結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2003−35116(T2003−35116/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4632323商標(以下「本件商標」という。)は、「MITSUICURVE」の欧文字を標準文字により横書きしてなり、平成13年11月9日に登録出願、第9類「コンタクトレンズ,コンタクトレンズの部品及び付属品,その他の眼鏡」及び第42類「医業,医療情報の提供,近視治療に関する調査及び研究」を指定商品又は指定役務として、同14年12月20日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4032898号商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成4年3月30日に登録出願、第23類「時計、眼鏡これらの部品及び付属品」を指定商品として、同9年7月25日に設定登録されたものである。
同じく登録第3258485号商標は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成4年9月29日に登録出願、第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,美容,理容,入浴施設の提供,写真の撮影,オフセット印刷,グラビア印刷,スクリーン印刷,石版印刷,凸版印刷,気象情報の提供,求人情報の提供,結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,墓地又は納骨堂の提供,一般廃棄物の収集及び処分,庭園又は花壇の手入れ,庭園樹の植樹,肥料の散布,雑草の防除,有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関するものに限る。),デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,施設の警備,身辺の警備,医業,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,衣服の貸与,植木の貸与,展示施設の貸与」を指定役務として、同9年2月24日に設定登録されたものである。以下、これらの登録商標を一括して「引用商標」という。
請求人は、結論と同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第50号証を提出している。
(1)三井の商号、商標について
三井家の事業は、三井高利が延宝元年(1673年)伊勢松坂より京都、江戸に出て越後屋呉服店を開いたことに始まる。
店章「丸に井げた三文字」(以下「井げた三マーク」という。)は、延宝5年(1676年)頃、越後屋の暖簾の紋所として使い始めたことに由来する。
明治に入ると、会社形態の企業が発展したが、三井は、明治7年「為替バンク三井組」の看板をかかげ、同9年7月には「私盟三井銀行」を開業した。また、同日付で、「三井物産会社」を設立した。三井物産は、明治26年「三井鉱山合名会社」とした。これら各社の統括を図るため、「三井合名会社」を設立した。このように三井の重要な事業には「三井」を商号中に使用してきた。
戦後の改革により、三井一族十一家により出資された持ち株会社が中核となって支配下の諸企業に各種の産業を経営させる「三井財閥」は解体された。しかし、100社を超す三井系企業は、その大半が引き続き商号中に「三井」の名前を冠し、その商品にも「三井」を使用する例が多く、「三井」の商号、商標は三井グループ各社及び三井グループ結束の精神的支柱となっている。
「三井」の商号、商標を保護する具体的な動きとして、300余年もの間、井げた三マーク及び「三井」の商号、商標を使用し蓄積された信用、価値を守るべく、昭和31年、「三井商号商標保全会」を発足させ、三井グループ共通の財産である三井の商号、商標の保全を図ることとした。
同会は、「三井」商号、商標に化体した価値ある信用を守るべく「三井」の商号又は商標を使用する場合の基準を設け、商号、商標等の保全を図っている。
三井財閥は解体されたが、引き続き「三井」「MITSUI」は、三井の商号商標と従来の歴史を通じ企業相互が結集する三井グループを指称するものとして一般に認識され、グループ各社は三井グループの一員ということで多大の信用を得ており、高い業務上の信用が化体している。
「三井」は、一般的な氏姓としての側面をも有するものであるが、商標は商品流通あるいは役務の提供に際し識別標識として機能する標識であって、商標が機能する場である現実の経済社会において、「三井」「MITSUI」が使用されれば、あたかも三井グループに属する企業の商標であるごとく認識される可能性が高い。
(2)商標法第4条第1項第15号及び同第10号について
(ア)前述した三井グループの「三井」「MITSUI」の著名性を基礎に鑑みると、本件商標は、「MITSUI」と「CURVE」の2語を単一の英語としては不自然なほどに長く構成したものであって、その全体構成は冗長にすぎる。
そうとすれば、外形上、あるいはその構成上「MITSUICURVE」からなるとはいえ、これに接する取引者、需要者は、これを「MITSUI」と「CURVE」の2語からなるものと認識し、特に、後半の「CURVE」は、曲線を意味する付記的な部分、あるいは別異の単語として認識するところであって、本件商標は、一体不可分に理解されるものではない。
したがって、市場の実情よりみれば、本件商標に接する者は、これが「MITSUI」の部分のみで要部を構成するものとして理解し、これより「ミツイ」の称呼、「三井」の観念を生ずることが明白である。
(イ)「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」といえば三井グループ及びその構成企業の商号の要部並びに商標として本件商標の出願以前において広く知られていたことはいうまでもない。
(ウ)本件商標の指定商品及び指定役務は前記のとおりである。
請求人は、オフィスビル関連産業、住宅関連産業を中心に、ホテル事業、リゾート・レジャー事業など広範な業務を営み、健康事業も営んでいる。さらに、これら業務は、請求人のほか三井グループ各社の業務あるいは関連する業務にも係るところであり、三井記念病院などが有名である。
(エ)よって、三井グループと関係のない商標権者により本件商標がその指定商品、指定役務について使用されれば、これに接する取引者、需要者は、これはあたかも請求人を含む三井グループを構成する企業の取扱いに係る業務、あるいはその関連企業の業務にかかるものであるごとく、混同を生じさせるおそれが大きい。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第10号に該当することは明白である。
(3)商標法第4条第1項第8号について
三井グループ各社は、「三井」の商号、商標を保護すべく「三井商号商標保全会」を設立し結集している。
平成14年3年3月31日現在、「三井商号商標保全会」に結集する法人219社中、200社を超える企業が「三井」の文字をその商号中に使用している。
もちろん本件商標の出願及び使用に際し、同会が承認を与えた事実はない。
本件商標が上記「三井」を英文字で表した「MITSUI」を含むことは明白である。現在の経済社会においては、商号、その略称を英文字で表すことも普通であり、三井グループと関係のない商標権者が「三井」を表す「MITSUI」を含む本件商標をその指定商品、指定役務について使用すれば、「三井」の商号、商標を背景として結集する三井グループ及び構成各社の人格権が毀損されるおそれがあることを否定できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号にも該当するものである。
(4)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前述のとおり「ミツイ」の称呼、「三井」の観念をもって特定され認識される可能性を否定できない。
他方、「MITSUI」からなり、「三井」を含む引用商標より「ミツイ」の称呼、「三井」の観念を生じる。
よって、本件商標は、引用商標とその称呼及び観念を共通にする類似商標である。
本件商標の指定商品、指定役務が引用商標の指定商品、指定役務と抵触することは明白である。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第11号にも該当することは明白である。
(5)利害関係の存在について
前述のとおり、本件商標が使用されれば請求人業務と混同を生ずるおそれが大きい。また、自らが有する引用商標の保全を図る必要もある。さらに、請求人は、三井商号商標保全会の幹事会社としてその保全を図る責務を負っている。
よって、請求人は、その業務の保護、商標の保護のため本件無効審判を請求するにつき必要な利害関係を有する者である。
(6)むすび
以上詳述したとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、第10号、第8号及び第11号に該当し、同法第46条にもとづき無効とされるべきものである。
被請求人は、前記請求人の主張に対して、何ら答弁するところがない。
(1)請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
三井系企業の事業の歴史は、江戸時代の延宝元年(1673年)に三井高利が伊勢松坂から江戸に出て家業として呉服業を営んだことに始まる。明治40年代には、三井一族が株式を通じて傘下の企業を支配するという財閥の体制を整えた。しかし、昭和21年の財閥解体により、日本最大の規模を誇った三井財閥は解体した。その後、三井財閥の傘下にあった三井系企業は、三井グループと称される企業集団を形成し、現在に至っている。
三井系企業は、三井財閥の傘下にあった時代も、また三井グループを形成している現在においても、その多くが、井げた三マーク、「三井」の文字を商標として使用し、あるいは「三井」の文字を含む商号を使用して広範な分野にわたって事業を行っている。
そして、三井系企業は、上記商標及び商号の使用によって築き上げられてきた名声及び信用を保護し、これらの有する出所識別機能を維持するために「三井商号商標保全会」という組織を作り、三井物産株式会社をはじめ、三井住友化学株式会社、三井金属株式会社、三井建設株式会社、三井倉庫株式会社、株式会社商船三井、株式会社三井住友銀行、三井生命保険相互会社、三井トラスト・ホールディング株式会社など多くの三井系企業が会員となっている。また、請求人が該保全会の幹事会社となっていることが認められる。
(2)上記の事実によれば、三井系企業は、三井財閥の傘下にあった時代以来、「三井」の文字からなる商標を自己の業務に係る商品又は役務について永年にわたり使用し、三井系企業としての名声と信用を築き上げてきたものであって、三井系企業の全体としての事業規模の大きさ、その期間の長さを考慮すると、「三井」の文字からなる商標は、本件商標の登録出願の時には、三井系企業すなわち三井グループに属する企業の業務に係る化学、金属、建設、倉庫、運輸、銀行、保険など広範な分野における商品又は役務を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識され著名となっていたものと認められる。
(3)そして、本件商標は、前記のとおり「MITSUICURVE」の欧文字を標準文字により表したものであるところ、三井グループに属する企業の使用する「三井」商標の著名性を勘案すると、該著名な「三井」の文字からなる商標をローマ字で表した「MITSUI」の文字と「曲線、曲げる」を意味する平易な英単語である「CURVE」の文字とを一連に結合したものと把握し認識されることも少なくないものというべきである。
そうすると、本件商標の商標権者である被請求人が本件商標をその指定商品又は指定役務について使用した場合、これに接した取引者、需要者は、これより著名な「三井」の文字からなる商標を連想、想起し、該商品又は役務を請求人など三井グループに属する企業の業務に係る商品又は役務であるかのように、商品又は役務の出所について混同するおそれがあるものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといわなければならない。
(5)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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