結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2002−35558(T2002−35558/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4269580号商標(以下「本件商標」という。)は、平成8年7月16日に登録出願され、「養命」の漢字を横書きしてなり、第29類「梅ぼし,梅ぼしの果肉,梅のジャム,梅エキスを加味した漬物その他の加工野菜及び加工果実,食肉,食用魚介類(生きているものを除く),肉製品,加工水産物(「かつお節,寒天,削り節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,豆、卵,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」を指定商品として、同11年4月30日に設定登録され、その後、商標権一部取消し審判があった結果、その指定商品中「梅ぼしの果肉,梅のジャム,梅エキスを加味した漬物その他の加工野菜及び加工果実,食肉,食用魚介類(生きているものを除く),肉製品,加工水産物(「かつお節,寒天,削り節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,豆、加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」については、その登録は取り消すとの審決がなされ、その確定登録が平成15年2月5日になされているものである。
請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第24号証(枝番含む)を提出した。
本件商標「養命」はそこから「ヨウメイ」の称呼を生じる。一方、請求人
がその業務に係る商品「薬用酒、薬味酒」について400年の永きにわたっ
て使用している商標「養命酒」(以下「引用商標1」という)も、その構成中「酒」の文字がその商品との関係において自他商品識別力の弱いものであり、「ヨウメイ」の称呼を生ずる。同じく請求人が商標登録している商標「養命」(以下「引用商標2」という)もその構成から「ヨウメイ」の称呼を生じる。
引用商標1は、1602年に請求人の創始者である塩沢宋閑が創造し、採択した商標であり、以来400年にわたり使用されている。
「養命酒」は薬効がすぐれているということで、信州伊那谷のみならず遠くの村へも知られるようになり、江戸幕府ができたときには徳川家康に献上された。その後、幕府から「天下御免万病養命酒」と免許され、その象徴として飛龍の紋章を授かり、これを使用することを許された。この由緒ある飛龍の紋章は現在商標登録第652820号、同第4250715号、及び同第4250716号として登録されている。
そして大正12年、それまでの塩沢家による家業としての「養命酒」の製
造・販売を会社組織に改め、全国に販路をひろげた。昭和五年ごろより新聞、雑誌にて広告活動を行うようになり、昭和27年(1952年)から、はじめてのラジオによる広告を行った。その後も宣伝広告に努めた結果、商標「養命酒」の知名度は全国的に非常に高くなった。同時に、品質の良さが認められて、「養命酒」の売上は飛躍的に伸び、昭和30年(1955年)には請求人会社は東京証券取引所に株式上場するまでになった。昭和31年(1956年)にはその出荷高として創業以来最高の2,719klを記録するに至っている。
「養命酒」を著名とならしめるのに少なからず貢献したテレビCMは昭和
39年(1964年)より開始されている。特に、昭和39年の「ありがとう!この人に」から平成10年の「おもいッきりテレビ」「いつみても波欄万丈」等、提供番組は数多く、ゴールデンタイムに高い視聴率を獲得している。更に、山本学、藤田まこと、草笛光子等著名なタレントをCMに起用し、商品のイメージアップをはかってきた。請求人がこれらテレビCMを含む宣伝広告活動に費やした金額は莫大なものであり、年間50億円を超えるものである。このような請求人の努力により、「養命酒」のブランドは日本国内で不動のものとなり、薬用酒の業界では他の追随を許さず、平均的な日本人であれば必ず知っているというほどによく知られている。雑誌、新聞記事はもとより現代のさまざまな著書にも取り上げられている。
また、「養命酒」の販売量は上記宣伝広告活動による知名度の上昇に伴って、昭和40年以降急激に伸び、平成11年には11,986klとなった。売上高も平成元年ごろより170億円を超えており、平成11年の売上高は183億円以上である。
戦前から海外にも需要があったが、現在までにシンガポール、香港、マレ
ーシア等十余か国に輸出されている。
商標登録も多くの国、商品区分でされている。日本では、商標「養命酒」
について旧第1及び28類で商標登録され(登録第836699号、同第8
00892号)、第1、28、29、30、31、32、33類で防護標章登録されている。また、商標「養命」については旧第24、25、26、27、28、31類及び国際分類第29、30、31、32類で商標登録されている。
さらに、商願昭45−76809「養命茶」についての登録異議申立につ
いての決定、商願平11−60915「養命水」、同11−61312「養命の水」についての拒絶理由において、商標「養命酒」及び「養命」の著名性が認められている。
かかる状況において、引用商標1び引用商標2と類似する本件商標をその
指定商品「梅干し、卵」に使用した場合、同じ食品の分野であり、また、請
求人はその商品「薬用酒、薬味酒」の酒粕を用いて調味料や漬け物等を生産
しているので、該商品が請求人の関連する出所から流出したと誤認混同され
る蓋然性が非常に高い。
もともと、「養命酒」という語は、上述のとおり、塩沢宋閑が創造したものである。「養命」という熟語も、辞書には載っていない。因みに、東京都立中央図書館に蔵している辞書116冊を調査した結果、「養生」の語は収録されているが、4冊を除き、「養命」の語は普通に使用される語として収録されていなかった。その4冊も、1冊は神奈川県の寺院である「養命寺」についての説明をしたものであり、他の3冊は後述する、2200年以上前の中国の古い書物において記されている「養命」という語について解説しているにすぎない。つまり「養命」の語は、現代、通常には用いられる語としては記載されていない。
よって、「養命酒」の語は、1602年に塩沢宋閑が、虚弱な体を本来の健康な状態に導くことを目的とする薬酒に関して創造し、採択した商標である。
本件商標権者は、請求人が永年使用し、多大なる信用と名声が化体した引用商標1及び2に乗じて、「養命」の語を採択したものである。特に、商標権者である株式会社エヌ・エイ・ティの代表者の配偶者はかって請求人会社の子会社に勤務していたことがあり、商標「養命」及び「養命酒」の著名性及び独自性をよく知悉している。
食品の分野において商品に本件商標「養命」を使用すれば、これを見る需
要者・取引者はその商品が著名な薬用酒である「養命酒」と、又は「養命酒」で有名な請求人の会社と何らかの関連があるものと出所を誤認することは明らかである。「養命」といえば通常の需要者は必ず「養命酒」を連想する。また、引用商標1を使用している商品である薬味酒は酒の一種であって広く食品・飲料の分野に属するから、食品の分野において特に混同が生じやすい。
請求人が漬物等加工食品の製造販売をしていることもあるので、本件商標を使用する商品「梅干し、卵」が請求人と関係のあるものであると誤認される可能性は極めて高い。
以上のとおり、本件商標をその指定商品に使用すると、請求人の業務にか
かる商品との間で混同を生ずる蓋然性が高く、本件商標は商標法第4条第1
項第15号に違反してなされたものである。また、上述のとおり、本件商標
権者は商標「養命」の著名性及びそれが請求人に属するものであることを知
りながら、本件商標を登録し、使用しているものであり、本件商標は商標法第4条第1項第19号にも該当する。
被請求人は、何ら答弁していない。
(1)引用商標1の周知著名性について
甲第7号証ないし同第11号証(枝番号を含む)、同第17号証によれば、次のことが認められる。
(ア)昭和39年にフジテレビ系列の番組「ありがとう!この人に」、TBS系列の番組「ポリドール歌の遊覧ショー」、テレビ朝日系列の番組「みんな科学者」、昭和40年に日本テレビ系列の番組「2時です今日は」、昭和42年にテレビ東京系列の番組「ゴールデンスペシャルプレゼント」のそれぞれの番組スポンサーとして「養命酒」を宣伝広告し、以来今日に至るまで著名な俳優(例えば、「山本学」「藤田まこと」等)をCMタレントとして起用し継続的に「養命酒」を宣伝広告していること(甲第8号証の1)、大正時代には「国民新聞」「東京日日新聞」「横浜毎朝新報」「名古屋新聞」「信濃日日新聞」「埼玉新聞」等又今日では「朝日新聞」「讀賣新聞」「毎日新聞」等の各新聞に薬用酒である「養命酒」を繰り返し宣伝広告していること(甲第8号証の3)、平成5、6、7、8年を初めとして同14年までの各年毎の広告宣伝費は、おおよそ51〜52億円かけていること(第9号証)。
(イ)新潮社発行の新潮文庫「ランボオ詩集」(訳者 堀口大學)に「新涼九月の宵だった、養命酒ほど爽やかに〜」との記載、集英社発行の「OL放浪記」(著者 わかぎえふ)に「広告のページになっているのだが『養命酒』の宣伝なんかはすごい。“血行がよくなり丈夫に肥ると評判です”〜」との記載、毎日新聞社発行の「素晴らしき家族旅行」(著者 林真理子)に「房江は傍の養命酒の瓶を取り上げ、それを布で拭き始める。〜」との記載、平凡社発行の「ボヴァリー夫人、椿姫」(訳者 村上菊一郎、鈴木力衛)に「〜養命酒を一杯ひっかけようじゃないか」との記載、文化出版局発行の「村上朝日堂 はいほー!」(著者 村上春樹)に「〜一昔前の養命酒の広告も良かった。〜」「〜養命酒を飲んだら最近ではすっかり元気になったよ」「じゃあ私もためしに養命酒を飲んでみようかしら」「何もかも養命酒のおかげである。〜」との記載、光文社発行の「赤鼻のキリスト」(著者 佐藤愛子)に「〜これは養命酒のもとになっている草で三枝九葉草ともいうんだ。〜」との記載、河出書房新社発行の「霧と影」(著者 水上勉)に「〜なんだと思いますか、養命酒ですよ」との記載がある(甲第10号証の1)。また、日本国際知的財産保護協会発行の雑誌「A.I.P.P.I.」に有名商標集の一つとして「養命酒」が掲載されている(甲第17号証)。
以上の事実によれば、「養命酒」の標章は、大正時代から新聞紙上により、また、昭和39年ころからテレビ放送により、マスメディアを通して全国的に幅広い需要者層を対象として積極的な宣伝広告を今日まで継続的に行っている。加えて、文庫本等の書籍にも「養命酒」の記述が数多く見受けられること等を総合的に勘案すれば、引用商標1は、遅くとも本件商標の商標登録出願前に、商品「薬用酒」を表示するものとして需要者の間に広く認識され現在もこの状態が継続しているものと認められる。
(2)引用商標1の独創性について
甲第2号証の3、同第4号証、同第5号証、同第6号証、同第22号証、同第23号証、同第24号証(枝番号を含む)によれば、次のことが認められる。
(ア)慶長7年(1602年)信州伊那の谷大草(現:長野県上伊那中川村大草)の塩沢家当主、塩沢宗閑は薬草を採取し、旅の老人から伝授された秘製法に従って薬酒を創製し、これを「養命酒」と名付けた。以来、「養命酒」は、現在に至るまで400年に亘り使用されている(甲第2号証の3,同第4号証、同第5号証、同第6号証)。
(イ)東京都立中央図書館所蔵の「広辞苑」等の国語辞典76冊及び「岩波漢和辞典」等の漢和辞典40冊を調査した結果、「養命」の語が項目として記載されている辞典は、「大辞典 平凡社編 平凡社発行」「旺文社漢和中辞典 赤塚忠編 旺文社発行」「学研漢和大辞典 藤堂明保編 学習研究社発行」「大漢和辞典 諸橋轍次編 大修館発行」の4冊であり他の辞典には掲載されていない(甲第22号証)。
(ウ)「養命酒」の語は、「養命」と「酒」との結合であり、「養命」という語は、中国の古書に用いられているが「養命酒」という言葉は、中国でも日本でも全く見ることができなかった新造語である、との記述、1602年に塩沢宗閑によって自ら創製した薬酒に命名した「養命酒」なる語が、極めて創意に富む新造語である、との記述がある(甲第23号証、同第24号証)。
以上の事実によれば、造語である「養命」の文字と成語である「酒」の文字を一連に表した「養命酒」の文字は、塩沢宗閑により創案された他に類を見ない独創性のある造語であることが認められる。
そして、他に、上記認定を左右するに足りる証左は見当たらない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録さ
れたものであるから、その余の請求理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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