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Trademark Appeal Case

BGAの普通名称性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年異議第90511号
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4222769号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4222769号商標(以下「本件商標」という。)は、平成8年7月1日に登録出願され、「BGA」の文字と「Ball Grid Array」の欧文字とを二段に横書きしてなり、第9類「電気磁気測定器,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電池,電線及びケーブル」を指定商品として、同10年12月18日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立の理由

株式会社日立製作所、株式会社東芝、富士通株式会社及び日本電気株式会社は、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第1号、同第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものであるから取り消されるべきである旨主張している。

3 本件商標に対する取消理由

本件商標は、「BGA」と「Ball Grid Array」の文字とを二段に併記してなり、第9類「電子応用機械器具」等を指定商品とするものであるところ、大規模集積回路(LSI)を取扱うこの種業界において「セラミックまたはプラスチックのプリント配線基板に半導体チップを搭載、封止し、そのプリント配線基板に、外部端子となる金属ボールを格子状に配置したLSI(大規模集積回路)パッケージ」を「Ball Grid Array(ボールグリッドアレイ)」或いは「BGA」と称し、表示している実情がある。

してみれば、本件商標は、「BGA」と「Ball Grid Array」の文字よりなるものであり、これをその指定商品中「大規模集積回路パッケージ」について使用した場合、商品の普通名称及びその略称を表示するものであり、また、その指定商品中、例えば「セラミックまたはプラスチックのプリント配線基板に半導体チップを搭載、封止し、そのプリント配線基板に、外部端子となる金属ボールを格子状に配置したLSI(大規模集積回路)パッケージを搭載した機械器具」について使用した場合、商品の品質、構造を普通に用いられる方法で表してなるに過ぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たさないものであり、前記商品以外の商品について使用するときは、該商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第1号、同第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見要旨

(1)商標権者及びMotorola,Inc.が「セラミックまたはプラスチックのプリント配線基板に半導体チップを搭載、封止し、そのプリント配線基板裏面に外部端子となる金属ボールを格子状に配置したLSI(大規模集積回路)パッケージ(以下「本件パッケージ」という。)」を考案し、このパッケージを「Ball Grid Array」と命名し、その略称である「BGA」と共に使用し普及に努めてきた。

(2)本件商標は、「BGA/Ball Grid Array」であるが、「Ball Grid Array」は、商標権者の登録商標(登録第3370248号商標)である(乙第7号証)。また、その登録の際にも異議申立を受けたが、商標権者の主張が認められ登録されたものである。

(3)「最新LSIパッケージ名称・用語集」(乙第9号証第104頁)では、「プリント配線基板の裏面に球形のハンダをアレイ状に並べ、リードの代わりにする表面実装型パッケージ」を指す専門用語をパッド・アレイ・キャリヤ(PAC)と称する旨記載されているが、この名称こそが本件パッケージの開発当時の普通名称であり、当時、本件パッケージを総称してパッド・アレイ・キャリヤ(PAC)と称した事実が明らかである。また、近年では、本件パッケージを「CSP(Chip Size Package)」と称する(東芝 甲第11号証等)。これは、BGAが商標権者の商標であることを意識して、正しい普通名称を使用しようとするものである。

(4)本件商標中の「BGA」自体は、何ら商品の品質、構造を表したものではない。「BGA」の名称が「Ball Grid Array」の略称であり、それがたとえ「セラミックまたはプラスチックのプリント配線基板に半導体チップを搭載、封止し、そのプリント配線基板に、外部端子となる金属ボールを格子状に配置したLSI(大規模集積回路)パッケージを搭載した機械器具」を暗示するものであっても、直接的にその形状等を意味するものではない。また、「BALL GRID ARRAY」の名称は「ボール」「格子」「配列」の意味を含む英単語から構成されるが、この3語の組み合わせが直ちに「セラミックまたはプラスチックのプリント配線基板に半導体チップを搭載、封止し、そのプリント配線基板に外部端子となる金属ボールを格子状に配置したLSI(大規模集積回路)パッケージ」を意味しない。商標権者が新しい半導体パッケージ構造を発明し、そのパッケージに「BALL GRID ARRAY」(造語)と命名し、使用し、その普及に努力した結果、「BALL GRID ARRAY」がモトローラの新しい半導体用パッケージを指すものと解されるに至ったものである。

(5)ソニーは、本件パッケージを「TGA(Thin Grid Array)」と呼んでいる。

IBMは、IBMシステム370に使用し、「C4(controlled collapse chip connection)」と称する。

NECは、スーパーコンピュータSX−2のCPUに使用し、「FTC(flipped TAB carrier)」と称する。

日立製作所は、大型コンピュータM−880に使用し、「MCC(micro carrier for LSI chip」と称する。

(6)以上の理由により、本件商標は、商標法第3条第1項第1号、同第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しないものである。

5 当審の判断

本件商標は、前記のとおりの構成からなるところ、異議申立人各社提出の辞典、書籍類、例えば、日本電気株式会社提出の甲第2号証「半導体製造装置用語辞典 第4版」(1997年11月20日第4版1刷 日刊工業新聞社発行)には、用語の欄に「BGA」、意味の欄に「パッケージ底面にボールバンプをマトリックス配置した表面パッケージの総称。」、英語の欄に「ball grid array」と記載されており、また、株式会社日立製作所提出の甲第4号証「英和コンピュータ用語大辞典第2版」(1996年7月22日第1刷 日外アソシエーツ株式会社発行)には、「ball grid array<BGA>小型化を計ったLSIパッケージ」と記載されており、富士通株式会社提出の甲第3号証「半導体パッケージング工学」(1997年1月10日初版1刷 日経BP社発行)には、「・・最近注目されてきたBGA(ball grid arrayまたはbump grid array)パッケージがある。ピンを取り除き、そのかわりの突起状の電極を格子状に配置したものである。・・BGAは表面実装のため・・小型実装に適している。」と記載されており、株式会社東芝提出の甲第3号証「最新LSIパッケージ名称・用語集」(NIKKEI ELECTRONICS 1993.8.2)には「BGA/ball grid array」の項に「ボール・グリッド・アレイ。表面実装型パッケージの一種。プリント配線基板の裏面に球形のハンダをアレイ状に並べ、リードの代わりにする。プリント基板の表面にLSIチップを載せ、モールド樹脂あるいはポッティングで封止する。」と記載されている。

また、「ball grid array」及び「BGA」の語は、日経エレクトニクス、電子材料等の雑誌類においても頻繁に使用されているばかりでなく、東芝パッケージカタログ(株式会社日立製作所提出の甲第9号証)、三菱電機ICパッケージカタログ(株式会社日立製作所提出の甲第10号証)、日本テキサス・インスツルメンツ株式会社のカタログ(株式会社東芝提出の甲第5号証)、日本電気株式会社のカタログ(株式会社東芝提出の甲第8号証)等においてもBGAに関する製品が紹介されており、更に、特許公開公報においても「ボールグリッドアレイ半導体装置及びその実装基板(特開平7−193162)」、「BGA型半導体装置(特開平7−297320)」、「ボールグリッドアレイの製造方法(特開平7−312399)」、「BGAパッケージとその製造方法(特開平8−8511)」、「ボールグリッドアレイパッケージ及びそのボールグリッドアレイの形成方法(特開平8−51178)」(いずれも日本電気株式会社提出の甲第13号証、同第15号証ないし同第18号証)等々のように、その発明の名称中に「BGA」あるいは「ボールグリッドアレイ」の語が用いられている事実を認めることができる。

そして、電子機器の小型化や薄型化のために、さまざまな形状や構造のLSIパッケージが開発されてきたところ、商標権者提出の乙第2号証(日経エレクトロニクス 1993年8月2日発行)には、「quad flat package」を「QFP」と、「tape carrier package」を「TCP」と表示して紹介されており、株式会社東芝提出の前記した甲第3号証には、「dual in−line package」を「DIP」と、「land grid array」を「LGA」と、「dual tape carrier package」を「DTCP」等々のように表示して紹介されており、この種業界においては、パッケージの英語名称の頭文字の3字ないし4字を取って表しているのが実情であると認められる。

上記事実に照らしてみれば、大規模集積回路(LSI)を取扱う業界においては、「Ball Grid Array」の語及び「BGA」の語は、「セラミックまたはプラスチックのプリント配線基板に半導体チップを搭載、封止し、そのプリント配線基板に、外部端子となる金属ボールを格子状に配置したLSI(大規模集積回路)パッケージ」を表すものとして、本件商標の登録査定時ばかりでなく出願前においても、取引上普通に使用されていたものであり、上記LSI(大規模集積回路)パッケージを表す普通名称及びその略称を表すものとして理解・認識されていたものということができる。

この点について、商標権者は、商標権者及びMotorola,Inc.が「セラミックまたはプラスチックのプリント配線基板に半導体チップを搭載、封止し、そのプリント配線基板裏面に外部端子となる金属ボールを格子状に配置したLSI(大規模集積回路)パッケージ」を考案し、このパッケージを「Ball Grid Array」と命名し、その略称である「BGA」と共に使用し普及に努めてきた結果、該語がモトローラの新しい半導体用パッケージを指すものと解されるに至ったものである旨主張している。

しかしながら、商標権者提出の乙第6号証「日経エレクトロニクス」(1994年2月14日発行)の66頁の囲み記事によれば、「BGAの考え方は1960年代から」の表題のもとに「部品に取り付けたハンダの突起(ボールあるいはバンプ)を利用するBGA技術は、もともとは、大型コンピュ−夕やスーパーコンピュ−夕などのCPUボードに使われてきた。性能を極めて重視する機器の高密度実装技術である。」とあり、また、63頁には、「比較的安価な一般の電子機器に使い始めたのは、Motorola社である。同社のLand Mobile Products Sectorが日本のシチズン時計のLSIパッケージ組み立て部門と共同で樹脂基板のBGA(プラスチックBGA)を1991年に開発した。・・・Motorola社の半導体部門などがLSIチップを製造し、シチズン時計がプラスチックBGAに組み立てた。」と記載されている。

上記の資料によれば、「BGA」の技術は既に、1960年代から存在しており、もともとは、大型コンピュ−夕やスーパーコンピュータなどのCPUボードに使われてきたものであって、「BGA」の技術自体は古くから存在していたものであったということができる。そうとすれば、パッケージの多端子化、小型化等のニーズに対応するため、Motorola社の半導体部門と日本のシチズン時計が共同で樹脂基板のBGAを開発し、これを最初に一般の電子機器に使い始めたのがアメリカMotorola社であったとしても、前記認定のとおり、「Ball Grid Array」の語及び「BGA」の語は、前記したLSI(大規模集積回路)パッケージの普通名称及びその略称として、本件商標の登録査定時においては既に、取引上普通に使用されていたものであるから、この点についての商標権者の主張は採用出来ない。

また、商標権者は、乙第9号証「最新LSIパッケージ名称・用語集」に記載されているように、パッド・アレイ・キャリヤ(PAC)の名称こそがBGAの開発当時の普通名称であり、近年では、東芝提出の甲第11号証等に記載されているように「CSP(Chip Size Package)」の名称がBGAの正しい普通名称である旨主張している。

しかしながら、乙第9号証では「BGA(Ball Grid Array)」の項目の説明の中で、「パッド・アレイ・キャリヤ(PAC)とも呼ぶ。」と記載されているものであり、この記述からみれば、「BGA」が主体であり、この「BGA」を称して「パッド・アレイ・キャリヤ(PAC)」とも呼ぶとしているものであるから、上記LSIパッケージの正式な普通名称が「パッド・アレイ・キャリヤ(PAC)」であるとする商標権者の主張は採用し難い。

また、株式会社東芝提出の甲第11号証には「BGAは文字通り外部端子をパッケージの下側に格子(グリッドアレイ)状に配列する構造をとる。一方、CSPはBGAの超小型版というイメージで、マイクロBGA(μBGA)、ファインピッチBGA(FBGA、FPBGA)、miniBGAなどと呼ばれ、BGAと同様の端子構造をとるものが多い。しかし、格子状配列以外の構造も種々開発されているため、総称としてはチップサイズないしチップスケールパッケージ(共に略称はCSP)と呼ばれている。」と記載されおり、富士通株式会社提出の甲第4号証(回路実装学会誌 vol.11 No.2 1996年3月20日発行)には「BGAといえどもまだ外形が大きく、基板への実装効率が悪いため、超小型や高速の電子機器実装では問題が出てくる。そこでさらに端子ピッチを1.0mm以下に縮めてパッケージの小型化を徹底的に追及し、ベアチップサイズに近づけたのがCSPである。したがって、・・CSPがBGAの延長線上にあるとはいえ、本質的にはBGAとは存在意義が異なるといえよう。」と記載されている。これらの記述によれば、CSP(Chip Size Package)はBGAの超小型版のものであり、BGAを含めた総称としてCSPと呼ばれることがあるとしても、商標権者が主張しているように、CSPがBGAの正しい普通名称であるという関係にはないものというべきであるから、この点についての商標権者の主張も採用できない。

なお、商標権者及び異議申立人各社提出の資料を検討するも、「BGA」がアメリカMotorola社の商標であると認めるに足る記述は一切なく、また、商標権者は、アメリカMotorola社がその母国である米国において「BGA」の語について商標登録を有していたことを裏付ける証拠も提出していない。

してみれば、本件商標は、これをその指定商品中の「セラミックまたはプラスチックのプリント配線基板に半導体チップを搭載、封止し、そのプリント配線基板に、外部端子となる金属ボールを格子状に配置したLSI(大規模集積回路)パッケージ」について使用した場合、商品の普通名称及びその略称を表示するものであり、また、指定商品中「上記のLSI(大規模集積回路)パッケージを搭載した機械器具」について使用した場合には、これに接する取引者・需要者をして、該LSI(大規模集積回路)パッケージを使用した商品であることを理解させるにとどまるものであるから、商品の品質を表してなるに過ぎないものであり、これらの商品以外の指定商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第1号、同第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたと認められるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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