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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2003−35255(T2003−35255/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4233273号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4233273号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示した構成よりなり、平成8年8月20日に登録出願、第41類「茶道の教授」を指定役務として、同11年1月22日に設定登録されたものである。その後、本件商標に係る商標権は、放棄により同15年7月16日にその登録の抹消がされているものである。

2 請求人の引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4024340号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲に示した構成よりなり、平成4年9月30日に登録出願、第41類「茶道の教授,茶道文化に関する図書及び記録の供覧,茶道美術品の展示,茶道文化に関する茶会講演会及び展示会の開催」を指定役務として、同9年7月11日に設定登録されたものであり、現在も有効に存続中のものである。

3 請求人の主張

請求人は、結論と同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第7号証を提出している。

(1)本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とすべきである。

(2)商標法第4条第1項11号について

「裏千家」は、「千 利休」(1522〜1591)を祖とし、三代「宗旦」(1578〜1658)の四男「宗室」(1622〜1697)が、父の茶室「今日庵」を継いだことに始まる著名な茶道流派の名称である(甲第3〜4号証)。

請求人は、この著名な茶道流派「裏千家」の茶道精神を伝承し、茶道文化を国内外に広く啓蒙するために、昭和24年に設立された財団法人であり、「今日庵」に現存する文化財、建造物の保存・伝承、今日庵裏千家茶道の伝道・普及並びに許状の交付、茶道資料館並びに今日庵文庫の設置・運営、茶室建築、造園、工芸などの設計・研究ならびに指導育成、茶道文化に関する美術展、講演会、講習会の開催、茶道文化に関する図書・ビデオの頒布など、さまざまな活動を行っている(甲第4号証)。

また、請求人は、「裏千家」の文字よりなり、第41類「茶道の教授」等を指定役務とする引用商標を、本件商標の登録出願の日前である平成4年9月30日に登録出願し、特許庁における審査の結果、平成9年7月11日付で、商標権の設定登録を受けている(甲第2号証)。

しかるに、本件商標は、「宗家」の文字と「松月庵裏千家」の文字を二連に縦書きしてなるものであるところ、その構成中の「松月庵裏千家」の部分は、常に一体不可分に認識されるものではなく、「松月庵」という名前のある小さな草葺きの小屋(庵)と、上記した茶道の流派の名称である「裏千家」とが、それぞれ別々に想起されるものである。また、本件商標の構成文字全体から生じる称呼「ソウケマツヅキアンウラセンケ」は、呼音数が14音にも及ぶ極めて冗長なものであり、簡易・迅速を尊ぶ取引の実情を勘案するならば、常に一連に称呼されるとは認め難いものである。

そうだとすれば、本件商標は、「ソウケマツヅキアンウラセンケ」の称呼以外に、「裏千家」の文字部分に注目された結果生ずる「ウラセンケ」の簡略称呼でも、取引に資されるものと言わなければならない。他方、引用商標からは、「ウラセンケ」の称呼のみが生じることは明らかである。

このように、本件商標と引用商標は、「ウラセンケ」の称呼において共通する類似の商標であって、指定役務においても、「茶道の教授」の部分が同ーである。従って、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同号に違反して登録されたものである。

(3)商標法第4条第1項第15号について

請求人は、法人の発足以来、商標「裏千家」を、「茶道の教授」等の役務に継続的に使用しており(甲第4号証)、茶道の流派の名称として既に著名であった「裏千家」の名称は、請求人の業務に係る商標としても、取引者・需要者間で著名となっている。

しかるに、本件商標は、その構成中に、請求人が「茶道の教授」等の役務に使用して本件商標の登録出願時既に取引者・需要者の間で著名となっていた商標「裏千家」と同一の「裏千家」の文字を含むものであるから、これを同一の役務である「茶道の教授」に使用するときは、あたかも請求人あるいは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれがある。

従って、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、同号に違反して登録されたものである。

なお、被請求人は、本件商標の審査の際に通知された商標法第4条第1項

第15号の拒絶理由通知(甲第5号証)に対し、平成10年9月21日付で提出した意見書(甲第6号証)において、『出願人は財団法人今日庵で「裏千家」の茶道を修得したものでありますから、組織的に関係のある者の業務に係るものであります。・・(中略)・・出願人も家元より「宗家/松月庵裏千家」の茶名を約30年前にもらって、使用しており、財団法人今日庵と組織的に関係のある者の業務に係る者でありますから、何等出所の混同を生じさせるものではありません。』と述べているが、これは、事実に反する主張である。請求人が被請求人に対して免状ないし茶名などを下付した事実はなく、請求人と被請求人との間には何らの関係もない。

また、茶名の下付や免状を受けることと、その茶名を商標として使用することを許諾されることとは、別の問題であるから、茶名の下付等を受けていれば、商標法第4条第1項第15号の適用を免れるという論理は、そもそも成り立たないものである。

ましてや、被請求人に関しては、免状ないし茶名などを下付した事実すらない無関係の者であるから、出所の混同を生じさせないとは到底言えないことが明らかである。

(4)まとめ

以上説明したように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号または同第15号の何れかに違反して登録されたものであるから、その登録を無効とすべきである。

なお、被請求人は、既に、平成15年5月29日付の内容証明郵便(甲第7号証)にて、今後、「裏千家」の表示を使用せず、本件商標の登録を放棄する旨の意思を、請求人に示している。しかし、放棄の効果は将来効であるところ、請求人としては、本件商標は遡及的に消滅させる必要があると考えるため、本件無効審判の請求に及んだ。

4 被請求人の答弁

被請求人は上記3に対し、何ら答弁していない。

5 当審の判断

(1)引用商標の著名性について

請求人の提出に係る甲号各証によれば、「裏千家」は、茶道の大成者といわれている千利休(1522〜1591)を祖とする茶道流派(所謂「三千家」)の一であり、三世千宗旦(1578〜1658)の四男仙叟千宗室(1622〜1697)が、父の茶室である今日庵を継いだことにより始まり、以来今日まで続く茶道流派の名称であることが認められ、そして、このことは我が国の主要な辞書の一である日本語大辞典(1989年11月 (株)講談社刊)の記述(甲第3号証)や請求人の提供に係るインターネットホームページ(http://www.urasenke.or.jp/index2.html)の記述(甲第4号証)などにより、一般に公表されているものである。

そうとすれば、本件商標の登録出願がされた平成8年には、既に、茶道に関心のある者はもとより、一般の取引者・需要者間においても、「裏千家」の文字は、茶道流派の名称として広く認識され、著名なものとなっていたと認められ、その状態は本件商標の設定登録がされた同11年1月当時に至っても継続していたものと認められる。

(2)出所の混同を生ずるおそれについて

本件商標は、前記1のとおりの構成よりなるところ、「宗家」の文字と「松月庵裏千家」の文字とは2行に書されているため、視覚上分離して認識し得るものである。また、「宗家」の文字は、芸道で、その流祖の正統を伝える地位にある家、すなわち「家元」たる地位を表す語として、この種業界において広く使用されている語であるから、主として自他役務の識別標識としての機能を果たす部分は「松月庵裏千家」の文字と認められるが、これが特定の芸道の流派名称を表すものとして一般の取引者、需要者に広く知られているというような事情も認めることができない。

むしろ、前記5(1)のとおり、本件商標の登録出願時には、既に、「裏千家」の標章が、請求人の取扱いに係る茶道流派の名称として著名であったこと及び本件商標の指定役務は、茶道に関連する役務であって、同一又は高い関連性がある役務といい得るものであること等を併せ考慮すれば、本件商標をその指定役務に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「裏千家」の文字部分を捉え、著名な「裏千家」の標章を連想、想起し、それが請求人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあったものと判断するのが相当である。

また、この混同を生ずるおそれは、本件商標の登録出願時から現在においても継続しているものと認められる。

したがって、本件商標は、他の無効理由について言及するまでもなく、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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