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Trademark Appeal Case

「ひねりもち」の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第7627号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第30類「酒米を所望形状に固めた後揚げ若しくは焼き若しくは乾燥せしめて成るもち菓子」を指定商品として、平成4年8月5日に登録出願されたものであるが、指定商品については、同10年9月28日付けの手続補正書をもって、「酒米を所望形状に固めた後揚げ,焼き若しくは乾燥せしめて成るもち菓子」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)

原査定において、登録異議の申立てがあった結果、「本願商標は、これを本願商標の指定商品との関係においてみると、その構成中の『酒蔵風菓』の文字は、『酒造り風に酒蔵で作られた菓子』の意味合いを表したと容易に認識されるものであるから、該文字部分は商品の品質を表示するにすぎないものである。また、『ひねりもち』の文字は、申立人の提出に係る甲各号証によれば、酒造りの業界においては『酒米を蒸して蒸米とする場合に、その蒸し具合を調べるため(「検蒸」という)に蒸している米を手のひらでつぶしてこね、餅の状態にしたもの』を指称するものであることが認められる。

そうとすると、前記意味合いを有するそれらの語よりなる本願商標よりは、『酒蔵で検蒸のために手でつぶしてこねた蒸し米(ひねりもち)をそのまま応用し製した餅菓子』の意を表したものと容易に理解し、認識させるに止まるものとみるのが相当である。

してみれば、『酒蔵風菓』の文字と『ひねりもち』の文字を二列に普通に用いられる方法で書してなるにすぎず、かつ、前記意味合いを表したものと理解されるものであるから、これをその指定商品について使用するときは、商品の品質を表示したものと認識されるにすぎず自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

本願商標は、別掲のとおり、「ひねりもち」の平仮名文字を筆記体風に大きく縦書きし、その右側上部に該平仮名文字と比べて四分の一程度の大きさの「酒蔵風菓」の漢字を縦書きしてなるものである。

そして、原審における登録異議申立人の提出した「清酒製造関係用語集」(甲第1号証)によれば、「ひねり餅」は、「蒸きょうを終える直前に,蒸している米の少量をとり,手のひらでつぶしてこね,餅のようにしたものをいう。これによって蒸し具合を調べる→検蒸」と記載され、同じく「広辞苑 第2版 1882頁」(甲第4号証)によれば、「ひねりもち【捻餅】」は、「手でひねって造った餅」と記載されていることが認められる。

また、食品関係の事典には、例えば、「食品大辞典」(株式会社 真珠書院)に、「...ひねり餅は、モチ米から作った餅に比べ粘りがない。また乾燥すると石のように堅くなる。しかし、焼くと淡泊なおいしさがあるといわれ好む人もいる。」の記載、同じく、「飲食事典」(株式会社 平凡社)に、「捻もち ...粳米を蒸してひねりつぶした餅の一種。日本酒醸造の過程に...粳米は糯米よりねばりが少ないので乾燥すると石のように堅くなる代わり、焼くとかえって軽淡を賞美される風もある。」の記載が認められ、「広辞苑 」(第5版 2262頁)に、同第2版とほぼ同じ「手のひらでひねって作った餅」の記載が認められる。

さらに、「ひねりもち」の文字(語)は、例えば、以下の(a)ないし(d)のよう、新聞紙上にも掲載されている。

(a)「NHK神戸文化センター、『酒蔵特別体験』特別講座開く」の見出しの下に、「NHK神戸文化センターは、『酒蔵特別体験』特別講座を灘五郷の一つ、魚崎郷で催した...体験の場となる金露酒造(株)に到着...酒蔵に入り...まず『ひねりもち』の実技を見学・体験。...」(1994年(平成6年)12月26日 日本食料新聞)。

(b)「福岡県/城島町で酒蔵まつりと物産フェア 11日 杯買えば新酒飲み放題」の見出しの下に、「酒どころの城島町で11日、『第4回酒蔵まつりと町物産フェア』が開かれる。...杜氏が酒米を手で練って作る『ひねりもち』のサービス、...」(1998年(平成10年)2月6日 西日本新聞社)。

(c)「[マイ・ヒストリー]今井健介氏(1)江戸期に創業(連載)=群馬」の見出しの下に、「◇いまい・けんすけ 聖酒造社長...健介氏は...『真っ暗なうちに起こされ、酒の仕込みの様子を見たのが、幼いころの記憶として残っている。ふかし上がったコメを“ひねりもち”にして...一枚もらって帰って、焼いて食べると本当においしかったのを覚えている』。」(2000年(平成12年)9月8日 読売新聞 東京朝刊)。

(d)「[夕刊編集室から]地酒『どんぶらこ』の上槽式(梶川伸)」の見出しの下に、「三重県名張市の住民グループ『どんぶらこ協和国』が、...地酒『どんぶらこ』を造っています。...一般の人の参加でき、...蔵人が食べる『ひねりもち』の試食などがあります。...」(1999年(平成11年)3月4日 毎日新聞 大阪夕刊)。

以上のよう、「ひねりもち」の文字(語)は、食品関係の専門事典のみならず、広辞苑ほか、一般新聞紙上にも前記意味合いをもって用いられているものであって、原審説示の如く、「酒米を蒸して蒸米とする場合に、その蒸し具合を調べるために蒸している米を手のひらでつぶしてこね、餅の状態にしたもの」を指称するものであることが認められる。

そして、本願商標の構成中の「ひねりもち」の文字部分は、別掲のとおり、筆記体風に書されているとしても、その平仮名文字全体の表し方からして、未だ、特殊の態様とはいい難く、普通に用いられる方法で表示する域を脱していないものといえるものである。

次に、本願商標の構成中の「酒蔵風菓」の文字部分についてみるに、「酒蔵風菓」の文字は、別掲のとおり、「ひねりもち」の平仮名文字部分の四分の一程度の大きさの漢字で、その右側上部に付記するよう縦書きされていること、加えて、菓子業界において、製法、風味、原材料、品質等を強調するために「欧風銘菓」、「洋風菓子」、「和風菓子」のように、「...風...」の表示方法が普通一般に使用されている実情が存するところ、前記のとおり、「ひねりもち」が醸造所の酒蔵で作られていること、さらに、「ひねりもち」文字(語)と本願商標の指定商品「酒米を所望形状に固めた後揚げ,焼き若しくは乾燥せしめて成るもち菓子」との関係とを総合すると、その構成中の「酒蔵風菓」の文字は、「酒造り風に酒蔵で作られた菓子」の意味合いを表したものと容易に認識、理解させるに止まるものというのが相当である。

そうとすれば、本願商標を構成する全体の文字よりは、「酒蔵で検蒸のために手でつぶしてこねた蒸し米(ひねりもち)を原材料としたもち菓子」を表したものと認識、理解させるものというべきである。

してみれば、本願商標は、これをその指定商品について使用しても、商品の原材料、品質を表示したものと認識、理解されるにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ない。

また、本願商標は、これを「ひねりもちを原材料としたもち菓子」以外の「もち菓子」に使用するときは、該商品が「ひねりもちを原材料としたもち菓子」であるかのように、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものである。

さらに、請求人(出願人)は、当審において、商標法第3条第2項の適用を主張し、甲第1号証の1ないし甲第1号証の99を提出している。

しかしながら、この証拠は、いずれも定型文に新潟県内の一般消費者が署名、捺印した証明書であって、実際の取引伝票、広告宣伝、同業者の証明等の提出がないから、この証拠のみをもって、本願商標が使用による識別力を有するに至っているものとは認められないものである。

したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとした原査定は、妥当なものであって、取り消すべきでない。

よって、結論のとおり審決する。

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