Trademark Appeal Case
紅酢の記述性と普通名称性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2000−14031(T2000−14031/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「紅酢」の文字(標準文字)を書してなり、第30類「食酢,酢の素,ドレッシング」を指定商品として、平成10年6月5日に登録出願されたものであるが、指定商品については、平成12年6月12日付け手続補正書をもって「食酢」と補正されたものである。
第2 当審の拒絶の理由
平成15年7月18日付けの拒絶理由通知書をもって、請求人に通知した拒絶の理由は以下のとおりである。
1 本願商標は、『紅酢』の文字(標準文字)を書してなるものであるところ、その構成中の「紅」の文字部分は、「紅花から採った赤い色の色素。食品の着色料、染料、頬・唇・爪などの化粧用に使う。べにいろ。くれない。」(広辞苑第5版)を意味する語であり、また、「酢」の文字部分は、指定商品ないし指定商品の原材料を表す語である。
2 ところで、食品の分野においては、赤色(紅色)を特徴とする商品について、例えば、「紅鮭」、「紅生姜」等のように、「紅」の語を冠する名称があるばかりでなく、我が国においては、古来より、調理方法の一つとして、目を楽しませると同時に食欲を増進させる等の目的で、料理の素材の持つ色素を生かしたり、食物に色彩を施すなどして、食物の色彩を大切にしてきた歴史があり、前掲の「紅花」や「紅麹」など様々な着色料を用いて食品に色彩を施す方法が採用されてきたことは、周知の事実である。
したがって、食材等について、色彩としての「紅(色)」は、普通に使用されているものといえる。
3 一方、食酢は、醸造酢と合成酢とに大別され、醸造酢は、穀物酢、果実酢、醸造酢に分類され(日本農林規格)、今日において様々な酢が研究、開発され、市場に多数出回っている実情にあるところ、この種商品の分野においても、調理の隠し味として、また見た目の美しさ、あるいは原材料となるものが健康によいといった理由から、調味料としての食酢や健康商品としての食酢に赤色ないし紅色等色がついたものが製造され、これらの商品の中には「紅酢」と称して販売されているものもあることは以下のとおりである。
(1)「調味料・香辛料の事典」(株式会社朝倉書店、1992年11月20日初版第2刷発行、166頁)の「ブドウ酢」の項には、「白ブドウ酢と赤ブドウ酢とがある。・・・赤ブドウ酢(「赤ブドウ酒」と記載されているが、「酒」は誤記と思われる。)は色も紅色で美しく、タンニンも多く、若干の苦みと渋みがある。その色と味を生かしてソース原料に使用される。」の記載がある。
(2)「調理用語辞典」(社団法人全国調理師養成施設協会、平成4年3月3日第1版第10刷発行、10頁)の「あかす【赤酢】」の項には、「かす酢の一種.酒かすを長期間貯蔵熟成し,十分に調熟を行ったもので,酒かす独特の芳醇な香り,まろやかな酸味,一種の甘味と旨味が巧みに調和したこくを有する.色が濃いのが特徴で,赤酢の名もこの色に由来する.関西の米酢に対して関東の赤酢といって古くから江戸前用のすし酢として使用されている.」の記載がある。
そして、上記「赤酢」が現在でも製造されていることは、2001年9月20日付け日刊工業新聞(26頁)に、「医食同源の旅(40)ミツカン酢−酢で食材生かし健康に」の見出しのもと、「ミツカン酢の歴史は、江戸前の握り寿司のそれとほぼ重なる。・・・このころの酢は現代の透明な酢とは異なり、シャリが赤茶色になるほどの濃厚な風味を持つものが主体だった。・・・ところで、熟成した酒粕を原料として華屋与兵衛が寿司を握っていたころと同じ赤茶色の酢『三ツ判山吹』をミツカンは現在でも製造する。」との記事、あるいは1992年11月18日付け日本食糧新聞に「京王プラザホテル主催『ぷらざフォーラム』食文化シリーズ第2回“酢の世界”探る」の見出しのもと、「当日注目を呼んだ横井醸造工業の『江戸丹念酢』は、吟醸酒の一番しぼりの酒粕を三年間じっくりとねかせたものを、ていねいにアルコールおよび酢酸発酵させ、ゆっくり熟成し、丹念に仕上げたまろやかな純粕酢で、これを使ったすし米は本当の味わいがでてやや赤みを帯びたものになる。」との記事から明らかである。
(3)「おいしい味の秘密/調味料のコツ」(株式会社主婦の友社、平成14年11月10日第1刷発行)の「酢の種類」の項(90頁)によれば、「【粕酢】日本酒の酒粕で作る酢。色が濃く、赤酢ともいいます。」(91頁)とあり、欄外には、「昔気質のおすし屋さんでは、いまだに粕酢(赤酢)をすし飯に使います。・・・これで作ったすし飯は、ほんのり赤い色がつきます。」の記載がある。また、「【中国酢】」(93頁、138頁)には、「赤い紅醋(もち米と紅麹で作る)と黒い黒醋(米、豆などを特殊な方法で発酵させる)がある。紅醋はふかひれ料理に添えます。こちらは紹興酒と同じ浙江省特産。酸味がやわらかく、赤ワインのような色が美しい。」の記載がある。
(4)1990年7月11日付け読売新聞(東京夕刊、10頁)に「[暮らしセンサー]ほんのり赤く 薬用酒、果実酢 色の秘密は『紅こうじ菌』」の見出しのもと、「こうじは、こうじ菌の胞子の色によって黄こうじ、紅こうじ、黒こうじに分かれる。・・・最近脚光を浴びているのが赤色を出す紅こうじだ。・・・最近のバイオ技術で大量生産が可能になり、成人病予防効果が科学的に実証されて、みそ、しょうゆ、酢、さらにパン、マーガリン、天然色素といろいろな食品に使われ出した。」の記事が掲載された。
(5)1996年3月13日付け毎日新聞(地方版/京都、27頁)に「[ひとTODAY]イチジク酢の製造に成功した飯尾醸造社長の飯尾毅さん/京都」の見出しのもと、「1974年ごろ、何かの文献できれいな赤色のイチジク酢がデパートで飛ぶように売れたと知り、いつか自分の手で造りたいと思いつづけてきました。・・・イチジクもいろんな種類があり、濃い赤色を出すのに苦労しました。・・・ドレッシング用に・・スーパーなどで発売する・・ 」との記事が掲載された。
また、上記新聞記事に掲載された株式会社飯尾醸造のホームページ(wysiwyg//47/http://www.iio-jozo.co.jp.index.html)の「商品紹介」の項目には、上記した「イチジク酢」(無花果酢)のほか、梨酢(なしす)、石榴酢(ざくろす)、南瓜酢(かぼちゃす)、赤ワイン酢、紅芋酢(べにいもす)、黒豆酢(くろまめす)等が掲載され、紅芋酢(べにいもす)には、「地元、京都・丹後で穫れた紅芋から紅芋酒を造り、さらに発酵と熟成を重ねて紅芋酢を造りました。・・・鮮やかな紅色をいかして、大根やかぶらの酢漬けやドレッシングにお使いください。」等の説明が記載されている。
(6)2000年5月25日付け毎日新聞(地方版/岐阜)に「[企業元気度診断]内堀醸造 社長・内堀泰作さん・・」の見出しのもと、「『酢造りは酒造りから』と伝統的な製法を大切にし、米こうじを使った酢づくりを続けている。・・・中国で料理に使われている赤い酢をヒントに、梅酢などを配合して日本人に合う赤酢を開発。黒酢と白いブドウ酢も150ミリリットルの小ビンに詰め、赤、白、黒の3色をセットにした卓上酢を売り出した。」との記事が掲載された。
(7)2003年1月24日付け読売新聞(東京朝刊、29頁)に「『黒いナナカマド』アロニアの実を食用酢に 道食加研が開発=北海道」の見出しのもと、「『黒いナナカマド』の異名を持ち、健康食品として注目されている、アロニアの実を原料とした食用酢の試作開発に、道立食品加工研究センターが成功した。・・・最初に絞った後の実を使う『二番絞り』に目をつけ、水で薄め醸造したところ、特有の渋みが薄まり、色鮮やかな赤ワイン色の酢が出来上がった。」との記事が掲載された。
(8)「黒糖酢本舗 日本食品化学株式会社」のホームページ(http://homepage2.nifty.com/jngok/)の「紅酢」の項目には、「紅酢は『米』と『大豆』を主原料としこれを主に『紅麹』で発酵させています。紅麹は招興酒や老酒を作るのにも使われていて有名ですが最近では健康食品として単独でも使われています。」との紹介が掲載されている。
(9)「キャリコム コーポレーション」のホームページ(http://www.carecom.net/leaf/i00-6926.htm)には、「紅こうじ米酢『紅酢』/血液をキレイにする紅麹入り米酢」の紹介記事が掲載され、その製造者、紅酢の効用・使用法などが掲載されている。
4 前記1ないし3で認定した我が国の食文化の状況及び食酢の分野における取引の実情を総合すれば、赤色ないし紅色をした食酢は、酒粕や紅麹、あるいはブドウ・イチジク等の果実を原材料として、本願商標の登録出願前より既に存在し、市場に出回っていたものと認めることができ、そのうちの商品の中には「紅酢」と称して市場に流通していたものがある。
そうすると、「紅酢」なる文字よりなる本願商標をその指定商品である「食酢,酢の素,ドレッシング」について使用しても、これに接する需要者は、「紅色(赤い)の酢、あるいはこれを原材料に使用したドレッシング」の意を表したと理解するのとどまり、自他商品の識別標識たる商標を表示したものとは認識し得ないというべきである。
確かに、農林水産省のホームページには、農林水産省九州農業試験場と請求人(出願人)との共同開発により、同試験場が開発した品種「アヤムラサキ」(紫カンショ)を発酵させて紅酢の製造をした旨の記事が掲載されてたことが認められ、この掲載記事から、請求人らが初めて該「アヤムラサキ」から紅色をした食酢を製造したことが窺えるとしても、前記したとおり、食酢の分野において、赤(紅)色の酢は、本願商標の出願前より当業者間で製造されていたのみならず、「紅酢」の語も赤(紅)色の酢を表示するためのものとして、使用されていた事実があることからすれば、「紅酢」の語自体、格別顕著な語であるとは認め難く、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわなければならない。
したがって、本願商標は、これをその指定商品である「食酢,酢の素」について使用しても、「赤色ないし紅色をした商品」の意をもって、商品の品質、色彩を表示するにすぎないものであり、また、同じく「ドレッシング」について使用しても、「原材料に赤色ないし紅色をした食酢を使用した商品」の意をもって、商品の原材料を表示するにすぎないものである(なお、本願の指定商品は、前記第1のとおり、「食酢」と補正されたものである。)。
5 以上によれば、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものと認められる。
第3 当審の判断
(1)本願商標は、前記第2の拒絶理由に示したとおり、これをその指定商品について使用しても、自他商品の識別標識としての機能を発揮し得ないものというべきである。
(2)請求人の意見
請求人は、前記第2の拒絶理由に対し、「紅色は、藍色に近い赤色」を指し、赤色とは区別され、需要者に認識されていること、酢に関して、赤系の色を示す語として、「赤」の語が使用されてきたこと、本願商標は、「アヤムラサキ」を原材料に使用し、紅色と呼べる赤紫色の食酢を製造したことを契機に発案した商標であり、「赤酢」と異なる意味において区別され得るものであることなどから、本願商標は、「赤色ないし紅色をした商品」の意にとどまらず、自他商品の識別標識として機能する商標である旨主張する。
しかしながら、食酢は、主婦等の一般の消費者を主たる需要者とする商品であるといえるところ、一般の消費者が、「紅」の語の意味について、請求人主張のように、「藍色に近い赤色を指し、赤色とは区別」して、理解するものとは認め難いところであり、「赤色の一種」を表すものとして理解する場合が決して少なくないのみならず、前記第2で認定したように、食品の分野において、赤や紅などの色彩が普通に使用されている実情からすれば、本願商標をその指定商品について使用した場合、これに接する一般消費者は、単に商品の品質、色彩を表示したと認識するにとどまるというのが相当である。
なお、請求人は、インターネットのホームページ上に掲載された「紅酢」は、本願商標の登録出願後に掲載されたものである旨主張するが、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かの判断時期は、審決時と解される。そして、その時点において「紅酢」の語が請求人以外の業者により普通に使用されている事実が存在する以上、本願商標についての前記認定が左右されるものではない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。