Trademark Appeal Case
論点抽出失敗
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2002−90450(T2002−90450/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4556623号商標(以下「本件商標」という。)は、「HILTONGARAGE」の文字と「ヒルトンガレージ」の文字とを二段に横書きしてなり、平成13年4月12日に登録出願され、第18類「かばん類,携帯用化粧道具入れ,袋物,傘」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」を指定商品として、平成14年4月5日に設定登録されたものである。
2 取消理由の要点
当審において、平成15年4月2日付で商標権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
登録異議申立人「ヒルトン インターナショナル カンパニー」(以下「申立人」という。)の提出に係る甲第3号証ないし甲第6号証(世界企業ダイレクトリー、英和商品名辞典、日本ホテル年鑑、判決)を総合勘案すれば、申立人は、数多くのホテルを世界各地に展開している世界的ホテル企業であり、商号中の「HILTON」ないし「ヒルトン」は、申立人や系列諸会社の略称として、本件商標の登録出願時には、既に著名なものであったいうことができる。
他方、本件商標は、上記のとおり「HILTONGARAGE」「ヒルトンガレージ」の文字よりなるところ、これよりは、一連の親しまれた特定の観念が生ずるとはいい難いものであり、容易に「HILTON」「ヒルトン」の文字と「GARAGE」「ガレージ」の文字とを結合したものと認識されるものである。
してみれば、本件商標は、申立人の名称の著名な略称を含むものといわざるを得ないものであり、しかも、商標権者は、本件商標の登録を受けるについて、申立人の承諾を得ているものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
3 商標権者の意見
上記2の取消理由に対して、商標権者は、要旨次のように意見を述べている。
(1)申立人の略称が「HILTON」もしくは「ヒルトン」であること、また、その略称がホテルもしくはホテルグループとして著名であることは商標権者も否定しない。
しかしながら、本件商標の全体的な文字構成と申立人の略称とを対比検討すると同時に、本件商標の指定商品と申立人の業務態様との関係を比較検討して、これらを総合的に勘案すれば、本件商標は、申立人の人格権を損なうものではなく、商標法第4条第1項第8号に違反していない。
先ず、留意すべき点は、次のア.及びイ.の点である。
ア.本件商標の文字構成は、申立人の略称である「HILTON」もしくは「ヒルトン」の文字単独からなるものではなく、飽くまで「HILTONGARAGE/ヒルトンガレージ」の文字構成からなること。
イ.本件商標の指定商品が、ホテル業とは直接的には関係しない第18類「かばん類,携帯用化粧道具入れ,袋物,傘」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」であること。
さらに、これらの2点を踏まえて、本件商標が商標法第4条第1項第8号に違反していない具体的理由を詳細に説明する。
(2)「HILTON」もしくは「ヒルトン」の文字が、申立人もしくはその関連企業が経営するホテルの略称として著名であることは否定できないものの、本件商標の指定商品との関係からすれば、商標法第4条第1項第8号で規定する「著名」には該当しない。
すなわち、申立人は、異議申立書において、「ホテル内のショッピングアーケード等において本件商標の指定商品がホテル特製商品として販売されていることは多言を要しない。」と主張しているが、いわゆるヒルトンホテルにおいて「HILTON」ないしは「ヒルトン」の文字を付した商品、特に本件商標の指定商品に相当する商品が現実に販売されているとの証拠は、全く提出していない。
確かに、一般に大規模なホテルのショッピングアーケードにおいて各種商品が販売されていることは事実であるが、その場合のアーケード内などのショップとしては、いわゆる高級ブランドの店がほとんどであり、逆にホテル名を冠した商品を販売していることの方が稀である。むしろ、高級なホテルほど、そのホテルとしての格式を守るべくホテル名を冠した商品を販売することは少ないのが一般的傾向と考える。
そして、申立人は、異議申立を行なって各種証拠を提出する機会を与えられていたにもかかわらず、本件商標の指定商品について「HILTON」もしくは「ヒルトン」の文字を付した商品を、ヒルトンホテルあるいはその関連施設において申立人あるいはその関連企業が販売している事実を立証していないことは、むしろ、その事実がないことを示していると推測せざるを得ない。
ちなみに、本件商標に対しては、申立人とは別の申立人「ベステイマンタ ソシエタ ペル アチオーニ」からも異議申立がなされているが、その提出に係る甲第2号証と甲第3号証とによれば、「HILTON」の文字を含む「HILTON/TIME」の商標(登録第3203128号及び登録第4380347号)が、本件商標の指定商品と重複する指定商品において既に登録されており、また、同じく甲第54号証によれば、「HILTON」の文字を含む「HILTON/MADE IN VESTIMENTA ITALY」の商標(登録第4471377号)が同様な指定商品で既に登録されている。また、これらの登録商標のうち、登録第3203128号の「HILTON/TIME」商標は、同じく甲第50号証や甲第52号証に徴すれば、既に著名であると思われる。
そして、このように「HILTON/TIME」の商標が著名であるとすれば、申立人のホテルのショッピングアーケード等において、本件商標の指定商品に相当する商品について「HILTON」ないし「ヒルトン」の文字が付されて販売されていた場合、むしろ、需要者は、別の申立人「ベステイマンタ ソシエタ ペル アチオーニ」を想起・認識すると言わざるを得ない。換言すれば、指定商品との関係では、本件商標を見た需要者は、「HILTON」ないし「ヒルトン」の文字を、申立人の略称として認識する可能性は少ないと言わざるを得ない。
してみれば、少なくとも、本件商標の指定商品の分野においては、「HILTON」ないしは「ヒルトン」なる申立人の略称が、申立人もしくはその関連会社を表わす文字として著名なものであるとは直ちには言い得ない。
(3)申立人が甲第6号証として提出した平成元年行ケ第37号審決取消請求事件の判決では、「ヒルトン」の文字が申立人のホテルの略称として著名であることが認められていることは事実である。しかしながら、上記の審決取消請求事件における取消対象商標(登録第1507228号商標)は、申立人の略称と実質的に同一の文字構成の「ヒルトン/HILTON」の文字のみからなるものであり、本件商標のように、申立人の略称の文字構成そのものとは異なる場合と同列に論じることはできない。
すなわち、上記審決取消請求事件の判決では、その取消対象商標の文字構成が申立人の略称と実質的に同一であったからこそ、商標法第4条第1項第8号で規定する「他人の著名な略称を含む商標」であると認定されたものと思われる。これに対し、本件商標の文字構成は、「HILTON」あるいは「ヒルトン」の文字そのものではなく、飽くまで「HILTONGARAGE/ヒルトンガレージ」と書したものであって、その文字構成中に「HILTON」、「ヒルトン」の文字が含まれていることは事実であるが、その文字構成を本件商標の指定商品の需要者が見たときに、本件商標の文字構成中の「HILTON」、「ヒルトン」の文字部分から直ちに申立人の略称を想起・認識するとは言い得ない。
商標法第4条第1項第8号で規定する「他人の著名な略称を含む商標」であるか否かは、指定商品との関係および判断対象となる商標の文字構成の全体との関係からして、需要者が直ちにその著名な略称を想起・認識するか否かによって判断すべきである。そして、前述の審決取消請求事件の場合は、取消対象商標の文字構成が、たまたま申立人の略称の文字構成と実質的に同一であったからこそ、指定商品との関係を重視することなく、「著名な略称を含む商標」と認定されたと思われる。これに対し、本件商標は、上段のアルファベットは「HILTONGARAGE」と一連に書され、また下段の片仮名も「ヒルトンガレージ」と一連に書されたものであって、上段、下段ともにさほど文字数が多いとはいえず、わざわざ本件商標の前段と後段とを分割して「HILTON」、「ヒルトン」の文字と「GARAGE」、「ガレージ」の文字とを結合したものと認識される可能性は少ない。
本件商標の上段の文字、下段の文字から発生する称呼は、いずれも「ヒルトンガレージ」であり、そのうち後段の「ガレージ」なる音は、駐車場や車庫を表わす「Garage」なる英語の音として我国においても広く用いられている音であるが、この「ガレージ」なる音は、一般に強く発音されて聴取上強く印象付けられる「ガ」の音及び「ジ」の音を含んでおり、これに対し、前段の「ヒルトン」の音はこのような強い音を含まず、滑らかに発音されてその印象が軽いと言わざるを得ない。したがって、本件商標の称呼を聞いた需要者は、前段の「ヒルトン」の音よりも後段の「ガレージ」の音に強く印象付けられると考えられる。したがって、このことからも、本件商標からは、前段の「HILTON」、「ヒルトン」の部分が抽出されて申立人の著名な略称と認識されてしまう可能性は少ないと言わざるを得ない。
以上を総合的に勘案すれば、本件商標は、何ら申立人の名誉や私益を損なうものではないこと、すなわち、申立人の人格権を損なうものではなく、商標法第4条第1項第8号に規定する「他人の著名な略称を含む商標」に該当しないものと確信する。
(4)なお、本件商標の指定商品については、「HILTON」ないし「ヒルトン」の文字を含むと明らかに認められる商標として、前述の登録第3203128号、登録第4380347号、登録第4471377号のみならず、登録第1011983号、登録第1188640号、登録第2482606号、登録第2486960号、登録第2558302号、登録第2579482号、登録第2579483号、登録第2608415号、登録第2608821号、登録第3166175号、登録第3352457号及び登録第4238971号商標のように、既に多数登録されて現実に使用されていること(少なくとも、前述の「HILTON/TIME」の商標は現実に使用されていると解される。)からすれば、本件商標の登録が維持されたところで、申立人の名誉や私益はいまさら損なわれるものではなく、いわゆる人格権も損なわれるものではない。
4 当審の判断
本件商標は、「HILTONGARAGE」、「ヒルトンガレージ」の文字を二段に書してなるものであるところ、上記2の取消理由は妥当なものであって、これよりは、一連の親しまれた特定の観念が生ずるとはいい難いものであり、「HILTON」「ヒルトン」の文字と「GARAGE」「ガレージ」の文字とを結合したものと認識されるものであるから、申立人の名称の著名な略称を含むものといわざるを得ないものであり、しかも、商標権者は、申立人の承諾を得ていないものと認める。
しかして、これを論難する商標権者の上記3の意見は、以下の理由により採用することができない。
すなわち、本件商標は、「HILTONGARAGE」「ヒルトンガレージ」の文字よりなるところ、これよりは、一連のものとして把握しなければならないものではないこと上記2の取消理由で述べたとおりである。
一方、「HILTON」ないし「ヒルトン」の文字が、ホテルもしくは申立人やその系列諸会社の略称を表すものとして著名であることは、商標権者も認めているところである。
ところで、一般に、ホテルにおいては、ホテル内のショッピングアーケード等において各種商品の販売がされており、本件商標の指定商品に相当する商品も多数販売されているものということができる。
そうすると、「ホテル」と本件商標の指定商品とは、少なからず関係があるものといえるものである。
そして、申立人のホテルにおいても、本件商標の指定商品に相当する商品を含む各種商品が販売されているものと容易に推測できるものであるから、本件商標の指定商品との関係においても、「HILTON」ないし「ヒルトン」の著名性は否定できないものといわざるを得ない。
してみれば、実際には、申立人のホテルにおいて、本件商標の指定商品に相当する商品が販売されていて、それらの商品には、「HILTON」ないし「ヒルトン」の文字が付されていないとしても、申立人の著名な略称を含む本件商標が、ホテルと少なからず関係するその指定商品に使用されたときは、これに接する需要者は、「HILTON」ないし「ヒルトン」の文字部分より、申立人を容易に認識するものと判断するのが相当である。
そうすると、本件商標は、申立人の名称の著名な略称を含むものであり、かつ、申立人の承諾を得ていないものであるといわざるを得ない。
また、商標権者は、「HILTON」ないしは「ヒルトン」の文字を含む商標の登録例を挙げて、本件商標の登録は維持されるべきであると主張しているが、具体的事案の判断においては、過去の一部の判断に拘束されることなく検討されるべきものであり、これをもって前記認定、判断を覆す証左としては採用できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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