛生法の規制による営業許可と商標法とは必然的な連携がないから、登録商標の使用、不使用の判断は、商標法独自の見地から決せられる」旨述べている。

しかしながら、法の定める許認可を得ないで行っている商品の販売や役務の提供は、違法行為というべきであるから、このような行為によって提供される商品あるいは役務について商標が使用されたとしても、それは商標の正当な使用とはいえないものである。

そのことは、商標法の第1条でいう「保護されるべき商標」は、それが正当に使用されている商標に限られると解するのが商標法の目的に照らして相当であるから、被請求人の主張は、採用できない。

(2)「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」について

乙第13号証は、「後立山、白馬岳登山教室」と銘打った「Yeti トレツキングツアー参加者募集用のチラシ」であるところ、このツアーの日程は、8月18日〜20日の三日間であることが、記載されている。

乙第14号証は、「後立山、白馬岳登山教室」の参加者で、登山届け名簿である。

乙第15号証は、8月20日付けのパノラマウェイの団体乗車券と白馬山荘の12年8月19日付けの領収書である。

しかしながら、白馬山荘の領収書には、金額、人数、領収者の記載がなく、乙第13号証の「後立山、白馬岳登山教室」と銘打った「Yetiトレツキングツアー」に参加した者が、宿泊したことについての証明するものとは、客観的にみて認め得るものではない。

乙第16号証は、「旅館 大志茂」発行の12年8月2日付け領収書で、「宿泊代2名様、15000円、ナムチェバザール様」と記載されていることが認められる。

しかしながら、この領収書は、「旅館 大志茂」と上記「Yetiトレツキングツアー」との関係が不明であるばかりでなく、本件商標「Yeti」の表示もないので、この領収書をもって、上記「Yetiトレツキングツアー」の宿泊の取り次ぎ等について本件商標が使用されているとは認められない。

乙第17ないし第19号証は、「Namche Bazar Yeti トレツキングツアー」「花の百名山・早池峰山の山旅」「日程7月18日(土)」の募集広告のチラシ、登山計画書(参加者名簿)及びバス代金の請求書と認められる。

しかしながら、これらの証拠によれば、乙第17号証に「日程7月18日(土)」と記載されているように、日帰りのツアーであることが明らかであることから、提供に係る役務は、「主催旅行又はその取り次ぎ」の役務であって、「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」の役務ではない。

その他、提出に係る全証拠によっても、「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」の役務に本件商標を使用している事実は、発見できない。

(3)「宿泊施設の提供」について

被請求人は、「Yeti」を表示するホテルの事業経営を1992年より検討し、現在も検討中であるので、「宿泊施設の提供」の役務について、本件商標の不使用の正当な理由に当てはまる旨を述べている。

ところで、商標法第50条による商標登録の取り消し審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取り消しを免れないところである。

しかして、商標法は、本来、登録商標の使用を前提としていること、及び、不使用による商標登録の取消審判制度が設けられている趣旨からすると、登録商標の不使用つき商標法第50条第2項ただし書きにいう「正当理由」があるというためには、例えば、地震、台風等の天変地変、類焼、放火、破壊その他の第三者の故意又は過失による災害、法令による禁止等の当該商標権者の責めに帰すことのできない予見困難な事情があり、不使用を理由に当該登録商標を取り消すことが、社会通念上酷であるような場合をいうものと解するのが相当である。

そこで、これを本件についてみるに、被請求人は、「Yeti」を表示するホテルの事業経営を、1992年より検討を始め、現在も検討中であるとの事情は、登録商標を使用していないことについて被請求人(商標権者)の責めに帰すことのできない予見困難な事情があるとはいえず、また、不使用を理由に当該登録商標を取り消すことが、社会通念上酷であるとも認め難い。

2 以上のとおり、被請求人の提出に係る証拠及び被請求人の答弁の理由をもってしては、本件商標の使用の事実を確認することができないから、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが、本件商標を継続して本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、取り消し請求に係る指定役務について使用していなかったものといわざるを得ず、また、被請求人は、指定役務について使用していないことについて正当な理由があるものとも認められない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定役務についての登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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