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Trademark Appeal Case

とんびの普通名称性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2002−35056(T2002−35056/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第2724285号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成元年5月24日に登録出願され、「とんび」の文字を横書きしてなり、第17類「被服(礼服、背広服、コート、和服、たび、手袋(ゴム手袋、絶縁用ゴム手袋を含む。)、えりまき、マフラー、スカーフ、ネッカチーフ、ショールを除く。)、布製身回品(ふくさを除く。)」を指定商品として、同11年2月12日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第10号証及び参考資料1ないし3を提出した。

(1)請求の利益

請求人は、無効2000−35704号審判及び無効2000−35709号審判の被請求人であり、前記商標登録無効審判において、本件商標が無効理由として引用されているので、本件審判請求をするについて利害関係を有する。

(2)無効理由

「とんび」は、当初、「鳶合羽」の一般名称であったが、「鳶合羽」という商品の消滅後、男子用外套の「袖なし・ケープ付き・膝丈」の形状(型又はデザイン)を有する商品を意味するようになり、現在に至っている(甲第3号証 被服学辞典)。

そして、甲第4号証ないし甲第9号証及び参考資料(Google検索結果)によれば、本件商標の審決前に、「とんび」が「コート」の形状(型又はデザイン)、つまり「とんび型コート」を意味し、コートの形状を示すのに使われていたことは明らかであるから、本件商標「とんび」は、商品「コート」の形状(型又はデザイン)を普通に表示したにすぎないものである。

そして、「コート」と「洋服」は互いに類似する商品であることは明らかであるから、本件商標をその指定商品中「洋服(礼服、背広服を除く)」に使用したとき、それら洋服が「とんび型コート」であるかの如く商品の品質の誤認を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。

(3)答弁に対する弁駁

被請求人は、「とんび」という名称は特定の型のコートの名称として普通一般に又は日常的に使用されていたものでないと主張し、「とんび」という商品は、昭和初期等の過去の一時期の歴史的事実にすぎないと主張している。しかし一方で、被請求人は、本件商標「とんび」を「和服、コート、礼服、背広服」に用いると品質誤認を生ずるおそれがあることを答弁書の中でも認めている。本件商標の出願時に指定商品として含めた「とんび」という商品が積極的に削除されていることからみても、被請求人は、補正当時、「とんび」という商品の存在を認識していたと解するのが自然である。「とんび」という商標を「和服、コート、礼服、背広服」に用いれば品質誤認を生ずるおそれがあるのは、その前提として「とんび」と称される型のコートが商品として現に存在するからである。

もし、「とんび」という商品が、過去の一時期の歴史的事実にすぎないのであれば、「とんび」という商品は存在しない。存在しない商品とは品質の誤認を生ずるおそれなどあり得ないはずである。

甲第4号証ないし甲第9号証によって既に明らかなように、「とんび、トンビ又はインバネス」と称され、間貫一やシャーロックホームズが着用した形態のコートとして観念される外套が、本件商標の審決前に商品として市場に流通している。

甲第4号証には、「トンビ」は女性の著者自身が着用し、洋服にもよく合うと記載されている。甲第5号証には、洋服仕立業者が、スーツだけでなく、トンビ(インバーネス)のお仕立ても承りますと宣伝し、トンビ・インバーネスを洋装・和装にも着用でき、老若男女を問わず用いられると記載されている。甲第6号証には、インバネス・コートが和装・洋装を問わず着用できることが記載されている。甲第8号証には、メンズウエアメーカーが「とんび」タイプのマントを販売した記事が掲載されている。

これらの甲各号証に示されるように、「とんび」というコートは、一般的な洋服製造販売業者によって、本件商標の審決日前から今に至るまで取り扱われている商品である。従って、本件商標を指定商品「洋服」に使用したとき、商品の品質誤認を生ずるおそれがあるのは「礼服」と「背広服」に限定されるとは考え難く、例えば、「ずぼん、スーツ、スカート、子供服」等の「その他洋服」についても、商品の品質誤認を生ずるおそれがある。

被請求人は、乙第4号証ないし乙第8号証を商標法第4条第1項第16号に該当しないと判断された例として示している。しかし、これらの商標は漢字の「鳶」を含んでいるが、平仮名文字の「とんび」を含んでいない。漢字の「鳶」から「とんび」の称呼を生ずるとしても、商品「コート」に関しては、商品の名称又は形状を普通に表示したものではないから、本件について参考とし得る事例ではない。なお、乙第5号証は過誤によって登録されたものというべきであるから、瑕疵のあることが明白な乙第5号証は証拠として不適切である。

4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第8号証を提出した。

本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当するためには、「とんび」の語が、特定の商品を表す言葉として、少なくとも本件商標の審決時(平成11年1月11日頃)において、需要者、取引者において普通一般に使用されていたもの、或いは日常的に使用されていたものでなければならない。

請求人は、「とんび」が商品「コート」の形状を普通に表示したにすぎない旨主張するが、甲第3号証ないし甲第9号証を検討すると、明治時代、或いは昭和初期等の過去の一時期に、特定の形状の外套を「とんび」と称していたとする歴史的事実があったことは概略認められるが、上記審決時において、「とんび」の言葉が商品「コート」の形状を示すものとして、需要者、取引者において普通一般に使用されていた、或いは日常使用されていたとの事実は認められない。

また、同法第4条第1項第16号に該当するためには、本件商標の指定商品中に品質誤認を生ずるおそれのある商品を包含していることが必要である。

しかしながら、本件商標は、その拒絶査定不服審判(6年審判第4486号)の審理過程において当該おそれのある商品を補正により削除し、その結果、原審における拒絶理由は解消しているものであり(乙第2号証、乙第3号証)、本件商標の指定商品である「学生服、作業服、ずぼん、イブニングドレス等」との関係で、商品の品質の誤認が生ずるとは考えられない。

更に、乙第4号証ないし乙第8号証に示すように、漢字表記の「鳶」そのものからなる商標、漢字表記の「鳶」を要部として含む商標、平仮名表記の「とんび」を含む商標等が、「被服」(下位概念として洋服、コート、和服等を含む)を指定商品として複数登録されている。

5 当審の判断

本件商標は、上記に示したとおり、「とんび」の文字を書してなるものであるところ、請求人は、本件商標をその指定商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生ずる旨主張している。

確かに、本件商標が出願された際、適用されていた商標法施行規則別表の第17類の例示商品には、「コート」の概念のもとに「とんび、二重まわし」が例示されていたことから、「とんび」が商品の名称を表すものであることは疑いのないところである(ちなみに、平成3年10月31日通商産業省令第70号をもって改正された商標法施行規則別表の第25類「コート」の概念には「とんび、二重まわし」は例示されていない。)。

しかしながら、請求人の提出に係る甲号証には、「とんび」以外にも鳶合羽、インバネス、二重廻しと呼ばれる商品があり、これらについては、次のように記述されている。

甲第10号証(「広辞苑」株式会社岩波書店 昭和44年5月16日第二版第一刷発行)には、とんびとは「ラシャ製の袖の広い長い外套。二重まわし。インバネス。」と記載されており、甲第3号証(「被服学辞典」株式会社朝倉書店 1997年7月1日初版第1刷発行)の「鳶(合羽)とんび」の項には「男子が用いる羅紗等の羊毛織物製の防寒防雨用の外套で、袖が幅広く、長く、丸みを帯びている形状がトンビの翼に似ているため、この名がある。......幕末にヨーロッパからもたらされた合羽が日本ではトンビと呼ばれたという。......明治3年頃から用いられ始めて大流行したが、明治20年頃には廃れて、二重廻しに変化した。鳶合羽ともいう」と記載されており、同号証の「インバネス」の項には、「スコットランド北部の都市名インバネスに由来する袖なし・ケープ付き・膝丈の男子用外套で、わが国では、とんび、二重廻しなどと呼び、明治初期から和服用に用いた......」と記載されており、甲第4号証(「男のきもの」神無書房 平成10年10月22日第一刷発行)には「トンビとは、イギリスのコート、インバネスを言います。......袖無しにケープが付いていて、肩に羽織っただけで直ぐに着ることができる、とても着やすいマントです。......洋服にもよく合います。」と記載されており、甲第5号証(洋服仕立業者のインターネット上の広告)には「スーツだけでなく、トンビ(インバーネス)のお仕立も承ります」とあり、甲第6号証(洋服仕立業者の宣伝及びインターネット上の広告)には「インバネス・コートは、明治20年ごろ〜昭和初期に流行し、トンビや二重まわしとも言われています。......現在では、洋服の上からも着ることができ、おしゃれの幅が広がっています。......当店は、4年前よりインバネス・コートを復元し、和装・洋装を問わず着用でき、......最近では他社もインバネスを手掛けております......」と記載されている。更に、甲第7号証(平成9年11月30日付米沢日報)には「シリーズ再発見 米沢織きものの魅力/コートのお洒落、インバネススタイル」の表題のもとに「今回は、個性あるコート姿として、昭和初期まで『とんび』の愛称で親しまれた書生、文士の定番的装い、インバネスをご紹介いたします。......」とあり、甲第8号証(平成9年12月19日付繊研新聞)には「マント2型を550着限定販売」の項に「マントは、袖のある『とんび』タイプと袖のないケープタイプの二種類......」とあり、甲第9号証(平成4年3月3日付読売新聞)には作家嵐山光三郎の手記の中に「とんび」に纏わる話が記載されている。

また、参考資料として提出されたインターネット検索エンジンGoogleの検索結果リストの中には、「インバネスは、二重回し、とんびとも呼ばれ、洋装のインバネスの形態をまねて、和服が着られるように改良した防寒具で、明治の頃から流行し始め......」「マントを重ねたものがとんび、二重廻し、インバネスと呼ばれている」「インバネスはケープとマントを重ねたような形が特徴......その形から鳶(とんび)とか二重回し......」「二重回しは男子の和装用の外套、インバネスを改良したもの......」「私、高校の頃からインバネス・コートに憧れていたのだ。日本じゃトンビという愛称で昔、男性の間で使われていたマントのようなコートです。」「冬になると俗にトンビと呼ばれていたインバネスに身を包んで......」等々の如く記載されている。

上記甲号各証及び参考資料によれば、とんび、インバネス、二重廻し等の各用語の定義、相互の商品の関係は必ずしも一定したものとはいえないが、「とんび」と称される外套は、「男子が用いる羅紗等の羊毛織物製の防寒防雨用の外套」を指称していたものであり、「鳶合羽」とも呼ばれていたものであって、幕末にヨーロッパからもたらされ、明治3年頃から用いられ始めて大流行したが、明治20年頃には廃れ、「二重廻し」と呼ばれる外套に変化していったものであること、また、インバネスと称される外套は、「スコットランド北部の都市名インバネスに由来する袖なし・ケープ付き・膝丈の男子用外套」を指称していたものであり、わが国では、明治20年ごろから昭和初期に流行したものであり、インバネスそのもの或いはインバネスを和装用に改良した外套を「二重廻し」とも呼び、その形態から「とんび」とも呼ばれていたものであると理解し得るところである。

そしてまた、甲第5号証には「落語家の人達がよく着用していますよね。暖かく、それでいてお洒落。レトロ・ファッションの粋の良さをご覧下さい」と記載されており、参考資料の中にも「あまり着る人がいない、ちょっとレトロなファッションが好きなんで、大学時代は古着屋で見つけたインバネスとか着ていました。別名とんびともいう......」「トンビ(インバネス)が買えるお店 大阪日本橋近くの五階百貨店の古着屋街、東京浅草の男物専門店、東京銀座の呉服屋、東京神田の仕立て専門店、Yahooオークション」と記載されている。このような記載からみれば、今日においては、「とんび」あるいは「インバネス」と呼ばれる外套(コート)の需要者の範囲、流通経路は、かなり限定的なものとみることができ、しかも、「とんび」の語は、この語単独で商品名を表すものとして使用されているというよりは、むしろ、インバネスの語と併記して、あるいはインバネスの語の別称的な語として用いられているとみるのが相当である。

そうとすれば、「とんび」の語は、本件商標についての拒絶査定に対する不服審判の審決時において、外套(コート)の一種(鳶合羽、インバネスあるいは二重廻し)を表すものであったことを否定するものではないが、広義における被服の中では、むしろ、特殊な商品の部類に属するものというべきであるから、一般的な需要者の間においては、「とんび」と称する外套の認識度は決して高いものということはできない。加えて、甲第10号証(広辞苑)にもあるように、「とんび」の語は、一義的には、鳥の「鳶」を表すものとして理解・認識されているものであるから、「とんび」の語から、直ちに外套(コート)を想起・認識させるというのは困難なことというべきである。

してみれば、「とんび」と称される商品が他の類似商品との関係において、商品の品質の誤認を生じるおそれのある範囲も自ずから限定されたものになるといわざるを得ない。

これを本件商標の指定商品との関係についてみるに、本件商標は、前記のとおり、「被服(礼服、背広服、コート、和服、たび、手袋(ゴム手袋、絶縁用ゴム手袋を含む。)、えりまき、マフラー、スカーフ、ネッカチーフ、ショールを除く。)、布製身回品(ふくさを除く。)」を指定商品とするものであるから、商標法施行規則別表の例示商品に照らしてみれば、その指定商品の「被服」の概念に含まれている商品は、例えば「学生服、作業服、ずぼん、イブニングドレス、スーツ、スカート、子供服」等である。これらの商品は、「とんび」と称される外套とは、用途を異にし、主たる需要者を異にし、明らかに商品の形態も異にするものであるから、本件商標をその指定商品について使用しても、上記のような実情のもとにおいては、もはや、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないものとみるのが相当である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものでないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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