結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2002−35528(T2002−35528/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4479154号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成12年8月25日登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成13年6月1日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第3371000号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成7年2月24日登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類」を指定商品として、平成10年12月25日に設定登録されたものである。同じく、登録第4259240号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、平成9年8月19日登録出願、第25類「靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成11年4月9日に設定登録されたものである。同じく、登録第4325264号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、平成10年11月9日登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成11年10月15日に設定登録されたものである。同じく、登録第4469235号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(5)のとおりの構成よりなり、平成12年6月8日登録出願、第14類「貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器,貴金属製の花瓶及び水盤,貴金属製針箱,貴金属製宝石箱,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製靴飾り,貴金属製コンパクト,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,時計,キーホルダー」、第16類「紙類,紙製包装用容器,紙製テーブルクロス,紙製ブラインド,紙製のぼり,紙製旗,印刷物,書画,写真,写真立て,文房具類(「昆虫採集用具」を除く。),事務用又は家庭用ののり及び接着剤」、第18類「原革,原皮,なめし皮,毛皮,皮ひも,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,愛玩動物用被服類」、第21類「食器類(貴金属製のものを除く。),アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,化粧用具,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,小鳥かご,小鳥用水盤,トイレットペーパーホルダー,花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),香炉」、第23類「糸(脱脂屑糸を除く。)」、第24類「布製身の回り品,織物製テーブルナプキン,ふきん,敷布,まくらカバー,毛布,織物製いすカバー,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,シャワーカーテン,織物製トイレットシートカバー,布製ラベル,のぼり及び旗(紙製のものを除く。)」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」、第26類「組みひも,テープ,リボン,房類,ボタン類,針類,編み棒,裁縫箱,裁縫用へら,裁縫用指抜き,針刺し,針箱(貴金属製のものを除く。),被服用はとめ,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く),ワッペン,腕章,腕止め,靴飾り(貴金属製のものを除く。),靴はとめ,靴ひも,靴ひも代用金具」、第27類「敷物,壁掛け(織物製のものを除く。),畳類,洗い場用マット,人工芝,壁紙」及び第28類「おもちゃ,人形」を指定商品として、平成13年4月20日に設定登録されたものである、そして、上記引用各商標は、いずれも現に有効に存続しているものである。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
1.請求の理由
(1)本件商標は、左向きで立ち、首を左水平方向よりやや上に向けて、尾を右水平方向に延ばしている黒塗りの犬の図形を中央に描き、その左右に「DOG」と「DEPT」の欧文字を配置した態様である。(本件商標の図形部分についてのみいうときは、以下「本件図形」という。)
そして、本件商標において、本件図形は、黒塗りで、中央に明瞭に描かれていること、視覚上、観念上、本件図形と欧文字とを一体不可分に認識しなければならない特別な事情が存在しないことに照らすならば、本件図形のみが、独立して観者に認識される蓋然性を有するものである。
(2)引用商標1は、左向きで立ち、首を左水平方向よりやや上に向けて、尾を下方に垂らしている黒塗りの犬の図形から構成されるものである。
引用商標2は、左向きで立ち、首を左水平方向よりやや上に向けて、尾を右水平方向に延ばしている黒塗りの犬の図形を中心に描き、この図形を水平に横切るように「Golden Retriever」の欧文字を記したものである。(引用商標2の図形部分についてのみいうときは、以下「引用2図形」という。)
引用商標3は、左向きで立ち、首を左水平方向よりやや上に向けて、尾を水平方向から若干下方に垂らしている黒塗りの犬の図形と、「LOVELABRA」の欧文字から構成されるものである。(引用商標3の図形部分についてのみいうときは、以下「引用3図形」という。)
そして、引用商標2及び引用商標3は、本件商標と同様、図形のみが、独立して観者に認識されるものである。
引用商標4は、左向きで立ち、首を左水平方向よりやや上に向けて、尾を右水平方向よりやや上に向けて延ばしている黒塗りの犬の図形よりなるものである。
(3)本件図形と引用各商標の犬の図形を比較すると、両者は、何れも左向きで立った姿勢を保ち、黒塗りで描かれているという特徴が共通であり、このような基本的な特徴が、これに接した一般需要者に強く印象づけられるものであるから、両者は外観において類似するものである。
(4)本件商標と引用商標1、引用商標3及び引用商標4は、例えば、指定商品の「被服」において、ワンポイントとして縫いつけられたり、刺繍されたりするなど、比較的小さく表示されるものでもあり、また、本件商標と引用商標2は、例えば、指定商品の「履物」において、商品の下げ札等に比較的小さく表示されるものでもあるから、上記細部の相違はほとんど目立たないものであるということができる。
しかも、両商標は、犬ないし動物に格段の関心を持たない者を含む広範な一般消費者を需要者とする「被服」、「履物」を指定商品に含むものであり、それらの需要者において細部の相違を明確に区別できる場合は存在しない。
したがって、本件商標と引用各商標に接する需要者は、その犬の図形により「左向きで立った姿勢を保ち、黒塗りで描かれている犬」を直感的に理解するものである。さらに、本件商標と引用各商標とは、その指定商品を共通にするものである。
2.答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、本件商標について、「外観上文字の占める比率は、図形の占める比率よりも圧倒的に大きい。したがって、その外観上文字が無視されることはなく、必ず図形と一体となって看取されるということができる。」と主張し、さらに、本件図形と引用商標1の相違点として、(a)ないし(d)(被請求人の答弁2.(1))を挙げる。
しかしながら、本件商標は、本件図形を顕著に表現して中心に配し、左右に欧文字を配したもので、文字部分の独立した称呼及び観念が生じ、また、本件図形から独立した外観、観念及び称呼が生じる。
また、本件図形と引用商標1を子細に見れば種々の相違点はあるが、全体から受ける印象は同一であり、本件図形と引用商標1とが、外観上類似していることに疑いの余地はない。請求人は、乙第1号証(平成13年(行ケ)第174号商標登録取消決定取消請求事件の判決)を請求人の有利に援用する。
すなわち、被請求人の挙げた(a)ないし(d)の相違点は、上記判決の認定よりすれば、(a)ないし(c)は、犬ないし動物に特段の関心を持たない者を含む広範な一般消費者が、その普通に払われる注意力をもって、正確に観察し、記憶し、想起して、これによって商品の出所を識別するにはあまりにも微差であるとしかいいようがない。また、(d)の犬種の相違にあっては、デザイン化され、かつ、シルエットで表現された犬図形からその犬種を直ちに判別することは極めて難儀であり、これまた犬ないし動物に特段の関心を持たない者を含む広範な一般消費者が、その普通に払われる注意力をもってしても犬種の判別をすることは不可能であるといえる。
上記したように、本件図形と引用商標1とは、前記若干の微差があったとしても、当該差異は看者の印象に残り難いものであるのみならず、いずれも両商標の構成上の細部にわたる要素に係る差異であるにすぎない。そうすると、そのような差異点から看者が受ける印象の相違は、上記の外観全体から直ちに受ける視覚的印象を減殺するものではなく、簡易、迅速を重んじる取引の実際においては、「左向きで立ち、首を左水平方向よりやや上に向けて、尾を延ばしている黒塗りの犬」なる観念のもとに取引に供されることになり、両者の間で混同誤認が生じること必然である。
(3)被請求人は、本件図形と引用商標2ないし引用商標4との非類似について種々述べているが、いずれの図形も、左向きで立った姿勢を保ち黒塗りで描かれている犬との結合商標といった点において共通していることは前記したとおりである。
(4)被請求人は、「通例ワンポイントとして縫い付けられる場合の大きさは、小さくても横幅が3cm程はあり、その位の大きさであれば、両商標の上記の如き顕著な相違が失われることはない。」旨主張する。
しかしながら、被請求人が現実に販売しているキャップ(野球幅)に付された本件商標を示す写真(乙第9号証ないし乙第13号証)並びにブルゾン及びトレーナーに付されたワンポイントマークを示す写真(乙第10号証、乙第13号証)などは、本件商標か引用商標1なのか見分けがつかない程近似した外観を呈している。
つまり、商品の性質上、ワンポイントマークなどは布上に刺繍される場合がほとんどで、横幅がたとえ3cm以上あったとしても、布上に刺繍された図形は商標見本通りに細部まで正確に現出されることありえないのが実情である。
したがって、本件商標を布地で再現した場合には、被請求人が主張する相違点は全体外観に埋没されることになること必定である。
(5)被請求人は、本件商標と引用各商標の登録の状況について、先後願関係を述べているが、本件審判は、本件商標が類似する先願が存在するにもかかわらず登録された過誤が有るか否かを審理するものであって、他の商標の登録に過誤があったか否かを問うものではない。
したがって、他の商標の登録の有効無効を指摘する主張は排斥されて然るべきものである。
(6)被請求人は、本件商標を「平成4年のテストマーケッテイングから使用を開始した」と述べているが、本件商標を使用していた証拠はなんら開示されておらず、本件商標が平成4年から使用されていたとは俄かに信じがたい。
被請求人が「登録第3332917号(乙第31号証)を初めとし、」と主張するように、被請求人の使用商標は、二重楕円の中に左向きで立っている黒塗りの犬の図形と「DOG・DEPT」の文字との結合商標であり、本件商標とは外観、観念ともに全く別異の商標である。
また、被請求人は、本件商標の使用実績を証明する資料として、乙第2号証ないし乙第30号証を提出しているが、当該書証は、乙第2号証を除き、いずれも本件商標の出願日である平成9年2月20日(本件商標の登録出願日は、平成12年8月25日であるので、請求人主張の「平成9年2月20日」は誤記と思われる。本件商標の登録出願日については、以下同じ。)以降の使用事実を立証するものであり、本件無効審判の審理に何等関係の無いものである。
なお、本件商標の出願日前の書証となる乙第2号証には、「マフラー」をした犬が座した商標が描かれているが、本件事案の大図形とは全く相違している。
また、乙第31号証ないし乙第37号証に示された商標は、二重楕円の中に左向きで立っている黒塗りの犬の図形と「DOG・DEPT」の文字との結合商標あり、本件商標及び引用各商標とも外観を全く異にするものである。
一方、乙第38号証ないし乙第44号証に示された商標は、いずれも出願日が本件商標の出願日以降の出願にかかるものであり、本件審理に何等関係するものではない。
また、乙第45号証ないし乙第50号証に示された商標は、外国での登録の事実を立証するものであろうが、本件審判は、本件商標の出願日の時点において、類似となる引用各商標が存在するにもかかわらず、過誤によって本件商標が登録された瑕疵を是正するため当該登録を無効にせんとするものであって、外国における登録例が何等関与される余地はないのである。
したがって、乙第2号証ないし乙第50号証は、いずれも本件審理に影響を与える証拠とはなりえないものである。
3.むすび
以上述べたとおり、本件商標は、引用各商標と類似の商標であり、かつ、その指定商品も引用各商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は無効とされるべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第50号証を提出した。
1.本件商標は、欧文字の「DOG」と「DEPT」の間に犬のシルエット図形を配することによって、1つのまとまった外観を呈しており、外観上文字の占める比率は、図形の占める比率よりも圧倒的に大きい。
したがって、その外観上文字が無視されることはなく、必ず図形と一体となって看取されるということができる。
よって、本件商標と、図形が大きな欧文字に挟まれた構成となっていない引用各商標とが、外観上非類似であることはいうを俟たない。
2.なお、念のため、本件図形と引用各商標との類否について検討しておく。
(1)引用商標1について
本件図形と引用商標1は、「何れも左向きで立った姿勢を保ち、黒塗りで描かれているという特徴が共通」であるとしても、両者の犬種の違いから生ずる外観上のイメージの相違は明らかである。すなわち、両者には、次のような違いがある。
(a) 本件図形は、胴体に対して頭部がかなり小さいのに対し、引用商標1の犬は、胴体に対して頭部が大きい。
(b) 本件図形の犬の脚は細く、特に後脚が細く表現されているのに対し、引用商標1の犬は、前後脚ともにどっしりと太く表現されている。
(c) 本件図形の犬の尾は、先細に先鋭化してほぼ水平に延びているのに対し、引用商標1の犬の尾は、付け根から先端まで太く不揃いで、下方に垂れている。
(d) 本件図形は、その頭部の形、毛並、尾等の姿態の印象から、我が国における一般人が直ちに、かつ、明確に、飼い犬として人気のあるレトリーバー種と認識し得る(ゴールデンレトリーバー等の具体的名前を正確に認識するという意味ではなく、その種の犬であるとの認識を持つという意味)ものであるのに対し、引用商標1の犬は、マウンテン・ドッグ種特有の頭の大きさ、首の太さ、太身の胴体、太い脚等の姿態を有するものであって、我が国における一般人が、直ちに、明確に大型犬のマウンテン・ドッグ種と認識し得る(同上)ものである。
これらの相違点は、いずれも一見して明確に把握し得るものであって、決して微差ではなく、これらの相違点からして、本件図形からは、スマート感、俊敏感が感取されるレトリーバー種との印象をもって把握されるのに対し、引用商標1からは、全く異種の重量感、鈍足感が感取される超大型犬のマウンテン・ドッグ種との印象をもって把握されると考えられる。
このように、ほぼ対照的な体型に表現され、全く別の犬種との印象をもって把握される本件図形と引用商標1は、誤認混同されるおそれはないと断じ得る。
(2)引用商標2について
引用商標2は、犬のシルエット図形上を横切るように「Golden Retriever」の欧文字を配し、重なり合う部分の文字を白抜きにしたもので、図形と文字とが不可分に結合している。すなわち、この場合、文字を取り除く(図形全体を塗りつぶす)と図形の構成が変わり、塗りつぶさないと文字を全て取り除くことができない関係にあるので、引用商標2は、図形と文字とが不可分一体となったものである。
してみると、本件図形と引用商標2とが、外観上非類似であることは明らかである。
(3)引用商標3について
引用商標3は、欧文字の「LOVE LABRA」を円弧状に表わし、その下に犬の図形を淡色で表わしてなるもので、円弧状の文字と図形とがバランスよく配置されて、1つのまとまりあるデザインに構成されている。したがって、この場合も図形と文字とは不可分一体と考えられ、しかも、図形は淡色(梨子地)に表わされていて輪郭は必らずしも明確ではなく、本件図形とは、外観上顕著に異なっているこというを俟たない。
(4)引用商標4について
引用商標4の犬は、一見して短毛の犬種と認識することができ、尾は細くて斜め上方を向いている。したがって、本件図形と引用商標4の外観上の相違は顕著である。
(5)このように、本件図形と引用商標2ないし引用商標4の外観上の相違は顕著で、外観上非類似であることに疑いはないが、仮に外観上類似であるとした場合は、これら引用商標2ないし引用商標4よりも先願であって、本件図形と同一の図形を含む、被請求人の登録第4195215号商標(乙第42号証)と引用商標2ないし引用商標4とが類似ということになり、引用商標2ないし引用商標4の登録は、無効理由を含むことになる。したがって、かかる引用商標2ないし引用商標4を引用する合理性はなく、許されないといわざるを得ない。
3.請求人は、「両商標は、例えば指定商品の『被服』において、ワンポイントとして縫いつけられたり、刺繍されたりするなど、比較的小さく表示されるものでもあり、そのような事情からすれば、上記細部の相違はほとんど目立たないものであるということができる。」とするが、通例ワンポイントとして縫い付けられる場合の大きさは、小さくても横幅が3cm程はあり、その位の大きさであれば、両商標の上記の如き顕著な相違が失われることはない。
さらに、請求人は、「両商標は、犬ないし動物に格段の関心を持たない者を含む広範な一般消費者を需要者とする「被服」を指定商品に含むものであり、それらの需要者において、尾の角度の相違等の細部の相違を明確に区別できる場合は存在しない。」とするが、例えば、ワンポイントマークの犬の図形において、尾が水平に延びているか、下に垂れているかを認識するために、犬に関心を持っている必要は全くない。犬に関心のある人であれば、本件図形は、ゴールデンレトリーバーらしき犬のシルエット図形であり、引用商標1は、マウンテン・ドッグらしき犬のシルエット図形であるとの認識を持つと思われるが、両商標は、犬種が特定できて初めて識別できるというものではなく、一見して受けるイメージの相違によって識別できるのであって、その識別に、犬に関する知識の有無、並びに、知識の多寡は関係がない。ただ、犬に関心のある人の方が、関心のない人よりも、より明確に識別できる可能性があるというにすぎない。
よって、この請求人の主張も理由がないといわざるを得ない。
4.上記3.の請求人の主張は、商標登録第4364496号の取消決定取消請求事件の判決(乙第1号証)における判決理由を引用したものと思われるが、その判決理由における論旨は、あくまで本件図形と取消決定を受けた請求人商標との間においていえることであって、決して、その請求人商標とは大きく異なる引用各商標と本件商標との間においてえることではない。
5.使用実績について
(1)本件図形は、被請求人が「DOG・DEPT」の文字とともに、平成4年のテストマーケッティングから使用を開始し、商品アイテムは現在では、カジュアルウエア全般、ベビー・子供服、靴下、下着、ホームウエア、バッグ、ベルト、手袋、タオル、ハンカチ、マフラー、ネクタイ、帽子、ステーショナリー、傘、レインウエア、寝装具、犬のリード、首輪その他のペット用商品等に及び、年間取引量も順調に伸びている。
この事実を反映し、被請求人の本件商標に関する商品カタログの頁数も、平成8年版以降増大してきている(乙第2号証ないし乙第14号証)。その間の宣伝広告も、日刊新聞、業界新聞、ファッション雑誌等を中心に継続的に行ってきており(乙第15号証ないし乙第29号証)、雑誌の記事としても取り上げられ(乙第30号証)、話題になっていた。広告宣伝費についても、平成6年で2100万円、平成14年には9800万円と非常に多額の経費をかけてきている。
(2)被請求人は、本件図形を含む商標について、登録第3332917号商標(乙第31号証)を初めとし、多数の区分に多数の登録を有しており(乙第32号証ないし乙第44号証)、その登録は日本国内に止まらず、諸外国にも及んでいる(乙第45号証ないし乙第50号証)。
このように、本件図形は、引用各商標の出願前から出願され、かつ、使用されて、需要者間に広く知られるに至っている。
6.まとめ
以上の理由により、本件商標と引用各商標とは、外観上非類似と考えるのが至当であり、他にも類似と考えるべき要素はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
1.本件商標及び引用各商標が使用される商品の取引の実情について
本件商標及び引用各商標が使用される「被服、履物」等の分野においては、犬、猫、熊あるいはパンダ等の動物の図柄や名称が商標として好んで採択、使用されている実情にあるといえるところ、このような実情にあって、その主たる需要者といえる一般の消費者が、犬など動物の図柄よりなる商標に接する場合、商標の外観的特徴や動物の図柄に付加された他の図形・文字等の差異によって、商標を記憶・識別し、商品の選択に当たるというのが相当である。
上記した被服、履物等の分野における取引の実情を考慮して本件商標と引用各商標の類否について、以下検討する。
2.本件商標について
本件商標は、別掲(1)のとおり、商標中の中央に、左向きに立っている状態の犬の図形をシルエット状に黒く塗りつぶして描いてなり(本件図形)、本件図形の左に「DOG」の文字を、また、同じく右に「DEPT」の文字を、それぞれの文字が本件図形に比べて大きく書してなるものであるところ、その構成中の「DOG」の文字部分は、「犬」を意味する英語として、また、「DEPT」の文字部分は、「部門、・・部、・・省」等を意味する「department」の略語として、我が国の一般の需要者の間で知られているものであるから、構成中の文字部分は、全体として「犬部門」なる意味合いを表したと理解されるものであり、その意味合いは、本件図形と観念において全く関連性がないとはいえない。
してみると、本件商標は、観念からみて、文字と本件図形は、一体のもとして把握、認識されるのみならず、外観上においても、本件図形は、同一の書体で大きく書され、かつ、「犬部門」なる意味合いを看取させる「DOG」、「DEPT」の各文字の間に位置するものであるから、構成全体もって、一体不可分のものとして看取されるということができる。
上記した本件商標の構成態様及び前記1.で認定した本件商標の指定商品の分野における取引の実情を併せ考えると、本件商標に接する一般の消費者は、その構成中の本件図形のみを分離、抽出することなく、構成全体の特徴を記憶、認識するというのが相当である。
また、本件商標より生ずる称呼についてみるならば、本件図形は、犬の種類を特定することは困難であるといえるから、これより特定の称呼、観念は生ずるものではなく、したがって、大きく書され、読みやすい「DOG」、「DEPT」の文字部分より生ずる「ドッグデプト」ないし「ドッグデパートメント」の称呼をもって、商品の取引に当たるとみるのが相当である。
3.引用各商標について
(1)引用商標1
引用商標1は、別掲(2)のとおり、左向きに立っている状態の犬の図形をシルエット状に黒く塗りつぶして描いてなるところ、該犬は、頭部、胴部、足先を含めた足部、尾のいずれもが太く、しかも、太い尾が下に垂れており、全体の体型が太めの印象を与えるものである。そして、引用商標1は、犬の種類を特定することは困難であり、その構成全体の特異性をもって、記憶、認識されるというのが相当である。
(2)引用商標2
引用商標2は、別掲(3)のとおり、商標中の中央に、左向きに立っている状態の犬の図形をシルエット状に黒く塗りつぶして描いてなり(引用2図形)、該犬の胴部を貫くように、「Golden Retriver」の文字を横書きしてなるものである(「Golden Retriver」の文字中、引用2図形と重なる「den Retr」の文字部分は、白抜きで書されている。)ところ、該文字部分は、犬の種類を表すものとして、一般よく知られているものであるから、引用2図形の種類を特定したもの理解され、文字と引用2図形は、観念上密接な関係を有するばかりでなく、文字と引用2図形との配置からしても、外観上一体的不可分のものとして看取されるものである。
そうすると、引用商標2は、その構成中の引用2図形のみが独立して、把握、認識されるものではなく、文字と引用2図形とが一体となった「ゴールデンリトリバー」として、記憶、認識されるものであるから、これより「ゴールデンリトリバー」の称呼、観念を生ずるものといわなければならない。
(3)引用商標3
引用商標3は、別掲(4)のとおり、薄い灰色の横長長方形内の上段に「LOVE LABRA」の文字をやや弓なりに横書きし、該文字の下に左向きに立っている状態の犬の図形をシルエット状に、地色よりやや濃い灰色をもって描いてなる(引用3図形)ものであるところ、その構成中の「LOVE」文字部分は、「愛、愛する」などを意味する英語として知られているものである。また、「LABRA」の文字部分は、特定の語義を有するものではないが、文字部分の下に描かれた引用3図形と相俟って、犬の種類を表すものとして一般によく知られている「labrador dog(ラブラドルドッグ)」を表したと理解される場合も少なくなく、文字部分全体として「愛するラブラドルドッグ」なる意味合いを看取させるものというのが相当である。
そうすると、引用商標3にあって、「LOVE LABRA」の文字と引用3図形は、観念上の結びつきは決して弱いということはできず、また、外観においても、薄い灰色の横長長方形内にまとまりよく配置されているものであるから、一体不可分のものとして、記憶、認識され、これより「ラブラブラ」の称呼を生ずるものであって、「愛するラブラドルドッグ」なる観念を生ずるものといわなければならない。
(4)引用商標4
引用商標4は、別掲(5)のとおり、左向きに立っている状態の犬の図形をシルエット状に黒く塗りつぶして描いてなるところ、該犬は、頭部、胴部、足先を含めた足部、尾のいずれもが細く、全体の体型がスマートで敏捷な印象を与えるものである。そして、引用商標4は、引用商標1と同様、犬の種類を特定することは困難であり、その構成全体の特異性をもって、記憶、認識されるというのが相当である。
4.本件商標と引用各商標との比較
本件商標は、前記2.で認定したとおり、その構成中の本件図形のみが独立して認識されるものではなく、構成全体が一体不可分のものとして認識されるものであるから、前記3.で認定した構成よりなる引用各商標とは、外観上相紛れるおそれはないというべきである。
また、本件商標より生ずる「ドッグデプト」ないし「ドッグデパートメント」の称呼は、引用商標2より生ずる「ゴールデンリトリバー」の称呼及び引用商標3より生ずる「ラブラブラ」の称呼とは、明らかに聴別し得るものであり、引用商標1及び引用商標4とは、称呼上比較することはできない。
さらに、本件商標は、その構成中の文字部分より「犬部門」なる観念が生ずるものであるとしても、これと同一の観念が生ずる引用各商標は存在しないから、本件商標と引用各商標は、観念上非類似のものである。
その他、本件商標と引用各商標とが類似するとみるべき要素は見出せない。
5.請求人の主張について
(1)被請求人は、本件商標及び引用各商標が、被服、履物等に使用されるときは、比較的小さく表示されるから、これらの差異は目立たないものであり、しかも、これら商品の需要者である一般消費者は、犬などの動物に関心を持たない者も含まれ、これら商標の差異を明確に区別できないから、本件商標と引用各商標は、外観上類似するものである旨主張する。
しかしながら、前記認定のとおり、被服、履物等の分野においては、犬を含めた動物の図柄等が商標として好んで採択、使用されている実情にあるところから、一般の消費者は、犬の図形等動物の図柄よりなる商標に接する場合、商標の外観的特徴や動物の図柄に付加された他の図形・文字等の差異によって、商標を記憶・識別し、商品の選択に当たるものというのが相当であり、しかも、商標の全体構成からみて、外観上明らかに相違する本件商標と引用各商標とは、たとえ、ワンポイント等として表示されたとしても、外観上見誤るおそれはないものである。
したがって、上記請求人の主張は採用することができない。
6.むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとは認められないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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