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Trademark Appeal Case

称呼観念の類似性・要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2002−35491(T2002−35491/J3)
審判種別無効
結論other

結論テキスト

本件審判の請求を却下する。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第3274914号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成6年8月31日に登録出願、第32類「飲料水,鉱泉水,その他の清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料,ビール」を指定商品として、平成9年4月4日に設定登録されたものである。

2 引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2013282号商標(以下「引用商標」という。)は、「πウォーター」の文字よりなり、昭和60年5月27日に登録出願、第29類「鉱泉水」を指定商品として、昭和63年1月26日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。

(1)請求の理由

本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきものである。

(ア)商標法第4条第1項第10号について

請求人は、商品「鉱泉水」について、「πウォーター」と明らかに認識しうる文字からなる商標又はこれらの結合からなる商標を広く使用して今日に至っており、商品「πウォーター」は需要者の間で広く認識されている商標であるといえる(甲第3号証及び甲第4号証)。

(イ)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、黒い円形とその中の「π」の白抜き文字からなり、「パイ」の称呼、観念を生ずるものである。

これに対して、引用商標は「π」のギリシャ文字と「ウォーター」の片仮名文字を一連に横書きしてなり、「パイウォーター」の称呼、観念を生ずるものである。ここで、この商標の指定商品は水であるから(「鉱泉水」)、「ウォーター」の部分に識別力があるとはいえず、「π」の部分が要部とみるべきである。

そうすると、本件商標と引用商標とは、共に「パイ」の称呼、観念を共通にする類似の商標ということができる。

そして、本件商標と引用商標の指定商品は、同一又は類似のものである。

(ウ)結び

引用商標は請求人の商標として、需要者において広く知られた周知の商標である。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反してなされたものであるから、同法第46条の規定により無効とすべきである。

また、本件商標と引用商標とは、「パイ」の称呼、観念を共通にする類似の商標であり、また、その指定商品も同一又は類似のものである。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、同法第46条の規定により無効とすべきである。

なお、別件審決で登録第4161593号商標(甲第6号証)と登録第2013282号商標(引用商標)とは、称呼、観念を同じくする類似の商標であって、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条の規定により無効とすべきである(無効2000−35094審決、甲第5号証)、との審決があり、本件商標についても同様の理由から無効とされるべきである。

(2)答弁に対する弁駁

(ア)商標法第47条について

被請求人は答弁書において、本件商標は登録から5年以上経過しており、本件審判は商標法第47条の規定に違反して請求されたものであるとして、本件審判請求は却下されるべきであると述べている。

しかし、本件審判は以下の理由により商標法第47条の規定に違反しないものである。

そもそも請求人は昭和59年4月3日付で被請求人との間において、請求人が一切の実施権を有していた発明「二価三価鉄塩及びその製造方法」の使用を被請求人に認める契約を交わしており、その契約にて請求人は被請求人に発明を具体化するための材料(原液)を提供することが定められている(甲第7号証)。このような経緯で請求人と被請求人は一時的に「二価三価鉄塩及びその製造方法」に関してある種の提携を行なっていた。

この「二価三価鉄塩」を含む水こそ請求人が引用商標を用いて販売しているものであり、以上のような経緯から、被請求人は本件商標を出願した平成6年8月31日の時点で、請求人が引用商標の商標権者であり「二価三価鉄塩を含む水」に引用商標を使用していたことを十分認識していたといわざるを得ない。また、被請求人は本件商標を平成6年8月31日に出願した後の平成8年6月21日に、第29類の「飲料水,鉱泉水」を指定商品として、「πWATER」なる商標を出願し、平成10年7月3日に登録を受けている(商標登録第4161593号)。

この商標登録第4161593号は、その後の無効審判(無効2000−35094)において登録を無効とする旨の審決がでており、無効とされているが、「πWATER」という商標の「π」の部分は本件商標と全く同一の構成であり、本件商標から派生した商標として一時登録になっていたものと思料される。つまり、被請求人は、請求人が本件商標の商標権者であるということも、請求人の商品やその販売実績、請求人の使用によって生じた著名性をも十分に認識した上で、「π」を用いた本件商標やその派生商標を次々と出願したものであり、これは不正競争の目的をもって出願されたものと断ぜざるを得ない。商標法第47条には「不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。」とあり、本件商標は被請求人が不正競争の目的で登録を受けたものであるから、商標法第47条の規定は適用されないものである。

(イ)商標法第4条第1項第10号について

請求人が審判請求書において示した甲第3号証について、被請求人は「商標『πウォーター』を有限会社パイエナジー社が商品『ミネラルウォーター』について2001年(平成13年)1月10日以前のそれ程遠くない時期に使用した事実」を知り得るとしている。パイエナジー社は請求人から引用商標の使用許諾を受けて該商標を使用しているものであり(甲第8号証ないし甲第10号証)、被請求人も認めるように引用商標が請求人に係る者の商標として平成13年の時点において広く使用されていることを示すものである。

また、被請求人は、答弁書において東京高裁判決(平成12年(行ケ)第186号、平成13年6月28日言渡)などを引用して、引用商標が請求人の登録商標として周知ではない旨種々述べているが、この判決は本件とは事案を異にするものであり、被請求人の主張は失当であるといわざるを得ない。

(ウ)商標法第4条第1項第11号について

請求人が審判請求書において示した甲第5号証は、前述商標登録第4161593号無効審判(無効2000−35094)の審決であるが、この審決において以下のような特許庁の判断が示されている。

「(登録第4161593号の)図形部分は、黒塗り円形図形の中に『π』の文字をややデザインして白抜きで表してなるが、該図形の白抜きの『π』は、ややデザインされているとしても、ギリシャ文字の小文字の『π』及び円周率を表す記号として使用されている『π』の文字を表してなるものとみるのが相当である。」

「これに対して、引用商標(本件引用商標と同一、登録第2013282号)は、『πウオーター』の文字よりなるところ、後半部の『ウォーター』は、『水』を意味する外来語として親しまれており、指定商品との関係では、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、引用商標からは、『パイウォーター』の一連の称呼を生ずるほか、『ウォーター』の語を略して、『π』の文字部分より、『パイ』の称呼をも生ずるものと判断するのが相当である。そして、『π』の文字については、前記のとおり円周率を表す記号として広く知られているものである。」

ここで本件商標は、登録第4161593号の図形部分と全く同一であるから、上記の審決に示された判断は本件商標についての判断とみることができるものである。してみれば、本件商標は被請求人が答弁書で述べているような創造的図形とはいい難く、ギリシャ文字の小文字の「π」及び円周率を表す記号として使用されている「π」の文字を表し、「パイ」の称呼が生じるものと思料される。同様に、引用商標(登録第2013282号)についても、その後半部の「ウォーター」は、指定商品との関係において自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものであり、「パイウォーター」の他「パイ」の称呼をも生じるとされている。したがって、本件商標と引用商標は称呼及び観念上類似の商標であるといえ、このことは特許庁の判断とも合致するものであるので、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといえる。

4 被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判の請求を却下する。本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。

本件審判は、商標法第47条の規定に違反して請求されたものである。したがって、本件審判の請求は却下されるべきものである。

また、引用商標は請求人の商標として需要者の間に広く認識されている商標ではない。かつ、本件商標と引用商標は非類似である。したがって、本件商標は請求人主張の商標法第4条第1項第10号及び同第11号のいずれにも該当するものではない。

(1)本件審判の請求は却下されるべきものである。

本件商標の手続の経緯は以下のとおりである。

出願日 平成6年8月31日

出願公告 平成8年7月10日(商公平8−79941)

登録日 平成9年4月4日

そして、本件審判は、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同第11号の規定に該当することを無効理由として、平成14年11月15日付で請求されたものである。即ち、本件審判は上記条項を無効理由として、本件商標の登録の日から5年以上経過後に請求されたものである。

してみれば、本件審判は商標法第47条の規定に違反してなされた不適法な請求であること明白である。

したがって、本件審判の請求は商標法第56条第1項で準用する特許法第135条の規定により却下されるべきものである。

以上のとおり、本件審判は請求適格性を欠除した請求であること明白であり、よって、本件審判の請求は以下に説明する事実関係について審理する以前に、上記事実をもって本件審判の請求を却下するとの審決を求める。

(2)本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。

(ア)請求人は、引用商標「πウォーター」を商品「鉱泉水」について広く使用して今日に至っているので、商標「πウォーター」は請求人の商標として需要者の間で広く認識されている商標である旨主張し、証拠として甲第3号証及び甲第4号証を提出している。

甲第3号証によれば、請求人ではなく、「有限会社パイエナジー」が商標「πウォーター」を商品「ミネラルウォーター(ボトルウォーター)」に使用していた事実は窺い知ることはできる。また、その使用時期は、同号証の「賞味期限 20010110」の記載から2001年(平成13年)1月10日以前のそれ程遠くない時期であることが推認される。

しかし、甲第3号証をもって知り得るところは、商標「πウォーター」を前記パイエナジー社が商品「ミネラルウォーター」について前期時期に使用した事実であるにすぎない。

甲第4号証の「パイテック・フォーラム(2001年秋号)」は、その表紙の「2001年11月20日発行」の記載に照らし、平成13年11月20日ごろに発行されていた事実が推認される。また、甲第4号証には、「パイウォーター」、「パイウォーターシステム」、「パイウォーター浄水器」の各用語が記載されている。

しかし、甲第4号証により、商標「πウォーター」が本件商標の出願時において、請求人の商標として周知性を獲得していた事実は到底認めることはできない。

以上のとおり、引用商標は請求人の商標として需要者の間に広く認識されている商標ではない。したがって、甲第3号証及び甲第4号証に基づき、引用商標「πウォーター」の周知性を論ずる請求人の主張は理由を欠き当を得ないものである。

(イ)のみならず、本件商標と引用商標「πウォーター」とは非類似である。したがって、これに反する請求人の主張は失当である。

また、上記主張に加え、被請求人は引用商標「πウォーター」が請求人のいわゆる周知商標でないことについて、さらに進んで明らかにする。

即ち、「πウォーター」の語は、本件商標の登録査定時においては、商品「鉱泉水」の需要者・取引者の間で、「二価三価鉄塩を含む水」を意味する用語として広く認識され、一般的な名称として使用されている。

したがって、上記事実からしてみても「πウォーター」の語(標章)が請求人の商品「鉱泉水」を表示する商標として需要者の間に広く認識されている商標ではないこと明白である。被請求人は上記主張の裏付けとして乙第3号証を提出する。

(ウ)乙第3号証について

乙第3号証は、「πウォーター」の語について、請求人が原告となり、件外京洋興業株式会社を被告とする審決取消請求事件における東京高裁の判決(平成12年(行ケ)第186号、平成13年6月28日言渡)である。この審決取消請求事件において、原告(注 本件請求人、以下同じ)は、引用商標(注 本件引用商標と同じ)を構成する「πウォーター」の語(標章)は、その商品(鉱泉水)の出所を表示し、自他商品の識別機能を有していると共に原告の商標として需要者の間に周知著名になっていると主張したのに対し、判決文は当該訴訟の証拠を詳細に分析したうえ、大略以下のように判示(省略)してその主張を排斥している。

上記判決は、以上のような事実のほか若干の事情を摘示したうえでの総合評価として、「鉱泉水」の分野において、少なくとも別件登録商標の登録査定時(平成7年8月)には、一般的な消費者や取引者の少なからざる範囲の者は、「πウォーター」の文字について、鉱泉水の一種(二価三価鉄塩を含む水)を意味する一般的な名称を意味するものと看取しており、原告の登録商標として周知となっていたとはいえない、と結論している。

以上の判決の考え方を前提とすれば、「πウォーター」なる語は、指定商品「鉱泉水」の内容(種類、品質)を意味する一般的な名称であって、請求人の登録商標として周知ではないといえるのである。

(3)本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

請求人は、本件商標と引用商標は、ともに「パイ」の称呼、観念が生じるので、両商標は類似するものであると主張している。しかし、この主張は当を得ないものである。

本件商標は、別掲に示すとおり図形商標で構成されている。即ち、本件商標は黒塗り円形図形内の中央部にデザイン化した記号のような標章を白抜きで配してなっている。そして、上記標章は独特の表現形態で、まとまりよく上記円形図形と一体的に図案化されている。そのため、この商標は創造的図形として認識されるものと判断するのが相当であるといえる。

上記のように、本件商標は全体として一体的に図案化された商標である。そのため、本件商標は殊更に白抜きの標章部分だけを取り出して称呼及び観念されることはない。

したがって、本件商標からギリシャ文字の単なる「π」として理解されることはなく、そこから「パイ」の称呼及び観念は生じない。

これに対し、引用商標は前記のとおり、ギリシャ文字の「π」と「水」を意味する外来語の「ウォーター」の片仮名文字を一連に結合して横書きしてなるものである。

そして、引用商標を構成する上記「π」及び「ウォーター」の各文字は同一の大きさ、同一間隔で左右に調和よく配置され、外観上においても上記各文字の結合は強く、かつ、その称呼も極く自然であって発音し易く、この商標は不可分一体に結合した語(標章)よりなるものである。のみならず、引用商標を構成する「πウォーター」の語は、既述したとおり、本件商標の登録査定時(平成8年10月31日)において、「二価三価鉄塩を含む水」を意味する用語として需要者の間で広く認識され、「鉱泉水」について一般名称化して使用される。

したがって、以上の事実を前提とすれば、引用商標からは「パイウォーター」の称呼が生じ、かつ、この称呼が引用商標から生じる唯一の称呼である。また、引用商標からは「二価三価鉄塩を含む水」の観念が生じる。

この点に関し、請求人は、引用商標の指定商品は水(鉱泉水)であるから、引用商標からは「パイ」の称呼、観念が生じる旨主張している。

しかし、「πウォーター」の語は上記したように「鉱泉水」の内容(品質、種類等)を意味する一般名称として周知され、使用されており、この商標を「π」と「ウォーター」の部分に分離して称呼、観念されることはない。このように、引用商標からは「パイ」の称呼及び観念は生じないものである。してみれば、本件商標と引用商標は称呼及び観念上非類似であること明白である。

なお、請求人は甲第5号証及び甲第6号証を提出し、上記請求人の主張の裏付けとしている。しかし、甲第5号証の商標登録無効審判事件と本件とは事実を異にするものであり、証拠として適格性を欠除するものである。

(4)以上のとおり、本件審判は商標法第47条の規定に反してなされた不適法な請求であり、したがって、本件審判の請求は却下されるべきものである。また、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同第11号のいずれにも該当するものではない。

5 当審の判断

請求人は、本件審判請求書において、本件商標登録の無効理由として、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当することを挙げ、主張しているものである。

ところで、商標法第4条第1項第11号の規定に違反してされたとする商標登録の無効審判は、同法第47条の規定により商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は請求することができないものである。

しかるに、本件審判は、平成14年11月15日に請求されたものであるから、本件商標の登録日である平成9年4月4日より5年を経過した後であることが明らかである。

また、同じく商標法第47条には、商標登録が商標法第4条第1項第10号若しくは第17号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)は、商標登録の無効審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は請求することができないと規定されている。

しかして、被請求人が前記のとおり、4(1)において、本件商標は登録から5年以上経過しており、本件審判は商標法第47条の規定に違反して請求されたものであるから、本件審判は却下されるべきであると答弁したのに対し、請求人は、前記したとおり3(2)(ア)において、本件商標は被請求人が不正競争の目的で登録を受けたものであるから、商標法第47条の規定は適用されない旨を述べ、甲第7号証を提出している。以下、この点について検討する。

この点に関して請求人より提出された甲第7号証は、請求人(甲)と被請求人(乙)との間で昭和59年4月3日に締結された契約書(写し)と認められるものであるが、当該書面は、発明の名称「二価三価鉄塩およびその製造方法」(特許出願番号 特願昭58−64298号)に係る実施権等に関する契約書であって、この書面上には商標出願・商標登録に関する事項又は「パイ(π)ウォーター」に関する事項は何ら定められていない。

そうすると、上記契約書によって、請求人と被請求人との間で該発明に関する契約が取り交わされたことは解るが、これをもって直ちに、別掲に示した本件商標を出願したことに、不正競争の目的があったとは認められない。 その他、請求人の述べる主張をもって、上記認定を覆すことはできない。

したがって、請求人の主張する他の理由について言及するまでもなく、本件審判の請求は、商標法第47条に規定する除斥期間経過後の不適法なものであるから、同法第56条において準用する特許法第135条の規定により、これを却下すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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