Trademark Appeal Case
著名商標と付加語の類似性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2003−90207(T2003−90207/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第4636222号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成14年2月20日登録出願、第3類「化粧品」を指定商品として、同15年1月17日に設定登録されたものである。
第2 取消理由の通知(要旨)
1 甲第10ないし39号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)登録異議申立人ラッシュ リミテッド(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録出願日(平成14年(2002年)2月20日)前である1994年に、英国ロンドンの南西にあるプール市において、第1号店を開店した自然派の化粧品を製造・販売する会社であり、その業務に係る商品には、開店以来継続して、「LUSH」の文字からなる商標(以下「引用商標」という。)を使用していたこと。
(2)我が国においては、平成11年(1999年)4月、自由が丘に日本第1号店を開店したところ、申立人の取扱いに係る「化粧品」は、ハーブ、果物、野菜などを原材料に使用し、食べ物と同じ発想で手造りするという今までになかった製品であり、鮮度や安全性を重要視する観点から、その製品には、製造年月日と使用期限、製造者が明記されており、また、その販売方法も、果物の形をした入浴剤などが果物売場のように並べられていたり、量り売りの形態をとっていたことなどから、従来の化粧品とは、全く異なるユニークなコンセプトに基いて製造され、販売された商品として、若い女性を中心にその需要者の目に止まり、本件商標の登録出願日前及び登録査定時を通して各種新聞、雑誌などにしばしば紹介されたこと。
そして、このような状況のもとに、申立人の日本における事業展開も、本件商標の登録出願日前までに吉祥寺、新宿の伊勢丹内及び東京ディズニーランド内に出店し(甲第19号証)、また、本件商標の登録査定時までには、13店舗を出店するまでに至っていた(甲第36号証)こと。
2 前記1で認定した事実を総合すると、引用商標は、申立人の業務に係る「化粧品」を表示する商標として、本件商標の登録出願日においては既に、我が国における取引者・需要者の間において広く知られていたものと認めることができ、その著名性は登録査定時においても継続していたものということができる。
3 本件商標は、別掲のとおり、「ラッシュプラス」の片仮名文字と「LUSH PLUS」の欧文字とを二段に横書きした構成からなり、「化粧品」について使用されるものである。
そして、本件商標中の「プラス/PLUS」の文字部分は、「加える」等を意味するありふれた一般的な日常語であり、「既存の商品に新たな成分などを加えたもの」等の意味を表すために、従来の商標に形容詞的に付加して使用されることもしばしば見受けられるところであるから、強い識別標識としての機能があるものとは認め難いところである。
4 本件商標は、その構成中に、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「ラッシュ/LUSH」の文字を含むものであるから、商標権者が本件商標をその指定商品について使用するときは、これに接する取引者・需要者は、前半部の「ラッシュ/LUSH」の文字より、申立人が化粧品に使用して広く知られている引用商標を連想、想起し、該商品が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。
第3 商標権者の意見(要旨)
1 引用商標「LUSH」の著名性について
(1)申立人の業務に係る「化粧品」は、ユニークなコンセプトに基づいて製造されているが、本件商標の登録出願時以前に、需要者の目に止まっていたとはいえない。すなわち、本件商標の登録出願前の証拠(甲第10ないし20号証)によれば、2000年の1年間で申立人の製品が記事に取り上げられたのは5件であり、2001年の1年間では6件であって、この数字は、一般消費者を対象としている化粧品の分野において、メディアに取り上げられる件数としては、少ないといえる。
(2)化粧品業界で4,949社をサンプルとして行った決算項目集計によると、2002年の1社あたりの平均売上高は約61億円という結果が出ている。そうすると、引用商標を付した商品の日本における販売額が、2000年度は約1億7千万円、2001年度は約4億円というのは、日本の化粧品市場全体からみていかに少なく、引用商標は需要者に浸透していない。
(3)申立人が本件商標の登録出願日前に首都圏で4店舗を営んでいたとしても、首都圏内で、デパート、ショッピングモールへの出店を含めて4店舗を営業する化粧品業者は多数存在し、かつ、決して多い店舗数でもない。
また、甲第10ないし20号証のうち、いわゆる三大紙といわれる新聞の記事は甲第13号証のみであり、その他の新聞・雑誌はさほど発行部数が多いものとも思われず、また、反復継続して記事に取り上げられている訳でもない。
なお、取消理由中の「東京ディズニーランド内に出店」は、正しくは、東京ディズニーランドに併設されたショッピングモール「イクスピアリ」への出店であり、その客数は、東京ディズニーランドの入場者数に比べればかなり少ないことから、東京ディズニーランドへの出店よりも広告・宣伝の機能において影響が小さい。
(4)引用商標は、欧文字で「LUSH」と表記されて、自他商品の識別力を発揮するものである。すなわち、片仮名で「ラッシュ」と表示した場合、「lush」の他、「lash」、「rush」等の語が想起され、特に、「lash」は、「まつげ」を意味し(乙第1号証)、化粧品の分野では自他商品の識別力がない。また、化粧品の分野では「ラッシュ」、「lash」を含む商標が多数登録されており、さらに、「rush」は、著名なグッチが販売する香水の商標である(乙第2ないし4号証)。
したがって、片仮名で「ラッシュ」と表示されている証拠(甲第11、15、23、26、27、29、31、34、36、40、44、49、51号証)は、引用商標の著名性の判断基準になり得ない。
(5)申立人の商品は、自然派化粧品ということであり、健康や安全性を重視する特定の限られた需要者層が対象となっている可能性が高い。また、その販売方法も、申立人の商品のみを取り扱う店舗、百貨店等のコーナーであって、一般の小売店ではなく、通信販売においても、申立人の日本法人へ直接購入を申し込む形式がとられている。これに対し、商標権者の商品は、一般的な化粧品の需要者を対象としており、商標権者の関連会社であるソニープラザ等の小売店で販売されている。
このような需要者及び流通ルートの違いを考慮すると、両商標を使用した商品との間で出所の混同が生じる蓋然性は低いといえる。
(6)以上のように、引用商標は、本件商標の登録出願時(2002年2月20日)において、化粧品の需要者・取引者の間で周知・著名となっていなかったというべきである。
2 本件商標から引用商標を想起するか否か
(1)取消理由は、本件商標中「プラス/PLUS」の文字部分には、強い識別標識としての機能があるものとは認め難い、としている。
しかし、「プラス/PLUS」の語は、商品「せっけん類、化粧品」について登録例があり(乙第5ないし7号証)、自他商品の識別力がある。
確かに、「PLUS」の語は、「加える」等を意味し、「既存の商品に新たな成分などを加えたもの」等の意味を表す場合もあるが、他の語と密接不可分に結合し、新たな造語を作り出す場合も多い。登録例(乙第8ないし15号証)における「プラス/PLUS」の語は、「○○プラス」の「○○」(成分等)を加えるというような意味で用いられており、それぞれ造語を構成している。
さらに、「SYSTEMPLUS」と「SYSTEM/システム」とは併存して登録されている(乙第8、16号証)。
(2)本件商標は、商品「マスカラ」に使用される商標で、「まつげを加え、まつげのボリュームをアップする」という意味合いで採択されたものである。
日本において「ラッシュ」といった場合には、「LASH」、「LUSH」、「RUSH」のいずれの意味なのかを明確に認識する需要者は極めて少ないと思われる。
その状況で、本件商標の「ラッシュプラス」という音から、「まつげを加える」という意味合いを想起する需要者はかなり多いと思われる。実際、「○○ラッシュ」、「ラッシュ○○」が、商品「マスカラ」について使用されている(乙第2、3号証)。
このように「LUSH」の語は、「LASH」と紛らわしく、また、「みずみずしい、水気の多い、おいしい、いい香りのする」等の意味を有する英語である(乙第17号証)から、一般的に用いられる語である。
したがって、本件商標は、全体から一連の「ラッシュプラス」の称呼のみ生じ、「まつげをボリュームアップする」の意味合いが連想されやすいのに対し、引用商標が周知・著名ではない上に、「LASH」を想起しやすいため、本件商標から申立人あるいはこれに関連する出所を連想することはあり得ない。
3 以上のとおり、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、その商品が申立人あるいは申立人と関係ある者の業務に係る商品であると認識されて出所についての混同が生じるおそれは全くない。
よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号には違反していない。
第4 当審の判断
1 本件商標は、前記第2(取消理由の通知)で認定したとおり、申立人の取扱いに係る商品「化粧品」等を表示するためのものとして、本件商標の登録出願前より登録査定時(平成14年(2002年)11月11日)に至るまで継続して、その需要者の間に広く認識されていた引用商標と同一の綴りである「LUSH」の文字及びその片仮名表記である「ラッシュ」の文字をその構成中に有するものであるから、本件商標をその指定商品について使用した場合は、その需要者をして、該商品が申立人若しくはこれと何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。
2 商標権者の意見について
(1)商標権者は、本件商標の登録出願前に、引用商標が新聞等に取り上げられた件数は少なく、また、甲第13号証(朝日新聞)以外の新聞等はさほど発行部数が多いものとも思われず、反復継続して記事に取り上げられたものではないから、引用商標の著名性は否定されるべきである旨主張する。
しかしながら、申立人が我が国において、平成11年(1999年)4月に第1号店を開店してから、本件商標の登録出願日である平成14年(2002年)2月20日のわずか約2年10ヶ月の間に、提出された証拠だけをみても、新聞・雑誌に取り上げられた回数は11回あり、しかも、いずれも異なった新聞・雑誌であることからすれば、その注目度の高いことが窺い知れるところである。
付言すれば、申立人が提出した新聞等の記事以外に、引用商標「LUSH」に関する新聞記事として、例えば、1999年12月17日付け朝日新聞(東京夕刊、6頁)、2000年8月21日付け山形新聞(朝刊、10頁)、2000年8月23日付け朝日新聞(東京地方版 多摩)、2000年12月25日付け朝日新聞(大阪夕刊、10頁)などがある。
(2)商標権者は、化粧品業者4,949社のサンプル調査をした決算項目集計では、2002年の1社あたりの平均売上高は約61億円であることからすると、引用商標を付した商品の日本における販売額が少ないから、引用商標は需要者に浸透していない旨主張する。
しかし、化粧品等は、極めて高価な商品から100円程度の廉価な商品が存在するばかりでなく、各企業において使用される商標は常に1つだけとは限らないことは取引の実際に照らして明らかであることからすれば、1社あたりの売上高が多いこととある商品に使用される商標の知名度が高いこととは必ずしも比例しないというのが相当である。
のみならず、商標権者の述べる化粧品業界における2002年の1社あたりの平均売上高が約61億円であることについては、その事実を裏付ける証拠は何ら提出されていない。
(3)商標権者は、申立人が本件商標の登録出願日前に首都圏で4店舗を営んでいたとしても、その店舗数は多いものではない旨主張する。
しかし、申立人は、平成11年(1999年)4月に第1号店を開店してからわずか約2年10ヶ月の間に、第1号店のほかに3店舗を拡張したものであり、しかもいずれの店舗も繁華な場所に位置するものである。加えて、申立人の取扱いに係る「化粧品」等は、過去になかった製造・販売方法を採用したものとして、その需要者の関心を集めたものであることを併せ考えると、引用商標は、本件商標の登録出願前より、需要者の間に広く認識されていたというべきである。
(4)商標権者は、引用商標は、「LUSH」と表示されて、自他商品の識別力を発揮するものであるから、甲各号証のうち、片仮名で「ラッシュ」と表示されている証拠は、引用商標の著名性の判断基準になり得ない旨主張する。
しかし、甲各号証のうち、本件商標の登録出願前に発行された甲第10ないし20号証に限ってみたとしても、「ラッシュ」と片仮名で表示されたものは、甲第11、15号証のみである。しかも、その表記方法も、「ラッシュ自由が丘店」とされているところから、例えば、「まつげ」を意味する「lash」と混同することは到底考えられないところである。のみならず、その記事内容から、商品の製造・販売方法等に特徴があるものとして、「ラッシュ」の表示は、本件商標の登録出願前より、読者の注意を惹いたものと窺い知ることができる。
したがって、「ラッシュ」の表示が引用商標の著名性の判断基準となり得ないとする商標権者の主張は採用することができない。
(5)商標権者は、引用商標が使用される商品は、自然派化粧品であるから、特定の限られた需要者層が対象となっているのに対し、本件商標が使用される商品は、一般的な化粧品の需要者を対象としているから、両商品は、需要者層が異なるばかりでなく、引用商標が使用される商品は、申立人の商品のみを取り扱う店舗等で販売されるのに対し、本件商標が使用される商品は、商標権者の関連会社であるソニープラザ等の小売店で販売されているから、販売方法においても異なる。よって、両商標を使用した商品との間で出所の混同が生じる蓋然性は低い旨主張する。
しかしながら、健康志向といわれる今日の我が国の国民の間において、食品や化粧品などの安全性に対する関心は、押し並べて高いといえるから、自然派化粧品といっても、限られた特定の需要者層だけが対象となるものではない。また、引用商標が使用される商品と本件商標を使用される商品とは、販売方法が異なるとしても、化粧品等の主たる需要者は、一般的な消費者であり、これら一般的な消費者が商品に接する場合、個々の商品についての販売ルート等について詮索することはまれであり、商品に表示された商標により、多数の商品の中から自己の求める商品を選択する場合が多いというのが相当である。
そして、引用商標は、本件商標の登録出願前より、その需要者の間に広く認識されている事情からすると、本件商標に接する需要者は、その構成中、引用商標と同一の綴りである「LUSH」及びその片仮名表記である「ラッシュ」の文字部分に着目し、印象付けられ、引用商標を想起、連想するというべきである。
したがって、本件商標は、これをその指定商品について使用した場合は、申立人の業務に係る商品との間に、商品に出所について混同を生じさせるおそれがあるといわなければならない。
(6)商標権者は、化粧品の分野における「プラス/PLUS」の登録例を挙げ、「プラス/PLUS」の語は、自他商品の識別力を有するものである旨主張する。
確かに、「プラス」、「PLUS」の登録例があり、それ相応に自他商品の識別機能を有していることは認め得るところであるが、一般的に、ある語に「プラス」又は「PLUS」の語を結合した場合の「プラス」又は「PLUS」は、単に「付加する」程度の意味を想起させるにすぎず、強い識別機能は有しないというべきである。そして、本件商標にあっては、その構成中に、申立人が使用し、本件商標の登録出願前より著名な「LUSH」と同一綴り文字及びその片仮名表にである「ラッシュ」の文字を有するものであるから、前記したとおり、本件商標に接する需要者は、「LUSH」、「ラッシュ」の各文字部分に印象付けられるといわなければならない。
(7)したがって、上記に関する商標権者の主張はいずれも理由がなく、他に前記1の認定を覆すに足る証拠の提出はない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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