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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2002−35439(T2002−35439/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第3351631号商標(以下「本件商標」という。)は、「阿蘇ファームランド」の文字を横書きしてなり、平成7年5月1日に登録出願、第29類「食肉,肉製品,加工水産物,乳製品,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆」を指定商品として、平成9年10月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第2114683号商標(以下「引用商標1」という。)は、後掲のとおりの構成よりなり、昭和61年5月8日に登録出願、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品」を指定商品として、平成1年2月21日に設定登録されたものである。同じく、登録第2709676号商標(以下「引用商標2」という。)は、「FARMLAND」の文字を横書きしてなり、平成4年3月25日に登録出願、第32類「食肉、肉製品、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成7年8月31日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。

1 本件商標と引用各商標の類否について

本件商標は、「アソファームランド」の称呼を生じる。一方、引用商標1は、その中央部分に顕著に表示され、該商標の要部と看取される「Farmland」の文字部分から、また、引用商標2は、商標全体から「ファームランド」の称呼が生じる。

また、本件商標中「阿蘇」の文字部分は漢字、「ファームランド」の文字部分はカタカナで表記され、さらに、「阿蘇」が熊本県北東部を指す地名であることは周知の事実であることから、需要者が本件商標を「阿蘇」と「ファームランド」の各文字部分とで個別に認識把握する可能性は極めて高いといえる。

2 引用各商標の周知性について

引用各商標の商標権者(請求人)であるファームランド インダストリーズ インコーポレーテッドは、1929年の創立以来、米国南部を中心に成長を続け、近年では全米の食肉流通業界において業績トップ5のうちに名を連ねる企業である(甲第4号証ないし甲第8号証)。また、1998年には米フオーチュン誌によって全米食品業界第9位にランク付けられるとともに、(甲第9号証)同年、日本法人を設立し、日本での売上も順調に伸びている(甲第10号証及び甲第11号証)。

上記の事実から、引用商標1及び引用商標2のうち少なくとも引用商標2については、同社の社名を表すハウスマークとして使用されていたことは明らかであり、また、引用商標1についても1970年に類似の商標の使用が開始されたことに基づき、1975年、米国において登録出願がなされている(甲第12号証)。

以上により、請求人の長年にわたる営業努力によって、引用各商標が周知性を得たことは紛れもない事実である。

3 商標法第4条第1項第10号について

引用商標1及び引用商標2が、請求人の営業活動を通じてその業務に係る商品を表示するものとして周知のものとなったことは先に述べたとおりである。さらに、本件商標と引用各商標が称呼及び外観において類似すること、本件商標が引用各商標の指定商品と類似する「食肉、肉製品」その他食品に使用されるものであることは明らかである。

4 商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、引用各商標と類似する商標であって、引用各商標に係る指定商品について使用するものである。

5 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当するものである。

6 答弁に対する弁駁

(1)商標法第4条第1項第10号について

まず、被請求人は、請求人が提出した甲各号証を検証し「今後日本国内での売上増を狙うという内容に留まっており、日本国内における周知性を確認することはできない」旨主張しているが、そもそも売上高は周知性を計るための尺度の一つにすぎず、例えば雑誌・書籍などの媒体や広告等を通じて需要者の間に知られることになった商標についても周知性が認められて然るべきである。従って、必ずしも売上の高い商品に付された商標がすなわち周知性の高い商標と判断されるべきものではない。

また、請求人が「今後日本国内での売上増を狙う」企業であるということが周知であれば、それがすなわち周知性を獲得したことでもあると言える。

この点において引用各商標がアメリカ合衆国で周知であることは、被請求人も「営業活動の拠点である米国においてはいざ知らず」として否定はしていない。さらに、甲第5号証ないし甲第10号証より、請求人の「ファームランド」の名が、少なくとも本件商標の指定商品である「食肉」を扱う畜産物業界において周知性を獲得していたことは明らかである。

また、被請求人がインターネットにおいて「ファームランド」を検索した結果(乙第1号証及び乙第2号証)は、対象となる両者が同じ条件でインターネット上に情報を掲載している場合にのみ有効な比較の一方法であって、テーマパークの提供という多種多様な需要者をもつ役務を生業とする被請求人と、外国法人であり、活動の分野が畜産物業界に集中した請求人とに関する情報量をこのような材料で比較し、どちらがより有名かといった議論をすることは意味のないことである。ましてや、被請求人の商標に係る「阿蘇ファームランド」が「よく知られたテーマパーク」であるとしても、それによって請求人による引用各商標が広く認識されている商標とはいえない、との論理は成り立たない。

(2)商標法第4条第1項第11号について

引用各商標の要部が「FARMLAND」であることに議論の余地はない。また、本件商標においては、地名であり自他商品識別力の低い「阿蘇」部分を除いた「ファームランド」部分が要部であると判断されることは明白である。これは「阿蘇」の文字部分が漢字、「ファームランド」文字部分が片仮名で表記されていること、加えて地名の表示は通常、単に商品の産地を表すものである以上、「阿蘇」と「ファームランド」の部分とを切離して考察すべき理由は全くない、とする被請求人の認識は誤りである。

この点について、被請求人は平成11年審判第35419号(乙第3号証)の審決例を挙げているが、本件とは事案を異にするものである。

なお、地名と結合した商標が地名部分を除いた他人の商標に類似すると判断された事例を挙げる(甲第15号証ないし甲第18号証)。

第4 被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第10号について

引用各商標は、同人の営業活動の拠点である米国においてはいざ知らず、証拠として示されたいずれの資料を見ても、今後日本国内での売上増を狙うという内容に留まっており、日本国内における周知性を確認することはできない。

例えば、そのキーワードによる検索件数の多い順に表示される、インターネットの検索エンジンGoogleで「ファームランド」の検索をしてみると、上位でヒットするのはほとんどが被請求人の商標に係る「阿蘇ファームランド」に関するサイトであることから、日本では現在「ファームランド」といえば「阿蘇ファームランド」か、あるいは他の農園・農場を示すものというべきである(乙第1号証及び乙第2号証)。「阿蘇ファームランド」は地元九州の住民はもとより、特に子供のいる家族にとってはよく知られたテーマパークであって、「ファームランド」と聞いて食肉加工品等の販売をする請求人の会社を想起する者よりは、被請求人の運営するテーマパークを想起する者の方が圧倒的に多いというのが事実である。

よって、請求人の引用各商標は、広く認識されている商標とはいえない。

2 商標法第4条第1項第11号について

先ず、外観については、漢字を含み日本語のみからなる本件商標と、図形を組み合わせ、アルファベットのみからなり縦横に文字を配している引用商標1とは、外観上一見して明らかな差異があり、又、引用商標2についても、混同のおそれのない、外観上非類似の商標であるといえる。

次に、称呼については、本件商標「阿蘇ファームランド」は漢字と片仮名の組み合わせからなり、同書、同大、等間隔にて一連に書されているため、「阿蘇」と「ファームランド」の部分とを切離して考察すべき理由は全くないので、その文字に相応して「アソファームランド」の称呼が生じる。一方、引用各商標からは、その文字に相応して「ファームランド」の称呼のみが生じるから、両者は音数、語頭音の違いにより容易に聴別される、称呼上非類似の商標であるといえる。

更に、観念については、本件商標は「農場」、「土地」といった観念を生じる「ファームランド」に九州の地名である「阿蘇」を組み合わせてなるものであるが、引用各商標からは、「農場」、「土地」といった観念のみが生じるから、両者は観念上も非類似である。たとえ「阿蘇」の文字が地名を想起させるとしても、それにより直ちに「阿蘇」の部分と「ファームランド」の部分とが別々に考察されるという特段の理由はない。

特別に強い識別機能を有するともいえない「ファームランド」なる語と組み合わされた場合には、むしろそれと一連一体として「阿蘇ファームランド」と認識することで他の名称との識別を図ろうとするものである。

以下に示すのは、商標登録無効審判事件(平成11年審判35419号)において、非類似であると判断された一例である(乙第3号証)。

3 結び

以上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当しないものである。

第5 当審の判断

1 引用商標の周知性について

請求人の提出に係る証拠(甲各号証)は、本件商標と引用各商標に係る公報及び登録原簿写し(甲第1号証ないし甲第3号証)、2002年10月5日付の「ファームランド インダストリーズ コーポレーション ホームベージウェブサイト抜粋写し」(甲第4号証)、米国食肉輸出連合会発行「TOKYO NEWS FLASH」(1998年12月25日号、1999年1月29日号及び、2002年8月9日号;甲第5号証ないし甲第7号証)、財団法人食品流通構造改善促進機構ウェブサイト抜粋写し(http://wwwofci.or.jp ;甲第8号証)とするもの、米誌「FORTUNE」ウェブサイト抜粋写し(甲第9号証)とするもの、日経テレコン記事検索結果(甲第10号証)、ファームランド フーズ インコーポレイテッド 売上レポート及び請求書写し(甲第11号証)、米国特許商標庁ウェブサイト抜粋写し(甲第12号証)、商標審査便覧抜粋(甲第13号証)、工藤莞司著「商標審査基準の解説」 抜粋写し(甲第14号証)及び、審決(甲第15号証ないし甲第18号証)である。

そこで、これら証拠(甲第1号証ないし甲第3号証、甲第13号証、甲第14号証及び甲第15号証ないし甲第18号証を除く。)により、「Farmland(ファームランド)」が、請求人であるファームランド インダストリーズ インコーポレーテッドの商標として、本件商標の出願時(1995年(平成7年)5月1日)に食肉等の畜産物分野の取引者の間に広く認識されていたかの点についてみると、その甲各号証は、いずれも本件商標の出願時前に我が国において頒布されたものではなく、また、我が国内で発行されたといえる米国食肉輸出連合会発行「TOKYO NEWS FLASH」(甲第5号証ないし甲第7号証)をみるに、1999年1月29日号の見出しを「パッカー・ニュース」とする箇所に「ファームランド、1998年度の業績好調/ファームランド・インダストリーズ社の食肉グループは、・・・」(甲第6号証)の掲載が認められるのに対し、1998年12月25日号の同箇所には「・・・ファームランド・ナショナル・ビーフ・パッキング社との提携を通じて・・・ファームランド社は、・・・」(甲第5号証)及び2002年8月9日号の同箇所には「ファームランド・ナショナル・ビーフの新しい食品衛生システム/牛肉加工4位のファームランド・ナショナル・ビーフ社は、・・・」(甲第7号証)の掲載が認められる。同様に「米国の食肉流通事情」と題した財団法人食品流通構造改善促進機構ウェブサイト抜粋写し(甲第8号証)とするものにも「・・・ファームランドナショナルビーフといった大手パッカー4社で・・・」の掲載情報、さらに、日経テレコン記事検索結果(甲第10号証)の流通サービス新聞(掲載日:1998/06/09)においても「米ファームランドナショナルビーフ、全額出資の日本法人を設立」の見出しの下、「米国第四位の牛肉加工業者、ファームランドナショナルビーフ(本社カンザスシティー)は、・・・ファームランドは全米最大の農業団体、ファームランドインダストリーグループの傘下で・・・」の新聞報道が認められる。さらに、請求書写し(甲第11号証)においても「Farmland Foods,Inc.」の発行に係るものである。

そうすると、上記の甲各号証の証拠よりは、「ファームランド」又は「Farmland」の表示が企業ないしは団体の名称の一部に使用されていること、及び掲載紙面の都合上その略称としての記述が認められるに止まり、引用各商標及び「Farmland(ファームランド)」の文字のみが、具体的な商品についての使用は認め難いものであり、また、如何なる企業ないしは団体によって、当該商標が食肉等の畜産物に使用されていたものかの点も明らかなものといえない。

2 商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、「阿蘇ファームランド」の文字よりなるところ、前半部の「阿蘇」の文字が熊本県北東部を指す地方名であり、後半部の「ファームランド」が「農場、土地」の意味を有することは認め得るしても、「阿蘇ファームランド」の文字は、被請求人の名称の略称であり、既に、テーマパークの名称として使用している事実(乙第1号証及び乙第2号証)よりすれば、これに接する取引者、需要者をして、被請求人の名称の略称を表したものと看取、理解されるものというのが相当である。さらに、本件商標は、一連一体にまとまりよく構成され、全体の文字より生ずる「アソファームランド」の称呼も淀みなく一連一気に称呼し得るものである。

してみれば、本件商標を構成する「阿蘇ファームランド」の文字よりは、「アソファームランド」の称呼のみを生ずるものというべきである。

他方、引用商標1は、後掲のとおり、図形と「Farmland」、「FOODS INC」の文字よりなるものであるから、該全体の文字部分よりは、欧文字による会社名称の略称を表したものと看取、理解され、「ファームランドフーズインク」の称呼を生じ、「FOODS INC」の文字部分を捨象する場合も決して少なくないから「Farmland」の文字部分よりは、単に「ファームランド」の称呼を生ずるものである。また、引用商標2は、「FARMLAND」の文字に相応し「ファームランド」の称呼を生ずるものである。

そして、本件商標より生ずる「アソファームランド」の称呼と引用商標1より生ずる「ファームランドフーズインク」の称呼とは、その音構成、構成音数において、明らかな差異を有するものであり、また、引用商標1及び引用商標2より生ずる「ファームランド」の称呼とは、語頭において「アソ」の音の有無の差異を有するものであるから、互いに聴別し得るものである。

次に、外観についてみるに、本件商標と引用各商標の構成は、前記したとおりであって、外観上明らかな差異を有するものであるから、互いに相紛れるおそれはないものである。

また、観念においても、本件商標は、前記したとおり、熊本県北東部を指す地方名「阿蘇」と農場、土地の意味を有する「ファームランド」の文字よりなるものであるから、「阿蘇ファームランド」文字よりは、「阿蘇地方の農場、土地(被請求人の名称の略称若しくはテーマパークの名称)」を観念するものである。他方、引用商標1を構成する「Farmland FOODS INC」の文字よりは、法人の名称を表したものと看取され、引用商標1を構成する要部である「Farmland」及び引用商標2を構成する「FARMLAND」の文字よりは、単に「農場、土地」の観念を有するものである。そうすると、本件商標と引用各商標とは、観念おいても相紛れるおそれはないものというのが相当である。

したがって、本件商標と引用各商標とは、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標といわざるを得ないから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

3 商標法第4条第1項第10号について

本件商標と引用各商標及び「ファームランド(Farmland)」とは、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標であること、上述のとおりである。

そうすると、たとい、商標権者(請求人)であるファームランド インダストリーズ インコーポレーテッド若しくは日本法人であるファームランドナショナルビーフジャパンが、「ファームランド(Farmland)」等の商標を食肉等の畜産物に使用し、本件商標の登録出願時には、我が国の取引者間において周知商標であったことを立証し得たものとしてみても、商標において類似するものでないから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。

4 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきではない。

よって、結論のとおり審決する。

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