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Trademark Appeal Case

商標盗用と公序良俗

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2002−90646(T2002−90646/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4585012号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4585012号商標(以下「本件商標」という。)は、「わした」の文字を横書きしてなり、平成13年5月21日に登録出願され、第35類「広告,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,書類の複製,速記,筆耕,文書又は磁気テープのファイリング,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,電子計算機又はこれに準ずる事務用機器の操作」を指定役務として、平成14年7月12日に商標権の設定登録がされたものである。

なお、当該商標権は、その登録原簿の記録によれば、平成15年3月19日を受付日とし、平成15年4月1日を登録日とする「本権の登録の抹消」がされて閉鎖されている。

2 取消理由の通知

当審において、平成15年4月7日付で商標権者に対して通知した取消理由は、要旨次のとおりである。

登録異議申立人 株式会社沖縄県物産公社(以下「申立人」という。)の引用する商標(以下「引用商標」という。)は、後掲のとおりの構成よりなるものである。

ところで、申立人の提出に係る甲第2号証の申立人の登記簿謄本によれば、商標権者は、平成13年6月29日に退任するまで、申立人の代表取締役であったこと、また、本件商標の登録出願日である平成13年5月21日は、その在任中であることが認められる。さらに、申立人の提出に係る甲第6号証の沖縄県那覇市在の「株式会社沖縄物産企業連合」(平成13年7月12日 設立登記)の登記簿謄本によれば、その会社は、申立人と会社の設立目的をほぼ同じくし、かつ、商標権者は代表取締役の地位にあることも認められる。

そうすると、本件商標は、引用商標と構成態様を異にするものであるとしても、両者は綴りを同じくする平仮名よりなるものであって、上記の事情からして、本件商標の採択使用の意図及び登録出願の行為が、引用商標と偶然に一致したものとは認め難く、かかる事情を知りつつ本件商標の登録出願をしたもの、すなわち引用商標を盗用したものと推認せざるを得ない。

してみれば、本件商標は、公正な商取引の秩序を混乱させ、ひいては社会公共の利益に反し、公の秩序を乱すおそれがあるものといわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものというのが相当である。

3 商標権者の意見

商標権者は、上記2の取消理由に対して、意見を要旨次のように述べている。

引用商標「わした」は、沖縄で「私達」を意味する語として普通に使われているものであって、商標法が商標採択の自由を前提として先願登録主義によっていることよりすれば、たとえ相似た文字を用いたからといって、このような日常性のある普通の語「わした」なる文字を盗んだ云々などの事情が発生するはずもなく、出願すること自体そのものは何等制裁を受けるような不当なものとは考えられない。まして、両者はその指定する商品・役務の分野を全く異にするものであり、権利としてなんら抵触するところのない別異の登録商標である。さらに、引用商標の著名性についてみても、確かに各地に何か所かのアンテナショップを設けたり、インターネット上にホームページを開設するなど食品分野に限っての一定の事業活動を認めることはできるが、前述のとおり独創的な語でもなく、かつ全く無関係の分野にまでその効力範囲を広げ第三者の商標採択の自由を制限しうるほどの、すなわち「わした」といえば相当程度の広範囲における需要者間に直に申立人を認識せしめるほどの著名度を確立しているものとは認め難いところである。

そうとすれば、本件商標が存在するといっても申立人は引用商標を使用することに何等の障害もなく、また両者が併存したからといって取引場裡において出所の誤認混同を生じたり、商道徳を乱すような混乱が生じたりする恐れもなかったといえるものである。

また、本件商標の取得は一私人が予定される今後の自己の事業のために商標法の目的に照らしてなんら問題になることのない商標の選択を行なったものであって、たとえば会社対会社代表取締役間の取引など他の法令により一定の条件が課せられているなどとの事例とは全く関わりのないことを主張するものである。さらに、会社設立目的の同様性についてみても、企業の設立目的が他に同一目的の企業が存在することを理由に制限されると言うようなことがあり得る筈もないものである。

さらに述べるならば、登記・形式上の目的が同じであったとしても、現実に展開し、あるいはこれから展開せんとしていた事業内容が全く別異のものであり、そのことは両者の商標の指定する商品・役務の違いより明らかなところである。

そうとすれば、本件は、単に過去に申立人の組織に属していた商標権者が申立人所有の引用商標「わした」と相似た商標を全く異なる分野とはいえ登録商標として取得することに、申立人が不快感を現わしたにすぎないものといっても過言ではない。

してみれば、a)申立人の組織として在任中に、b)申立人と同種の目的を持った企業の設立を目的として、c)申立人と相似た商標を取得した経緯から本件商標の取得は盗用と認められるとし、その取消理由を基に、本件をとらえて不正盗用と判断し、取消理由通知に言う社会的秩序・一般的商道徳に反するとの判断は相当でないと言わざるを得ない。

以上のとおり、本件商標の登録は商標法第4条第1項第7号に該当するものでない。

4 当審の判断

本件商標は、申立人の提出に係る甲各号証によれば、その採択使用の意図及び登録出願の行為が、引用商標と偶然に一致したものでなく、商標権者が引用商標の存在及びその使用状況を知っており、むしろ引用商標の使用をすべき側の立場にありながら、引用商標と同一の文字構成からなる本件商標の登録出願をしたものとみられることから、引用商標を盗用したものと推認されるものである。

そして、このような商標権者の行為に基づいて登録された本件商標は、たとい商標の構成自体がきょう激、卑わい、差別的な印象を与える文字等でないとしても、一般的社会通念に照らしてみた場合に、公正な商取引の秩序を混乱させ、ひいては社会公共の利益に反し、公の秩序を乱すおそれがあるものというべきである。したがって、同趣旨により、本件商標が商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるとして、その登録を取り消すべきものとした上記2の取消理由は妥当なものである。

そうすると、商標権者の上記2の取消理由の認定判断の誤りを述べる商標権者の意見は、商標権者が申立人の事業活動及び引用商標の存在を認めた上で、自己都合による事情及び本件商標と引用商標についての解釈を自己に有利なように述べたに止まるものというべきであって、商標法の目的に照らしみても社会的妥当性を欠くものであるから、その主張は採用できないものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その登録は商標法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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