Trademark Appeal Case
Sロゴの類似性と周知性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2000−90986(T2000−90986/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録異議の申立てに係る商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成よりなり、1999年(平成11年)2月25日にアメリカ合衆国においてした商標出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、同年7月28日に登録出願し、第25類「帽子,その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同12年6月16日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
(1)本件の登録異議申立人「スケッチャーズ・ユーエスエー・インコーポレーテッド」(以下「申立人」という。)は、「SCKECHERS」の商号商標で有名な、米国で人気の運動靴、トレーナー等の被服類の総合的な製造・販売業者である。そして、申立人は、自己の商号商標の頭文字に由来する「S」を表象するロゴマークを社標(甲第2号証の意見広告に表されている商標。別掲5参照。)として使用してきており、我が国でも複数の商標登録を得て(2)の項に挙げる本件異議申立てに引用した登録商標である。
特に、申立人が製造するスニーカー等の運動靴の類に関しては、世界的規模で需要を増やしており、我が国における総代理店(販売元)であるアキレス株式会社が新聞に掲載した模倣品対策のための意見広告(業界紙「Shoes Post」、掲載年月日2000年7月15日。甲第2号証)によると、(1)SCKECHERSが1992年にロスアンゼルスで生まれたブランドであること、(2)現在世界140カ国で売られていて、本年(平成12年)販売予定は2,700万足にのぼること、(3)アキレスが販売総代理店であること、(4)1999年9月から販売された人気商品が模倣対象となっている為の注意をうながすとなっている。この意見広告の日は本件商標登録の出願日より後ではあるが、このような意見広告が、業界で人気を博していない商品に対して行われるわけがない。
また、上記意見広告の上段の記事では、模倣品の横行に対する問題提起と注意喚起を行っていて、見出しに「スケッチャーズ、コンバースなど」とスケッチャーズの名称がコンバースより先に挙げられている。本物と類似品を挙げた商品比較もされていて、客観的事実として取り上げられるほど、申立人の商品が一般化し人気を博している事実が示唆される。しかも、商品比較の写真にこのSのロゴマークがはっきり写されている。
また、アキレス株式会社の1997年春−夏バージョンのカタログ(写)(1996年12月7日に印刷。甲第8号証)には、数多くの種類の履物類が示されて、そのカタログの上段にSのロゴマーク〔(2)の引用商標1〕)が示され、同商標が履物にも付けられている。
申立人は、世界中でSのロゴマーク及びそのバリエーションに関して商標登録を得て、適切な保護を図るべく努力している。米国の商標登録原簿(写)を甲第6号証及び同第7号証として提出する。
したがって、申立人の名称の頭文字Sに由来するSのロゴマークは、申立人を表す商標として、少なくても第25類に関連する商品の分野においては周知・著名なものである。
(2)申立人が引用する登録商標
申立人は、異議申立ての理由に引用している登録商標は以下のとおりである(以下、異議申立てに引用した登録商標を一括して「異議引用商標」という。)。
a)登録第3349741号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成とし、平成6年10月19日に登録出願し、第25類「履物,被服(但し、和服を除く),ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同9年10月3日に設定登録されたものである。
b)登録第4172638号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおりの構成とし、平成9年2月17日に登録出願し、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同10年7月31日に設定登録されたものである。
c)登録第4242597号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲4のとおりの構成とし、平成9年9月10日に登録出願し、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同11年2月19日に設定登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「S」のロゴマークである異議引用商標と外観において極めて類似する商標である。更に、それらの異議引用商標が、当業界では「スケッチャーズのS」という具合に認識される可能性が高いために、外観が近似する本件商標は、「スケッチャーズのS」として観念・呼称される可能性すら否定できない。したがって、観念・称呼においても近しいものと考えられる可能性もあると言えよう。
したがって、本件商標は、異議引用商標と外観において極めて近似し紛らわしく類似するものであり、同法第4条第1項第11号に該当するものである。
(4)商標法第4条第1項第10号について
申立人は、上述のとおり、「履物及びカジュアルウェア(被服)」等の製造・販売業者として米国でも広く知られており、その商号商標「SCKECHERS(スケッチャーズ)」及びその頭文字に由来する「S」のロゴマークからなる異議引用商標は、少なくても本件商標の登録出願時には当業界で広く知られていた。
そして、本件商標は、異議引用商標と、外観上類似する商標であり、その指定商品も「履物、運動特殊靴」等であるので、同法第4条第1項第10号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第15号について
申立人の名称の頭文字「S」に由来するロゴマークである異議引用商標は、少なくても第25類に関連する商品分野においては周知・著名のものであるから、引用商標の図形に近似した態様よりなる本件商標を、その指定商品に使用されたならば、当業者・需要者が商品の混同を引き起こす蓋然性が高い。 よって、本件商標は、同法第4条第1項第15号に該当する。
3 当審における取消理由の通知
本件商標の登録は、登録第3349741号商標(引用商標1)及び登録第4172638号商標(引用商標2)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
4 商標権者の意見
商標権者は、前項の取消理由に対し、申立人と本件の解決方法について交渉している旨述べていたことから、平成14年5月16日付審尋書によりその交渉状況の説明を求めたところ、商標権者から、前項の取消理由通知に鑑み、商標権者は、申立人と譲渡交渉をしているが、未だ返信を得ていないと回答し、更に、取消理由に対する意見として要旨以下のとおり述べている。
(取消理由に対する意見)
本件商標は、横長の長方形の黒地の背景の上に、横長の楕円を白抜きで描き、その中に上下方向につぶれた形の「s」を配した構成からなるものである。楕円の上下は細い線、「s」の右上の部分は鍵状になり、幾分右に傾いている。これに対し、引用商標1及び2は、楕円を描き、その中に「s」をほほブロック体で描いた構成からなるものである。
本件商標と引用商標1及び2とを外観上比較すると、まず、両商標の楕円の描き方が異なり、本件商標は上下の部分が細い線となっている。
つぎに、「s」については、引用商標1及び2はほほブロック体の「s」を表示するのに対し、本件商標は上下方向につぶれた形の 「s」を配した構成よりなり、「s」の右上の部分は鍵状になっており、いく分右に傾いている。
これらの差異によって、本件商標と引用商標1及び2とは区別できるというべきである。ちなみに、本件商標と同様に○の図形中に「s」を有した商標登録は、被服(旧第17類)に関連して、第648576号及び同第406926号と他にも並存して登録されている。これらの登録例からすれば、引用商標は強い商標ということはできないし、「s」を有する異なるデザインを有する本件商標の登録の障害になるというべきではない。これに関連し、本件商標は引用商標1及び2とは登録されるために十分異なっています。
なお、本件商標は図案化されており、特別な称呼(マルエス)は生じない。また、引用商標1及び2も特別な称呼(マルエス)は生じないと思料する(引用商標1及び2からマルエスの称呼が生じれば、登録第406926号により拒絶されているはずである)。
したがって、本件商標は、引用商標1及び2とは混同を生じるおそれのない非類似の商標である。
5 当審の判断
本件商標は、別掲1のとおり、黒く塗り潰した横長長方形の地に、その長方形の地よりやや小さめの楕円形を描き、その楕円形内に「S」の欧文字をやや太く、左右にやや延ばし、右上先端部分をやや内側に曲げて配した構成よりなる特徴のある図形商標とみられるものである。
これに対し、当審が本件商標の取消理由に引用した引用商標1は、横長楕円内にやや太く、横長に延ばして表してなる「S」の欧文字からなる図形商標といえるものであり、また、同引用商標2は、引用商標1と同様の構成態様の図形部分と、その左側に「IT’S THE」の欧文字とを配した構成よりなるものであるところ、その図形部分がその左に配されている欧文字部分よりも相当に大きく表されているものであり、またその欧文字「IT’S THE」も「これがその(図形部分のマーク)である。」の如き意味合いを感じ取らせ、図形部分を強調するような意味合いのものと理解されることからして、全体として、この商標の図形部分も独立して自他商品識別標識として機能し得るものとみられるものである。
そこで、本件商標と引用商標1及び2の図形部分とを対比し類否を検討するに、両商標とも、比較的簡素な構成であり、その基本構成をやや横長に書されている「S」の欧文字とその横長楕円形輪郭よりなるものであり、両商標に表されている「S」の欧文字は、いずれも通常に表される態様をあまり変更させた特異な態様、書体とはいい難いものであって、楕円形輪郭線に対し「S」の欧文字をやや太く書してなるところを共通にする構成上の軌を一にしているものであり、たとい、本件商標は、「S」の欧文字と楕円輪郭からなる部分を強調する意図をもってありふれて使用される方形状(横長長方形)の地の有無、楕円形輪郭線の上下部分と左右部分が若干線の太さや「S」の文字全体が右側にやや傾いた態様となっているのに対し、引用商標1及び2は、線の太さが均一であること、また「S」の欧文字の書体がすこし異なるとしても、取引者、需要者をして、上記両商標の共通する構成より印象を同じくし又は近似したものとして捉えることも決して少なくないものといえるので、これを時と処を異にして離隔的に観察するときは外観上彼此相紛らわしい類似するものとみるのが相当といえる。
してみれば、本件商標は、引用商標1及び2と、横長楕円形輪郭にやや横長の「S」の欧文字の共通した印象がもたれる、外観上類似するものであり、かつ、その指定商品についても、同一又は類似の商品と認められる。
なお、引用商標1の図形商標については、申立人提出の「1997年春−夏バージョンのカタログ(写)」(1996年12月7日印刷。甲第8号証)及び業界紙「Shoes Post」(2000年7月15日発行。甲第2号証)によると、申立人の商標として、本件商標の登録出願前からわが国においてもスニーカー等の靴に使用がされている事実があり、また登録出願後の2000年頃ではあるが、引用商標1に関する模倣品が多発している事情が窺えるところである。他方、商標権者は本件商標に関係する取引の実態において、本件商標と引用商標1及び2とが混同を生じるおそれのない非類似の商標として使用されている事情等について何ら主張し、立証していない。
また、商標権者は、本件商標と引用商標1及び2とは、その構成が十分異なっているものであり、また登録されている商標の例(2件)からしても、類似しないものである旨主張する。しかしながら、両商標は、上記で述べたとおり、その外観における印象を同じくし、離隔的に観察したときは、相紛らわしい類似する商標とみられるものといえる。
そして、商標の類否判断は、それぞれの商標の構成・態様等の事情を総合的に勘案し、事案ごとに個別、具体的に判断されるべきものであって、他の登録例の関係をもって判断の基準とするのは適切でない。よって、上記商標権者の主張は採用することができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ないので、同法第43条の3第2項により、その商標登録は取り消されるべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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