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Trademark Appeal Case

著名略称の混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2003−35360(T2003−35360/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4543210号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4543210号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成13年3月15日登録出願、第25類「被服,ガーター,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「遊戯用器具,おもちゃ,人形,運動用具」を指定商品として、同14年2月8日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張(要約)

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第102号証(枝番を含む。)を提出した。

1 利害関係について

本件商標は、その指定商品に使用された場合、需要者をして請求人の業務に係る商品あるいは請求人から許諾を受けた者等請求人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所の誤認・混同を生じさせるおそれがあることは明らかであり、また、被請求人が請求人のプロ野球球団である阪神タイガースの著名性・信用に依拠して他者に高額なロイヤリティーの支払いを求める等不正な利益を得ようとしている事実等からすれば、請求人が本件審判を請求することについて重大な利害関係があることは明らかである。

2 商標法第4条第1項第15号の該当性について

(1)請求人のプロ野球球団の名称

請求人のプロ野球球団は、昭和11年2月11日にチーム結成後、昭和15年9月24日までは「大阪タイガース」、昭和15年9月25日から昭和21年3月24日までは「阪神」、昭和21年3月25日から昭和36年3月31日までは「大阪タイガース」、昭和36年4月1日以降現在まで約40年間は「阪神タイガース」の名称を使用している。

(2)「阪神タイガース」の著名性

「阪神タイガース」は、特に人気のあるプロ野球の球団の一つである(甲第3、4、6、11、12、14、17、19、25、32号証)。

(3)「阪神」の語の著名性

「阪神」の語は、以下に示すとおり、「阪神タイガース」を指称するものとして、本件商標の登録出願前より、新聞の見出し、記事内容等において使用され、「阪神タイガース」の著名な略称の一つとなっていることは明らかである。

(ア)1998年(平成10年)12月4日付け日本経済新聞(夕刊、1頁)の「’98師走を駆ける 反骨の再建請負人 野村克也 阪神監督」に、「人気球団・阪神は想像以上の別世界。・・」との記載がある(甲第4号証)。

(イ)1999(平成11年)3月30日付け朝日新聞(25頁)の「ハーフタイム」に、「関西の財界人が、阪神の野村克也監督の応援団を結成することになった。・・阪神は今季、勝率5割で百三十億円の経済効果がある、という予測もある。」との記載がある(甲第5号証)。

(ウ)1999年(平成11年)6月2日付け読売新聞(夕刊、6頁)の「数字をよむ 阪神戦 関西では30%台に」に、「視聴率の方は、・・阪神の快進撃にわく関西地区では、二十九日が33・2%、三十日が31・2%(ビデオリサーチ調べ、関西地区)と、関東地区よりもはるかに高い数字を示した。関西では、・・阪神への期待の大きさがうかがえる。」との記載がある(甲第6号証)。

(エ)1999年(平成11年)6月3日付け日本経済新聞(2頁)の「記者手帳 阪神にあやかりたい」に、「・・発起人の本岡昭次参院議員らが『好調な阪神にあやかって沈滞気味の党内に活力を』と呼びかけたもので、・・総会では元阪神投手で同党参院議員の江本孟紀氏が『弱小球団はなぜ生まれ変わったのか』と題して講演。・・岩國哲人衆院議員は『阪神と民主党は共通点が多い。期待も不安も大きい』とあいさつ・・。『阪神は優勝、民主党は天下取りを目指して頑張ろう』と気勢を上げ、阪神が上京した際の激励や試合観戦を計画中だ。昨年最下位だった阪神は今季、野村新監督の下で首位をうかがうまでに “大化け”した。」との記載がある(甲第7号証)。

(オ)1999年(平成11年)6月10日付け日本経済新聞(39頁)の「六甲おろし 夢へ大合唱 6年ぶり阪神首位」に、「このまま優勝や−−。・・阪神グッズで身を固めた大阪市都島区の会社員・・」との記載がある(甲第8号証)。

(カ)1999年(平成11年)6月15日付け朝日新聞(23頁)の「阪神の観客数 前年比3割増」に、「・・六年ぶりの首位に並んでいる阪神が主催ゲーム28試合で百十七万五千人を動員。」との記載がある(甲第9号証)。

(キ)1999年(平成11年)8月20日付け日経産業新聞(21頁)の「新入社員の失敗体験、阪神の試合観戦中 顧客は『電話するな』」に、「・・午後八時半ごろに顧客の自宅に電話をしたところ『阪神がええ試合をしているのにかけてくるな』と怒られた・・」との記載がある(甲第10号証)。

(ク)1999年(平成11年)8月28日付け日本経済新聞(夕刊、9頁)の「敗因の研究 野村阪神、歓喜の首位から急降下」に、「・・人気球団・阪神はスポーツ紙を中心に “マスコミ露出度”が違う。・・もはやAクラス入りさえ難しくなってきた阪神。」との記載がある(甲第11号証)。

(ケ)1999年(平成11年)10月23日付け朝日新聞(5頁)の「阪神変わった 野村氏に感謝」に、「・・今までの阪神にいなかったような新しいタイプの選手も現れたし、・・今年、阪神の野球は変わったことは間違いない。」との記載がある(甲第12号証)。

(コ)1999年(平成11年)10月30日付け朝日新聞(21頁)の「ハーフタイム」に、「関西の財界人による阪神・野村監督の応援団『月見草の会』の会合が・・。」と記載されている(甲第13号証)。

(サ)1999年(平成11年)12月24日付けの日本経済新聞(夕刊、10頁)の「Next関西 sports 関西スポーツ10大ニュース野村阪神 注目度1位」に、「野村・阪神フィーバーで始まった今年もあとわずか。最下位に終わったものの、観客動員が大幅にアップした阪神はやはり関西の話題の中心だった。

1位 ノムサン効果で阪神ホクホク・・」との記載がある(甲第14号証)。

(シ)2000年(平成12年)3月21日付け読売新聞(夕刊、3頁)の「阪神 大好き 女優 千堂あきほさん」に、「父が熱烈な阪神ファン。・・阪神ファンは、負けても根っからチームを愛してる部分があるんです。」との記載がある(甲第15号証)。

(ス)2000年(平成12年)4月2日付け朝日新聞(34頁)の「ひととき 阪神優勝保険いかが」に、「熱烈な阪神ファンの息子は今が一番元気だ。・・あげくに『もし阪神が優勝したらどうしよう』とつぶやく。・・・ここ関西にも『人生の目的は阪神だ』という人がたくさんいる。こうなれば、優勝の時に起こるかも知れない不測の事態に備え、「阪神優勝保険」をつくってはくれないだろうか。『阪神』という『悪女』に魅入られた・・」との記載がある(甲第16号証)。

(セ)2000年(平成12年)4月28日付け朝日新聞(1頁)の「今年は春から・・阪神首位」に、「野村阪神が十四年ぶりの9連勝で、・・単独首位に浮上した。」との記載がある(甲第17号証)。

(ソ)2000年(平成12年)6月27日付け日経流通新聞(1頁)の「暖流 寒流」に、「・・甲子園球場で行われた阪神・巨人戦。・・阪神が勝つ−飲み屋がにぎわう−終電に乗り遅れる客が増える−タクシーがもうかる。・・」との記載がある(甲第18号証)。

(タ)2000年(平成12年)8月25日付け朝日新聞(14頁)の「阪神の主催試合の入場者が二百万人に到達」に、「今季54試合の入場者が計二百万四千人となった。」との記載がある(甲第19号証)。

(チ)2000年(平成12年)9月6日付け朝日新聞(夕刊、2頁)の「阪神−巨人戦の名勝負を放送 スカイ・A」に、「・・プロ野球阪神−巨人戦の過去の試合をほぼ完全な形で見せる新番組『伝統の阪神・巨人 甲子園熱戦譜』を始める。・・阪神が優勝した年の好試合などがよみがえる。・・」との記載がある(甲第20号証)。

(ツ)2000年(平成12年)9月14日付け朝日新聞(25頁)の「ハーフタイム」に、「阪神−巨人26回戦の試合前に阪神OBの江夏豊、田淵幸一両氏が登場。・・」との記載がある(甲第21号証)。

(テ)2000年(平成12年)11月18日付け朝日新聞(35頁)の「阪神ドラフト1位 川鉄千葉の藤田投手 『夢は日本一』」に、「・・川崎製鉄千葉の藤田太陽投手(二一)が、・・阪神の一位指名を受けた。約一カ月前に阪神を逆指名。・・」との記載がある(甲第22号証)。

(ト)2000年(平成12年)11月19日付け朝日新聞(19頁)の「ハーフタイム」に、「・・阪神−巨人のOB戦が・・行われた。巨人の長嶋、王、阪神の江夏、バースら往年の名選手のほか、・・。今季日本一になった巨人に対し、低迷が続く阪神。掛布雅之氏は『強い阪神として戦ってほしい』。」との記載がある(甲第23号証)。

(ナ)2001年(平成13年)2月6日付け朝日新聞(14頁)の「ハーフタイム」に、「阪神のキャンプを盛り上げ、・・阪神の優勝を祈願する狙い。」との記載がある(甲第24号証)。

(ニ)2001年(平成13年)12月12日付け朝日新聞(15頁)の「コーチ陣の人選焦点 星野氏・阪神 きょう交渉 島野氏去就カギ」に、「・・阪神からの監督就任要請を受ける。・・星野氏は・・『(阪神の監督を引き受けることになった場合)連れて行きたい人』として、親友の田淵幸一氏とともに、島野氏を挙げている。中日、南海、阪神で外野手を務めた後、阪神、中日でコーチを歴任。・・また阪神側も、・・調整する必要も出てくるだろう。・・阪神は17日、新人の入団会見を行う。・・星野氏は『東の巨人に対し、西の阪神と言われるチームで頑張れと言われた』と、長嶋氏の説得ぶりを切り出した。・・ 長嶋氏は『・・阪神でも「仙ちやんスタイル」を貫いたらいい』」との記載がある(甲第25号証)。

(ヌ)「阪神ナインのないしょ話」(株式会社ブックマン社、1992年11月10日初版発行)、「阪神優勝!!虎の巻」(株式会社主婦の友社、1999年3月20日第1刷発行)、「野村阪神VS長嶋巨人」(株式会社ぶんか社出版、1999年5月10日初版第1刷発行)(甲第34号証ないし甲第36号証)。

(ネ)被請求人からライセンスを受けたと考えられる株式会社友禅会(以下「友禅会」という。)が、甲子園球場にあるタイガースショップ宛に送付(平成15年6月19日消印)した「阪神優勝応援企画 2003年阪神優勝パテントTシャツ販売について」との書面(甲第39号証)においても、「2003セリーグ・ペナントレースは阪神の独走となっています。」、「阪神のハッピとセットで着用することによってより一層応援効果が上がります。」との記載がある。

(4)「HANSHIN」の語の著名性

「HANSHIN」の語は、「阪神タイガース」を指し示すものとして、本件商標の登録出願前より著名となっており(甲第40号証ないし甲第50号証)、本件商標の構成文字中「阪神」の語は、この「HANSHIN」の語と同一の称呼を生ずるものである。

(5)阪神タイガースの球団旗の著名性

横縞を特徴とする阪神タイガースの球団旗は、本件商標の登録出願前から、需要者の間に著名となっていた(甲第51号証ないし甲第53号証の14)。

(6)「阪神優勝」の語が「阪神タイガース」との関係で多数使用されている事実(甲第16、35、54ないし59号証)

(7)「阪神タイガースグッズ」として多数のライセンス商品が製造・販売されてきた事実

(ア)「阪神タイガースグッズ」として、ポスター、メガホン、スポーツバッグ、スポーツタオル、ペナント、リストバンド、ぬいぐるみ、ジャンパー、ウインドブレーカー、トレーナー、ハッピ、ブルゾン、Tシャツ、はちまき、ヘルメット、帽子、サンバイザー、ユニホーム、グローブ、バット、ショートパンツ、ロングパンツ、アンダーシャツ、セーター、パジャマ、ベルト、フラッグ、ハンカチ、ブレザー等の多種多様な商品が本件商標の登録出願前から、請求人又は請求人から許諾を受けた業者により製造・販売されている(甲第75号証ないし甲第82号証の5)。

(イ)2003年(平成15年)5月17日付け日本経済新聞(33頁)に、「商標使用契約、昨年の3倍近く」、「猛虎に“並走”関連商品好調」等と記載されている(甲第83号証)。

(8)第三者の反応

(ア)2003年(平成15年)7月21日付けデイリースポーツに、「『阪神優勝』商標登録されていた」、「球団 勝手に使えない!」と大きく報道されたほか、同年7月22日付けの朝日新聞の雑誌「FLASH」の広告、毎日新聞及び読売新聞にも同様の記事が掲載された(甲第88号証ないし甲第91号証)。

(イ)2003年(平成15年)7月27日(日)に日本テレビで放送された「真相報道 バンキシャ!」の番組(甲第92号証)においても、本件商標が請求人以外の者に登録されたことに対する驚きについて、報道している。

(ウ)これらに限らず新聞・テレビ等の各種メディアが、本件商標が被請求人名義で登録されたことを話題として取り上げ、阪神タイガースとは関係のない被請求人が本件商標を登録したことについて驚きを表明しているものである。

(9)まとめ

以上のとおり、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合には、需要者をして請求人の業務に係る商品あるいは請求人から許諾を受けた者等請求人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について誤認・混同を生じさせるおそれがある。

3 商標法第4条第1項第7号の該当性について

(1)優勝祝賀セールを行っている事実

1985年(昭和60年)に阪神タイガースが優勝したときには、阪神百貨店において優勝記念セールが開催された。また、同様に、ダイエーホークスや近鉄バファローズ、あるいは西武ライオンズがリーグ優勝した際には、これらの球団と資本系列にある百貨店が優勝記念セールを行った(甲第93号証ないし甲第96号証)。

(2)被請求人が、本件商標を登録することによって不正な利益を得ようとしている事実

(ア)前記2(3)(ネ)で述べた「阪神優勝応援企画 2003年阪神優勝パテントTシャツ販売について」なる書面(甲第39号証)から明らかなように、被請求人は、本件商標を根拠に、「阪神優勝」の語を含んだ商標をTシャツ等について使用する場合には、販売価格の9%という非常に高額なロイヤリティーの支払いを条件としているのである。このことは、本件商標全体から認識・理解される「阪神タイガース」の著名性・信用によるものとしか考えられず、その意味において被請求人は、「阪神タイガース」の著名性・信用にフリーライドしているものといわざるを得ない。

(イ)被請求人は、請求人との交渉を一方的に決裂させ、ライセンス活動を拡大させること等によって不正な利益を得ることを目的として本件商標を出願し、登録したことは明らかである。

(3)まとめ

以上のとおり、請求人と何ら関係のない一個人に本件商標の使用を独占させることは、商道徳上問題があるばかりでなく、公衆を混乱させ、公共の利益を害する虞のあることは明らかである。

4 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号又は同第7号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録は無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁(要約)

被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。

1 利害関係について

(1)請求人は、「本件商標は、その指定商品に使用された場合、需要者をして請求人の業務に係る商品あるいは請求人から許諾を受けた者等請求人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について誤認・混同を生じさせるおそれがあることは明らかであり」と主張する。

しかし、「阪神優勝」の語は、阪神タイガースが優勝を達成した意味合いだけでなく、阪神タイガースに優勝してほしいというファンの願望を意味する場合もある。

また、請求人は、本件商標に関して行われた被請求人との間における譲渡交渉において、「未だペナントレースにおける優勝が決定していない段階での『阪神優勝』なる本件商標の使用を認めることになるが、そのような行為はまさにペナントレースに対する冒涜であり、ペナントレースを尊重すべき請求人としては、そのような行為を容認することができない」と主張していることから、少なくとも請求人自身がペナントレース中は「阪神優勝」なる商標を使用することはありえず、本件商標を指定商品に使用しても誤認・混同を生じさせるおそれがあるとはいえない。

さらに、甲第88号証ないし甲第92号証に示される各種メディアによる報道がなされた結果、本件商標が付された商品は、請求人と何らかの関係にある者の業務に係る商品ではないことが広く需要者に認識されるに至り、請求人が主張するような商品の出所の誤認・混同を生じるおそれは存在しない。

(2)請求人は、「被請求人が請求人のプロ野球球団である阪神タイガースの高度の著名性・信用に依拠して他者に高額なロイヤリティーの支払いを求める等不正な利益を得ようとしている事実等からすれば」と主張するが、後記4(2)で述べるように、被請求人が不正な利益を得ようとしている事実はない。

(3)したがって、請求人が本件審判を請求することについて重大な利害関係があることが明らかであるとはいえない。

2 本件商標について

請求人は、本件商標に関し、「『阪神優勝』の漢字を横書きにして、その背景にプロ野球球団阪神タイガースの横縞を特徴とする球団旗と酷似した『旗の図形』を配してなる商標」と主張する。

ところで、請求人のいうプロ野球球団阪神タイガースの横縞を特徴とする球団旗とは、甲第51号証ないし甲第53号証の14に示されているように横長矩形の図形に横縞を有し、かつ、左上部分に円で囲まれた虎の顔の絵のマークが配された構成のものである。

横縞を有する旗は、多数の国家によって国旗のデザインとして採用され(乙第1号証)、また、国際信号旗のように各種の標識として多数採用されている(乙第2号証)極めてありふれたものであり、したがって、上記球団旗の特徴部分とは「虎の顔の絵のマーク」にしかないといえる。

しかし、本件商標の図形標章部分の構成には、上記「虎の顔の絵のマーク」と同一あるいは類似の構成はない。また、本件商標の図形標章部分は、全体形状が略平行四辺形を呈し、上記球団旗のような横長の矩形を呈するものでもない。

したがって、本件商標は、請求人の主張するような「プロ野球球団阪神タイガースの横縞を特徴とする球団旗と酷似した『旗の図形』を配してなる商標」ではなく、この点で請求人の認識には誤りがある。

3 商標法第4条第1項第15号の該当性について

(1)被請求人は、請求人のプロ野球球団が昭和36年以降現在まで約40年間「阪神タイガース」の名称を使用していること、「阪神タイガース」が人気のあるプロ野球球団であることは認める。

(2)被請求人は、請求人主張の「『阪神』の語が請求人のプロ野球球団『阪神タイガース』の著名な略称となっている」こと、及び「『HANSHIN』の語が『阪神タイガース』を指し示すものとして既に本件商標の登録出願前より著名となっていること」について、プロ野球界の情報に関連して「阪神」又は「HANSHIN」の語が使用されている場合に限っては認める。

すなわち、甲第4号証ないし甲第49号証に示されている「阪神」又は「HANSHIN」の語は、プロ野球に関するスポーツ面の新聞記事やプロ野球に関する書籍中に掲載されている場合には、単独でプロ野球球団「阪神タイガース」を指しているが、新聞のスポーツ面以外の記事においては記事中に「タイガース」や「阪神タイガース」という語が必ず示されていて、「阪神」や「HANSHIN」の語がプロ野球球団「阪神タイガース」を示すことを間接的に補強説明しており、「阪神」や「HANSHIN」の語は単独では、プロ野球球団「阪神タイガース」を示すとは限らない。

なお、一般的、すなわちプロ野球界以外において「阪神」の語は、「大阪と神戸。」という意味である(乙第3号証)。

(3)被請求人は、阪神タイガースの球団旗が本件商標の登録出願日前より著名となっている事実は認める。

ただし、前記2のとおり、著名となっている球団旗は、「虎の顔の絵のマーク」が示されたものであって、本件商標の図形標章部分はこの球団旗と酷似するものではない。

(4)請求人は、「阪神優勝」の語が「阪神タイガース」との関係で多数使用されている事実について主張する。

確かに、プロ野球界において「阪神」といえば「阪神タイガース」の略称であり、また、「阪神優勝」の語はプロ野球に関するニュース等において「阪神タイガース」との関係で多数使用されている。

すなわち、「阪神優勝」の主語となり得る「阪神」が「阪神タイガース」の略称であると認識されるのは、「阪神優勝」の語がプロ野球に関するニュース等に使用された場合であり、請求人の「『阪神』といえば『阪神タイガース』以外のものはあり得ない」との主張は誤りである。

なお、甲第16号証、甲第35号証及び甲第54号証ないし甲第74号証における「阪神優勝」の語は、プロ野球に関するホームページ及び雑誌、新聞の記事に用いられているにすぎない。

(5)被請求人は、請求人主張の「『阪神タイガースグッズ』として多数のライセンス商品が製造・販売されてきた事実」については認める。

ただし、「阪神優勝」の語を商標として付した商品が請求人又は請求人から許諾を受けた業者により製造・販売された事実はない。

(6)請求人は、本件商標に対する第三者の反応として、「『阪神優勝』という語を含む本件商標が登録されるとすれば、それは請求人名義であるべきであるということを当該雑誌や新聞の記者等が認識していたということである。」と主張し、また、「新聞・テレビ等の各種メディアが、本件商標が被請求人名義で登録されたことを話題として取り上げているが、これらはすべて阪神タイガースとは一切関係のない被請求人が本件商標を登録したことについて驚きがあるからこそほかならない」と主張する。

しかし、これらの主張の根拠として請求人が提示している甲第88号証ないし甲第92号証は、阪神タイガースがプロ野球セ・リーグにおいての優勝が現実味を帯び始めた2003年(平成15年)7月以降に取り上げられたものである。

すなわち、新聞・テレビ等の各種メディアは、阪神タイガースのセ・リーグにおいての優勝が現実味を帯びてきたからこそ、読者や視聴者を惹き付けることができる話題として、「阪神優勝」の商標を付した優勝グッズが商品として販売できない可能性があるということを取り上げたにすぎず、阪神タイガースとは一切関係のない被請求人が本件商標を登録したことについて驚きがあるからとは限らない。

しかも、新聞・テレビ等の各種メディアは読者や視聴者の関心を引くように、新聞見出し等に誇張的表現を用い、必ずしも正確な取扱いがなされているとはいえない。

(7)上述のように、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものであるとの請求人の主張は誤った認識に基づくものである。

4 商標法第4条第1項第7号の該当性について

(1)被請求人は、請求人主張の「百貨店等のプロ野球球団と資本系列にある企業が優勝祝賀セールを行っている事実」については認める。

(2)請求人は、被請求人が本件商標を登録することによって、不正な利益を得ようとしている事実について主張するが、甲第39号証の書面について被請求人は不知であり、また、被請求人が友禅会にライセンスを許諾する権限を与えた事実もない。

すなわち、甲第39号証は、被請求人が不正な利益を得ようとしている事実を何ら証明するものではなく、請求人の「被請求人が、本件商標を登録することによって不正な利益を得ようとしている」との主張は誤った認識に基づくものである。

(3)請求人は、被請求人名義で本件商標が登録されたことによって公衆に混乱が生じている事実について主張する。

しかし、同主張の根拠とする甲第88号証ないし甲第92号証は、いずれも新聞・テレビ等の各種メディアが読者や視聴者の関心を惹くように誇張的表現を用いていかにも公衆に混乱が生じているかのようにセンセーショナルに取り扱ったものであり、本件商標が登録されたことによって公衆に混乱が生じているとはいえない。

(4)上述のように、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するものであるとの請求人の主張は誤った認識に基づくものである。

5 まとめ

以上のとおり、請求人は、誤った認識に基づいて本件商標を無効とすべき主張をしているが、本件商標は商標法第4条第1項第15号又は同第7号に違反して登録されたものではなく、その登録は無効とされるべきものではない。

第4 当審の判断

1 利害関係について

本件審判の請求に関し、当事者間において利害関係の有無につき争いがあるので、この点について判断する。

本件審判の請求は、本件商標が商標法第4条第1項第15号及び同第7号に違反して登録されたことを理由としてその登録を無効にすることを求めるものであるところ、商標法第4条第1項第7号については、公共の利益に関するものであるから、何人も法律上の利益を有すると解され、また、同15号については、後記認定のとおり、本件商標は、その構成中に、請求人のプロ野球球団の「阪神タイガース」の略称として本件商標の登録出願前より登録査定当時まで著名であった「阪神」の文字を有するものであり、また、阪神タイガースとの連想性を高める図形部分を有するものであるから、これをその指定商品について使用する場合は、需要者をして、該商品が阪神タイガース又は阪神タイガースより許諾を受けた業者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあると認められるものである。

そして、本件審判の請求が請求権の濫用によるものであると認めるに足る証拠はない。

したがって、請求人は、審決時において、本件審判を請求するにつき、法律上の利益を有するといわなければならない。

2 「阪神」等の著名性について

(1)本件商標の登録出願前から現在に至るまで、我が国においてプロ野球に関心を持つ者が多いことは、周知の事実である。

(2)甲第3号証ないし甲第25号証、甲第34号証ないし甲第36号証、甲第40号証ないし甲第48号証、甲第50号証ないし甲第52号証によれば、以下の事実が認められる。

(ア)「阪神タイガース」は、請求人のプロ野球球団の名称として昭和36年より現在に至るまで使用され、我が国において、人気のあるプロ野球球団の一つであること(当事者間に争いがない事実)。そして、その観客数は、昭和36年から平成13年の間に行われた請求人が主催した試合のみに限ってみても、およそ6689万人であること(甲第3号証)、平成11年(1999年)5月29日、同30日に行われた阪神戦の視聴率は、いずれも20%を越える高い視聴率であり(甲第6号証)、テレビ観戦者を加えると、阪神タイガースの試合観戦者は膨大な数に上るものと推測されること。

(イ)「阪神タイガース」の球団名称は、本件商標の登録出願前より、各スポーツ新聞、各スポーツ誌をはじめ、日本経済新聞を含む一般紙のスポーツ欄、家庭欄、社会欄などにおいても、単に「阪神」と略称され、同略称は、頻繁に使用されていたこと。そして、このような状況は本件商標の登録査定時(平成13年12月20日)においても継続していたこと。

また、「HANSHIN」の文字は、昭和38年ころより現在に至るまで、「阪神タイガース」の選手が着用するビジター用ユニフォームの胸部に大きく表示され、球場やテレビで試合を観戦する者の目に自然と止まるばかりでなく、試合の結果等を報道する新聞や雑誌等に選手の姿とともに写し出されている場合が多いこと。そして、例えば、読売ジャイアンツ(巨人)側が主催する試合の昭和50年(1975年)から平成13年(2001年)の間の観客数は、およそ1840万人であったこと(甲第50号証)。

(ウ)阪神タイガースの球団旗は、別掲(2)のとおり、黒色と黄色とを交互にした横縞を地とする横長矩形内に、赤地円形内に虎の頭部を描いた図形を左上部に配し、右下の黄色の縞部分には「HANSHIN Tigers」の文字を表示してなるものであるところ、該球団旗は、試合中には、観客の注意を惹くスコアボードの上部に掲げられ、また、応援団がこれと同一の構成よりなる旗を使用して応援し、常に観客の目の触れる状態にあること。

(3)上記(2)で認定した事実及び(1)の事実を総合すれば、「阪神」の語は、そのローマ字表記である「HANSHIN」とともに、阪神タイガースの球団名称の略称として、本件商標の登録出願日には既に、一般国民の間に広く認識されていたものである。また、別掲(2)の構成よりなる標章は、阪神タイガースの試合等で使用される球団旗として、本件商標の登録出願時には既に、著名なものとなっていたものである。そして、これらの著名性は、本件商標の登録査定時においても継続していたと認められる。

3 本件商標について

(1)「阪神」の文字部分について

本件商標構成中の「阪神」の文字部分については、以下の事実が認められる。

「阪神」の語は、一般的には、「大阪と神戸」を意味するものであるとしても、前記2(3)で認定したとおり、「阪神タイガース」の著名な略称であること。また、本件商標構成中の「阪神」の文字部分には、「競技などで第一位で勝つこと」等(広辞苑)の意味を有する「優勝」の文字が結合されていること。加えて、「阪神優勝」の語が「阪神タイガースの優勝」の意味合いをもって、本件商標の登録出願前より使用されていること(甲第16号証、甲第35号証及び甲第54号証ないし甲第59号証)。

以上の事実を総合すると、本件商標構成中の「阪神」の文字部分について、後記5で認定する本件商標の指定商品の需要者である一般の消費者は、地名を表したと理解するというより、プロ野球の球団名称としての「阪神タイガース」の略称として理解し、認識するとみるのが極めて自然である。

したがって、本件商標構成中の「阪神」の文字部分は、「阪神タイガース」の球団名称の略称を表したものとして認識されるというべきである。

(2)図形部分について

本件商標は、別掲(1)のとおり、「阪神優勝」の文字と左右の辺が右側に傾斜する略平行四辺形の内部に横縞を有する図形とを結合してなるものであるところ、該図形部分中の上下に配された各2本の太い平行線は、中央に書された「阪神優勝」の文字部分を挟むように表現されているものである。

一方、阪神タイガースの球団旗は、前記2(2)(ウ)で認定したとおり、黒色と黄色の横縞を地とし、虎の図形を左上部に、また、「HANSHIN Tigers」の文字を右下に表示してなるものであるところ、上記虎の図形部分及び「HANSHIN Tigers」の文字部分は、黒色と黄色の横縞と共に、球団旗の主要な構成要素となっていることは否定し得ないが、虎(タイガース)をイメージした黒色と黄色の横縞が看者に極めて強い印象を与えるものであることも否定し得ない。

そして、該黒色と黄色の横縞は、上部より黒色で始まり、順次黄色、黒色と交互に配され、最下部は黒色で終わっているもので、黒色の横縞は、上部と下部の2本に加え、真ん中の黄色を挟んで中央に2本配され、全体としては、4本の黒色と3本の黄色の横縞からなっているものである。

そうすると、上記構成よりなる本件商標にあって、図形部分は、「阪神優勝」の文字部分が、前記認定のとおり、「阪神タイガースの優勝」の意味合いをもって使用されていることを合わせ考慮すると、「阪神優勝」の文字部分の上下にある各2本の太い平行線が、上記球団旗の黒色の横縞をイメージしたものとして印象付けられ、「阪神タイガース」との連想性を高める要素となっているものというのが相当である。

4 取引の実情

(1)プロ野球球団が、リーグ戦の開催中やリーグ優勝あるいは日本シリーズに優勝した際には、その球団を運営する法人と資本関係にある企業又は同法人の許諾契約を受けた企業が「(球団名)応援セール」、「(球団名)優勝セール」等と称して多くの商品の販売を行っていることは、本件商標の登録出願前よりよく知られているところであり、このことは、甲第93号証及び甲第94号証によっても明らかである。

(2)甲第75号証ないし甲第82号証(枝番を含む。)及び甲第93号証によれば、阪神タイガース(請求人)は、本件商標の登録出願前より、「阪神タイガースグッズ」と称して、阪神タイガースのキャラクターや球団旗等を表示したアパレル商品、ユニフォーム、野球用具、玩具等様々な商品を阪神タイガース(請求人)自ら又は請求人より許諾を受けた業者により製造、販売してきた。また、過去において優勝した際には「優勝記念セール」と称して、阪神タイガース(請求人)と資本関係のある百貨店などで優勝を記念したセールを行ったことが認められる。

5 出所の混同について

前記2ないし4で認定した事実によれば、本件商標は、その構成中に「阪神タイガース」の球団名称の著名な略称である「阪神」の文字を有することに加え、その構成中に阪神タイガースとの連想性を高める要素となっている図形部分を有するものである。

また、本件商標が使用される指定商品の需要者の多くは、一般の消費者である。

したがって、本件商標は、これをその指定商品について使用する場合は、上記需要者をして、該商品が阪神タイガース(請求人)又はこれと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。

6 被請求人の主張について

(1)被請求人は、「阪神」又は「HANSHIN」の語は、新聞のスポーツ面以外の記事においては、記事中に「タイガース」や「阪神タイガース」という語が必ず示されており、これらの語単独では、上記阪神タイガースを示すとは限らない旨主張し、さらに、本件商標の図形部分は、該球団旗と酷似するものではない旨主張する。

しかし、「阪神」の語は、阪神タイガースの略称として、一般紙の家庭欄、社会欄などにおいても単独で使用されていることは、前記認定のとおりである(例えば、甲第10、12、16ないし18、20、22号証)のみならず、プロ野球が我が国において人気のあるスポーツであり、プロ野球球団の中でも阪神タイガースは、人気のある球団の一つである。

そして、本件商標は、その構成中の図形部分が阪神タイガースの球団旗に酷似するとまではいえないが、前記認定のとおり、その構成中に「阪神タイガース」の球団名称の著名な略称である「阪神」の文字を有するから、これと相俟って、図形部分は、より阪神タイガースとの連想性を高める要素となるというべきである。

また、本件商標は、これが使用される被服等の地色に黄色が用いられた場合は、殊更、阪神タイガースとの関連性を強調させるものとなることは明らかである。

(2)被請求人は、「阪神優勝」の語を商標として付した商品が請求人又は請求人から許諾を受けた業者により製造・販売された事実はない旨主張する。

しかし、たとえ、請求人又は請求人から許諾を受けた業者が、「阪神優勝」の文字を付した商品を製造・販売した事実はないとしても、前記認定のとおり、本件商標は、これをその指定商品について使用する場合は、阪神タイガース(請求人)又はこれと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものというべきである。

(3)したがって、被請求人の上記(1)及び(2)に関する主張は理由がない。また、その他商標法第4条第1項第15号に関する被請求人の主張は、いずれも本件商標がその指定商品について使用された場合、阪神タイガース(請求人)又はこれと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品とに間において、出所の混同を生じさせるおそれがないとの前提に基づくものであるから、前提において誤りあるというべきであって、採用することはできない。

7 結論

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものと認められるから、請求人のその余の主張について検討するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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