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Trademark Appeal Case

「文楽」の固有名称性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2003−90186(T2003−90186/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第4635358号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4635358号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成14年2月4日に登録出願され、「財団法人 文楽協会」の文字を標準文字により書してなり、第41類「文楽を含む人形浄瑠璃の上演,文楽を含む人形浄瑠璃の教授,文楽を含む人形浄瑠璃に関するセミナーの企画・運営又は開催」の他、商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同15年1月10日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由

(1)商標法第3条第1項柱書きについて

本件商標の指定役務の表示には「文楽」の文字が含まれているが、「文楽」は「文楽座に属する技芸員である太夫、三味線弾き、人形遣いによって演じられる人形浄瑠璃」を指す固有名称であり、登録異議申立人である特定非営利活動法人 人形浄瑠璃文楽座(以下、「申立人」という。)の業務に係る役務を自他識別するために、申立人により使われている商標である。

したがって、本件商標の指定役務の記載は、不適格な記載であり、本件登録名義人の業務に係る役務は不明確であり、本件商標は、本件登録名義人の業務に係る役務について使用するものでない役務を含むものである。

(2)商標法第4条第1項第7号について

上記のとおり、「文楽」は「文楽座に属する技芸員である太夫、三味線弾き、人形遣いによって演じられる人形浄瑠璃」を指す固有名称であり、商標であるから、「文楽」の文字を含む表示からなる指定役務との関係で商標権を付与することは公の秩序を乱すおそれがあり、「文楽」が含まれる指定役務について独占権を付与することは、申立人の標章「文楽」についての利益を損ない、商標を保護することにより商標を使用する者の信用の維持を図ることを法目的とする商標法の趣旨に反する。

(3)したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書き及び同法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。

3 当審の判断

(1)申立人の提出に係る甲各号証から、以下のことが認められる。

(a)甲第2号証(小学館発行「国語大辞典」)によれば、「文楽」とは、文楽座から発祥した、義太夫節に合わせて演ずる操人形浄瑠璃の芝居のことであり、その文楽座は、寛政年間、淡路の人、植村文楽軒が大坂で操人形をはじめた一座であること。

(b)甲第3号証(株式会社淡交社発行「カラー文楽の魅力」)の文楽参考年表によれば、1805年(文化2年)に初代植村文楽軒が大阪高津橋南詰に芝居小屋を開き、1872年(明治5年)に文楽座と改称して開場したこと、1887年(明治20年)に初代植村文楽が没し、1909年(明治42年)に文楽座は松竹合名会社の経営となり、その後、種々の経緯を経て、1946年(昭和21年)に戦災により焼失した文楽座が再建開場され、1949年(昭和24年)に文楽座は、紋十郎の組合派「三和会」と文五郎中心の「因会」に分裂、1963年(昭和38年)に「因会」と「三和会」が合同して「財団法人文楽協会」が設立されたこと。

(c)甲第4号証(「社団法人日本芸能実演家団体協議会名簿」2002年版)によれば、人形浄瑠璃文楽座は、1965年(昭和40年)4月に、「人形浄瑠璃文楽の興隆発展と正しく保存するためと、その根本となる会員の融和親睦を図り、互いの福利厚生を増進し、その生活の安定向上を図ること」を目的として設立されたこと。

(d)甲第5号証(登記簿写し)によれば、「特定非営利活動法人 人形浄瑠璃文楽座」は、2002年(平成14年)5月29日に設立されたものであり、登記簿の目的及び業務の欄には「この法人は、義太夫、三味線、人形の技芸を具体的に指導普及し、人形浄瑠璃の発展を計り、もってわが国文化の振興に資する事を目的とする。」とあり、事業として「(1)人形浄瑠璃の技芸及び教養の向上の為の講習会の開催 (2)人形浄瑠璃関係者の顕彰及び福利厚生 (3)人形浄瑠璃研修会の開催 (4)地方の人形座、女流義太夫、歌舞伎等他ジャンルの役者俳優への指導 (8)会報及び人形浄瑠璃文楽に関する出版物の刊行 (9)その他目的を達成する為に必要な事業」等を掲げていること。

(e)甲第6号証及び甲第7号証は、平成4年7月及び同14年11月の国立文楽劇場文楽公演パンフレットであり、甲第8号証は、平成14年9月の国立劇場小劇場における文楽公演の案内が掲載されている「Web広報東京都(平成14年7月1日号)」であり、甲第9号証は、日本各地の人形浄瑠璃について記載されている書籍「人形浄瑠璃(大月書店発行)」であること。

以上の認定事実を総合してみれば、文楽の成り立ち及び植村文楽軒により設立された文楽座についての歴史的な経緯については、申立人の主張のとおりであることを認めることができるものの、前記した一連の経緯からみれば、戦後、分裂した文楽座を合同して設立されたのは「財団法人 文楽協会」であり、文楽協会の手で文楽が運営されてきたものというのが相当である。

(2)そして以上のことは、例えば、以下の事実によっても充分裏付けられるものである。

(a)講談社発行「日本語大辞典」の「文楽座」の項に、「大坂にあった人形浄瑠璃専門劇場。植村文楽軒が寛政の末(1800年ごろ)創始。明治5年(1872年)文楽座と称した。昭和38年(1963年)財団法人文楽協会設立を機に文楽座は消滅。」と記載されている。

(b)鶴澤八介メモリアル「文楽」ホームページ(http://homepage2.nifty.com/hachisuke/)中の「文楽の歴史」の項に、「人形浄瑠璃『文楽』の芸術的に洗練された形式、内容は世界的なものです。昭和30年(1955年)、国ではこれを重要無形文化財に総合指定しました。昭和38年(1963年)に文楽は松竹の手を離れ、文楽協会の手で運営されることになりました。・・・」と記載されている。

(c)東京新聞ChunichiWebPress(http://www.tokyo−np.co.jp/meiryu/20020921m2.html)に、「文楽は国と大阪府・市、NHKの助成金で運営される文楽協会が毎年四月に技芸員と契約して公演などを行っている。NPO人形浄瑠璃文楽座はこれまでの文楽互助会を発展的解散、新たに技芸員以外にも会員を募り、公演も行うという。」旨記載されている。

(d)「財団法人 文楽協会」のホームページ(http://www.bunraku.or.jp/)中の「財団法人 文楽協会寄付行為」の第3条(目的)には「この法人は、わが国の貴重な文化財である文楽の保存及び普及をはかり、もってわが国文化の振興に資することを目的とする。」と規定され、第4条(事業)には「この法人は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う。(1)文楽に関する調査研究及びその結果の活用に関すること。(2)文楽に関する記録の整備及びその活用に関すること。(3)文楽三業の伝承者の養成に関すること。(4)文楽の公開に関すること。(5)文楽の保存及び振興上必要な研究会、講習会等の開催に関すること。(6)文楽に関する刊行物、幻灯、映画等の作製及びその頒布に関すること。(7)その他目的を達成するため必要な事業。」と規定されている。

(3)他方、申立人である「特定非営利活動法人 人形浄瑠璃文楽座」についてみてみると、申立人が設立されたのは、申立人の前身である人形浄瑠璃文楽座の設立を含めてみても、「財団法人 文楽協会」の設立後のことであり、甲各号証のいずれをみても、「文楽」の語(文字)が申立人の業務に係る役務を他者の役務と識別するために、申立人のみが使用している標章あるいは商標であるという証左はない。むしろ、「財団法人 文楽協会」の寄付行為には、その目的及び事業の各項目にわたって、「文楽」の語(文字)が使用されているのに対して、申立人の履歴事項全部証明書(甲第5号証)の目的及び業務の欄において「文楽」の語(文字)が使用されているのは、8番目の項目において「会報及び人形浄瑠璃文楽に関する出版物の刊行」と記載されている1箇所のみであり、他の項目には、いずれも、一般的な概念である「人形浄瑠璃」の語が使用されている。

(4)してみれば、本件商標は、商標権者である「財団法人 文楽協会」の名称を表したものであり、その指定役務の表示も、商標権者の業務に関するものと認められる「文楽」に関わる役務を指定したものであるから、商標権者との関係において、本件商標の指定役務の表示に「文楽」の文字が含まれていることが不適格なものであるということはできず、本件商標権者の役務に商標権者の業務に係る役務でない役務を含むということもできない。

また、「文楽」の語(文字)が申立人の業務に係る役務を表す商標であるとの証左はないから、「文楽」の文字を含む表示からなる指定役務との関係で商標権を付与することが公の秩序を乱すことになるものとは認められず、申立人の利益を損なうことになるものとも認められない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書き及び同法第4条第1項第7号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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