Trademark Appeal Case
悪意の商標出願
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2003−90088(T2003−90088/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4620432号商標(以下、「本件商標」という。)は、後掲のとおりの構成よりなり、平成13年12月19日に登録出願、第7類「高圧洗浄機」及び第25類「作業服,ヘルメット」を指定商品として、同14年11月15日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
本件商標は、登録異議申立人であるドイツのクランツレ社(以下、「申立人」又は「K社」という。)が商品「高圧洗浄機」に1970年頃より使用し、ドイツにおいては、1989年11月20日に商標登録されているものである(甲第2号証)。申立人は、平成9年以前から日本でも高圧洗浄機を輸入販売しているものであって、本件商標は、申立人が使用する商標として、本件商標の出願前より取引者・需要者間に広く認識されていた商標であることは、本件商標の審査における拒絶理由通知書においても認められているところである。
商標権者(以下、必要に応じて「出願人」ともいう。)は、審査段階における平成14年8月5日付け意見書において、「出願人は、K社から50%の出資を受け、K社より取締役を1名選任就任の上、設立された日本法人である」と主張している。
しかしながら、本件出願時である平成13年12月19日の時点において、出願人はK社とは何の関係もない者である。
商標権者が主張するK社より選任された1名の取締役とは、商標権者の履歴事項全部証明書(甲第4号証)に示すごとく、K社役員のルーツ ドロイチェ氏(K社の登記簿 甲第5号証)を指す。
よって、ここに、ルーツ ドロイチェ氏本人及びドイツ商標権の権利者であるヨゼフ クランツレの代表者であるヨゼフ クランツレ氏の宣誓書を甲第6号証として提出する。
甲第6号証に宣誓された通り、ルーツ ドロイチェ氏は、出願人の役員就任に同意した事実は無い。なお、甲第4号証にルーツ ドロイチェ氏が取締役として登記されている理由は不明であるが、少なくともルーツ ドロイチェ氏本人、申立人共にそのような同意を与えた事実はない。
また、本件商標出願を出願人が行うことに、K社が同意した事実もなく、本件商標出願日及びその後において、K社と出願人とは何ら営業上の関係もない。
さらに、本件商標の審査手続において、出願人は、本件商標を我が国に商標登録出願をすることについての正当な立場にあることの証左として、K社からの出願人に対する委任状と称する書状を提出している。
しかしながら、当該委任状と称する書面は、ルーツ ドロイチェ氏から出願人会社の柴田氏に宛てた2001年(平成13年)8月16日付書面であり、同文書の内容は、「イー、クランツレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングは、必要な場合には、クランツレ・ジャパン株式会社(出願人)の名目で、直接イー、クランツレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングに対し、以下の販売者が信任状を開設することをクランツレ・ジャパン株式会社社長の柴田敏男氏に容認する」とする意のものである。すなわち、同文書は、必要であれば、販売者が自ら信任状(Letter of Credit)を開設するということを記載したものであって、換言すれば、K社は出願人と関係を持つことを回避したい旨を明言したものである。よって、本文書は、出願人に対する委任状ではなく、反対に両社の関係が消滅していることを証明するものである。
かかる状況の下で、出願人は、自己の商標として、本件商標登録出願を行ったのであり、本件商標登録出願は、商取引の秩序を乱すおそれのあるものであって穏当ではなく、商標法第4条第1項第7号に該当するものであることは明白であり、また、本件商標は、同第10号及び同第15号にも該当するものである。
よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第10号及び同第15号に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。
3 当審の判断
本件商標は、後掲のとおりの構成よりなるところ、商標権者は、審査の段階において、出願人が申立人であるドイツクランツレ社の方針決定の上、ドイツクランツレ社が50%の出資を行い、ドイツより取締役を一名選任の上、設立された日本法人である旨主張し、出願人が本願商標を出願することについての正当な立場にあることの証左として、出願人であるクランツレ・ジャパン株式会社の登記簿謄本(写し)、ドイツクランツレ社より日本国内需要家及び得意先へのクランツレ・ジャパンの体制確立の通知書及びドイツクランツレ社よりクランツレ・ジャパン株式会社に対する委任状と称する書面を提出することにより登録になったものである。
この点について、申立人は、本件商標の登録が取消されるべきであることの証左として、甲第1号証(本件商標に係る商標掲載公報)、甲第2号証(登録第1150055号に係るドイツ国商標公報)、甲第3号証(登録第799561号に係る中華民国商標公報及び同公報の英語訳文)、甲第4号証(クランツレ・ジャパン株式会社の履歴事項全部証明書)、甲第5号証(イー、クランツレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの登記簿謄本)及び甲第6号証(ルーツ ドロイチェ氏、ヨゼフ クランツレ氏の宣誓書及び同訳文)を提出している。
そこで、これらの各証左についてみるに、出願人であるクランツレ・ジャパン株式会社の履歴事項全部証明書(甲第4号証)には、役員に関する事項として、「取締役 ルッツドロイチェ 平成12年9月1日就任/平成12年11月2日登記」の記載があることが認められる。そして、申立人の主張によれば、クランツレ・ジャパン株式会社の履歴事項全部証明書に記載されている「ルッツドロイチェ」は、申立人であるイー、クランツレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの登記簿謄本(甲第5号証)に記載されている「Droitsch Lutz」を指すものである旨述べている。
そうとすれば、甲第4号証の履歴事項全部証明書に記載されている「ルッツドロイチェ」の表記、申立人が申立書に記載している「ルーツ ドロイチェ」の表記及び甲第5号証の登記簿謄本に記載されている「Droitsch Lutz」の各表記には、それぞれ若干の差異が認められるものの、表記方法の違いによる差異にすぎないものとすれば、甲第4号証に記載されている「ルッツドロイチェ」と甲第5号証に記載されている「Droitsch Lutz」とは同一人物であるものと推認し得るところである。
そして、出願人が審査段階で提出した「ドイツクランツレ社より日本国内需要家及び得意先へのクランツレ・ジャパンの体制確立の通知書」によれば、「1998年8月7日にクランツレ・ジャパンを設立した。これからは、注文をクランツレ・ジャパンへ出すように、価格や受け渡しについては、馬田氏や柴田氏と連絡を取るようにお願いする。我々は、日本事務所を通して、以前同様に最善を尽くして協力する」旨記載されており、I.KRANZLE GmbH(Aの文字にはウムラウトが付されている) General Managerの肩書きの下、ルーツ ドロイチェ氏のサインが入っている。
これに対して、申立人は、甲第4号証にルーツ ドロイチェ氏が取締役として登記されている理由は不明であるが、少なくともルーツ ドロイチェ氏本人、申立人共にそのような同意を与えた事実はなかったこと、本件商標出願を出願人が行うことに申立人が同意した事実もなかったこと、本件商標出願日及びその後において、申立人と出願人とは何ら営業上の関係はなかった旨主張し、ルーツ ドロイチェ氏本人及びドイツ商標権の権利者であるヨゼフ クランツレの代表者であるヨゼフ クランツレ氏の宣誓書を甲第6号証として提出している。
しかしながら、甲第6号証の宣誓書は、上記2名の者のサインはあるものの、公証人による認証等もなく、単に上記2名の一方的な主張を記載した私文書にとどまるものであって、前記したドイツクランツレ社が日本国内需要家及び得意先へ宛てたルーツ ドロイチェ氏自身のサインが入った「クランツレ・ジャパンの体制確立」の通知書に比べれば、その記載内容の信憑性においては著しく劣るものといわなければならない。
そして、申立人は、該「クランツレ・ジャパンの体制確立」の通知書については何ら言及するところがない。
そうとすれば、出願人が審査の段階で提出した「ドイツクランツレ社よりクランツレ・ジャパン株式会社に対する委任状」と称する書面については、その文章の内容に解釈の余地があるとしても、少なくとも、申立人の提出に係る甲各号証をもってしては、審査の段階において示された当事者間の関係についての出願人の主張及びその事実関係を立証するために提出された証左を覆すに十分なものとはいえない。
してみれば、本件商標は、申立人のドイツにおける関連会社であるヨゼフ クランツレが所有しているドイツにおける登録商標(甲第2号証)と同一の態様からなるものであり、かつ、申立人が使用している「高圧洗浄機」を含む商品を指定商品とするものではあるが、甲各号証のみをもってしては、出願人が本件商標を出願し、その登録を受ける正当な立場になかったものと判断することは困難であり、申立人の主張を採用することはできない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第10号及び同第15号に違反してされたものということはできないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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