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Trademark Appeal Case

商標不使用取消の立証

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2000−30735(T2000−30735/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第2353995号商標の商標登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第2353995号商標(以下「本件商標」という。)は、「ベークノズル」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和63年9月22日に登録出願、第11類「電気材料、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成3年11月29日に設定登録、その後、同13年11月6日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。

2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び請求人の答弁に対する弁駁を概略次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)被請求人は、本件取消審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標をその指定商品について使用していない。

(2)被請求人の答弁に対する弁駁

(ア)被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、乙第1号証(昭和62年12月1日現在の被請求人の引掛形接続器具のカタログ)に示すとおり、本件商標「ベークノズル」を付した商品「電線保護ブッシング」を販売している旨主張している。

しかしながら、被請求人は、本件商標を、いつ、どこで使用したかについて主張・立証すべき責任があるにもかかわらず、ただ単に「・・・登録前3年以内に・・・」と述べているのみで、具体的な主張・立証をしていない。

(イ)また、被請求人は、「・・・乙第1号証に示すとおり・・・」と述べているが、乙第1号証は、表紙と71頁及び72頁のコピーしかなく、奥書きのコピーがないから信憑性に乏しい。

(ウ)被請求人(訴訟時の原告)と請求人(訴訟時の被告)は、東京地方裁判所における平成11年(ワ)第13926号商標権侵害差止等請求事件において争った経緯がある。

当該訴訟において、被請求人は、本件商標「ベークノズル」の使用を止めたことについて、次の旨述べた。

「被請求人が本件商標の登録出願をした当時、被請求人は、本件商品について、本件商標『べ−クノズル』を実際に使用しており(甲第9号証の1ないし4)、本件商品に関する被請求人の商標として周知であった。ただし、被請求人は、本件商品を製造するにつき、ベークライトからユリア樹脂、ABS樹脂あるいはナイロンに素材変更を行ったことから、ベークライトを主に使用していた頃の本件商品の名称である『ベークノズル』を引き続き使用することに躊躇を覚えた(引き続きこの名称を使用することは、需要者を欺くことにならないかと考えたわけである)。さりとて、被請求人が本件商品に関して全く異なる名称を使用するとすれば、被請求人がせっかく努力して勝ち得た本件商品に関する信用を失うことにもなりかねないと考えて、被請求人は、本件商品の商品コードとして使用していた『BN』(言うまでもなく『B』は『ベーク』、『N』は『ノズル』なる語に由来する。)なる語と『ノズル』なる語を組み合わせて『BNノズル』と称することにし、被請求人が作成する出版物には、『BNノズル』なる名称のみ付することにした。ただし、顧客が被請求人に対して、注文書に『ベークノズル』と記載するなど、引き続き被請求人の商標として広く使用されることが予想されたし(実際、『ベークノズル』という名称は顧客との取引において現在も使用されている。)、第三者が『ベークノズル』なる名称を使用して不正競争行為をしないよう予防しておく必要性も痛感した。そこで、被請求人は、『BNノズル』なる商標の出願とともに、本件商標『ベークノズル』についても出願したわけである。」

上記主張を総合すれば、被請求人は、本件商標の使用を止めており、自ら本件商標を使用する意思がないにもかかわらず、本件商標の商標登録出願をし、そのまま登録されたことを奇貨として、前記訴訟に及んだものである。

因みに、前記訴訟において、被請求人が提出した甲第9号証の1ないし4は、本件審判において、被請求人が提出した乙第1号証(昭和62年12月1日現在と記載された被請求人の引掛形接続器具のカタログ(写し))と同じ証拠であり、被請求人の主張によれば、これが登録前のものであることは明らかである。

(エ)被請求人は、本件審判において、前記訴訟において提出した証拠と同じ証拠を乙第2号証ないし乙第4号証として提出し、縷々述べている。

しかしながら、これらの証拠については、前記訴訟において提出されたものであり、被請求人が当該訴訟で主張しているとおり、被請求人自ら本件商標を使用した証拠ではなく、顧客が作成した書類にすぎない。

したがって、乙第2号証ないし乙第5号証は、被請求人が本件商標を使用した証拠といえるものではない。このことは、被請求人の前記訴訟における主張自体からも明らかである。

(3)被請求人の再答弁に対する再弁駁

(ア)被請求人の再答弁7.(2)について

被請求人は、本件商標「ベークノズル」を商品「電線保護ブッシング」について使用した事実を乙第2号証ないし乙第5号証によって立証した旨再答弁している。

しかしながら、先述のとおり、被請求人は、自ら本件商標を使用した事実を立証すべきであって、第三者から被請求人に宛てたファックスのみをもって、被請求人が本件商標「ベークノズル」を取消請求に係る商品に使用していたということはできない。

仮に、乙第2号証ないし乙第5号証をもって、被請求人が本件商標「ベークノズル」を商品「電線保護ブッシング」に使用した証拠であるといえたとしても、それらの証拠は、本件審判の予告登録前3年以内に日本国内において、被請求人自ら本件商標を取消請求に係る商品に使用したことを証明したということにはならない。蓋し、これらの証拠の作成者は全て第三者であって、被請求人ではないからである。

(イ)被請求人の再答弁7.(3)について

被請求人は、乙第1号証の72頁における「昭和62年12月1日現在」という記載を当該カタログの作成日である旨主張している。

しかしながら、それは決して当該カタログの作成日ではない。どんな本でも、奥書きという一定の形式によって、その作成年月日が記載されているところ、「昭和62年12月1日現在」という記載は、決して、乙第1号証の作成年月日ではない。

(ウ)被請求人の再答弁7.(4)について

(a)被請求人は、当審において、「実際の取引において、本件商標「ベークノズル」は、被請求人の商品を示す商標として現在も使用されている。」旨主張している。

しかしながら、被請求人は、東京地裁における前記訴訟時に、「『ベークノズル』を引き続き使用することは、・・・需要者を欺くことにならないかと考えた・・・(甲第1号証12頁)」旨述べている。

すなわち、被請求人は、本件商標を自己の商品に自ら使用していると主張せずに、「使用されている」と主張しているのは、被請求人は、自ら本件商標を使用する意思がなく、使用していないが、実際の取引において第三者が勝手に使用しているということである。

(b)被請求人は、請求人が提出した甲第2号証の1ないし5(1991年)については勿論、甲第3号証の1ないし5(1999年)においても、本件商標を使用しておらず、そして、1999年10月5日付けのカタログ(甲第5号証の1ないし5)においても、本件商標を使用していない。

(c)被請求人は、2001[平成13]年7月1日付けのカタログ(甲第6号証の1ないし5)において、商標「BNノズル」の下に、小さく(「BNノズル」の1/5の大きさで)「ベークノズル」の文字を表示している。

しかしながら、これは商標としての使用ではなく、本件審判請求があったために、被請求人の主張と符合するように表示したにすぎないものである。

すなわち、「ベークノズル」の文字は、甲第6号証において初めて表示されているので、本件商標を本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において使用したということにはならない。

(エ)被請求人の再答弁7.(5)について

被請求人提出の乙各号証の作成者は、被請求人自身ではない。

(オ)被請求人の再答弁7.(6)について

本件は既に書面審理に入っており(平成12年10月24日付)、証人調べは不適当である。

(4)以上のとおりであるから、本件商標の登録は、取り消されるべきである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び請求人の弁駁に対する再答弁を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。

(1)被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を取消請求に係る指定商品「電気材料、その他本類に属する商品」中の「電線保護ブッシング」について使用している。

(2)本件商標の使用証拠(乙第1号証ないし乙第5号証)

(ア)乙第1号証

乙第1号証に示すとおり、被請求人は、本件商標「ベークノズル」が付された商品「電線保護ブッシング」を販売している。

さらに、商品「電線保護ブッシング」に本件商標「ベークノズル」を付して販売している事実を立証するために、被請求人は、顧客から被請求人に宛てた注文書(写し)を乙第2号証ないし乙第5号証として証拠提出する。

(イ)乙第2号証

乙第2号証は、1999[平成11]年4月7日付けで株式会社サンナイオートメーションから被請求人に宛てたFAXによる注文書(写し)である。

(ウ)乙第3号証

乙第3号証は、2000[平成12]年2月25日付けで島津電業株式会社から被請求人に宛てたFAXによる注文書(写し)である。

(エ)乙第4号証

乙第4号証は、2000[平成12]年3月27日付けで三浦電気株式会社から被請求人に宛てたFAXによる注文書(写し)である。

(オ)乙第5号証

乙第5号証は、2000[平成12]年4月18日付けでスズデン株式会社から被請求人に宛てたFAXによる注文書(写し)である。

(カ)以上のとおり、乙各号証には、いずれも商品名として「ベークノズル」が記載されているので、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を商品「電線保護ブッシング」について使用しているものである。

(3)請求人の弁駁に対する再答弁

請求人は、平成12年11月15日付けの弁駁書において、被請求人が本件商標の使用事実を主張・立証していない旨述べている。

しかしながら、請求人の当該弁駁は、以下の理由により、いずれも失当である。

(ア)請求人は、弁駁書(2頁)において、被請求人が本件商標を、いつ、どこで使用したかについて主張・立証すべき責任があるにもかかわらず、ただ単に「・・・登録前3年以内に・・・」と述べているのみで、具体的な主張・立証をしていないと主張している。

しかしながら、上記乙第2号証ないし乙第5号証の各注文書(写し)に記載された日付、地名及びFAX番号から、本件商標が、いつ、どこで使用されていたかは十分に立証されている。

すなわち、乙第2号証ないし乙第5号証には、いずれも作成日と作成場所が明確に示されているので、本件商標の使用年月日と使用場所は、充分に立証されているものである。

(イ)請求人は、乙第1号証が表紙と71頁及び72頁のコピーしかなく、奥書きのコピーがないから、信憑性に乏しい旨述べている。

しかしながら、乙第1号証の72頁の右下には、「昭和62年12月1日現在」という記載があり、これにより乙第1号証のカタログは、昭和62年12月1日頃に発行されたことが立証されている。

なお、奥書きのコピーがないことをもって、乙第1号証の証拠力が否定されるものではなく、本件商標の使用証拠として、乙第1号証は信憑性を有する。

(ウ)請求人は、被請求人と請求人が東京地方裁判所における平成11年(ワ)第13926号商標権侵害差止等請求事件において争った経緯がある旨述べるとともに、弁駁書(3頁)において、「被請求人は、本件商標の使用を止めており、自ら本件商標を使用する意思がないにもかかわらず、本件商標の商標登録出願をし、そのまま登録されたことを奇貨として、前記訴訟に及んだものである。」旨述べている。

しかしながら、被請求人は、被請求人の商品の素材をベークライトからユリア樹脂等に変更したことから、その商品名を「BNノズル」と変更したにすぎず、実際の取引において、本件商標「ベークノズル」は、被請求人の商品を示す商標として現在も使用されている。

被請求人は、自社商品の信用を保持するために、請求人が本件商標「ベークノズル」を使用することの差し止めを必要とし、前記訴訟に及んだのであり、請求人の上記主張は失当である。

当該訴訟の判決中でも、請求人のそうした主張は採用されておらず、被請求人による本件商標の不使用の事実も認定されていない。

(エ)請求人は、弁駁書(3頁ないし4頁)において、「被請求人は、乙第2号証ないし乙第5号証を提出して、云々と主張している。上記の書証も前記事件において、甲第10号証の1ないし6として提出されたものであり、被請求人の上記裁判における主張のとおり、被請求人が使用したのではなく、顧客が作成した書類である。したがって、上記書証によって、被請求人が本件商標を使用した証拠となるものではない。上記のことは、被請求人の裁判における主張自体によって明らかである。」旨述べている。

しかしながら、乙第2号証ないし乙第5号証の各注文書には、本件商標「ベークノズル」が商品名として記載されているので、顧客は、「ベークノズル」が被請求人の商標であることを認識し、商品の注文の際に、本件商標「べ−クノズル」を当該商品に使用していたことは明白である。

さらに、顧客から受領した注文書(写し)に被請求人が出荷予定日を記載して依頼者に返送しているので、乙第2号証ないし乙第5号証の各注文書は、被請求人自ら作成した出荷案内書の機能も兼ね備えている。

このように、取引が実際にされていることから、被請求人の商標によって、被請求人の販売する商品が特定され、被請求人と顧客との間で商取引がされていることは明らかな事実であり、商標の使用に当たる。

仮に、商標として使用されていないとすれば、商品の認識もできず、商取引が成り立たない筈である。

(4)以上のとおり、被請求人は、乙第2号証ないし乙第5号証が被請求人による本件商標の使用を示す証拠として有効と考えるが、本件商標の使用事実及び上記乙各号証の成立性をより確実なものとするため、証人として被請求人会社社長の証人尋問を申請する。

(5)以上のことからすれば、被請求人が本件商標の使用事実を主張・立証していないとする請求人の弁駁は、全く意味がないものであり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人により、商品「電線保護ブッシング」について使用されているので、商標法第50条第1項により、その登録は取り消されるべきではない。

(6)被請求人は、請求人による平成14年2月4日付けの再弁駁に対して何ら再々答弁するところがない。

4 当審の判断

(1)商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、取消請求に係る指定商品のいずれかについて、登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。

(2)これを本件についてみるに、被請求人提出の乙各号証(乙第1号証ないし乙第5号証)と請求人提出の甲各号証(甲第1号証ないし甲第6号証)について、以下、比較検討する。

(ア)乙第1号証と甲第2号証について

(a)乙第1号証は、被請求人提出の「アメリカン電機・・・引掛形接続器具NO.55」という表題の商品カタログ(一部)(写し)である。

乙第1号証のカタログの3枚目に当たる72頁の右下欄外には、「昭和62年12月1日現在」の文字が記載されていることよりすれば、当該カタログは、少なくとも昭和62年12月1日頃に作成し販売開始された被請求人の取り扱いに係る商品のカタログ(一部)(写し)というべきであり、被請求人は、当該乙第1号証の存在をもって、本件商標が取消請求に係る指定商品「電気材料、その他本類に属する商品」中の「電線保護ブッシング」について「昭和62年12月1日現在」以降継続して使用されている旨述べている。

(b)しかしながら、請求人提出の甲第2号証(請求人が1991[平成3]年8月21日付けで提出した被請求人の引掛形接続器具の商品カタログ(写し))によれば、被請求人は、1991(平成3)年頃、商品「電線保護ブッシング」について「BNノズル」という商標を使用している事実が認められるものの、当該商品について本件商標「ベークノズル」を使用していた事実は、認めることができない。

してみると、請求人提出の甲第2号証の存在をもって、前述の被請求人の主張並びに乙第1号証の証拠価値は、少なくとも1991[平成3]年8月21日以降否定されているものといわなければならない。

(c)また、本件商標の指定商品の属する電気又は電子関連機器あるいは電設資材関連の商品分野においては、取引者、需要者の希求する新商品を開発し、商取引を有利に導くために絶え間ない技術開発が進められており、それに伴い、続々と台頭する新商品をすばやく市場に出すことが求められる結果、新商品を商品カタログに迅速に掲載し、顧客等に自社の斬新なイメージともども積極的にアピールして行く宣伝手法が多数採用されており、そのことから、商品カタログに掲載する商品も順次見直し、新しいものに更新されているというのが実情であり、長い年月を経ても左程変わらないカタログは稀有に等しいものといわなければならない。

(d)以上の諸点を総合すると、本件審判請求の予告登録前3年前である平成9年8月2日よりもさらに10年余も前の商品カタログの一部(写し)にすぎない乙第1号証の中に、たとえ、本件商標「ベークノズル」が存在していたとしても、そのことをもって、甲第2号証により既にその証拠価値が否定されている乙第1号証が1991[平成3]年8月21日から本件審判請求の予告登録前3年以内まで継続して日本国内において、商品「電線保護ブッシング」について現実に使用されていたと認めることはできない。

(イ)乙第2号証ないし乙第4号証と甲第3号証ないし甲第6号証について

(a)乙第2号証は、被請求人提出の株式会社サンナイオートメーションから被請求人に宛てた1999[平成11]年4月7日付けのFAXによる注文書(写し)である。

そのB5縦のFAX用紙(写し)の最上部には、「’99−04−07 14:09」の日時及び「宛先−アメリカン電機(株)殿 送信元−(株)サンナイオートメーション T−826 P.」という表示があり、当該用紙中には、手書きで「関谷サマ」「ベークノズル」「BN16−IV 50コ」「BN14−IV 〃」「BN20−IV 〃」「BN26−IV 〃」「サンナイ」という各文字が黒色で肉太の七段に横書きされ、当該「関谷サマ」の文字の右横には、「新規納期問合せ」というゴム印の印影が見受けられ、また、前記「サンナイ」の文字の右横には、丸版中に、「業務」「日付」(注:11年の年号以外の月日は不鮮明で読みとれない。)「山村」の文字が表示されており、さらに、この用紙の下方には、手書きで「お世話になっております」「在庫あります 即納です」「よろしくお願い致します」という各文字が三段に横書きされており、その用紙の右下の最下部には、別の丸版が押されているものの、「11.4.07」という日付以外は不鮮明であり、会社名、担当部署、担当者等の表示は全く読みとれないところである。

(b)また、乙第3号証は、被請求人提出の島津電業株式会社から被請求人に宛てた2000[平成12]年2月25日付けのFAXによる注文書(写し)である。

そのB5横のFAX用紙(写し)の最上部には、「2月25日(金) 19:16」の日時及び「FROM シマヅデンギョウ K.K ホンシャ TO アメリカンD K.K PAGE.1」という表示があり、「注文書」という見出しの文字の右横には、「12年〇〇月25日」(注:何月かについては不鮮明で読みとれない。)の日付が手書きされ、「あて先」欄には、「アメリカン電機」の文字が手書きされており、それに続く「〇〇様」の文字は二本の斜線で消されており、それとは別に当該用紙中の「島津電業(株)札幌・東京・横浜・大阪・センター・福岡」という印刷文字の右横付近の発注者欄には、丸版が押されているものの、「12.〇〇.25」との日付以外は不鮮明で会社名、担当部署、担当者等は、全く読みとれない。

請求人は、当該書面を2000[平成12]年7月25日と述べているが、被請求人は、同年2月25日と述べており、〇〇が何月かについては、両者間に争いがある。

ところで、当該乙第3号証中の「注番」欄には、「530−500−25〇(注:末尾の「〇」の個所の数字は不明。)」の文字が手書きされており、また、「品名」及び「数量」欄には、手書きで「3120 10」「3124R 20」「4322R 20」「ベークノズルBN70BK 100」「〃 〃70IV 100」「〃 〃40IV 200」「〃 〃 50BK 200」という各文字が七段に横書きされており、さらに、その下には、やはり手書きで「飯田所長様」「毎度ありがとうございます」「2/28出荷いたします」という各文字が三段に横書きされ、その右横下付近に、もう一つ丸版が押されており、そこには、「アメリカンデンキ」「12.2.28」「小池(裕)」の文字が見受けられる。

(c)さらに、乙第4号証は、被請求人提出の三浦電気株式会社から被請求人に宛てた2000[平成12]年3月27日付けのFAXによる注文書(写し)である。

そのA4縦のFAX用紙(写し)の最上部には、「’00年03月27日(月) 12:37」の日時及び「宛先 アメリカンデンキ 発信 ミウラデンキ トクハン P01/01」という表示があり、その「FAX連絡書」という見出しの下にある「アメリカン 殿」という文字の直下には、「12年3月27日」の日付が手書きされ、さらに、その下の「注文番号」、「品名・品番」及び「数量」の各欄には、「713N04」「BN50ベークノズル 50」という各文字がいずれも手書きされており、さらに、その下に、手書きで「寺西様」「毎度ありがとうございます」「3/27出荷いたします」という各文字が三段に横書きされ、その右横下付近に、丸版が押されており、そこには、「アメリカンデンキ」「12.3.27」「小池(裕)」の文字が見受けられる。

(d)そこで乙第2号証ないし乙第4号証について検討するに、これらの証拠は、いずれも僅か一枚のFAX用紙であるばかりでなく、丸版の日付や担当者名等の読みとれないものが含まれていること、「ベークノズル」という文字が肉太の油性マジックペンのようなもので手書きされていたり、「ベークノズルBN70BK 100」「713N04」「BN50ベークノズル 50」という文字等がボールペンのようなもので、いずれも手書きされていることからすると、商標法上の商標としての使用とみるには些か不自然であること、それらが如何なる商品に使用されたかが表示されていないこと、それらには、商品の単価、消費税、合計金額等の記載すらもないことなどを総合すると、乙第2号証ないし乙第4号証をもって、被請求人が本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において、商品「電線保護ブッシング」について本件商標「ベークノズル」を使用して株式会社サンナイオートメーション又は島津電業株式会社、あるいは、三浦電気株式会社と現実かつ有効な商取引を行ったと認めることはできない。

(e)一方、甲第3号証ないし甲第6号証を総合すると、被請求人は、1997[平成9]年8月ないし2001[平成13]年6月末まで、商品「電線保護ブッシング」について「BNノズル」という商標を使用していた事実が認められるものの、当該商品について本件商標「ベークノズル」を使用していた事実は認めることができない。

(f)以上の事実を総合すると、乙第2号証ないし乙第4号証をもって、被請求人が本件商標「ベークノズル」を本件審判請求の予告登録前3年以内(平成9年8月2日から平成12年8月2日まで)に日本国内において、商品「電線保護ブッシング」について使用したと認めることはできない。

(ウ)乙第5号証について

(a)乙第5号証は、被請求人提出のスズデン株式会社から被請求人に宛てた2000[平成12]年4月18日付けのFAXによる注文書(写し)である。

そのA4横のFAX用紙(写し)の最上部には、「2000/04/18 NO.833041」の日付及び「宛先 アメリカン電機株式会社 高井様 スズデン株式会社 商品部仕入課 鹿久保勉」という表示があり、その「注文書」という見出し下の「商品名(型式)発注番号」「メーカー名」「数量」「指定納期」「回答単価」という欄には、「UBN−12B 90−Z32391 ベークノズル ユーポン 500個 4/20 30.00」、「UBN−35B 90−Z32392 ベークノズル ユーポン 200個 4/20 170.00」、「UBN−12IV 90−Z32393 ベークノズル〈アイボリー〉 ユーポン 100個 4/20 30.00」、「UBN−14IV 90−Z32394 ベークノズル〈アイボリー〉 ユーポン 100個 4/20 41.00」、「UBN−16IV 90−Z32395 ベークノズル〈アイボリー〉 ユーポン 100個 4/20 51.00」、「UBN−20IV 90−Z32396 ベークノズル〈アイボリー〉 ユーポン 100個 4/20 70.00」、「UBN−30IV 90−Z32397 ベークノズル〈アイボリー〉 ユーポン 100個 4/20 145.00」という各文字が記載されていることが窺い知れる。

(b)そこで検討するに、乙第5号証は、僅か一枚のFAX用紙であるばかりでなく一般的な意味での商取引の事実を示す書類として充分とはいえないものである。

例えば、乙第5号証のFAX用紙中には、「メーカー名」欄に「ベークノズル ユーポン」や「ベークノズル〈アイボリー〉 ユーポン」の文字が見受けられるとしても、被請求人が本件商標「ベークノズル」を如何なる商品について使用したかが記載されていないこと、また、当該商品の消費税、合計金額等すら記載されていないこと、しかも、前述のとおり、甲第3号証ないし甲第6号証によって、被請求人が本件商標「ベークノズル」を本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において、商品「電線保護ブッシング」について使用した事実が既に否定されている点等を総合すると、乙第5号証は、被請求人が本件商標を取消請求に係る商品について現実に取引したことを示す証拠として些か不自然であって、証拠としての客観性・信憑性に乏しいものといわざるを得ない。

(エ)次に、請求人提出の甲第1号証について検討する。

(a)甲第1号証は、被請求人(訴訟時の原告)と請求人(訴訟時の被告)が東京地方裁判所における平成11年(ワ)第13926号商標権侵害差止等請求事件において争った際、被請求人(原告)が同裁判所に提出した平成12年4月25日付けの準備書面(二)の(写し)である。

本件審判事件にあっては、これを訴訟時の相手方であった請求人(被告)が証拠として提出したものである。

この甲第1号証によると、被請求人(訴訟時の原告)は、そのうちの、

「一、普通名称の主張に対する反論 3、普通名称に転化したとの主張に対する反論 (三)、」という項目において、

「原告は『BNノズル』なる商標が登録された平成三年当時から『ベークノズル』なる商標を積極的に使用するのを避けてきた(その経緯は、以下のとおりである)。この結果、少なくとも、被告に比べて圧倒的なマーケット・シェアを有する原告が『BNノズル』なる商標を使用してきたわけである。」と述べている。

また、同書面の「三、原告が『ベークノズル』なる名称の使用を中止した経緯 1、」という項目において、被請求人は、

「原告が本件商標に関して商標登録出願した当時、原告は、本件商品に関して『べ−クノズル』なる商標を実際に使用しており(甲第9号証の1ないし4)、本件商品に関する原告の商標として周知であった。ただし、原告は、本件商品を製造するにつき、ベークライトからユリア樹脂、ABS樹脂あるいはナイロンに素材変更を行ったことから、ベークライトを主に使用していた頃の本件商品の名称である『ベークノズル』を引き続き使用することに躊躇を覚えた(引き続きこの名称を使用することは、需要者を欺くことにならないかと考えたわけである)。」と述べている。

さらに、「同2、」という項目において、被請求人は、「さりとて、原告が本件商品に関して全く異なる名称を使用するとすれば、原告がせっかく努力して勝ち得た本件商品に関する信用を失うことにもなりかねないと考えて、原告は、本件商品の商品コードとして使用していた『BN』(言うまでもなく『B』は『ベーク』、『N』は『ノズル』なる語に由来する。)なる語と『ノズル』なる語を組み合わせて『BNノズル』と称することにし、原告が作成する出版物には『BNノズル』なる名称のみ付することにした。」と述べている。

なおさらに、「同3、」という項目において、被請求人は、「ただし、顧客が、原告に対して、注文書に『ベークノズル』と記載するなど、引き続き原告の商標として広く使用されることが想像されたし(実際、『ベークノズル』という名称は顧客との取引において現在も使用されている。)、第三者が『ベークノズル』なる名称を使用して不正競争行為をしないよう予防しておく必要性も痛感した。そこで、原告は、『BNノズル』なる商標の出願とともに、本件商標『ベークノズル』についても出願したわけである。」と述べている。

(b)甲第1号証は、被請求人が本件商標を登録の前後頃から使用しておらず、むしろ、本件商標と異なる「BNノズル」商標を使用していた事実を自認した内容となっており、請求人提出の甲第2号証ないし甲第6号証等を勘案すると頗る信憑性があり、優に証拠として認め得るものである。

(3)結語

以上の事実及び請求人主張の全趣旨並びに請求人提出の甲第1号証ないし甲第6号証を総合勘案すると、被請求人提出の乙各号証は、いずれも被請求人が本件商標「ベークノズル」を本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商品「電線保護ブッシング」について使用した事実を示すに足りる証拠と認めることはできず、他に、当該認定を覆すに足りる証左は見出せない。

また、被請求人は、本件商標を当該期間内に取消請求に係る商品について使用していなかったことにつき、正当な理由を示していない。

してみると、被請求人は、本件審判請求の予告登録前3年以内に、本件商標を取消請求に係る商品について使用していなかったものといわざるを得ない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第2項の規定により、これを取り消すべきものとする。

なお、被請求人は、本件商標の使用事実及び被請求人提出の乙各号証の成立を明らかにするために、被請求人会社社長の証人尋問を申請しているが、被請求人会社の社長と被請求人とは利害を同じくする立場にあるというのが相当であり、第三者とは到底解し難いから、その者の証言を一般的にみて、客観性あるものと判断しなければならないだけの格別の理由も見出せないので、これについては行わない。

よって、結論のとおり審決する。

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