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Trademark Appeal Case

結合商標の称呼と要部

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35400号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1. 本件商標

本件登録第3123499号商標(以下「本件商標」という。)は、別記(1)に示すとおりの構成よりなり、第32類「鉱泉水」を指定商品として、平成5年6月3日に登録出願され、同8年2月29日に設定登録されたものである。

2. 引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用した登録第2013282号商標(以下「引用商標」という。)は、別記(2)に示すとおりの構成よりなり、第29類「鉱泉水」を指定商品として、昭和60年5月27日に登録出願され、同63年1月26日に設定登録されたものであるが、その後、商標権の存続期間の更新の登録が平成9年11月25日にされたものである。

3. 請求人の請求理由

請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする」との審決を求め、請求の理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第5号証を提出している。

(1)本件商標と引用商標との対比

本件商標と引用商標とは共に鉱泉水(旧第29類、新第32類)を指定商品とし、本件商標は「ブイアールパイウォーター」なる称呼を生じ、引用商標は「パイウォーター」なる称呼を生ずる。したがって、本件商標と引用商標とでは「パイウォーター」において共通する。

ところで「パイウォーター」は甲第5号証(食品工業 Vol.3 6、no.7、29〜32頁 1993年刊)に示されるように、本件商標登録出願時において、引用商標は周知のものとなっている。したがって、需要者が「VRπ WATER」なる本件商標を見た時、当然「π WATER」即ち「パイ ウオーター」を認識するものである。

したがって、本件商標は引用商標に類似するものである。

以上に検討した結果、本件商標は引用商標に類似しているので商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第4 6条第1項第1号により、無効にすべきである。

4.被請求人は、結論同旨の審決を求め、請求に対する答弁の理由を次のように述べている。

(1)本件商標と引用商標の類否

1)本件商標の一体性

(a)一体的外観

(イ)本件商標は、狭い文字間隔で密接に結合された「VRΠ」と、同じく密接に結合された欧文字「WATER」とが、半角文字分にも満たない間隔を空けて、一連横書きにされた外観を呈するものである。

(ロ)すなわち本件商標は、欧文字「VRΠ」と欧文字「WATER」とが、それぞれ外観上の個別の纏まりを維持しつつも、全体が一体的に結合した結合商標である。

(ハ)また、構成中、欧文字「VRΠ」の部分は、簡明な3欧文字により密接に構成されていることから、外観上の一体性ならびに結合状態は、一層強固なものとなっている。

(b)一体的称呼

(イ)この一体的外観に相応して、本件商標からは、「ブイアールパイウオーター」の一体的称呼が生ずるものである。

(ロ)また、欧文字「VRΠ」と欧文字「WATER」との間には、およそ半角文字分の間隙が存在し、かつ、本件商標の指定商品が「鉱泉水(英訳:ミネラルウオーター)」であることから、欧文字「WATER」の部分については、その識別力が希薄になる場合も想定されるところである。よって、本件商標からは、前記「ブイアールパイウオーター」の称呼に加え、「ブイアールパイ」の称呼も生ずるものである。

(ハ)そしていずれの称呼においても、「ブイアールパイ」の部分は、7音より構成され冗長とは言えず、淀みなく語呂良く発音されるものであり、加えて、前記の通り、とりわけ強固な結合状態が認められる外観部分に相応していることから、常に一連不可分に称呼されると見るのが相当である。

(ニ)してみれば、本件商標より、分離称呼の可能性を思わせる「ブイ・アール・パイ ウォーター」なる称呼分離的な「パイ ウォーター」なる称呼の発生を認める余地はない。

よって、この点につき各称呼の発生に言及する請求人の主張は失当である。

(2)本願商標と引用商標の非類似性

(a)引用商標は、欧文字「Π」と片仮名文字「ウォーター」とが、およそ全角文字分に相当する間隔を以って結合された外観を呈している。

(b)よって、引用商標からは「パイウォーター」の称呼を生ずるとみるのが相当である。

(c)そこで、本件商標より生ずる「ブイアールパイ」または「ブイアールパイウォーター」の称呼と、引用商標より生ずる「パイウォーター」の称呼とを比較検討するに、両者は、称呼の判別上重要な役割を果たす語頭部分において発音が異なり、しかも全体の構成音数は、前者の7音ないしは11音と後者の6音とで明らかに異なっていることから、互いに誤認の余地のないものである。

したがって、本件商標と引用商標とは 称呼上互いに非類似の商標である。

(d)加えて、欧文字「VRΠ」の部分にとりわけ強固な結合状態が看取され全体としても一体的な外観を呈する本件商標と、前記の通り「Π」と「ウオーター」との結合よりなる引用商標との間には、外観上の類似関係を認めることはできない。また造語「VRΠ」と「WATER」の結合よりなる本件商標からは特定の観念が生ずることはない。

よって、本件商標と引用商標との間に観念上の類似関係が生ずる余地もない。

(e)してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、外観および観念のいずれの点についても、互いに非類似の商標である。

(3)引用商標の周知性の主張

(a)請求人は、「3 請求人の請求理由」の「(1)本件商標と引用商標の対比」において、甲第5号証に基づき、引用商標が本件商標の出願時において「周知のものとなっている」旨主張している。

(b)そもそも、如何なる「商品」との関係で引用商標の周知性を主張されようとするのかが不明であるが、甲第5号証を詳細に検討しても、次に述べる通り引用商標の周知性獲得の事実を認めることはできない。

(c)甲第5号証における商標の使用

(イ)甲第5号証の雑誌『食品工業』は、その表紙の「1993/4月15日号」の記載に照らし、平成5年4月15日ごろ、すなわち本件商標の出願日(平成5年6月3日)前に既に発行されていた事実が推認される。

(ロ)しかしながら、商標法にいう「商標」は、実際に取引される「商品」に使用される標章であるところ、甲第5号証を以って知り得るところは、名称「πウォーター」が商品「浄水器」および「化粧品」との関係で実際に使用された事実に過ぎない。

(ハ)すなわち、同号証の29頁ないし30頁の記載から、名称「πウォーター」のもと、商品「浄水器」および「化粧品」が実際に市場で販売された事実は認めることもできる。しかし引用商標「Πウォーター」が、本件商標の指定商品「鉱泉水」との関係で実際に使用され市場で販売されていた事実は、いずれの箇所の記載内容に照らしても認めることはできない。

(ニ)なるほど、記事の表題には「“不思議な水”πウォーター」の記載が、また、29頁左段の後半部分には「πウォーターの応用は、飲料水のほか・・・」の記載も認められるが、そこから引用商標「Π ウォーター」を付した商品「鉱泉水」が市場で販売されていた事実を読み取ることは不可能である。

(d)甲第5号証は周知性を立証しえない

(イ)さらに、甲第5号証の『食品工業』について、その実際の発行部数、発行の地域的範囲、購読者数等、引用商標「Π ウォーター」の周知性獲得の認定に際し参酌されるべき事実は、いずれも示されることがない。

(ロ)よって、甲第5号証から、引用商標「Π ウォーター」が本件商標の出願時点において、商品「化粧品」および「浄水器」との関係で既に周知性を獲得していた事実はもちろん、本件商標の指定商品「鉱泉水」との関係で市場で実際に使用されていた事実は、いずれも認めることはできない。

したがって、この点に関し、甲第5号証に基づき引用商標「Π ウォーター」の周知性を論ずる請求人の主張は理由を欠き失当である。

(4)本件商標と引用商標の誤認・混同の主張

(a)なお請求人は、周知性の主張を前提として、本件商標と引用商標との需要者における誤認・混同の可能性にも言及する。

(b)しかし.上記の通り、引用商標の周知性獲得の事実が認められないのに加え、需要者間で実際に出所の混同が生じた旨の立証もない以上、当該主張も理由を欠き失当と言うほかない。

(c)たとえ何らかの理由で、引用商標「Π ウオーター」の周知性を認める余地が生じ得たとしても、「ブイアールパイ」または「ブイアールパイウォーター」の滑らかな一連の称呼を以って取引に資される本件商標と、単に「パイウオーター」の称呼を持って取引に資される引用商標との間に存する称呼上の差異は大きい。

よって、需要者が両商標を誤認・混同しそれらの出所を混同する余地を認めることはできない。

(5)(イ)一体的外観に相応して一連滑らかな「ブイアールパイ」または「ブイアールパイウォーター」の称呼を生ずる本件商標と、「パイウォーター」の称呼を生ずる引用商標とは、称呼上非類似であり、外観・観念の点でも両商標に類似関係が生ずる余地はないことから、本件商標と引用商標とは、称呼、外観および観念のいずれの点についても、互いに非類似の商標である。

(ロ)請求人の引用商標の周知性に関する主張は、理由を欠きこれを認めることはできず、その周知性を論拠とする本件商標と引用商標の誤認・混同の主張も理由を欠き失当であることから、本件商標と引用商標とは類似せず、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違背して登録されたものではない。

5 当審の判断

よって、本件商標と引用商標との類否について判断するに、本件商標は、「VRπWATER」の文字を同じ書体、同じ大きさをもって表して書してなるものであり、「π」の文字と「W」の文字との間の間隔が他と比べて間隔が広いものであるとしても、「VRπ」の文字と「WATER」の文字とが視覚上一体に看取し得るものであると判断するのが相当である。そして、意味上において、これを例えば、前半の「VR」と後半の「πWATER」とに分離して考察しなければならない格別の事情は存しない。

そうとすれば、本件商標は、全体として特定の意味合いを有しない一種の造語を表したものといえるものであって、これより生ずる「ブイアールパイウォーター」の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。

これに対し、引用商標は、その構成文字に相応し、「パイウォーター」の称呼が生ずること明らかである。

しかして、本件商標より生ずる「ブイアールパイウォーター」の称呼と引用商標より生ずる「パイウォーター」の称呼とは、その構成音を著しく異にするものであるから、明瞭に聴別し得るものといわなければならない。

また、本件商標と引用商標とは、その構成を異にするものであるから、外観上明らかに相違するものである。さらに、引用商標を構成する「πウォーター」が、「人間の体内の3分の2を占める生体内に限りなく近く、超微量の2価3価鉄塩を含む水」の意味合いを有するとしても、本件商標は、上記の如く、特定の意味合いを有さない一連の造語を表したものと認められるものであるから、両商標は、観念については比較することができない。

してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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