結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2002−35363(T2002−35363/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4439770号商標(以下「本件商標」という。)は、「イオンシュタイン」の片仮名文字を横書きしてなり、平成11年12月26日登録出願、第11類「電球類及び照明用器具,工業用炉,原子炉,火鉢類,ボイラー,ガス湯沸かし器,加熱器,冷凍機械器具,乾燥装置,暖冷房装置,太陽熱利用温水器,浄水装置,家庭用電熱用品類,浴槽類,家庭用浄水器,水道蛇口用ワッシャー,汚水浄化槽,家庭用汚水浄化槽,洗浄機能付き便座,あんか,化学物質を充てんした保温保冷具,湯たんぽ」を指定商品として、同12年12月15日に設定登録されたものである。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第13号証(枝番を含む。)を提出した。
1.利害関係について
請求人は、米国の著名な理論物理学者である「Albert Einstein」(アルベルト アインシュタイン)博士の氏名、肖像、著作物の全てについての著作権について商業上利用する権利の所有者である(甲第2号証及び甲第3号証)。
したがって、請求人は、「Albert Einstein」の氏、氏名又はこれらと混同を生ずるおそれのある名称、商標その他の表示が他人によって商業上無断で利用されることを排除する権利と義務を有している。
本件商標は、「イオンシュタイン」の語よりなる商標であり、これより生ずる「イオンシュタイン」の称呼は、「Einstein」の称呼と混同を生ずる程類似していると思料されるので、これが商標として使用されることに重大な利害関係を有する。
よって、請求人は、本件審判請求について請求人適格を有する。
2.「Einstein/アインシュタイン」について
「Albert Einstein」博士(1879年−1955年)は、一般相対性理論の創作(1916年)で有名であり、1921年にはノーベル物理学賞を受賞している。
その業績の著名性の故に「Einstein/アインシュタイン」といえば「Albert Einstein/アルベルトアインシュタイン」博士を指すものとして広く世間に知られている(甲第5号証ないし甲第7号証)。
その著名性を利用して、「Albert Einstein」の名称、その略称、肖像等は、商品又は役務のプロモーションに利用されている(甲第8号証)が、これらから得られる収入は全て、物理学のみならず、科学技術を志す若い有望な学徒の育成、科学技術の振興など非営利事業に当てられている。
3.本件商標と引用標章の類似性について
本件商標は、請求人が引用する著名な物理学者の氏名である「Albert Einstein/アルベルト アインシュタイン」博士の略称として広く知られている「Einstein/アインシュタイン」(以下「引用標章」という。なお、審判請求の理由及び答弁に対する弁駁を通して、請求人の引用する標章が「Einstein/アインシュタイン」であるのか、片仮名表記の「アインシュタイン」であるのか判然としないところがあるが、上記のように、「Einstein/アインシュタイン」を引用標章として以下、審理する。)に類似する。
(1)称呼について
本件商標より生ずる「イオンシュタイン」の称呼は、8音中語頭の2音を除き、他の6音はその配列を含め引用標章の称呼「アインシュタイン」と同じである。
その相違する語頭部についてみるに、「イオ」と「アイ」は共に50音符のア行に属し、その配列は「イ」の音が置き替っているだけであって、全体としてみた場合、本件商標より生ずる「イオンシュタイン」の称呼と引用標章より生ずる「アインシュタイン」の称呼は、8音中7音が同じであり、その配列は「イ」の音が語頭にあるか2音目にあるかの相違のみで、他は全く同じである。
さらに、両者とも2音節に分けて称呼されるが、共に前節は弱く後節を強く称呼されるので、「シュタイン」の称呼が強く耳に聞こえ、記憶に残ることになる。
したがって、本件商標は、引用標章と称呼において混同を生じさせるに充分類似しているということができる。
(2)外観について
本件商標と「アインシュタイン」とは、外観上、語頭において「イオ」と「アイ」との差はあるが、全体としての文字配列、文字数を同じくし、その構成する文字が8文字中7文字を同じくすることと相まって混同を生ずる程に類似しているということができる。
4.商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、前記3.で述べたとおり、引用標章と称呼及び外観上類似しており、「アインシュタイン」の名称は、各種商品のプロモーションにライセンスされ使用されているので、本件商標がその指定商品に使用されるときは、それら商品が「Albert Einstein/アルベルト アインシュタイン」又は「Einstein/アインシュタイン」の使用について権利を有する請求人から許諾を受けているかのように、又は何らかの関連を有する商品であるかのように混同を生じさせるおそれがあること必定である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
5.商標法第4条第1項第19号について
「Einstein/アインシュタイン」の著名性をフリーライドしようとする商標出願は過去に幾つか試みられているが、何れも異議申立により、又は審査官の職権により登録は拒否されている(甲第9号証ないし甲第13号証)。
本件商標は、世界的にも著名な「Albert Einstein/アルベルト アインシュタイン」博士の著名な略称である「Einstein/アインシュタイン」に極めて類似していることは、前記3.で述べたとおりである。
「Einstein/アインシュタイン」の名称は、同博士の肖像を含め種々の商品にライセンスにより使用されていることは、前記2.で述べたとおりである。
したがって、引用標章に類似する本件商標をその指定商品に使用することは、上記に引用した審査例同様に「Einstein/アインシュタイン」の著名性を自己に有利にフリーライドする意図によるものと考えられて然るべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するというべきである。
6.答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、本件商標と引用標章から生ずる「アインシュタイン」とは語頭部「イオン」と「アイン」の差異があるから、両者は称呼上非類似であると主張するが、商標の称呼は、全体として称呼され聴取されることを忘れてはならない。
そして、商標が全体として称呼されたとき、時を所とを異にして聴取されるとき、聴者間に混同を生ずるか否かによって決せられるべきである。さらに、その混同は、本件商標の指定商品が電球等の照明用器具、ガス湯沸かし器、家庭用浄水器、あんか、湯たんぼのごとき一般消費材に用いられるときは、一般消費者の注意力を基礎に判断しなければならない。
かかる判断のあり方については、多くの判例、審決例の示すところであって、特許庁においても顕著な事柄であって、特に例示する程のことではないと信ずる。
(2)被請求人は、本件商標は引用標章とは外観において相異すると主張するが、本件商標は片仮名で構成されており、引用標章も片仮名で表示される。両者を構成する文字数は等しく8文字であり、その中6文字は、構成・配列共に同一である。しかも、引用標章は、一般の日本人間に科学者の名前として周知されている。
したがって、本件商標に接する一般消費者は、「ンシュタイン」の文字配列に惹かれ、加えて、残る2文字中1文字「イ」を同じくすることから、これを「アインシュタイン」と見違うおそれがあるから、本件商標は、引用標章と外観上類似のするといわなければならない。
(3)請求人は、何故被請求人が本件商標を出願するに至ったのか、真意を疑わざるを得ない。被請求人も認めているとおり、引用標章は、日本人間に周知されている科学者「Albert Einstein」の著名な略称である。しかも、本件商標は、引用標章に称呼、外観において混同を生ずる程類似している。
したがって、請求人(「被請求人」の誤記と認める。)の本件商標を採択しようとする真意は、請求人が引用する「アインシュタイン」の著名性を自己の有利にフリーライドせんとする意図であること明白である。
7.むすび
以上詳述した理由により、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
1.請求人は、本件審判請求の理由と同じ理由で、「本件商標の登録は取消されるべきである。」旨主張した商標登録異議の申立を行ったところ、特許庁は、平成13年9月13日付で「本件商標(登録第4439770号商標)は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号の規定に違反して登録されたものではない。」旨の異議の決定(乙第1号証)がなされたものであるが、それにもかかわらず、請求人は、本審判請求に及んだものである。
上記異議の決定の理由、結論は、妥当なものであり、被請求人は、これと全く同意見であるから、本件商標に無効理由はないものと確信する。
2.本件商標と引用標章の類否について
(1)称呼について
本件商標と引用標章は、それぞれの構成からみて、本件商標より「イオンシュタイン」、引用標章より「アインシュタイン」の称呼が生ずるものであるところ、両者は、拗音を含む7音よりなるものであって、たとえ、後半部分の「シュタイン」の称呼を同じくするものであるとしても、称呼における識別上最も重要な要素を占める語頭音において「イ」音と「ア」音の明らかな差異を有するばかりでなく、これに続く第2音においても「オ」音と「イ」音の差異を有すると共に、第3音に「ン」のはねる音を伴うことも相俟って、第2音の「オ」と「イ」の音にアクセントが掛かり、強く、明確に発音される音となることから、両者はその語頭部分に「イオン」と「アイン」の音構成において顕著な差異を有することとなり、その差異音が全体としての称呼に及ぼす影響は大きく、両者を各々一連に称呼するも、その語調、語
感が著しく相違するものである。
また、本件商標の語頭部分における「イオン」の文字(音)は、「正あるいは負の電荷をもつ電子」の意味合いを有する外来語として知られていること、他方、引用標章は、著名な物理学者として知られている「アルベルト アインシュタイン」の略称として著名な「アインシュタイン」であること等を合わせて考慮すれば、両称呼は、充分に聴別し得る差異を有するものといわざるを得ない。
(2)外観について
本件商標と引用標章は、共に文字商標(標章)として構成されていることからすれば、外観上においても充分に区別し得るものとみるのが相当であり、他に、両者を外観上、類似であるとしなければならない格別の理由も見出せない。
(3)その他、本件商標と引用標章とを類似の商標(標章)としなければならない理由は見出せない。
なお、過去において「イ」音と「ア」音の差異を有する両商標が類似するか否かについての審決例、判決例を調査したが、両商標が類似であるとした審決例、判決例は見出すことができなかったことを付言する。
3.むすび
本件商標と引用標章とは、前述のとおり、明確に区別し得る別異の商標(標章)であるから、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、引用標章を連想し、又は、想起せしめるものとは言い難く、その他人の経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわざるを得ない。
さらに、本件商標と引用標章とは非類似の商標であり、前述のごとき関係からみても、本件商標は、引用標章の著名性にフリーライドするものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項第1号によって無効とすべき理由はないものである。
1.商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用標章の称呼について
本件商標は、前記したとおり、「イオンシュタイン」の文字を書してなるものであるから、その構成文字に相応して「イオンシュタイン」の称呼を生ずるものである。
これに対して、引用標章は、物理学者として世界的に著名な「Albert Einstein(アルベルト アインシュタイン)」の略称である「Einstein」、「アインシュタイン」であるから、これより「アインシュタイン」の称呼を生ずるものである。
そこで、本件商標より生ずる「イオンシュタイン」の称呼と引用標章より生ずる「アインシュタイン」の称呼を比較すると、両称呼は、第1音において「イ」と「ア」の音の差異及び第2音において「オ」と「イ」の音の差異を有するものであるところ、これらの差異音は、いずれも明瞭に発音され、聴取される母音であって、称呼における識別上重要な要素を占める語頭部に位置するものであるから、これらの差異音が称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、それぞれを一連に称呼した場合においても、称呼上相紛れるおそれはないというべきである。
この点に関し、請求人は、両称呼は、8音中7音が同じであり、その配列は「イ」の音が語頭にあるか2音目にあるかの相違のみで、他は全く同じであるから、本件商標と引用標章は、称呼上類似する旨主張するが、その主張は、両称呼を全体として称呼した場合の音の配列を全く無視した独断論といわざるを得ず、採用することはできない。
(2)本件商標と引用標章の外観について
本件商標は、片仮名文字で「イオンシュタイン」と書してなるのに対し、引用標章は、「Einstein」か、我が国で表記される場合が多い片仮名文字の「アインシュタイン」であるから、引用標章が「Einstein」と欧文字で書された場合は、本件商標とは外観上明らかに相違するものである。
また、引用標章が「アインシュタイン」と片仮名表記された場合においても、看者の注意が最も強く惹かれる語頭部分において、「イオ」と「アイ」との文字の差異を有するばかりでなく、「アインシュタイン」の文字全体からは、著名な物理学者の名称を想起させるものであるから、全体として特定の観念を想起させない本件商標とは、その観念上の差異も相俟って、通常の注意力をもってすれば、見誤るおそれはないというべきである。
(3)出所の混同について
前記したとおり、本件商標は、構成全体をもって、特定の観念を有しない造語よりなるものであるのに対し、引用標章は、著名な物理学者の名称を表すものであるから、両商標は、観念上相紛れるおそれはないものであって、本件商標は、引用標章と商標それ自体において別個のものである。また、甲第8号証に掲載されている商品「Tシャツ」等が本件商標の登録出願前より、我が国において広く販売されていたという事実を立証する証拠はない。
そうすると、本件商標に接する需要者は、これより著名な物理学者の名称を想起することはないのみならず、引用標章が「Albert Einstein(アルベルト アインシュタイン)」の略称として著名であるとしても、これを使用した商品が本件商標の登録出願前より我が国において広く出回っているという事実は見当たらないから、需要者が引用標章を使用した商品と本件商標を使用した商品との間に、出所について混同を生ずる余地はないというべきである。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
他に本件商標が引用標章との間に混同を生じさせるおそれがあると認めるに足りる格別の事情は見出せない。
2.商標法第4条第1項第19号について
本件商標と引用標章とは、前記1.で認定したとおり、称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標であるばかりでなく、被請求人が本件商標につき不正の目的をもって使用をするものであるという証拠も見当たらないものである。
なお、請求人は、過去の審査例、審決例等を挙げ、本件商標は、引用標章の著名性にフリーライドする意図をもって出願、登録されたものであるから、その登録は無効とされるべきである旨主張するが、請求人の挙げた上記審査例、審決例等は、引用標章と同一綴りの欧文字よりなるものか、同一綴りの片仮名文字よりなるものであり、したがって、同一の称呼、観念を生ずるものである。しかし、本件商標は、前記したとおり、引用標章とは商標それ自体別個のものであるから、請求人の挙げた審査例、審決例等が本件における前記認定を左右するものではない。
3.以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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