Trademark Appeal Case
図形商標の著名性と混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2002−90881(T2002−90881/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4606968号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成13年4月10日に登録出願され、第41類「ぱちんこホールの提供,その他の娯楽施設の提供,ぱちんこホールの提供に関する情報の提供,その他の娯楽施設の提供に関する情報の提供,ぱちんこ器具・ぱちんこ球計数機・遊戯用メダル計数機・遊戯用メダル包装機の貸与,ぱちんこ器具・ぱちんこ球計数機・遊戯用メダル計数機・遊戯用メダル包装機の貸与に関する情報の提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,音楽の演奏,運動施設の提供,興行場の座席の手配」を指定役務として、同14年9月27日に設定登録されたものである。
2 当審における取消理由の要点
当審において平成15年7月18日付で商標権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録第3211103号(指定役務 第41類「映画の配給」)及び同第3361314号商標(指定役務 第41類「ビデオテープ映画の制作、その他の映画の制作、テレビ番組の制作及び配給」)は、いずれも別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、また、同第4492944号(指定商品及び指定役務 第9類及び第41類「商標登録原簿記載のとおり商品及び役務」)及び同第4578690号商標(指定役務 第41類「電子計算機端末による通信を用いて行う娯楽情報の提供、電子計算機端末による通信を用いて行うゲーム又は映像の提供」)は、それぞれ、別掲(3)及び(4)に示すとおりの構成よりなるもの(以下、併せて「引用商標」という。)である。
そして、申立人の提出した甲第1ないし第18号証によれば、巻物状フィルム図形中にライオンの顔を描いた図形よりなる引用商標は、申立人が映画の制作・配給等について使用した結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、我が国を含め世界的に著名なものとなっていた事実が認められる。 しかるところ、本件商標と引用商標とは、細部において異なるところがあるとしても、引用商標の著名性からすると、本件商標は、引用商標を構成する図形中にあるライオンを招き猫に置き換えたものとして直ちに認識されるものといえるから、これより引用商標が直ちに連想又は想起されるものであって、本件商標の指定役務に使用した場合、その役務が申立人若しくは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 商標権者の意見の要点
上記2の取消理由に対し、商標権者は、要旨次のように意見を述べている。
(1)商標権者の主張の要旨
引用商標は、本件商標の指定役務に係る需要者に広く知られているとはいえず、本件商標と引用商標の間で出所の混同が生じるおそれもないため、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反するものではない。
(2)引用商標が著名でないこと
申立人提出に係る甲第1ないし第18号証をみると、引用商標が映画の配給等の役務について比較的長期間にわたって使用されてきた事実が認められるが、だからといって、引用商標が本件商標の指定役務に係る需要者の間で広く知られているということはできない。申立人は、ハリウッドにおける老舗の映画制作会社であるが、最近では、目だったヒット作もそれほど出ていない。申立人が1998年から2002年の間に日本でリリースした映画をみても、その年の興行収入ランキングで10位以内に入っているのは2001年の「ハンニバル」のみである(乙第1号証)。
また、申立人が提出の書証をみても、引用商標は多くの場合、極めて小さく表されているにすぎず、当該商標が取引者、需要者の目にとまるとは到底考えられない。甲第1ないし第3号証の新聞広告に表された引用商標は、商標の細部を判別できない程度の大きさで広告の隅に表示されているにすぎず、甲第8号証のビデオパッケージ、甲第13号証のDVDパッケージにおいても、引用商標はパッケージ裏面の隅に非常に小さく表されているにすぎない。
したがって、申立人が提出の甲第1ないし第18号証からは、引用商標が本件商標の出願時および査定時において需要者の間で広く知られていると考えることはできない。
(3)出所の混同が生じるおそれがないこと
仮に、引用商標が一部の需要者に知られていたとしても、本件商標と引用商標との間で出所の混同が生じることはあり得ない。本願商標と引用商標は、外観上の印象が大きく異なるからである。まず、本件商標と引用商標を比較すると、両者は、前面に表された対象が、招き猫であるか、ライオンであるかの点で大きく相違し、また、本件商標における招き猫は漫画調にコミカルに描かれているのに対し、引用商標におけるライオンは極めてリアルに描かれており、その描写方法が全く異なる。そのため、本件商標は、全体として、コミカルで面白みのある印象を有するのに対し、引用商標は力強い印象を有し、両商標が見る者に与える印象はまったく異なったものとなる。
また、本件商標の招き猫の図の下および上には「GRANDE」の文字が書かれており、当該文字部分も強い出所識別機能を発揮している。実際の使用態様をみても、商標権者の営業するパチンコ店の店名として「GRANDE」が使用されている(乙第2号証)。そのため、本件商標と引用商標とは、「GRANDE」の文字の有無の点でも明瞭に区別されるといえる。
一方、両商標は、ライオンまたは招き猫の図の背後に描かれた巻物状フィルムの図形の形状が近似しているが、当該部分はライオン、招き猫の背景として描かれたものにすぎない。そのため、当該部分の共通点のみをもって両商標が誤認されるとは到底考えられない。
したがって、本件商標と引用商標とは、商標の識別力の根幹をなす支配的態様が異なるものであり、両者の間で出所の混同が生じ得ないことは明らかである。
また、仮に、本件商標を目にする需要者の一部が、本件商標から引用商標を連想し、想起することがあったとしても、両商標が使用された役務の間で出所の混同が生じることはあり得ない。本件商標から引用商標を連想し、想起する需要者がいたとしても、それはあくまで本件商標を引用商標のパロディーとして認識しているのにすぎないのであって、両者の出所に関連性があると認識するわけではないからである。
したがって、本件商標がその指定役務につき使用されたとしても、その役務が申立人若しくは申立人と経済的または組織的に何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように認識されるおそれはない。
(4)指定役務中のパチンコ関連役務についての出所の混同
商標権者は、本件商標の指定役務中の「ぱちんこホールの提供,ぱちんこホールの提供に関する情報の提供,ぱちんこ器具・ぱちんこ球計数機・遊戯用メダル計数機・遊戯用メダル包装機の貸与,ぱちんこ器具・ぱちんこ球計数機・遊戯用メダル計数機・遊戯用メダル包装機の貸与に関する情報の提供」(以下、「パチンコ関連役務」という。)について、商標の使用を予定しているが、これらの役務については、出所の混同が生じる可能性が特に低いといえる。本件商標の指定役務中のパチンコ関連役務と引用商標の指定役務である映画関連役務とは、役務の提供手段・目的・場所、役務の提供に関連する物品、需要者の範囲、業種、事業者を規制する法律、事業者のいずれの点でも大きく相違する役務であり、両役務の関連性は極めて薄いといえる。一般的に見ても、映画配給会社が、パチンコ店の営業を開始したという事例は今までになく、両役務の需要者が両者の事業主体を混同することも考えられない。
したがって、本件商標が、その指定役務中のパチンコ関連役務につき使用されたとしても、その役務が、申立人若しくは申立人と経済的または組織的に何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、認識されるおそれはない。
(5)結論
以上のように、本件商標と引用商標の間で出所の混同が生じるおそれはなく、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反するものではないから、本件商標は商標法第43条の3第2項の規定によりその登録を取り消されるべきものではない。
4 当審の判断
本件商標は、これをその指定役務に使用した場合、取引者、需要者は、これから直ちに引用商標を連想、想起し、該役務が申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く混同するおそれがあるものといわなければならない。したがって、商標法第4条第1項第15号に該当するとの理由により、本件商標の登録を取り消すべきものとした先の取消理由(上記2)は妥当なものであって、これについて述べる商標権者の意見(上記3)は、以下の理由により、採用することができない。
(1)商標権者は、「申立人の提出した証拠からは、引用商標が著名商標とは認められない。」旨主張する。
しかしながら、申立人の提出した証拠によれば、巻物状フィルム図形中にライオンの顔を描いた図形よりなる引用商標は、昭和30頃より日本国内で申立人が映画の制作・配給等について使用しており、そして、不特定多数の者が申立人の配給した映画鑑賞等を通じて、引用商標に接している事実からみても、明らかに本件商標の登録出願時及び登録査定時には、我が国を含めて世界的に著名なものとなっていた事実が認められる。
(2)商標権者は、「本件商標と引用商標とは、招き猫であるか、ライオンであるかの点で大きく相違し、また、本件商標の招き猫の図の下および上には「GRANDE」の文字が書かれており、当該文字部分も強い出所識別機能を発揮しているので、外観上顕著な差異がある。」旨主張する。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、全体の構成の枠組みである巻物状フィルム図形を配してなる構成が酷似し、本件商標に「GRANDE」の文字を配してなるとはいえ、引用商標の巻物状フィルム図形中のライオンを招き猫に置き換えたものであるから、その外観形象は極めて近似したものである。そうすると、本件商標は、引用商標とその外観において相紛らわしく、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想、想起する蓋然性は極めて高いというべきである。
(3)商標権者は、「本件商標の指定役務中のパチンコ関連役務と引用商標の指定役務である映画関連役務とは、役務の提供手段等が相違するので、両役務の関連性は極めて薄い。」旨主張する。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、前記4(2)の認定のとおり、類似する商標であり、さらに、両商標の指定役務も娯楽産業の一つであること、また、引用商標の著名性からみても、本件商標の指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起し、その役務が申立人若しくは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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