結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2002−35378(T2002−35378/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4555423号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成13年4月5日登録出願、第5類「薬剤,殺虫剤,防虫剤,防腐剤」を指定商品として、同14年3月29日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第4126282号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成8年4月26日登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同10年3月20日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証並びに参考資料1及び参考資料2を提出した。
(1)引用商標はモノクロで描かれ、一方、本件商標はカラーで描かれ、両商標は、共に道路標識を思わせる標識部と蟻、白蟻あるいはその他の虫を擬人化したような虫部とから構成されている。
(2)両商標の標識部の比較
両標識部は、いずれも一般に非常によく知られている道路標識を真似た標識であると言え、しかも、リングにシングルクロス線又はダブルクロス線が付された図柄は、いずれも、道路標識等からの連想として、「禁止を意味するマーク」として認識されるものである。
してみれば、両標識部は、カラーかモノクロかの相違、クロス線の相違はあるものの、需要者、業者にとっては、道路標識的感覚から派生した「禁止マーク」として認識することになり、実質的にはほとんど同じ「禁止マーク」として認識されるものであることが明白である。
(3)両商標の虫部の比較
(ア)両商標の虫部は、共にこれを見る人によって、必ずしも蟻や白蟻と認識されるとは限らないが、少なくとも擬人化された虫であると認識されることは明らかである。そして、このような虫部を有する商標が、白蟻業者が提供する商品や役務に使用される場合には、全体として白蟻を擬人化したものであると認識されるものである。
(イ)両商標の虫部に描かれている描画要素は、共に頭部(顔部)と胴部と足部とからなり、描写要素の種類と数が同じである。
(ウ)引用商標の虫部は、虫の姿勢が少し傾いた状態に描かれ、本件商標における虫部は虫の姿勢は真直に描かれている点において異なるが両商標における虫部の頭部には、共にその描画要素として、触覚、眉毛、目、口、牙が描かれており、それ以外の要素は描かれていない。
(エ)両商標の虫部の頭部に描かれている描画要素のうち、両触覚は、共にその先端部がカーブを描いて垂れた状態に描かれている。また、両触覚には、複数本の横線が描かれ、その描画態様がほとんど同じである。
(オ)両商標の虫部の眉毛は、八の字眉毛に描かれ、その描画態様がほとんど同じである。
(カ)引用商標の虫部の頭部の目は、全体が黒塗りの目に描かれており、かつ、目の上部が眉毛に接した状態に描かれている。
これに対して、本件商標における目は、目が真丸である(引用商標では目は長丸である)点で引用商標と若干の相違はある。しかし、その目は、共に全体が黒塗りの目に描かれている点、目の上部が眉毛に接した状態に描かれている点において、ほとんど同じである。
(キ)引用商標の虫部の頭部の口は、波状の線によって描かれている。
これに対して本件商標の口は、その波状の線の端が顔の輪郭までは達していない(引用商標では口の波状の線が顔の輪郭線まで達している)点で引用商標と異なるが、やはり同様な波状の線で描かれており、描画のタッチが類似している。
(ク)引用商標の虫部の牙は、口の両側から下向きに描かれている。これに対して、本件商標においても、付された色(黒)は引用商標のものと異なるが、同様に牙が描かれている。牙の向きは引用商標のものと若干異なるが、同様に口の両側から下向きに描かれている。このような牙は必ずしも必須の描画要素ではないにもかかわらず、本件商標と引用商標とでほとんど同様な態様で描かれている。
(ケ)両商標の胴部は、共にその輪郭形状が卵形に描かれ、黒の横筋による縞模様が描かれ、その描画態様がほとんど同じである。
(コ)両商標の足部は、個々の足の詳細な形や配置は異なるものの、3対の足の胴部への付き方、足の膝と足首の位置で屈曲している点、足をリングの窓から出そうとしている構図等において、描画態様が似ている。
(4)以上の引用商標と本件商標とにおける個々の部分での異同を踏まえて、引用商標と本件商標との類否を総合的にみるに、引用商標と本件商標とは、識別力を発揮する重要な構成要素がいずれも標識部と虫部とからなる点、そして両虫部はいずれも虫を擬人化して描かれている点、更に擬人化された虫部は、その頭部、胴部、足部にそれぞれ描かれている描画要素がその種類及び数において一致し、また個々に似ている点、そして特に顔(頭部)の表情が、それら触覚、眉毛、目、口、牙からなる総合的表情として両者間で非常によく似ている点、更に顔の表情に胴部や足部を加えた虫部全体が表現する「もがき困った表情」が両者間で非常によく似ている点、両リング部は何れも道路標識から連想される「禁止マーク」として認識される点からして、両者は総合的に外観類似であることが明白である。
もちろん、引用商標と本件商標との間には、標識部におけるカラーかモノクロかの違い、シングルクロス線かダブルクロス線かの違い、虫部における姿勢の違い、その他の細かい部分の相違はある。しかし、これらの相違は、両商標を需要者や消費者が時と所を異にしてみる場合には、いずれの相違も消滅ないし極小化するものである。
してみれば、引用商標と本件商標とは個々の相違はあるものの、これを同一若しくは類似の商品に使用する場合には、かれこれ出所の混同を生じることが明らかであり、両者は、相互に類似することが明らかである。
(5)ところで、被請求人の有限会社フローリックの代表取締役である南部吉男は、請求人と取引関係にあるコスモ油化株式会社新田工場で働いていたことがあり、請求人の商品出荷の担当をしていた。そして、その後、南部吉男は、有限会社フローリックを設立して、請求人が委託製造していた製品と同様の成分のシロアリ駆除用製品をもってその販売を開始し、しかも、請求人の顧客にもその営業的活動を行ったものである。そしてその販売、営業活動において、本件商標の使用を行っている。
また、被請求人は、実際には本件商標を斜めに傾けた状態で全ての使用を行っている(参考資料1)。即ち、請求人の引用商標に対する類似化を図っていることが明らかである。
さらに、請求人は、自己の商標(引用商標)を当初より、その標識部を赤色のカラーとして使用しているが(参考資料2)、被請求人においても本件商標の標識部を赤色にしている。
これらの一連の不正行為に対して、請求人は、平成14年(ワ)第826
号民事事件として、現在、神戸地方裁判所にて不正競争行為の差し止めと損害賠償請求を本件被請求人等に提訴している。
以上のような被請求人の行為を勘案して本件商標をみるに、その商標の各所において、請求人の引用商標を模していることが明らかである
(6)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきである。
(1)両商標の虫部は、その描写に若干の相違はあるが、本件商標に描かれた虫部が静的であり全く動けなくなっているように見えるのに対し、引用商標に描かれた虫部が動的であり円形の図形の中から外へ抜け出そうとしているように見えるといったことは決してない。
両商標の虫部は、いずれも、むしろ擬人化された虫が脱出等を拒まれて困っている印象を与えるものであり、また足部の一部が標識部から外部にはみだしている点において、虫も何かもがいているような印象を与えるものである。少なくとも両虫部において一方が静的で他方が動的といった対極関係には全くないことが明白であり、両者は描かれた虫部の状況として、むしろ同じ状況、状態を需要者に表現し、印象付けるものである。
(2)請求人は、標識部の表現に関して、標識部が道路標識そのものであるとは何らいっていない。そもそも、両商標の標識部は、道路標識そのものではない。道路標識のような標識部なのである。そして、両商標の標識部は、何れも禁止の意味をただちに想起させる同類の標識である。
さらに、両標識部がダブルクロスかシングルクロスかの違いは、需要者が時と所を異にして両商標をみた場合を考えると、同じ禁止マークの印象をもって同類に認識されることが明白である。
(3)被請求人の提出した乙第2号証に示すような各商標がそれぞれ登録に至っているのは、その各商標に表現された虫部がそれぞれ個性的であり、他の先行登録商標に表現された虫部とは明らかに異なる識別力を有するからであり、このことは乙第2号証において示されている各商標の虫部がそれぞれ個性的であるのをみれば明らかである。
本件商標と引用商標とは、両虫部が単に虫を用いているという共通点において類似しているのではなく、同様な禁止マークと組み合わされた虫部の構成が両者において具体的に非常によく似ており、その結果として、両商標が全体として需要者の出所混同をまねくのである。
(4)両商標における虫部が、一方において静的で他方において動的であるといった印象の相異は、実質上において何ら存在しない或いは何ら問題とならないといえる程度のことにすぎない。むしろ両虫部が需要者に与える印象は、その顔の表情や胴体、足の状況から、いずれも、擬人化された虫が脱出等を拒まれて困っている状況、状態であり、両者において極めて類似した同じ印象を与えるものである。
(5)本件商標と引用商標とはその虫部の単に一般的な部分で類似しているのではなく、需要者に対して識別力を発揮する要部において、その全般から細部に至るまで類似しているのである。
(6)両商標の標識部は、道路標識からくる「禁止マーク」としての非常に大きな印象を即座的あるいは明快に想起させるものである。そして禁止マーク的意味合いの存在が非常に大きいゆえ、図形の中央がダブルクロスになっているかシングルクロスになっているかの印象は希薄化されてしまうのである。標識部におけるクロスがシングルかダブルか、あるいはシングルクロスが右肩上りか左肩上りか等は、ほとんど商標間の識別状重要な影響を与えていない。それらの標識部はただ単に禁止マークという範疇において認識されるだけである。
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
また、請求人は、擬人化された虫部は、その頭部、胴部、足部にそれぞれ描かれている描画要素がその種類及び数において一致し、また個々に似ており、特に顔(頭部)の表情が、それら触覚、眉毛、目、口、牙からなる総合的表情として両者間で非常によく似ており、顔の表情に胴部や足部を加えた虫部全体が表現する「もがき困った表情」が両者間で非常によく似ている旨主張している。しかしながら、本件商標と引用商標の構成要素(特に胴体、足の形状)を個々に見た場合両者が似ているとはいえない。本件商標は、虫が標識部に閉じこめられ、動けなくなっているような静的な表情、胴体の構成からなるのに対し、引用商標は、虫が標識の中から外に抜け出そうとしているような動的な表情、胴体の構成からなるものであり、両商標の虫部が需要者に与える印象は大きく異なる。また、頭部、胴部、足部にそれぞれ描かれている描画要素がその種類及び数において一致するとしても、それは、両商標が蟻または白蟻を表したことから生じた必然的な結果にすぎない。
さらに、本件商標においては、円形の図形の中央にダブルクロスが表されているのに対し、引用商標においては、円形の図形の中央に左上がりのシングルクロスが表されており、両者はその印象が大きく異なる。また、円形の図形と虫の図とからなる商標が殺虫剤等の商標としてありふれていることに鑑みれば、当該相違点は、両商標の印象を異ならしめるものである。
以上により、本件商標と引用商標は、需要者に与える印象が全く異なる非類似の商標であり、両商標の間で出所の混同が生じるおそれがないことは明らかである。
なお、本件商標及び引用商標は、ともに特定の称呼、観念を有さない商標であるため、両商標はその称呼、観念においても類似するものではない。
以上のように、本件商標と引用商標とは、称呼、観念および外観のいずれも類似しない非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
本件商標は、別掲(1)のとおり、必ずしも特定し難い虫を擬人化した図形(以下「虫部」という。)と、やや太いリング状の図形の内側に、そのリング状の図形よりやや細めの2本の線を罰点状に交差させた赤色の図形(以下「標識部」という。)とを組み合わせた構成よりなるものである。
他方、引用商標は、別掲(2)のとおり、必ずしも特定し難い虫を擬人化した図形(以下「虫部」という。)と、やや太いリング状の図形の内側に、そのリング状の図形よりやや細めの1本の線を右肩上がりに描いた黒色の図形(以下「標識部」という。)とを組み合わせた構成よりなるものである。
そこで、先ず、本件商標と引用商標の虫部を比較するに、その頭部(顔部)には、共に、触覚、眉毛、目、口、牙が描かれ、胴部はその形状を卵形に描き、横縞模様が描かれ、足部は3対の足を描いた点において、その構成要素は同じであり、それ以外の要素は描かれていない擬人化された虫部よりなるものである。
次に、本件商標と引用商標の標識部を比較するに、その両標識部は、その構成において、リング状の図形の内側に接した図形において、2本の線を罰点状に交差させてなる点と1本の線を描いてなる点が相違するとしても、その構成態様よりすれば、その構成は実際に存在する道路標識でないとしても、両標識部は一般によく知られている道路標識と近似した構成よりなるものであり、その道路標識等の認識度から、通行止めを意味する道路標識のマークを連想、想起するものというのが相当である。
さらに、本件商標と引用商標の全体の構成からは、共に、通行止めの道路標識のマークの中に閉じこめられ困っている擬人化された虫を強く印象づけられるものである。
そうとすれば、本件商標と引用商標の構成は、色彩を施してあるか否かの差異を有し、詳細に対比観察すれば、その構成要素の各部の些細の点において異なるとしても、全体の構成の軌を一にするものである。
そして、両商標の構成は、虫部と標識部とからなること、両虫部はいずれも虫を擬人化して描かれていること、更に擬人化された虫部は、その頭部、胴部、足部にそれぞれ描かれている描画要素を共通にし、また、その各部は描写方法、特に視覚上強く印象づけられる眉毛と目の描き方が近似し、虫部の顔の表情が非常によく似ていること、全体の構成からは、通行止めの道路標識のマークの中に閉じこめられ困っている擬人化された虫を強く印象づけられるものであることよりすれば、両商標が有する印象は極めて近似したものといえるものであり、両商標は時と所を異にして離隔観察する場合、外観において互いに相紛らわしい類似の商標というのが相当である。
また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは同一又は類似のものと認められるものである。
なお、被請求人は、過去の登録例(乙第2号証)をもって、両商標が非類似である旨主張するが、本件とはいずれも事案を異にするものであり、前記の判断を左右するものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。