結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2002−35107(T2002−35107/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4449460号商標(以下「本件商標」という。)は、「ひたし」の文字(標準文字)よりなり、平成11年6月21日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、平成13年1月26日に設定登録されたものである。
(1)請求人が本件商標の商標法第4条第1項第11号該当の理由に引用する登録第799471号商標は、「日立」の文字よりなり、昭和37年7月30日に登録出願、第30類「菓子,パン」を指定商品として、昭和43年12月6日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。同じく登録第2158752号商標は、「ヒタチ」の文字よりなり、昭和62年4月10日に登録出願、第30類「菓子,パン」を指定商品として、平成1年7月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。同じく登録第2365794号商標は、「HITACHI」の文字よりなり、平成1年1月11日に登録出願、平成3年12月25日に設定登録され、その後、平成13年8月15日に指定商品の書換登録がなされ、その指定商品が第30類「菓子,パン」となり、現に有効に存続しているものである。
以下、これらをまとめて「引用商標」という。
(2)次に、請求人が本件商標の商標法第4条第1項第15号該当の理由に引用する登録第1492488号商標は、「HITACHI」の文字よりなり、昭和43年3月27日に登録出願、昭和56年12月25日に設定登録され、同じく登録第1492489号商標は、「日立」の文字よりなり、昭和43年5月24日に登録出願、昭和56年12月25日に設定登録され、その後、前者は平成14年11月13日に、後者は平成14年11月6日に、それぞれ指定商品の書換登録がなされ、いずれの指定商品も第7類「起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー,電機ブラシ」、第8類「電気かみそり及び電気バリカン」、第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極」、第10類「家庭用電気マッサージ器」、第11類「電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類」、第12類「陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。)」、第17類「電気絶縁材料」及び第21類「電気式歯ブラシ」となり、現に有効に存続しているものである。
以下、これらをまとめて「使用商標」という。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第13号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号該当について
本件商標と引用商標とを比較すると、本件商標は、その文字構成から「ヒタシ」の称呼を生ずることは明らかである。
一方、引用商標は、それぞれの文字構成から「ヒタチ」の称呼を生ずるものである。
そうすると、両称呼は、音数および称呼の識別上重要な要素を占める語頭音を含め最初の2音「ヒタ」を共通にし、異なるところは語尾においてわずかに「シ」と「チ」に差異を有するのみである。そして、これらの音にしても前者が舌尖と前歯の間で形成される無声摩擦子音と母音(i)の結合したものであるのに対し、後者も舌尖と前歯の間で形成される無声破擦子音と母音(i)の結合したものであって、調音位置、調音方法、母音を共通にする極めて近似した音であるばかりでなく、称呼の識別上印象の弱い語尾に位置するから、その差異が全体の称呼に及ぼす影響は極めて小さいものということができる。してみれば、それぞれ一連に称呼する場合において両者は極めて紛らわしく混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
また、かりに本件商標を構成する「ひたし」の文字が「浸す」の連用形「浸し」を平仮名で表示したものとして考慮される場合があるとしても、食品との関係でそれが使用されるのは「浸し物」、「お浸し」等、一般的な家庭料理における場合であって、商品としての菓子やパンについてその識別標識として使用されるときには、本件商標は、一見して直ちに「浸す」行為と関連付けて観念される余地はほとんどなく、むしろ特定の意味合いを有しない造語よりなるものとして認識されるものというべきであるから、観念が称呼に及ぼす影響はないものといえる。
もしも上記観念が生ずるものとすれば、これを指定商品に使用した場合、離乳食、病人食等における「ミルク浸しパン」のように商品の品質、用途を看取させるとともに、それ以外の商品に使用するときには、「ミルク浸しパン」のみならず「浸し物」との間において、商品の品質につき誤認を生じさせることとなり、全く登録性を有しないこととなる。
したがって、本件商標は、引用商標と外観及び観念の点につき論ずるまでもなく、称呼において類似し、かつ、同一又は類似の商品に使用するものである。
ちなみに、以上の称呼類似の主張の妥当性は、甲第5ないし第10号証の審・判決例によっても裏付けられる。
(2)商標法第4条第1項第15号該当について
請求人は、明治43年創業以来、電動機、変圧器、発電機等を始めとして大型の国産第1号電気機関車、冷蔵庫、エレベーター、パワーショベル等多くの分野の商品開発の先駆者として、その営業範囲を拡大、発展してきた。現在においては、電力・電機、産業機器、自動車機器、計測器、昇降機、半導体、コンピュータ、家電、情報・通信、デジタルメディアディスプレイ等広範な商品分野のみならず、サービス分野にも旺盛な事業展開をしていること、また数多くのグループ会社を擁し(国内外合わせて千数十社に及ぶ)、それらを通じてさらに広範な事業活動をしていることは周知の事実である(甲第13号証)。
また、「HITACHI」及び「日立」の文字よりなる商標は、本件に係る第30類を含む各類に防護標章として登録されている(甲第11及び第12号証)ことからみても、著名性が認められていることは明らかである。
そして、これら著名商標と本件商標が類似することは、(1)に述べたとおりであるから、本件商標をその指定商品に使用するときには、請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように誤認し、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。
また、著名商標に類似する商標の使用は、著名商標の顧客吸引力に便乗する結果を招来し、著名性の希釈化をもたらすものであって、このような商標を登録することは著名商標の保護の観点及び商標法の目的に合致しないものというべきである。
(3)以上、述べたように、本件商標は、引用商標と類似し、また、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するので、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきものである。
被請求人は、答弁していない。
(1)商標法第4条第1項第11号該当について
本件商標と引用商標との類否について検討するに、両商標の構成は、それぞれ前記したとおりであり、外観上は明らかに異なるものである。
次に称呼及び観念の点よりみると、本件商標は、前記のとおり「ひたし」の文字よりなるものであるから、該文字に相応し「ヒタシ」の称呼を生ずるものであり、また、その指定商品との関係では、調理用語として多用される「浸す」の活用形「浸し」を連想、想起させることはあっても、他に親しまれた観念は生じ得ないものである。
これに対し、引用商標は、前記したとおり「日立」、「ヒタチ」又は「HITACHI」の各文字よりなるものであるから、それぞれの文字に相応し「ヒタチ」の称呼を生じ、また、茨城県日立市又は請求人会社の株式会社日立製作所が観念されるものといえる。
そこで、本件商標より生ずる「ヒタシ」の称呼と引用商標より生ずる「ヒタチ」の称呼とを比較するに、両者は共に3音の簡潔音からなるものであって、語頭からの2音「ヒタ」を同じくするものであるが、末尾音において「シ」と「チ」との差異を有するものである。
しかして、相違する「シ」と「チ」の音は、前者が舌尖を前硬口蓋によせ、前歯との間に空洞を作って発する無声摩擦子音であるのに対し、後者が舌尖と上前歯との間で形成される無声破擦音であって、それぞれの音は発声方法を異にする異質の音であるから、わずか3音という短い音構成よりなる両称呼間にあっては、これらの差異が全体に及ぼす影響は極めて大きく、両者をそれぞれ全体的に称呼する場合には、互いに区別し得る程度の差異を有するものと認める。さらに前述のとおり、本件商標は、「浸す」の活用形「浸し」を連想、想起させるか、又は単なる造語として認識させるにとどまるのに対し、引用商標は、茨城県日立市又は請求人会社の株式会社日立製作所のいずれかを観念させる点で、それぞれが醸し出す印象に違いがあり、かかる違いも両者の混同を少なくする方向に作用するものと認められ、両者は、それぞれを一連に称呼しても、十分に聴別することができ、称呼及び観念においても相紛れるおそれはないものというのが相当である。
してみれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点よりみても類似しないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものと認める。
(2)商標法第4条第1項第15号該当について
請求人は、世界でも有数の規模を誇る日本の大手総合電気メーカーであり、家電製品から重電機器、半導体、電子部品、コンピューターなどの情報通信機器、交通システム、原子力発電機器まで幅広く事業を展開していることで知られるところであるが、いずれの事業も本件商標の指定商品「菓子及びパン」とは関わりのない異種、異質の分野であり、一般的にみて両分野の商品が混同されるおそれは極めて低いといわざるを得ず、また、本件商標の登録査定時において、請求人がその事業範囲を本件商標の指定商品の分野にまで広げていたとか、あるいは、広げる予定であったなど請求人特有の事情があったと認めるに足りる証拠もない。そうすると、たとえ請求人の製造販売に係る商品に「HITACHI」及び「日立」の文字よりなる使用商標が使用され、これが本件商標の登録出願時、すでに需要者の間に広く知られていたと優に認めうるとしても、本件商標は、先に述べたとおり引用商標と類似しないものであって、使用商標についても引用商標と構成文字を共通にする点で同様に判断し得るものであり、これに加え、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品とは、一般的にも具体的にも、何等関連性が認められないものであることをも併せ考えれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして使用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人又は同人と関係のある者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないものと認める。
(3)結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものとみることができないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。