結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2000−35081(T2000−35081/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4136821号商標(以下「本件商標」という。)は、「神戸ラーメン第一旭」の文字を横書きしてなり、第42類「ラーメンの提供」を指定役務として、平成7年11月20日に登録出願、同10年4月17日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第59号証(枝番号を含む。)を提出した。
1.請求人は、「第一旭」なる屋号のラーメン店を本件商標登録出願時よりも前から経営しており、その屋号は「ラーメンの提供」に関し本件商標登録出願前より周知著名であり、且つ「ラーメンの提供」と本件商標の指定役務とは類似するから、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に該当するものである。
(1)請求人の屋号である「第一旭」は、ラーメン店として周知・著名である(甲第3号証ないし甲第44号証)。
(2)この「第一旭」は、京都市下京区高倉通塩小路下ル東塩小路845で、先代が昭和22年に大衆食堂として「旭食堂」を開店し、その後に「第一旭」に屋号を変え、ラーメン専門店として再発足した。その後、同店を永年手伝ってきた請求人に昭和52年3月31日に経営権が譲渡された(甲第3号証)。
(3)「第一旭」は、多数の雑誌でその著名性が紹介されている(甲第5号証ないし甲第25号証)。この中で「第一旭」を「第一旭本店」、「本家第一旭」、「第一旭たかばし本店」、「本家第一旭本店」、「本家第一旭たかばし本店」、「本家第一旭たかばし」等と掲載されているが、これはフランチャイズ店との差を明確にするためのものであり、「第一旭」以外の部分はいずれも識別力のないものであるから、これら雑誌の紹介はラーメン店「第一旭」の紹介であることは明らかである。
なお、雑誌の紹介記事のうち本件商標登録出願前のものは、甲第5号証ないし甲第11号証の7件のみであるが、請求人は無効審判の請求を予期していなく、それまで大量に紹介された記事等が散逸してしまったからである。
(4)このフランチャイズ店展開は、請求人のラーメン店「第一旭」の味で、ラーメン店を開きたいという者達が現われ、請求人の弟の佃功が、株式会社第一旭を他の人々と設立し、フランチャイズチェーン店の展開を始めて、最盛期には100店舗以上になったが、この株式会社第一旭は倒産し、個々の店が「第一旭」を名乗り営業してきた。
この佃功を構成員とする、株式会社第一旭と請求人との関係は経営的には無関係で、「第一旭」という屋号を使うことについても報酬を請求人は得ていないが、弟(佃功)が経営するフランチャイズ本部であったこと、請求人の「第一旭」の名前が広がり、有名になることを喜び、請求人はフランチャイズ店舗の展開を黙認していたが、フランチャイズ店舗の展開は、請求人の「第一旭」の名を損じることなく、かえってその著名性を高めることになった。
なお、株式会社第一旭の倒産後、フランチャイズ店は次第に幾つかのグループに集約され、現在、請求人を信奉するグループ店は約60店舗ある。
上述のように、請求人の経営するラーメン店の屋号「第一旭」は役務「ラーメンの提供」に関し、京都はもちろん全国にまで周知・著名な商標であることは明らかでる。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
2.また、被請求人が本件商標を使用した場合、その構成中に「第一旭」が含まれているため、出所の混同を生ずる恐れがあることも明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
3.商標「第一旭」は誰でも容易に考え出すことができない商標であるため、被請求人が不正の目的をもって請求人の商標と類似な本件商標を登録出願したことは明らかである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
4.利害関係について
請求人は、永年「第一旭」をラーメン店の屋号に使用しその商標は周知著名になっているから、本件商標の存在は、混同を含む請求人の利益を害することは明らかである。
5.答弁に対する弁駁
被請求人は、商標に関する権利は全て松本有司の子供等が有し,第三者である請求人にはその資格がないと、主張している。
しかしながら、請求人は「第一旭」の本店の正式な経営者であり、商標に関する権利を優先的に有する者であり、たとえ松本有司の子供等であっても、請求人の後位につくことがあっても,請求人を脅かすことができないものである。
被請求人は、「第一旭」の暖簾の所有者は、被請求人の代表者である田口隆弘、松本昭及びその兄弟と主張しているが、真の所有者は、請求人である。
被請求人は、請求人が京都を代表するラーメン店と評価されている「第一旭」たかばし本店を経営しているのを知った上で本件商標を出願・登録しているので、不正の目的があったことは明らかである。
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁しその理由を要旨次のように述べ、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1.商標法第4条第1項第19号について
(1)ラーメン店「第一旭」を創始したのは、田口有司である。田口有司の子の一人が被請求人の代表者田口隆弘である。
このラーメン店「第一旭」は、その後、数年のうちには非常に繁昌する店となっていた(甲第30号証及び甲第31号証)。
その後、田口有司は昭和44年に松本春枝と結婚し、松本姓を名乗るようになった(松本有司)。請求人は、昭和50年前後に松本有司の経営する「第一旭」店に従業員として雇用され、昭和52年に店を任された。請求人が「昭和52年3月31日に経営権が譲渡され」と述べているのは、そのことを指すものと思われる。
しかし、そのときに生じた事象は、松本有司・春枝の共有である上記店舗の賃貸借契約である。これを、建物賃貸借契約公正証書の写(乙第1号証)により証明する。
建物賃貸借契約公正証書(乙第1号証)に記載されているのは建物の賃貸借のみであり、経営権については何も触れられていない。実際、松本有司は、店舗は請求人に任せたものの、経営の基本についてはなおも実権を握っていた。
建物同賃貸借契約は、その後、10年毎に更新され、最近では平成9年2月2日に契約が交わされている(乙第2号証)。なお、この間、平成1年10月29日に松本有司が亡くなり、賃貸人は、その子供である松本昭に交替している。すなわち、ラーメン店「第一旭」の賃貸人松本昭は、被請求人代表者田口隆弘の義弟である。
この賃貸借契約には、「第18条(商号使用の制限)乙(佃栄子)は、『第一旭』又はこれに類似する商号を本件物件以外の営業に使用してはならない。また、その名称のいかんを問わず、一切の第三者をして、『第一旭』又はこれに類似する商号を使用させてはならない。」なる規定が盛り込まれた。ここでいう「商号」とは、ラーメンの提供なる役務についての役務商標に他ならない。同条項は、松本有司(現在はその相続人松本昭)と請求人との間の契約はあくまで単なる店舗建物の賃貸借契約であり、「第一旭」の商号・商標権は松本有司(現在はその相続人松本昭)が保有することを確認したものである。事実、「第一旭」高橋店が所在する京都市下京区においては、松本有司及びその相続人松本昭が「ラーメン類の販売」なる営業について「第一旭」の商号を登記している(乙第3号証)。請求人は、それを承知した上で同契約書に署名捺印している。
(2)一方、田口隆弘は昭和46年に神戸にてラーメン店「第一旭」を開店し、昭和59年9月28日に有限会社アサヒフーズを設立して「第一旭」の名称でラーメン店チェーンを展開した(乙第4号証)。この「第一旭」の名称使用については、父親である松本(田口)有司の許諾を得ていた。なお、田口隆弘の長兄大森高男は、鳥取県米子市にてラーメン店「第一旭」を経営し、次兄高山安弘は、愛知県一宮市においてラーメン店「第一旭」を経営している。いずれも父親松本(田口)有司の許諾を得て「第一旭」商標を店名として使用している。
田口隆弘は、有限会社アサヒフーズを設立した後に、第32類「加工食料品」を指定商品として「第一旭」商標を出願し、商標登録第1957585号として商標権を得ている。これは、田口3兄弟がそれぞれ「第一旭」ラーメン店を経営し、松本有司自身は「第一旭」高橋店を請求人に「第一旭」の名称で営業することを許諾していた間のことである。
なお、有限会社アサヒフーズは、平成8年7月4日に株式会社アサヒフーズに組織変更された。これが本件被請求人である。
以上のとおり、「飲食物の提供」という役務に関する「第一旭」商標の権利は、元来田口(松本)有司のものであり、平成元年10月29日に松本(田口)有司が死亡した後は、その相続人である田口隆弘、松本昭氏及び彼らの兄弟の共有財産となっているものである。
被請求人の代表者田口隆弘は、自分が正当な権利を有する商標を登録出願し、商標権を得たのみである。したがって、本件商標の登録出願が不正な目的でなされたとの請求人の主張は失当である。
2.商標法第4条第1項第10号について
請求人は、請求人の屋号である「第一旭」が「ラーメン店(ラーメンの提供)として周知・著名である(甲第3号証ないし甲第44号証)と主張している。
しかし、提出した雑誌等の紹介記事である甲第4号証ないし甲第25号証のうち、請求人自身も認めているように、本件商標の登録出願以前の記事は甲第5号証ないし甲第8号証の4件のみである。この資料のみで、登録出願の時点で需要者の間に広く認識されていたことの証明にはならない。
甲第33号証ないし甲第44号証の「証明書」は、定型文が印字された定型用紙に署名押印されたものである。このような予め用意された定型用紙への署名押印は、店に来た客に依頼すれば何枚でも作成できるものであり、署名者がその定型文とおりの意思を表示したことの証明にはならない。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するものであるとの請求人の主張には根拠がない。
仮に、甲第33号証ないし甲第44号証の「証明書」が高橋店の「第一旭」商標の周知性を証明するとしても、その「第一旭」商標は、前記のとおり請求人のものではなく、田口隆弘、松本昭等の共有に係るものである。
したがって、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして」には該らない。
この点からも本件商標が同第10号に該当するものであるとの請求人の主張には根拠がない。
甲第3号証は、高橋店が食品衛生法第21条に基づく許可を得ていることを証明するのみである。同法第21条に基づく許可は各店舗の衛生管理者に対して出されるものであり、衛生管理者と商標所有者とは何の関係もない。同一商標を用いるチェーンにおいては、各店舗の責任者宛に同法第21条の許可が出されている事実をみても明らかである。
甲第26号証ないし甲第29号証は、いずれも「第一旭」高橋店に関するものではなく、第一旭フランチャイズチェーンに関する資料である。
これらも、本件商標の登録出願日以降に作成されたものである。したがって、本件商標が登録出願の時点で同第10号に該当するものであったとの証明はなされていない。
3.ここで、第一旭フランチャイズチェーンについて説明する。
「第一旭」高橋店が繁昌しているのを目のあたりにして、請求人の弟佃功は「第一旭」の商標を使用してフランチャイズチェーンを展開することを企図し、昭和61年に松本有司よりフランチャイズチェーンにおける「第一旭」商標の使用について許諾を得た。このフランチャイズチェーンの本部として設立されたのが株式会社第一旭で、本社は京都府城陽市寺田垣内後55番地の7に置かれた。
このフランチャイズ本部としての株式会社第一旭は、設立後数年で経営不振に陥り、外部からの種々の干渉により商号を「株式会社第二旭」に変更した後、平成9年5月30日に破産した。「株式会社第一旭」の商号は、その混乱の中で藤本直樹氏を代表者とする会社に僭奪されたが、その会社こそ、旧株式会社第一旭(現株式会社第二旭)破産直後の平成9年6月26日に前記商願平9‐1322536号「第一旭」を出願した会社である。佃栄子氏は、その商標登録出願を承継して本件審判を請求するに及んでいるものである。
旧株式会社第一旭(現株式会社第二旭)の破産管財人富田康正弁護士は、破産宣告裁判所大阪地方裁判所より旧株式会社第一旭の破産により窮状に陥った第一旭チェーンの各フランチャイジーや取引業者の指導・援助及びフランチャイズ組織の再構成を命じられ、その業務をフランチャイジー及び取引業者有志が組織した共栄食研有限会社に委託した(乙第5号証)。そして、共栄食研有限会社は平成12年3月21日、本件被請求人株式会社アサヒフーズの代表者田口隆弘を代表者に迎えた(乙第6号証)。これは、第一旭チェーンの各フランチャイジーや取引業者が田口隆弘を「第一旭」商標の正当な承継者と認めた結果に他ならない。
4.商標法第4条第1項第15号について
上述のとおり「第一旭」の周知性さえ証明できていないのに、同第15号に該当すべき著名性が証明されているとは到底言えない。
1.商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
(1)請求人の主張及び提出された各甲号証によれば、田口有司(ラーメン店「第一旭」の創始者)が京都市下京区高倉通塩小路下ル東塩小路845で営業していたラーメン店「第一旭」は、その後、同店を手伝ってきた請求人が昭和52年3月31日に食品衛生法第21条に基づく許可を受け営業していることは認め得るところである(甲第3号証)。
そして、甲第5号証ないし甲第25号証によれば、各種の雑誌にラーメン店として、「第一旭本店」、「本家第一旭」、「第一旭たかばし本店」、「本家第一旭本店」、「本家第一旭たかばし本店」、「本家第一旭たかばし」等が紹介され、佃栄子(請求人)の名前も紹介、掲載されているが、単に「第一旭」の店名で紹介され掲載されている記事はなく、雑誌に紹介、掲載された記事のうち本件商標登録出願前のものは、甲第5号証ないし甲第11号証の証拠のみである。さらに、請求人の主張によれば、請求人の弟の佃功は、株式会社第一旭を設立し、フランチャイズチェーン店の展開を始めた。しかし、この株式会社第一旭は倒産し、佃功を構成員とする多数の者が「第一旭」という店名をもって営業していることが窺える。
(2)被請求人の主張及び提出した乙各号証によれば、被請求人がラーメン店「第一旭」を営業する建物は、請求人と松本昭(松本有司の子:被請求人代表者田口隆弘の義弟)及び松本春江との間で賃貸契約がなされ、平成1年10月29日に、請求人が営業する「第一旭」(京都市下京区高倉通塩小路下ル東塩小路845)の建物賃貸契約書(乙第2号証)が作成され、この賃貸借契約には、「第18条(商号使用の制限)乙(佃栄子)は、『第一旭』又はこれに類似する商号を本件物件以外の営業に使用してはならない。また、その名称のいかんを問わず、一切の第三者をして、『第一旭』又はこれに類似する商号を使用させてはならない。」と規定されていることが認められる。
そして、被請求人は、神戸市中央区多聞通1‐3‐19志水ビル2Fにおいて、ラーメン店「神戸らーめん第一旭」を営業していることも認められる(乙第4号証)。
さらに、松本昭(田口隆弘の義弟)は、京都市下京区高倉通塩小路下る東塩小路町845において、「ラーメン類の販売」の営業について「第一旭」の商号を登記している(乙第3号証)。
また、被請求人が『田口隆弘の長兄大森高男は鳥取県米子市にてラーメン店「第一旭」を経営し、次兄高山安弘は愛知県一宮市においてラーメン店「第一旭」を経営している。いずれも父親松本(田口)有司の許諾を得て「第一旭」商標を店名として使用している。』と述べる点において、その証左はないとしても、各乙号証を勘案すれば、その信憑性については否定し得ない。
上記実情よりすれば、「第一旭」を店名とし、ラーメン店を営業している者は、請求人のみが使用している店名ではなく、前記した者ほか多数の者が使用しているものと認めざるを得ない。
次に、請求人の提出した、証明書(甲第29号証及び甲第32号証ないし甲第44号証)をみると、印字された定型文用紙に顧客に依頼し署名押印されたものであり、この証明書をもって、「第一旭」が請求人の標章として周知著名だと断定することはできない。
(3)そうとすれば、ラーメン店「第一旭」の店名は、請求人のみが「ラーメンの提供」に使用した結果、請求人のみの標章として需要者に広く知られ周知著名に至っていたものとは言い難いものであるから、本件商標をその指定役務に使用しても、請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
2.商標法第4条第1項第19号について
請求人は、『本件商標「第一旭」は、誰でも容易に考え出すことができない商標であるため、被請求人が不正の目的をもって請求人の商標と類似な本件商標を登録出願したことは明らかである。』と主張している。
しかしながら、「第一旭」が請求人の標章として周知著名だと断定することができないことは1.のとおりであり、その他前記した実情を勘案すれば、その主張は、被請求人が不正の目的をもって使用するものとする理由には当たらないものと判断するのが相当である。
3.したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に違反してされたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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