Trademark Appeal Case
ナノハイテンの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2002−90417(T2002−90417/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4553560号商標(以下「本件商標」という。)は、「ナノハイテン」、「NANOハイテン」及び「NANO HITEN」の文字を三段に横書きしてなり、平成13年2月19日に登録出願され、第6類「鉄及び鋼」を指定商品として、平成14年3月22日に設定登録され、その後、指定商品中「鉄及び鋼(但し高張力鋼を除く。)」について商標権の放棄がなされ、その登録が平成15年2月19日にされているものである。
2 当審における取消理由の要点
登録異議申立人の提出した甲各号証によれば、鉄鋼を取り扱う業界及び学術の分野において、「ハイテン/HITEN」の語は、「高張力鋼(High Tensile Steel)」の略称として普通に使用されており、また、「ナノ /NANO」の語は、10億分の1を意味する接頭語であって、10億分の1メートルレベルで原子や分子を操って新しい材料の創出や新しい機能を引き出す技術である「ナノテクノロジー(超微細技術)」は、近年、材料分野を中心に注目を集めており、急速に研究、開発が進んでいる。そして、高張力鋼を含めて鋼を強化するものは析出物であり、この析出物をナノサイズ化することでより強化することができるところ、高張力鋼を含めた鉄及び鋼の分野でも、ナノレベルでの結晶構造、ナノレベルでの粒界制御等の研究は数多くなされており、析出物をナノサイズ化したり、その組織結晶がナノスケールで制御された商品が開発されており、「ナノ複合材料、ナノ結晶合金」の如く表示されている事実を認めることができる。
そうとすれば、本件商標は、全体として特定の意味合いを表す成語ではないとしても、「ナノ/NANO」の語と「ハイテン/HITEN」の語とを結合させることにより、その両語が持つそれぞれの品質表示的な意味合いを越えるものとは認められず、上記のような業界の実情のもとにあっては、これに接する取引者、需要者は、容易に「析出物をナノサイズ化した高張力鋼」の如き意味合いを表したものと理解、認識するにとどまるものというべきである。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品中の「析出物をナノサイズ化した高張力鋼」について使用しても、単に商品の品質を表したにすぎないものであり、また、上記商品以外の「鉄及び鋼」について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものである。
3 商標権者の意見の要点
(1)「ナノ/NANO」の語は「10億分の1」を示す接頭語として用いられ、ナノ単位の技術を「ナノテクノロジー」と称しており、その技術での生産物を「ナノ複合材料」、「ナノ結晶合金」の如く称してはいる。
しかしながら、「ナノ/NANO」の語は、「ナノ/NANO」単位で数える微細なという形容詞としての意味以外の意味合いを意味する語ではない。
(2)本件商標を構成する「ナノハイテン」「NANOHITEN」の語は、本件商標権者が造語した固有の創作語であって、本件商標登録出願前、本件商標権者が使用を始めるまでは当業界において存在していなかった語であり、当業者であっても、この語から商標の使用される商品の品質などを容易に認識、理解できるものではない。
(3)異議申立書の甲第21号証ないし甲第26号証に記されている知見は、本件商標の登録査定後に発表されたものか又は本件商標を使用する商品とは関係ないものである。
(4)したがって、本件商標が高張力鋼を意味する「ハイテン/HITEN」の語と組み合わせた造語であるとしても、そのことをもって「析出物をナノサイズ化した高張力鋼」という意味合いを容易に観念するとすることはできない。
(5)本件商標は「ハイテン/HITEN」の語を含む商標であり、「ハイテン/HITEN」は当業界では「高張力鋼」を意味する語として用いられることがある点に鑑み、商品の品質の誤認を避けるため、指定商品から「高張力鋼を除く鉄及び鋼」を放棄した。本件商標は商標法第3条第1項第3号に該当しない。
(6)よって、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。
4 当審の判断
商標権者は、上記のように意見を述べるが、本件商標の登録査定日である平成14年2月14日より前の下記の新聞記事情報が認められる。
(1)2001年9月6日付け「日刊工業新聞」3頁「巨大企業の挑戦/神戸製鋼所(11)商品戦略・薄板ーハイテン比率70%へ」の見出しの下、「・・・鉄鋼業界の主戦場である薄板の中で、神鋼が特に力を注ぐ高張力鋼板(ハイテン)。・・・ハイテンの開発ターゲットは「同業他社より強度で上回る鋼板の開発」(田中)という従来路線に加えて、「強度より加工性を重視した鋼板。(鉄の結晶をナノ単位で制御することで)例えば自動車ボディーは強度60キログラムクラスで加工性を高めた製品の開発を目指す」・・・」との記事
(2)2001年2月22日付け「読売新聞」東京朝刊8頁「ナノテク利用の自動車用鋼板 NKKが世界初の実用化」の見出しの下、「NKKは二十一日、世界で初めて、ナノテクノロジー(超微細技術)を利用して高い強度と加工性を両立させた、自動車用の高張力鋼板(ハイテン)の実用化に成功したと発表した。自動車メーカーは車の軽量化と衝突安全性能を両立させるため「ハイテン」の使用比率を高めている。ナノテクを駆使した新鋼板の登場で、鉄鋼大手の開発競争に一段と拍車がかかりそうだ。・・・」との記事(3)2001年2月22日付け「日刊工業新聞」24頁 「NKK、加工性を向上させた80キログラム級甲高張力鋼板を開発」の見出しの下、「NKKは21日、析出(せきしゅつ)物を細分化することで加工性を向上させた80キロg級熱延ハイテン(高張力鋼板)を開発、自動車メーカーへのサンプル出荷を開始したと発表した。鉄の結晶粒(通常10マイクロメートル)の間を埋める析出物を、従来の数十分の1以下に当たる数ナノメートルに超微細化することで、高強度と同時に加工性(伸び・穴広げ率)も従来の80キロgハイテンより1・3倍以上向上した。・・・」との記事
そして、これらの新聞記事情報からすると、鉄鋼業界においては、本件商標の登録査定前に、ナノテクノロジー(超微細技術)を利用して高い強度と加工性を両立させた高張力鋼板(ハイテン)が知られていたものと認められる。
また、ナノテクノロジーを利用した新素材である「ナノ複合材料」、「ナノ結晶合金」は、本件商標の登録査定前より商品化されていたものである。 してみれば、「ナノハイテン」「NANOHITEN」という既成の語がないとしても、本件商標に接する取引者、需要者は、その「ナノ」「NANO」の文字部分はナノテクノロジー(超微細技術)という意味であり、本件商標全体で「ナノテクノロジーにより生産された高張力鋼板(ハイテン)」との意味であると直ちに理解、認識するものと認めざるを得ない。
そうすると、本件商標は、前記の「ナノテクノロジーにより生産された高張力鋼板」に使用しても、その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきである。
また、本件商標は、商標法第3条第2項の規定により、登録を受けたものでない。
次に、商標権者は、商品の品質の誤認を避けるため、指定商品から「高張力鋼を除く鉄及び鋼」を放棄した旨主張するが、商標権の放棄の効果は商標権の設定登録時にさかのぼるものではなく、本件商標は、その設定登録時の指定商品に含まれていた「高張力鋼を除く鉄及び鋼」に使用した場合、それが「高張力鋼(板)」であるかのように商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものである。
よって、商標法第43条の3第2項の規定に基づき、結論のとおり決定する。
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