結論テキスト
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2002−35302(T2002−35302/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4452081号商標(以下「本件商標」という。)は、「コンプリート」の文字と「complete」の文字とを二段に横書きしてなり、平成11年12月28日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」を指定商品として、同13年2月9日に設定登録、その後指定商品については、「つや出し剤、靴クリーム、靴墨、塗料用剥離剤」について一部放棄がされ、その抹消の登録が同14年8月27日にされ、さらに、商標登録の無効の審判により「つや出し剤、靴クリーム、靴墨、塗料用剥離剤」について無効とすべき旨の審決がされ、その確定の登録が同15年4月2日にされているものである。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第100号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)請求人の商標「コンプリート/COMPLETE」の著名性について
請求人は、2002年に米国カリフォルニア州アーバインに設立された。請求人は、コンタクトレンズ洗浄剤、保存剤等のコンタクトレンズケア用品、抹消神経系用薬剤等の医薬品、眼内レンズ等の医療用具の製造、販売を行っている同住所に所在するアラーガン インコーポレイテッド(以下「アラガン社」という。)から、コンタクトレンズ洗浄剤、保存剤等のコンタクトレンズケア用品、眼内レンズ、手術用機械器具等の医療用具の製造、販売を2002年6月より引き継いだ米国法人である(甲第2号証)。
しかして、アラガン社は洗浄・消毒・保存が1液でできるコンタクトレンズケア液を開発し、これに商標「コンプリート/COMPLETE」を採用し、1992年より米国で販売が開始された。洗浄・消毒・保存が一つの液を利用して一度で行える便利な商品であることから、世界中の多くの国で販売され、現在では、請求人(アラガン社)は商標「COMPLETE」にかかる商品を世界の70か国以上の国で販売し(甲第3号証)、かかるコンタクトレンズ洗浄・消毒・保存液の世界的販売のため、商標「COMPLETE」の出願を世界各国で行い、その結果、今日では50か国以上もの国で登録を獲得し、これらの国において「COMPLETE」を独占的に使用し、当該商標にかかる「コンタクトレンズ洗浄・消毒・保存液」を販売している。
そして、「COMPLETE」にかかる商品の1997年からの販売数及び売上高は、甲第6号証に示すように、全世界で、1997年には6555万2579ドル、2217万2694ユニット、ないし、2000年には1億2470万2479ドル、3391万4570ユニットである。
したがって、「COMPLETE」は、「コンタクトレンズの洗浄、消毒、保存液」にかかる請求人(アラガン社)の商標として、本件商標の出願前から世界的に周知、著名な商標であったことは疑いない。
さらに、我が国においては、アラガン社の子会社であるアラガン株式会社(以下「日本アラガン社」という。)を通じて1999年4月より「COMPLETE」にかかる「コンタクトレンズ洗浄・消毒・保存液」の販売が開始された。発売当初から人気があり、発売の初年度の1999年でも小売ベースで15億円を売り上げ、2000年では40億円もの売上を挙げている(甲第7号証)。また、請求人(アラガン社)の商品は、我が国への導入当時から各種新聞、雑誌に取り上げられた(甲第8号証及び同第9号証)。
さらに、日本アラガン社は、商品の宣伝広告のため池袋、品川、新宿、新橋、横浜等の多くの駅の構内に広告物を貼り(甲第10号証)、テレビジョンのコマーシャルでも「COMPLETE」にかかる商品の宣伝を行い(甲第11号証ないし同第98号証)、商品のカタログ、新聞広告等(甲第99号証及び同第100号証)と合わせて広範な商品の宣伝広告活動を大々的に行ってきた。特に、「COMPLETE」の広告が貼られた駅は我が国で特に利用客の多い駅である。また、テレビコマーシャルは、平成11年6月から同年9月の期間だけでも、日本全国の29社ものテレビ局を通じて、ほとんど毎日のように様々な時間帯で放映されている。しかして、テレビコマーシャルを媒体とした宣伝広告は、わずかな期間であっても、極めて多くの人々に商品を認知させることができるものであるから、商標「COMPLETE」は、本件商標の出願日には請求人(アラガン社)の商標として、我が国において、コンタクトレンズ洗浄液、保存液の需要者、取引者ばかりでなく、一般人の間でも広く知られた周知、著名な商標となっていたことは疑いない。
(2)混同の可能性
本件商標は、前述のように「せっけん類、香料類、化粧品、歯磨き、つや出し剤」等を指定商品とするものである。しかして、請求人(アラガン社)の商標「COMPLETE」が使用されている「コンタクトレンズ洗浄・消毒・保存液」は、一般の薬剤のように人の病気を治療することを目的とするものではなく、物の洗浄等を行うものであるから、せっけんに近似した用途を有するものである。したがって、現実の販売においても、「コンタクトレンズ洗浄・消毒・保存液」は一般の薬局、薬店におかれ、誰もが手に入れることができる商品であり、また、通常、一般人はかかる商品を薬の認識の下で購入することはない。したがって、「コンタクトレンズ洗浄・消毒・保存液」の内容、現実の販売形態、需要者の認識に照らせば、「コンタクトレンズ洗浄・消毒・保存液」と「せっけん類」は類似商品といってもよいほど極めて近似した商品であり、さらに他の商品も近似した商品である。
(3)結論
したがって、本件商標が指定商品について使用された場合、本件商標に接する需要者、取引者は、当該商標を請求人あるいはアラガン社の商標と認識し、本件商標の使用にかかる商品が、請求人(アラガン社)の商品かあるいは請求人(アラガン社)と経済的又は組織的に関係のある者によって製造され、販売されている商品であるかの如く商品の出所について誤認、混同を生じる可能性が高いというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、同法第46条の規定により無効にされるべきものである。
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第3号証(枝番を含む。)を提出している。
(1) 請求人の標章の周知度(広告、宣伝等の程度又は普及度)
請求人は、甲第11号証ないし同第98号証によって、テレビコマーシャルの放送時刻等を提示して、テレビコマーシャルを媒体とした宣伝広告は、わずかな期間であっても、極めて多くの人々に商品を認知させることができるものであるから、29社もの全国のテレビ局を通じたコマーシャルにより、請求人の「COMPLETE」は直ちに全国の人々に認識されたということができると主張する。
しかしながら、当該平成11年6月から同年9月までのわずか4か月間のテレビコマーシャルで、本件商標の出願時に商標法第4条第1項第15号に該当する程度に周知であったとするのは、甚だ困難な主張であり、具体的な根拠が不足する。
しかも、請求人標章の使用態様が不明確なものであり、周知度を立証する証左としては不十分なものである。
また、請求人は、甲第10号証で1999年6月に商品の宣伝広告のため池袋、品川、新宿、新橋、横浜、等の多くの駅の構内に広告物を貼ったと主張する。
しかしながら、当該広告物を貼った時期と事実が不明確であり、当該広告物によって、本件商標の出願時及び査定時に請求人標章の周知度を立証する証左としては不十分なものである。
(2)請求人の標章が創造標章であるかどうか
本件商標は、「全部の、完璧な、完全な」等の明確な意味を有する英語(乙第1号)である。すなわち、本件商標は、既成語からなる商標であり、創造標章ではない。
しかも、本件商標は、中学学習程度の基本語約1000語に該当する極めて基本的な英単語である(乙第1号証)。
また、「コンプリート」若しくは「COMPLETE」は、複数のものに商標として採択されている(乙第2号証の1ないし11)。
以上のとおり、「コンプリート」「COMPLETE」ないし「complete」(以下、「コンプリート等」という。)は、多くの事業者によってそれぞれ自己の取扱商品に使用されている。したがって、需要者は、請求人標章以外の標章「コンプリート」等を付した商品にも日々接しているから、それぞれの「コンプリート」等を付した商品ごとにそれぞれの事業者を識別して認識しているというべきである。すなわち、このように多くの事業者によって使用されている標章では、非類似商品にわたって混同が生じることはないというべきである。
なお、請求人の標章は、ほとんど通常書体で使用されており、デザイン上の独自性も認められない。
(3)請求人の標章がハウスマークであるかどうか
請求人の標章「COMPLETE」は、商品ごとに使用される商標であるペットマークにすぎない。
(4)商品間の関連性
請求人は、「石けん」との関係において、「物の洗浄等を行うものであるから、せっけんに近似した用途を有するものである。」と主張する。
しかしながら、請求人の商標は「コンタクトレンズ用」の、特に「ソフトレンズ用」の商品に限定されており、これは他の物の洗浄等に転用できない商品だから、需要者は、請求人の会社を「ソフトレンズ用品の取扱業者」と認識するのが普通である。
したがって、化粧石けんや洗濯石けんなどの取扱業者とは、明らかに相違する事業者と認識するのであって、混同を生じることはない。
(5)結論
請求人が周知・著名なことを証明する証拠として、具体的な取引書類等の提出がなく、請求人標章の使用態様、使用時期、使用期間が不明確であることから、請求人の標章が請求人の製造・販売に係る商品「コンタクトレンズ洗浄・消毒・保存液」の標章として、周知・著名な標章であると認められない。
また、請求人の標章は創造標章ではなく、かつ、独自性もない。さらに、商品間の類似性も認められない。
したがって、本件商標をその指定商品に使用した場合であっても、請求人又は請求人と関係のあるものの業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認められない。
(1)請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 医薬品、医療用具、コンタクトレンズケア用品のグローバルヘルスケア企業アラガン・インク(米カリフォルニア州)の日本法人・アラガンは、1液で洗浄・すすぎ・消毒・保存が可能なソフトコンタクトレンズ用消毒剤(以下「コンタクトレンズ用消毒剤」という。)の「コンプリート」を平成11年4月20に発売する。該コンタクトレンズ用消毒剤は、既に海外の80か国以上で販売されていると新聞に掲載された(第8号証、1999年(平成11年)4月13日付「流通サービス新聞」)。
イ コンタクトレンズ用消毒剤の容器及び包装箱には、「コンプリート」及び「COMPLETE」の両文字が大きく表示されていた(甲第99号証及び同第100号証、ユーザーパンフレット(1999(平成11年)年4月20日)、及び1999年(平成11年)4月22日付け「日本経済新聞社」掲載の広告)。
ウ 日本におけるコンタクトレンズ用消毒剤のコンプリートの売上高は、小売ベースで平成11年で15億円、平成12年で40億円であった(甲第7号証、2001年5月8日付日本アラガン社の書面)。
エ コンタクトレンズ用消毒剤のコンプリートに関するテレビコマーシャルが、平成11年6月から同年9月の間に、北海道文化放送株式会社、北海道テレビ放送株式会社、北海道放送株式会社、東北放送株式会社、株式会社仙台放送、株式会社フジテレビジョン、株式会社東京放送、全国朝日放送株式会社、株式会社テレビ東京、株式会社テレビ静岡、静岡放送株式会社、名古屋テレビ放送株式会社、東海テレビ放送株式会社、テレビ愛知株式会社、中部日本放送株式会社、関西テレビ放送株式会社、朝日放送株式会社、株式会社毎日放送、株式会社テレビ新広島、株式会社広島ホームテレビ、株式会社中国放送、株式会社テレビ西日本、アール・ケー・ビー毎日放送株式会社、九州朝日放送株式会社、株式会社ティー・エックス・エヌ、株式会社テレビ熊本、株式会社熊本放送、株式会社南日本放送、KTS鹿児島テレビ放送株式会社の29社のテレビ局で放映された(甲第11号証ないし同第98号証、テレビスポット放送確認書)。例えば、株式会社東京放送(TBS)による1999年(平成11年)6月の1か月における放送回数は、107回であった(甲第28号証)。
以上の事実によれば、我が国において、米国のアラガン・インク(米カリフォルニア州)の日本法人である日本アラガン社が1999年(平成11年)4月に発売したコンタクトレンズ消毒剤の「コンプリート」について、日本アラガン社は、日本各地のテレビ局でテレビコマーシャルを集中的に放送したことが認められる。
また、上掲の甲第7号証(2001年5月8日付日本アラガン社の書面)に「・・・当社製品COMPLETE(コンプリート)に関する印刷物、駅構内広告看板の写真・・・をお送りします・・・」と記載され、甲第10号の「駅構内の広告看板 1999年6月」と記載され、また、コンタクトレンズ用消毒剤のコンプリートの広告看板が掲示されている状態を撮影した写真を複葉並べて複写したと認められる書類には、該複葉の写真の下部に、新宿駅、渋谷駅、品川駅、新橋駅、有楽町駅、秋葉原駅、上野駅、横浜駅、池袋駅、恵比寿駅、東京駅、自由が丘駅、都立大学駅、武蔵小杉駅、下北沢駅、登戸駅、向ヶ丘遊園駅、新百合ヶ丘駅、玉川学園駅、町田駅、吉祥寺駅等の文字が記載されている。これらによれば、日本アラガン社は、平成11年6月頃に、東京の中心部の乗降客の多い駅において広告看板を掲げることにより宣伝広告をしたものと推認することができる。
そして、これらの宣伝広告の結果、平成11年4月に発売されたコンタクトレンズ消毒剤の「コンプリート」は、同年に小売ベースで15億円の売上があったことが認められる。
以上を総合すれば、日本アラガン社が我が国において発売するコンタクトレンズ消毒剤に使用されている「コンプリート(COMPLETE)」の文字よりなる商標は、本件商標の登録出願の時には、我が国において、取引者、需要者の間に広く認識され著名性を獲得していたものといわなければならない。
(2)本件商標の指定商品は、前記1のとおり、第3類に属する「せっけん類、香料類、化粧品、歯磨き、研磨紙、研磨布、研磨用砂、人造軽石、つや出し紙、つや出し布」であるところ、その指定商品中「せっけん類、香料類、化粧品、歯磨き」は、コンタクトレンズ消毒剤とは、用途において近似し、また、スーパーマーケットやコンビニエンスストアにおいて近接した場所で販売され、需要者層も共通していることよりすると、これらの商品は互いに密接な関連性を有する商品と判断するのが相当である。
これに対し、本件商標の指定商品中「研磨紙、研磨布、研磨用砂、人造軽石、つや出し紙、つや出し布」については、その用途、販売場所、需要者層等よりして、コンタクトレンズ消毒剤とは別異の商品というべきである。
そうとすれば、本件商標をその指定商品中「せっけん類、香料類、化粧品、歯磨き」について使用した場合、これに接した取引者、需要者は、該商品を日本アラガン社又は同社と経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同するおそれがあるものと判断するのが相当である。
してみれば、本件商標は、その指定商品中「せっけん類、香料類、化粧品、歯磨き」については、商標法第4条第1甲第15号の規定に違反して登録されたものである。
したがって、本件商標は、その指定商品中「せっけん類、香料類、化粧品、歯磨き」については、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものであり、その余の商品については、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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