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Trademark Appeal Case

化学品と薬剤の区分

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2002−31240(T2002−31240/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第268429号商標の指定商品中、第1類「化学品」については、その登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標登録の取消しの審判

1 本件商標

本件商標登録の取消しの審判に係る、登録第268429号商標(以下「本件商標」という。)は、「METILON」の欧文字を上段に、「メチロン」の片仮名文字を下段に、それぞれ横書きしてなり、第1類「化学品、薬剤及医療補助品、但シ月経帯、妊娠帯、膏薬、軟膏、硬膏、擦剤、絆創膏ヲ除ク」を指定商品として、昭和9年5月23日に登録出願され、同10年9月10日に設定登録、その後、4回に亘り商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

2 本件商標登録の取消しの審判

本件商標登録の取消しの審判は、商標法50条1項により、本件商標の指定商品中「化学品」について、登録の取り消しを請求するものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、その指定商品中「化学品」について、継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから商標法50条1項の規定により取り消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁

(1)被請求人は、本件商標をその通常使用権者である「第一ファインケミカル株式会社」(以下、「本件通常使用権者」という。)が、「化学品」の範疇に属する商品「スルピリン」に使用していると主張している。

しかしながら、本件通常使用権者が本件商標を使用しているのは、「薬剤」であって「化学品」ではない。

(2)特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説」の第5類の「薬剤」の「解釈」の欄には「物質そのものとしては、第1類に属する化学品......と同じものであっても、薬事法の規定に基づく日本薬局方の規格に適合し、かつ医薬品として取引される場合はこの概念に属する(甲第1号証)。」との記載がある。

これにつき、被請求人も認めるとおり、本件商標の使用に係る商品「スルピリン」とは......化学品で、1910年頃に合成され、1912年に解熱薬としてバイエル社から発売され、現在は解熱鎮痛薬の製造の用に供されているものであり、日本薬局方に収載されているものである(答弁書第3頁第7行以下)。

(3)被請求人の主張によれば、本件商標の使用に係る商品「スルピリン」は、本件通常使用権者が製造し、10kg入り、40kg入り、50kg入りの容器に入れ,商標権者を含め東洋ファルマー株式会社、丸石製薬株式会社等の製薬メーカーに納入しているものである。

乙第5号証ないし乙第7号証を参照すると、本件通常使用権者は、これら「スルピリン」の容器に「劇・日本薬局方・スルピリン・メチロン」と赤字で大きく表示したラベルを付していることがわかる。

これから、容器の中身が日本薬局方の規格に適合した劇薬であることを表示しているものであるから、本件通常使用権者はこれを医薬品として取引しているものと理解することが出来る。事実、被請求人の製品要覧(乙第2号証)によれば、解熱鎮痛消炎剤であり商品名「メチロン」は、含量98.5%以上のスルピリンであり、日本薬局方の規格に適合した劇薬であることが確認できる。

(4)以上の事実を統合すれば、本件商標が使用されているのは、薬剤であるスルピリンであることが認められるが、被請求人提出の全証拠によっても、本件商標が「化学品」に使用されていることは認められない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第25号証を提出した。

1 答弁の理由1

(1)本件商標は、その指定商品中の化学品に包含される「スルピリン」について、本件通常使用権者である「第一ファインケミカル株式会社」によって、本件審判の請求の登録前3年以内に使用されているものである(乙第1号証及び同第2号証)。

(ア)本件商標の使用に係る商品「スルピリン」とは、アンチピリンより4−メチルアミノアンチピリンを合成し、オキシメタンスルホン酸ナトリウムを作用させて製造される化学品で、1910年頃に合成され、1912年に解熱薬としてバイエル社から発売され、現在は解熱鎮痛薬の製造の用に供されているものであり、日本薬局方に収載されているものである(乙第3号証及び同第4号証)。

(イ)本件商標の使用に係る商品「スルピリン」は、本件通常使用権者が製造し、10kg入り、40kg入り、50kg入りの容器に入れ、商標権者を含め東洋ファルマー株式会社、丸石製薬株式会社等の製薬メーカーに納入しているものである(乙第5号証ないし同第8号証)。

(ウ)本件通常使用権者から「スルピリン」を購入した製薬メーカーは、これを注射薬、座薬等に製剤し、薬剤として販売しているものである(乙第9号証及び同第10号証)。

(エ)本件通常使用権者が製造し製薬メーカーに納入している商品「スルピリン」は、解熱鎮痛薬の製造の用に供されるものであるとしても、その商品「スルピリン」そのものは、商標法上の薬剤に相当するものでなく、化学品に属する商品というべきものである(乙第11号証ないし同第15号証)。

(オ)本件通常使用権者の製造する「スルピリン」の容器には「メチロン」の商標が付されている。

本件商標は、「METILON」の欧文字と「メチロン」の片仮名文字よりなるところ、欧文字と片仮名文字とは同一の称呼であって、相互に変更して使用しても、観念の変更のないものであることからすれば、社会通念上同一というべきである。

(2)以上述べたとおり、本件商標は、本件通常使用権者によって、本件商標と社会通念上同一の構成態様で、その指定商品中の化学品に属する商品である「スルピリン」について、本件審判の請求の登録前3年以内に使用されていたというべきである。

2 答弁の理由2

(1)被請求人は、本件商標は「化学品」中の「スルピリン」に使用しているものであり、請求人の「『スルピリン』は、解熱鎮痛剤であって、日本薬局方の規定に適合した劇薬、薬剤であり、本件商標が『化学品』に使用されているとは認められない。」旨の弁駁は、化学品及び医薬品の取引における実情、実態、認識を無視したものである。

化学品であっても「アンモニア水・カプトプリル・酢酸・ホウ酸・ファモチジン」のように医薬品の原薬となるものが、日本薬局方に収載されている例は多々ある(乙第17号証ないし同第24号証)。

すなわち、日本薬局方は、化学品であっても、医薬品の原薬となるものについては、人の生命、健康に直接関わる医薬品の品質の保持のため、その規格を定めていると解されるものである。

そして、これらの商品は、そのまま医薬品として医療の用に供されるものでなく、これを原材料として錠剤、注射液等に製剤され医薬品(薬剤)として販売されるものである。

そうしてみると、日本薬局方に収載された化学品は、化学品であるのと同時に医薬品にも相当するという二面性を持つ商品であるといい得るところである。

これを本件商標の使用に係る商品「スルピリン」についてみると、有機化合物辞典に掲載されている化学品であるが、日本薬局方に収載されていることから、薬事法上は「繁用される原薬たる医薬品(化学物質)」に相当するというように、二面性を持つ商品といい得るところである。

(2)してみれば、商品「スルピリン」は、日本薬局方に収載された医薬品であると同時に化学品でもあるという二面性を持つ商品であるから、それに使用されている本件商標は、医薬品について使用されていると同時に化学品にも使用されているといい得るものである。

したがって、本件商標は、その指定商品中の化学品に包含される商品である「スルピリン」について使用されているというべきものである。

第4 当審の判断

被請求人(商標権者)は、本件商標は、本件取消し審判の予告登録前3年以内に、本件通常使用権者である「第一ファインケミカル株式会社」によって、その指定商品中の商品「化学品」の範疇に属する商品「スルピリン」に使用されている旨主張し、それを証する書面として乙第1号証ないし乙第25号証を提出した。

そこで以下、本件商標が取消対象に係る「化学品」の範疇に属する商品に使用されているか否かについて検討する。

1 乙第1号証4葉目には、被請求人が本件通常使用権者と主張する「第一ファインケミカル株式会社」(この点については請求人も争ってはおらず、これに反する証拠もないから、「第一ファインケミカル株式会社」は、本件商標の通常使用権者であると認められる。)の主な取扱商品が掲載され、その「医薬品原料」の欄「6」に製品名「メチロン」、成分名「スルピリン」、用途「解熱剤」との掲載が認められる。

しかしながら、この「医薬品原料」なる表示をもって、これが「化学品」と同義語であるとはにわかに認め難く、この乙号証をもってしては、商標「メチロン」が取消対象に係る商品「化学品」に使用されているとすることはできない。

2 乙第2号証は本件通常使用権者の製品要覧であるところ、その4頁には、「医薬品原料」として、商品名「解熱消炎鎮痛剤」、商標「メチロン」が記載され、成分・性状が説明されている。

しかしながら、この、乙第2号証の製品要覧全体、とりわけ、「目次」の「医薬品原料」にある「分類」欄の記載をみるに、これらは医薬品の名称とみられる表示がほとんどであり、このことからすれば、この製品要覧における「医薬品原料」なる表示が「化学品」を指す表示とは認め難く、この乙号証をもってしては、商標「メチロン」が取消対象に係る商品「化学品」に使用されていると認めることはできない。

3 乙第3号証の「化学大事典」及び同第4号証の「有機化合物辞典」には、それぞれ、「スルピリン」が掲載されているところであるが、その用途については「解熱鎮痛薬」、「解熱,鎮痛剤」とあり、これが日本薬局方指定のものである旨の表示も認められるところである。

しかるところ、日本薬局方は、薬事法41条により、医薬品の性状及び品質の適正をはかるため、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて定めた医薬品の規格基準であって、また、これら乙第3号証及び同第4号証の辞典に記載されている他の名称のものについても用途が薬剤と解されるものもある(「スルファグアニジン」「スルファジアジン」(乙第3号証)、「スルチアム」「スルファジアジン」(乙第4号証))ことから、これらの各辞典には、医薬品も掲載されているとみることができ、ここに掲載されている商品が、即「化学品」であると認めることはできない。

そして、上記の各辞典に「スルピリン」が掲載されていることと、それが、商標法上の商品である「化学品」として取り引きされているか否かは別の問題であり、乙第3号証及び同第4号証をもってしては、「スルピリン」が商標法上の商品としての「化学品」であると、直ちに認めることはできない。

4 乙第5号証ないし同第7号証に示された「スルピリン」の容器の包装箱の写真によれば、そこにはラベルが付されており、このラベルは、当該各乙号証に添付されているところ、ここには、赤い矩形の枠内に、赤字で、「劇」、「日本薬局方」、「スルピリン」、「メチロン」との文字が表示されていることが認められる。

しかして、薬事法44条2項には「劇性が強いものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品(以下「劇薬」という。)は、その直接の容器又は直接の被包に、白地に赤枠、赤字をもつて、その品名及び『劇』の文字が記載されていなければならない。」と規定されていることから、これらのラベルにおける、上記の各表示は、薬事法のこの条項にしたがったものというべきであって、取引者・需要者も該商品が薬事法に基づく医薬品であると認識するとみるのが相当である。

そして、乙第8号証の取引書類によっても、乙第5号証ないし同第7号証の商品が「化学品」として取り引きされたとみるべき記載は見当たらない。

5 また、乙第5号証ないし同第7号証の商品が、それぞれ、「10Kg」、「40Kg」、「50Kg」という量の取引であるとしても、乙第2号証の本件通常使用権者の製品要覧によれば、本件使用商品「スルピリン」は、含量98.5%以上とされていることから、「スルピリン」として完成されたものであり、当該商品を購入した、商標権者、東洋ファルマー株式会社、丸石製薬株式会社等の会社が、薬剤としては未完成の「化学品」である「スルピリン」を購入し、これを医薬品としての治療目的に応じて調合・成型して、薬剤としての「スルピリン」を製剤するとみるよりも、原薬である「薬剤」としての「スルピリン」を、乙第5号証ないし同第7号証のような容器入りの状態で購入し、これを注射剤用、座剤用等の容器に詰めて販売しているとみるのが自然であり、当該商品が大きな容器で大量に取り扱われていることをもって、本件「スルピリン」が「化学品」として取り引きされたとすることはできない。

6 乙第19号証ないし同第24号証によれば、「アンモニア水、カプトプリル、酢酸、ホウ酸、ファモチジン」のように医薬品の原薬となるものが、日本薬局方に収載されていることが認められるが、このことをもって、本件使用商品「スルピリン」が「化学品」であるとすべき理由はない。

7 被請求人は、「日本薬局方に収載された化学品は、化学品であるのと同時に医薬品にも相当するという二面性を持つ商品である。」、「本件使用商品『スルピリン』は、有機化合物辞典に掲載されている化学品であるが、日本薬局方に収載されていることから、薬事法上は『繁用される原薬たる医薬品(化学物質)』に相当するというように、二面性を持つ商品といい得るところである。」などと主張している。

この被請求人の主張によれば、商標法施行令1条に基づく商品の区分(昭和35年3月8日昭和35年政令第19号をもって改正された、本件商標登録出願時のもの。)第1類に属する商品「薬剤」のほとんど全てのものが、広義の「化学品」であることから、これらは、「薬剤」であると同時に「化学品」でもあるといい得ることになるが、同施行令1条は、広義の「化学品」のなかでも、薬事法の規定に基づいて、日本薬局方に収められ、人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの等を、「化学品」とは異なる「薬剤」という概念の商品として峻別しているところであり、上記の被請求人の主張は、商標法施行令第1条に基づく商品の区分の規定ぶりとは、整合しないものである。

そもそも、ある商品が、商標法上「薬剤」であり、かつ「化学品」としての側面も有するものであるか否かは、その商品の品質、原材料、用途、機能のほかに、その商品に付されている表示、生産者の実体、取引・流通経路の実体、法令の規定、取引者・需要者の認識の程度等を総合的に考察して、判断するのが相当というべきである。

しかるところ、被請求人が提出した各乙号証に照らしてみても、本件使用商品「スルピリン」が、「薬剤」として取り引きされていることは認定できるものの、「化学品」として取り引きされ、あるいは、そのように認識されるという実情が存すると認めることはできない。

また、薬事法には、「繁用される原薬たる医薬品」が「化学物質に相当する」との規定はないから、「『スルピリン』は、.........化学品であるが、.........薬事法上は『.........医薬品(化学物質)』に相当する。」との被請求人の主張は正確さを欠くものであり、妥当ではない。

以上によれば、本件使用商品「スルピリン」は、「医薬品」であるが、「化学品」でもある二面性を持つ商品である旨の被請求人の主張は採用することができない。

8 そして、ほかに、本件使用商品「スルピリン」が、「化学品」であるとすべき根拠及び証拠はない。

そうとすれば、本件通常使用権者は、本件商標をその指定商品中の「薬剤」に使用している事実は認め得るとしても、本件取消審判請求に係る商品「化学品」に使用している事実は認められないというべきである。

9 してみれば、被請求人は、本件商標を本件取消請求に係る商品「化学品」に本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において使用していたことを証明したということができない。

また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。

したがって、本件商標は、その指定商品中の「化学品」についての登録は、商標法50条の規定により、取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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