Trademark Appeal Case
マングローブ染の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2000−5047(T2000−5047/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「マングローブ染」の文字を標準文字により書してなり、第24類及び第25類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成11年3月12日に登録出願されたものであるが、その後、指定商品については、平成12年1月17日付け手続補正書をもって、第24類「染織物(畳べり地を除く。),布製身の回り品,染織物製テーブルナプキン,敷布,布団カバー,まくらカバー,染織物製いすカバー,染織物製壁掛け,染織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,染織物製トイレットシートカバー」及び第25類「被服,履物」に補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『マングローブ染』と一連に書してなるものであるところ、指定商品との関係においては、熱帯の海岸沿いの海水と淡水が混じり合う場所に生育する『マングローブ』と呼ばれる数種類の植物の樹皮からとった液体を用いて染めた製品が取り引きされている実情があることから、本願商標をその指定商品中、上記の照応する商品について使用するときは、商品の品質を表示するに過ぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
本願商標は、「マングローブ染」の文字よりなるところ、その構成中前半の「マングローブ」の文字は、「熱帯・亜熱帯の浜辺や河口などに生える常緑樹の総称」(外来語辞典:株式会社ナツメ社発行)を意味する外来語として知られるものであり、また、後半の「染」の文字は、商品が「染物」であることを認識させるものである。
そして、「マングローブ染」の文字について、当審において職権により調査したところ、「マングローブ」及び「マングローブ染」の文字が、商品の品質等を表示するものとして、各種辞典類及び各種新聞に、次のような紹介記事とともに掲載されていることが認められたので、その旨請求人に通知した。
(1)各種辞典類
(ア)「マングローブ入門」(98年4月16日、株式会社めこん発行)
「日本でマングローブ植物を利用したものとして、私たちが現在も見ることができるのは、草木染めの染料である。赤茶系の色の『丹殻』と呼ばれるもので、沖縄の織物である『紅型』とか八重山の『ミンサー』などにかなり古くから使用されていたようだ。」との記述。
(イ)「草木染の辞典」(昭和56年3月10日、東京堂出版発行)
「雄蛭木(おひるぎ)・・・マングローブの一種でがくは赤色、葉は大きく・・・樹皮はタンニンが多く、江戸時代に輸入されて丹殻と称して染色に用いていた」との記述。
(ウ)「染色加工の辞典」(99年6月20日、株式会社朝倉書店発行)
丹殻とは、「マングローブあるいはヒルギ(紅樹、蛭木)と呼ばれる染色植物の一種。ヒルギ科の植物にはいくつもの種類があるが、いずれも染色に供される。樹皮を使用するが、カテコールタンニン類を22〜42%と多量に含んでおり、鉄媒染で絹や木綿を黒茶色に染める。」との記述。
(2)各種新聞
(ア)1999年2月2日付け沖縄タイムス夕刊5面
「マングローブ染」の文字について、「西表島のマングローブ染めが人気」との見出しが付けられている。
(イ)1999年4月19日付け琉球新報夕刊6頁
「特集はカラー五ページ。・・・カヌーツアー、マングローブ染め、日本最南端の・・・」との記事。
(ウ)2001年6月21日付け琉球新報夕刊6頁
「マングローブを原料にした染め物『マングローブ染め』を紹介しようと、染色家の須永真知子さん・・・、『マングローブ染め』は従来の草木染めの手法を用いて、マングローブの樹皮をはいで・・・」との記事。
(エ)2001年7月5日朝日新聞東京朝刊32頁
「須永真知子さん(四十)は、マングローブの樹皮を使って布を染める『マングローブ染め』を十年ほど前から始めた。・・・」との記事。
上記各種辞典類の記述及び各種新聞の記事を総合すると、「マングローブ」については、マングローブから採取された「丹殻」と呼ばれるものが、草木染めの染料として、古くは江戸時代から利用されてきたことが、また、「マングローブ染め」については、マングローブ(丹殻)を用いた染色方法を表すものとして普通に使われているものと認めることができる。
これに対し、請求人は、「マングローブ」だけでは、「熱帯や亜熱帯の河口や湾岸などの泥湿地に生育する植物で構成された地帯」のことを認識するにすぎないこと、マングローブに育成する植物を染色の材料として使用する染色方法を「マングローブ染」と称してきた事実は存在しないこと、上記各新聞記事は、請求人の創作及び宣伝活動が紹介されているものであり、請求人の商標として、自他商品の識別標識となり得るものであることを述べている。
しかしながら、上記のとおり、「マングローブ」は、「熱帯・亜熱帯の浜辺や河口などに生える常緑樹の総称」であり、マングローブを用いた染色が行われている事実があることからすれば、結局、本願商標は、染料の原材料を認識させるにすぎない「マングローブ」の文字に、指定商品との関係では、商品が染織物であることを認識させる「染」の文字を結合したものであって、全体として「マングローブから採取した染料を用いた染織物」程度の意味合いを看取させるにすぎないものといわざるを得ず、本願商標に接する取引者・需要者をして、商品の品質(原材料、方法)を表示したものと理解・認識せしめるに止まり、商品の識別標識としての機能を果たさないものと判断するのが相当であって、また、「マングローブから採取した染料を用いた染織物」以外の商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとした原査定は、妥当なものであって、これを取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
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