Trademark Appeal Case
役務の機能表示と識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2000−13658(T2000−13658/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「1−CLICK」の文字からなり、1998年1月2日アメリカ合衆国出願に基づく優先権を主張して平成10年7月2日に登録出願され、指定役務については、当初の第35類に属するものとして指定した役務表示を平成11年10月1日に提出した手続補正書により、第35類「商品の販売に関する情報の提供,商品の受注・発注事務の代行,市場調査,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,書類の複製,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング」と補正しているものである。
2 原査定の拒絶理由
本願商標は、ワンクリック、すなわち、一回クリックすることの意味合いを容易に想起させる「1−CLICK」の文字を書してなるところ、補正後の指定役務中には、例えば、電子計算機端末等のページをワンクリックすれば好みの商品等の情報[に容易にアクセスできる役務]が簡単に得られるもの(役務)が存することとも相俟って、このような商標を補正後の役務に使用しても、これに接する取引者・需要者は単に役務の質(内容)・機能(性)などを表示したものと把握するに止まり、自他役務識別標識としての機能を有するものとは認識しないとみるのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
3 請求の理由(要旨)
本願商標「1−CLICK」からは「ワンクリック」の称呼及び「一回クリックする」の意味合いを生ずることは否定しないが、「一回クリックする」ことは通常単に「クリックする」というのが普通であって、これをわざわざ「ワンクリック」と表現することはなかった。元々「1−CLICK」は出願人の独創的な言葉であって、これが昨今注目を浴びているのは、本件出願人所有に係る特許権が米国最大手の書店に対して権利行使され、これがマスコミに報じられたためである。したがって、「ワンクリック」といえば、本件出願人「アマゾン・ドットコム」のウェブサイト上で提供される役務であると一般的に認識されているといえる。
本件出願人の代名詞的に著名になっている本願商標は識別力が認められてしかるべきものである。
4 当審の判断
最近、インターネット利用世帯の普及が増大し、その操作の簡便性が求められている。一方、各種商品の販売ないし役務の提供においては、その利用手段の一として、インターネット上での商取引が行われていることは、一般によく知られているところである。してみると、本願商標は、その構成前記のとおり「1−CLICK」の文字よりなるところ、これをインターネット上での商取引に使用するときは、該文字からは、「ワンクリック」の称呼及び「一回クリックする」の意味合いを容易に生ずるものと認められ、これより、インターネット上での操作の簡便さを理解し、これを端的に表現したものと把握されるといえるものである。
そうすると、本願商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、インターネットを利用した商取引の簡便性、すなわち、役務の提供に係る方法、機能(性)を理解・把握するに止まり、自他役務の識別標識の機能を果たすものといえないというべきである。また、インターネット上での商取引を行わない役務に使用するときは役務の質の誤認を生じさせるおそれがある。
ところで、請求人は、上記3のとおり、「ワンクリック」といえば、本件出願人「アマゾン・ドットコム」のウェブサイト上で提供される役務であると一般的に認識されている旨述べているので、この点について一般紙又は産業分野の新聞記事をみると、例えば、
(ア)2003年2月4日付共同通信には、「『経済ウイークリー』<気になる商品>『コンピューターウイルス対策ソフト』知らないうちに加害者に ウイルスは6万種以上」とする記事見出しの下、「・・・トレンドマイクロ(東京)の『ウイルスバスター2003リアルセキュリティ』(八千五百円)は危ないメールや添付ファイル名を表示し『緊急警告』する。また駅、飲食店などでの無線LANによる接続の際、ワンクリックで最も適したセキュリティー環境に設定できる。・・・」との記述、
(イ)2002年11月1日付日本食糧新聞には、「インフォマート、受発注ASP事業に参入、外食・中食のIT化促進」とする記事見出しの下、「・・・通常の仕入先以外の売り手の情報も発注画面上からワンクリックで簡単に検索することができる。通常の仕入先だけでは希望の数量を確保できない場合や、フレキシブルに仕入先を変えたい商品などの場合には便利な機能・・・」との記述、
(ウ)2002年10月29日付読売新聞東京夕刊には、「“新そば”がうまい『そば湯を飲む、自分で打つ、道具を買う』HPで紹介」とする記事見出しの下、「・・・楽天『DVDプレーヤー市場』event.rakuten.co.jp/pc/dvd‐player 約1300点の商品を選べる。週ごとの売れ筋ベスト3の商品性能をワンクリックで比較できる・・・」との記述、
(エ)2002年8月14日付日刊工業新聞には、「ネクスト、不動産ポータルサイトをリニューアル」とする記事見出しの下、「・・・住宅不動産を検索できる不動産ポータルサイト『ホームズ』(www.homes.co.jp)をリニューアルした。「図面付き物件検索」や、目当ての物件に最短で検索できる『ワンクリック検索』機能を追加した。・・・」との記述、
(オ)2002年6月11日付日刊工業新聞には、「エキサイト、ASP方式の翻訳サービスを開始」とする記事見出しの下、「・・・低価格でメールなどのファイルがワンクリックで翻訳できる『エキサイトオフィス翻訳』サービスを始めた。・・・」との記述、
(カ)2001年11月20日付日刊工業新聞には、「パトリス、特許情報検索サービスで米国特許公報を全文掲載」とする記事見出しの下、「・・・全文中の公報番号があった場合にはワンクリックで参照できるリンク機能も備えている。・・・」との記述、
(キ)1998年10月20日付日刊工業新聞には、「米サイバーキャッシュ社、Javaによるネットワーク型電子財布システムを開発」とする記事見出しの下、「・・・同サービスは『アジル・ウォレット』と名付けたJavaベースのネットワーク型電子財布を利用する。これにより(1)一回だけの登録で、すぐ購入できる『ワンクリックショッピング』・・・」との記述、等の報道記事において「ワンクリック」の掲載がそれぞれ認められる。
他方、同様に「ワンクリック特許」に関する新聞報道をみると、
(ク)2001年4月30日付日刊工業新聞には、「米国で話題集める『特許つぶしサイト』−新たな標的は携帯プリペイド通話」とする記事見出しの下、「・・・アマゾンの『ワンクリックショッピング方式(ワンクリック特許)』。99年9月、この方式に米国特許が付与されると、日米のビジネス界で激しい論争が巻き起こった。・・・」との記述、
(ケ)2000年11月22日付日刊工業新聞には、「米国緊急リポート・ビジネス方法特許論争(9)ワンクリック特許、クレームに見解」とする記事見出しの下、「・・・クレーム1はワンクリックによる商品注文方法に関するもの。このクレームは有用であり、アマゾン・ドット・コムの『オンラインショッピング』ですっかりおなじみとなった手法だ。問題は、この発明が新規のものであり、業者の間で自明でないのかどうか。・・・商品を特定するショッピングカート(商品名と価格が表示される)のスクリーンでワンクリックする。次に、顧客/使用者の身元確認スクリーン(クレジット会社名と番号の表示)で精算のワンクリックをする。続いて、使用者の最終確認スクリーンで注文確認のワンクリックをする。つまり、商品特定行為と最終注文行為を別々のクリックによって達成すればよい。バーンズ社のこの方式は少し手間がかかるが、極めて簡単な処理である。・・・」との記述、
(コ)2001年1月15日付日刊工業新聞には、「波乱含みの米国ビジネス方法特許(下)ドットコム企業の墜落」とする記事見出しの下、「・・・この見解に従えば、アマゾン・ドット・コム社のワンクリックショッピング方式は、通常の素人にも自明であり、その特許性は疑われるであろう。・・・」との記述等、出願人の「ワンクリック特許」に関する報道記事においても「ワンクリック」の掲載がそれぞれ認められる。
以上の新聞報道記事によれば、「1−CLICK」の文字の使用は見出せないが、これより容易に想起し得る「ワンクリック」の文字(語)、及び「簡単に操作」できる程度の意味合いをもって、各種商品の販売ないし役務の提供について、インターネットを利用した商取引の方法、機能(性)を表すものとして、出願人以外の者が使用している点が窺えるものであり、また、「ワンクリック特許」に関する報道記事においても、同様に、インターネットを利用した商取引の方法として報道されている状況が窺えるものであるから、「ワンクリック」の文字(語)は、インターネット上での商取引においては、「商取引の方法、機能(性)」すなわち、役務の提供に係る方法、機能(性)を表すものと容易に理解されるものとみて差し支えないものといえる。
そうすると、「ワンクリック」の称呼、及び「一回クリックする」の意味合いを容易に想起させる本願商標「1−CLICK」の文字は、前記事情よりして、インターネット上の商取引に関する役務に使用するときは、単に役務の提供に係る方法、機能(性)を端的に表現したものと理解されるに止まり、それをもって商品の出所識別の標識とは認識し得ないものといわなければならない。
さらに、「1−CLICK」は、たとい元来は出願人の独創的な言葉であって、かつ、出願人のビジネスモデル特許からのものであるとしても、「ワンクリック」の文字(語)が既に出願人以外の者によりインターネット上の商取引において商品等の情報提供ないし売買する際の方法、機能(性)を表すものとして記述的に普通に用いている状況を考慮すれば、インターネット上の商取引に関する役務と密接に関連するものといえるものであって、何人もその表示を必要とし、かつ、その使用を欲するものといえるから、これを一私人の独占に委ねることは、商標の本質的機能並びに商標使用者の業務上の信用維持を目途とする商標法の法目的に照らし、妥当性を欠くものといわなければならない。
してみれば、本願商標は、商標法第3条第1項第6号、同法第4条第1項第16号に該当するものというべきであって、これと同趣旨をもって本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消す理由はない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。