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Trademark Appeal Case

周知商標の無効審判

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2002−35317(T2002−35317/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第2142035号商標(以下「本件商標」という。)は、「MILLE MIGLIA」 の欧文字を横書きしてなり、昭和61年7月22日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、平成1年5月30日に設定登録、その後、平成11年6月1日付けで商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」と申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。

1 請求の理由

(1)本件商標は、「MILLE MIGLIA」 の欧文字を横書きしたものであるところ、当該文字は、請求人がイタリア、日本を始め世界の多数の

国で使用している商標と同一又は類似のものである。すなわち、本件商標は、イタリア共和国の北部の都市、ブレシアを中心に過去数十年間にわたって行われてきた自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマークである赤い右向きの矢印の中に「1000」と「MIGLIA」を2段書きしたものをイタリア語で表記したものであり、「MILLE MIGLIA」 は、上記の赤い右向きの矢印の商標と同様に伝統的な自動車レ一スを示す商標の1つである。すなわち、本件商標は、「MILLE」と「MIGLIA」をわずかなスペースを挟んで−列に書いたものであるが、「MILLE」は数字の1000を意味し、「MIGLIA」は英語の「MILE」(マイル)を意味し、全体としては「1000マイル」(約1、600km)を意味している。

(2)この自動車レース「ミッレ・ミリア」の歴史は非常に古く、20世紀の初めに始り、現在も毎年ブレシアをスタートし、ローマを経由してブレシアに戻るルートで行われている。このレースは単に速さを競うものではなく、フェラーリなどのビンテージカーを使用する極めて格調の高いレースである(甲第4号証ないし甲第10号証)。

自動車レースとして日本ではFIや、パリ・ダカールラリーが有名であるが,「ミッレ・ミリア」の歴史はそれらより古く、人気も劣らないくらいである。また、「ミッレ・ミリア」は、現在ではイタリアのみならず、南米版「ミッレ・ミリア」、米国版「ミッレ・ミリア」、日本版「ミッレ・ミリア」などが開催されるに至っているのである(甲第11号証)。また、日本では、本場イタリアの「ミッレ・ミリア」がテレビ放送され、人気が高まっている(甲第12号証)。

(3)本件商標と同一の商標は、イタリアにおいてブレシア自動車クラブ(ACB)が所有しているが、自動車レース、「ミッレ・ミリア」を開催・運営している主催者である請求人(旧名称はダルマ エス アール エル)は、ブレシア自動車クラブ(ACB)から、この商標の使用を許諾され、かつ、サブライセンスを与える権能をも与えられている。したがって、請求人は、日本の企業との間で商標の使用許諾契約を行っている(甲第2号証及び甲第3号証)。

(4)本件商標は、上述のように自動車レースの愛好家の間では世界的に認知され、日本でも日本版「ミッレ・ミリア」として、1992年(平成4年)からクラシックカーによる1000マイルの走行デモを伴うイベントが開催されており、そのシンボルマークとして、本件商標が使用されている。したがって、日本国内及び外国の自動車レースの愛好家や、関連業界の人々にとって、本件商標は極めて周知なものである(甲第11号証ないし甲第13号証)。しかし、本件商標が登録査定された時点は、日本国内での自動車レースが上記日本版「ミッレ・ミリア」として開催されていたわけではなく、イタリアで周知であった本件商標と同一の商標の存在は十分に認識されることがなく、よって登録を受けたものである。

(5)しかし、1990年以降1995年まで毎年フジテレビ系列でイタリア及び/又は日本の「ミッレ・ミリア」が放映され、1998年以降はテレビ朝日系列で毎年放映されている(甲第12号証)。また、1993年(平成4年)以降毎年日本における日本版「ミッレ・ミリア」が開催され、テレビで放映され、「MILLE MIGLIA」 という商標がインターネットでも広く知れ渡るようになった。このように「ミッレ・ミリア」が日本で知名度を高めている様子は、請求人が行った登録第3312283号商標の登録無効審判(平成10年審判第35331号)における審決でも認定されている(甲第13号証)。すなわち、1991年6月22日の日経流通新聞の記事、1992年10月23日の朝日新聞夕刊の記事、1992年10月30日の毎日新聞夕刊の記事や、1990年以降の1995年までのフジテレビの放送に関する1990年6月3日などの朝日新聞のテレビ番組欄、その他が示されている。

(6)このように、「MILLE MIGLIA」 という商標が日本でもクラシックカーレースのシンボルマークの1つとして周知になっているにも拘わらず、被請求人は、1999年(平成11年)4月28日に更新申請を行い、この申請が実体的審査を経ずに容認され、平成11年6月1日に更新登録されたものである。

(7)しかし、「MILLE MIGLIA」 という商標は、上記テレビ放映や新聞記事での紹介などから、少なくとも1993年の10月に最初の日本版「ミッレ・ミリア」が開催される頃までには、国際的に知られているのみならず、国内で周知となっていたものである。また、 「MILLE MIGLIA」という商標は、単に自動車レースを開催する者を示すのみにとどまらず、伝統ある国際的な自動車レースの開催団体である請求人が自ら、あるいはその団体から商標の使用許諾を得た者が衣類や、アクセサリー、装身具類、宝石、旅行かばん類、バッグなどの商品を販売する場合に独占的に用いることができるものであり、同団体から許諾を得ていない者が勝手に使用できるものではないはずである。このことは、前述の甲第2号証及び甲第3号証からも明らかであり(甲第3号証、第1頁の契約事項参照)、甲第11号証でも、衣類やヘルメット、サングラス、ハットピン、バッチなどがオリジナルグッズ(ORIGINALGOODS)として甲第11号証の後ろから4,5頁に示されていることからも明らかである。

(8)したがって、「MILLE MIGLIA」 という商標が、伝統的であり国際的な自動車レースのシンボルマークの1つとして世界的に知られ、かつ国内で周知となった遅くとも1993年の10月以降に、被請求人が更新申請を行うこと自体が公序良俗違反である。すなわち、伝統的な国際的イベントであるクラシックカーのレースのシンボルマークの1つを、その国際的なイベントの開催団体と無関係な者でかつライセンスを受けていない者が、開催団体の許可なく使用すること自体が国際的な信義に反する行為である。また、国内における商標権の存在を理由に、被請求人は独占権を主張するかもしれないが、商標法は、商標を使用する者のみを一方的に保護する法律ではなく、常に需要者の利益を考慮するものである(商標法第1条)。したがって、国際的に認知され、国内で周知となり、自動車マニアなら多くの人々が知っていて、かつ国内でも毎年開催されている自動車レースのシンボルマークを、この自動車レースの開催団体と無関係な者が商標権の存在を理由に、その指定商品に使用すると、需要者は、当該自動車レースの開催団体自体又は、そこからライセンスを受けた者が使用している商標であると認識し、結果として需要者の保護を図ることができない。また、かかる更新申請を容認して更新登録されたことは、商標登録後に商標法第4条第1項第7号に掲げる商標に該当するものとなっているのに更新登録されていることとなり、商標法第46条第1項第5号に該当する。

(9)伝統ある国際的な自動車レースの開催団体であり、かつイタリアにおける商標所有者から商標管理を委託されている請求人と無関係な者が販売する商品に「MILLE MIGLIA」 という商標が付されていると、需要者は、下記の品質誤認を生じる。すなわち、イタリアや日本で開催されている伝統ある国際的な自動車レースの開催団体や、そこからライセンスを受けた者が、一定の商品の品質の基準を設けて、所定品質以上の商品のみがこの「MILLE MIGLIA」 という商標が付されて市場に出ているものと思われているにも拘わらず、開催団体と無関係な者が「MILLE MIGLIA」という商標を付して、例えば装身具などの商品を販売すると、需要者は、開催団体あるいはそこからライセンスを受けた者の販売にかかる一定水準の品質の商品であると錯覚することとなる。しかし、被請求人は、開催団体からライセンスを受けているわけでも、商品の品質を一定以上に保持するための方策について開催団体と協議したわけでもないから、その商品の品質はまちまちであることが明らかである。したがって、需要者からすると、商品の品質を誤認することは明らかである。上記更新申請が容認されて更新登録されたことは、商標登録後に商標法第4条第1項第16号に該当する商標となっているのに更新登録されていることとなり、商標法第46第1項第5号に該当する。

(10)以上のとおり、本件商標は、商標法第46条第1項第5号により無効とされるべきである。

2 答弁に対する弁駁

(1)被請求人は、「MILLE MIGLIA」 なる商標が、仮にイタリアの自動車レースを示すものとして広く知られていたとしても、そのことをもって本件商標が商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風

俗を害するおそれがある商標」に該当する理由にはならないとしている。

しかしながら、請求人が主張しているのは、「MILLE MIGLIA」 という商標が、伝統的であり国際的な自動車レースのシンボルマークの1つとして世界的に知られ、かつ国内で周知となった遅くとも1993年の10月以降に、被請求人が更新申請を行うこと自体が公序良俗違反であるということである。すなわち、伝統的な国際的イベントであるクラシックカーのレースのシンボルマークの1つを、その国際的なイベントの開催団体と無関係な者でかつライセンスを受けていない者が、開催団体の許可なく使用すること自体が国際的な信義に反する行為である。したがって、被請求人の答弁は、何ら請求人の主張を否定する根拠とはなり得ない。

(2)本件商標と同様な「MILLE MIGLIA」 と「ミッレミリア」を上下2段に横書きしてなる登録商標(登録第2216786:商標権者ミッレミリア(株))も、無効2002−35136にて無効審決(甲第14号証)が出されており、その審決においても、同登録商標が商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当すると認定されている。

(3)被請求人は、「本件商標は商品の品質を何ら表示するものではないから、商標法第4条第1項第16号にいう『商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標』には該当しないことは明らかである。」と主張する。

しかしながら、商標法第4条第1項第16号にいう商品の品質は、広く解釈すべきであるとするのが定説であり、下級品を上級品と誤認させる場合、商品の特性を誤認させる場合や商品の種類を誤認させる場合などを含むものである。したがって、商標自体に直接商標の品質を表示する文言や表示がないからといって、品質の誤認を生じさせないというものではない。商標法第4条第1項第16号は、需要者を保護する観点からも規定されたものである。上記周知な商標の付された商品を当該周知な商標を所有する者あるいは、その者からライセンスを得た者が製造・販売していると信じて購入する需要者の利益を保護するという趣旨からすれば、本件商標が「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」に該当することは明らかである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。

1 請求人は、本件商標が、イタリアの自動車レースに使用されている商標と同一又は類似であって、世界的に知られているものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する、と主張する。

しかしながら、請求人が提出した甲第2号証ないし甲第13号証を見ても、「MILLE MIGLIA」 なる商標が世界的に知られているとは認められない。

仮に、当該商標がイタリアの自動車レースを示すものとして広く知られていたとしても、そのことをもって、本件商標が商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する理由にはならない。

2 請求人は、請求人と無関係な者が販売する商品に本件商標が付されていると、需要者からすると、商品の品質を誤認することは明らかであるから、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当する、と主張する。

しかしながら、本件商標は商品の品質を何ら表示するものではないから、商標法第4条第1項第16号にいう「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」に該当しないことは明らかである。したがって、この点に関する請求人の主張は何ら理由のないものである。

3 以上述べたところから明らかなように、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第16号のいずれにも該当しないものであるから、本件商標の登録が無効にされる理由はない。

第4 当審の判断

1 商標法第4条第1項第7号について

請求人提出に係る甲各号証によれば、自動車レース「ミッレ・ミリア(MILLE MIGLIA)」 は、自動車レースに関心のある者に知られている事実は認め得るとしても、「F1」、「パリ・ダカールラリー」及び「ル・マン」ほどには世間一般の人々の間に広く知られているとはいい得ないものとみるのが相当である

そして、本件商標の指定商品は、前記したとおり第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」であって、自動車とは直接的な関係の薄い商品であるといえる。

まして、本件商標は、日本人にはなじみやすい「ミッレ・ミリア」の片仮名文字ではなく、日本人にはあまりなじみのないイタリア語である「MILLE MIGLIA」 の文字よりなるものである。

そうすると、本件商標から、当該自動車レースの開催団体あるいはそこからライセンスを受けた者の使用に係る商標とは直ちに認識しないものといわざるを得ない。

さらに、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものでなく、また、これをその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般道徳観念に反するものとすべき事実も認められないばかりか、他の法律によって、その使用が禁止されているとも認められないものである。

加えて、自動車レース「ミッレ・ミリア(MILLEMIGLIA)」は、当該商標を使用することが国際信義に反するほどに著名であるとは認められないこと前記したとおりである。

してみれば、本件商標は「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当しないものである。

2 商標法第4条第1項第16号について

本件商標は、自動車レースの名称であって、本件商標に係る指定商品が有する品質を何ら表示するものではないばかりか、自動車レース「ミッレ・ミリア(MILLE MIGLIA)」 は、世間一般の人々の間に広く知られているほどに著名であるとは認められないものであり、本件商標から、当該自動車レースの開催団体あるいはそこからライセンスを受けた者の使用に係る商標とは直ちに認識しないこと前記したとおりであるから、本件商標をその指定商品に使用しても、請求人が主張するような、自動車レースの開催団体あるいはそこからライセンスを受けた者の販売に係る一定水準の品質の商品であると錯覚する等の商品の品質について誤認するような関係は認められない。

してみれば、本件商標は「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標」に該当しないものである。

3 したがって、本件商標は、その商標登録後において、商標法第4条第1項第7号及び同第16号に該当するものとなっているものではないから、同法第46条第1項第5号により、その登録を無効とすべきではない。

よって、結論のとおり審決する。

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