結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2003−35109(T2003−35109/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4126269号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、平成8年4月11日に登録出願、第29類「食用油脂」を指定商品として、平成10年3月20日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判費用は被請求人の負担とするとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求の利益について
請求人はいずれもブラジル連邦共和国の法律に基づく非政府非営利組織法人であり、それぞれに本件商標を無効にすることについて利益を有する。
(2)無効とすべき理由
本件商標は、クプアスの一般名称を片仮名と欧文字の両方で、ごく普通に書き表した標章からなり、指定商品「食用油脂」に用いられるものである。クプアスはアマゾンに生える植物及びその果実を指す一般名称であり、この果実に含まれる種子から上質のバター、食用油脂が取れることはよく知られている。
したがって、上記指定商品「食用油脂」のうち、実際にクプアスの種子から得られたものに用いられる場合には、まさに商標法第3条1項3号に規定される「その商標の...原材料...を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に他ならない。一方、もし上記指定商品「食用油脂」のうち実際にクプアスの種子から得られたのではないものに本件商標を用いれば、消費者の間にクプアスから得られた上質の油脂であるとの品質の誤認を生じることは疑いがない。すなわち、そのような場合には、本件商標は、商標法第4条1項16号に規定の「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」に該当する。
したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項3号又は同第4条第1項16号の規定に違反してなされた商標登録であり、商標法第46条第1項第1号の規定に基づいて無効とされるべきである。
被請求人は、本件請求は棄却されるべきであると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
(1)被請求人は、かねてアマゾン流域熱帯雨林の野放図な焼畑農業による深刻な荒廃喪失に従来から関心を持ち、いわゆるアグロフォレストリーによる熱帯雨林の回復に多大な興味を抱くに到った。請求人らが添付した証拠方法すべてについて被請求人は十分に知悉し、理解しており、その上で特にここ十年来は、家内工業的にチョコレート類似品などに使用される以外は、廃棄物扱いされ、何人からも顧みられることが無かったクプアス果実の種子を産業資源として有効利用することによって、現地日系ブラジル人の協力も得て熱帯雨林の回復に寄与することを企図し、鋭意研究開発に努めてきた。その結果世界で初めてクプアス種子由来の油脂を用いた、カフェインなど刺激性物質を全く含有しないチョコレート相当品の商業化に成功し、現実に4年前からアメリカ合衆国でまた昨年末から日本国内において販売を行い、何れも高品質のいわゆるオーギャニック製品として消費者から高い評価を受けており、近い将来ヨーロッパでの上市を計画中である。
(2)上記のように被請求人は、アマゾンの熱帯雨林のさらなる破壊と喪失を危惧して、クプアス種子の有効利用を世界に先駆けて企図しそして実行したものであるが、その過程で、敢えて本件商標登録出願を行った背景事情を以下に述べる。
開発目標である技術そのものが一定の革新性や先進性があったとしても、開発活動は、カネ、ヒト及びモノでの巨額の先行投資を必要としつつ、なおこれに加えて他者との競合、技術の有用性の維持(陳腐化)など多くの不確定で危険な要因を包含するものであり、一歩間違えば企業存続の基盤を損ないかねない危険な賭けである。クプアス開発計画について言えば、先行技術や特許調査を含む技術調査、商標調査、実験結果、試製・試作結果などに基く技術解析・評価など総合的な評価を、開発計画の進捗状況に応じて繰り返し実施して、その都度開発技術の原理、構成、機能、効果などを確認し、不確定な要因やリスクの排除を行い、迅速でかつ効率的な工業化を推進・企図したのである。
「クプアス」商標登録出願も、かかる技術開発推進計画の一環として行われたものであり、クプアス油脂由来チョコレートやチョコレート菓子の類似品の製造・販売を行う上で、「チョコレート」なる名称は、専らカカオに由来するものに限定されている事実及び一般消費者への訴求力はクプアスをおいていないとの結論に到り、「クプアス」が、ブラジルに固有の植物名であることを十二分に知悉しつつも、当該技術開発計画への巨額の投資を最低限担保・保護する目的で行ったものである。すなわち、万一第三者により商標として権利化された場合、かかる開発計画には重大な影響を及ぼし、巨額の投資を正当化出来る余地は全く無くなり、それまでの先行投資は灰じんに帰することは明らかである。最近になって(2000年8月25日出願)ドイツ在住の者が、ニース分類3、5及び29類において同一標章である「クプアス」をヨーロッパのCTMとして登録していることが判明している。このことは、第三者による同一商品群での登録によって当社のクプアスチョコレートの販売が阻害され、更には上記開発計画そのものが頓挫して、巨額の先行投資が無為に終わった危険性は大いにあり得たことを如実に示すものである。
(3)上記から明らかなように、被請求人の基本的理念は、真摯な研究開発技術集約企業として失われたアマゾンの熱帯雨林の回復に寄与・貢献することであって、今回の商標登録も、技術開発計画に対する巨額の先行投資をリスクを最低限回避しつつ科学的に妥当な信頼性のある量産技術の開発を推進・加速する目的のためにのみ依拠したものである。被請求人は、クプアス種子の商業的規模での有効利用を実現した世界中で最初にして、かつ唯一の企業であるが、今後もアマゾンのアグロフォレストリーとの協調なくしてかかる事業の継続は不可能であり、いたずらに商標権に拘泥するつもりはまったく無く、真にアマゾンの熱帯雨林の回復・再建について被請求人と同等の関心を共有する限りブラジルはもとより世界中の個人及び団体の如何を問わず何時でも無条件で当該商標権の取り扱いについて話し合う用意があること、及び本件審判については、特許庁の審決に従うことを付言する。
本件審判を請求する利益については、当事者間に争いがないので、本案に入って判断する。
甲第2号証の1ないし甲第9号証によれば、クプアスは、高さ、3〜8メートル(野生では15〜20メートルに達するが栽培すると8メートルよりも低い。)に達する小、中木であって、中南米原産でアマゾン地方に多く、ブラジルではリオデジャネイロ以北の州に栽培され、その果実の果肉は芳香があり、ジュースの原料などとして利用され、また、その果実に含まれる種子は油脂(植物性バター)を含有し、カカオ豆の代用品としてチョコレートの原材料として用いられ、石鹸の原材料としても利用できること、及び、クプアスに関する前記の事柄は、本件商標の登録出願につき登録査定がされた平成10年1月6日において既に知られていたものと認めることができる。
そして、「クプアス」という文字表記は、クプアスの種子から採取した油脂を原材料に使用していることを表示するために、必要不可欠な他に代替できるものがない表記というべきであり、何人も使用を欲するものであるから、一私人に独占的に使用させることは妥当ではない。
被請求人は、本件商標の登録出願を行った背景事情を説明するが、上記の判断を左右するものでない。
また、本件商標は、「クプアス」の片仮名の下に欧文字が表されているところ、これは、クプアスを意味する語を欧文字で表記したものであることが、甲第2号証の1、甲第4号証の2により認められる。
そうすると、本件商標は、その指定商品である「食用油脂」のうち、クプアス(クプアスの種子)を原材料に製造されたものに使用する場合、その商品の原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわなければならない。
また、本件商標は、クプアスを原材料に製造されたもの以外の食用油脂に使用した場合、クプアスを原材料に製造された食用油脂であるかのように商品の品質の誤認を生ずるおそれがあることは明らかといえる。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。