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Trademark Appeal Case

薬剤商標の称呼同一性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2003−35323(T2003−35323/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4619744号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4619744号商標(以下「本件商標」という。)は、「パラドン」の片仮名文字を標準文字とし、平成13年4月11日登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同14年11月15日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第4524056号商標(以下「引用商標」という。)は、「PALLADONE」の欧文字を標準文字とし、平成12年12月14日登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同13年11月22日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証(枝番を含む。)を提出した。

【請求の理由】

1 引用商標は、本件商標より先願に係る商標であり、その権利者は、本件商標の権利者と異なるものである。また、引用商標の指定商品と本件商標の指定商品は、いずれも「薬剤」である。

2(1)本件商標の称呼は、「パラドン」である。

(2)引用商標は、造語であって、その前半の「PALLA」の部分が「パラ」と称呼される。

また、後半の「DONE」の称呼ついては、薬剤の分野においては、例えば、(a)「methadone」(固有名詞)という薬剤について、「メタドン」又は「メサドン」と、(b)「chlorthalidone」(固有名詞)という薬剤について、「クロルタリドン」と、(c)「furazolidone」(固有名詞)という薬剤について、「フラゾリドン」と、(d)primidone」(固有名詞)という薬剤について、「プリミドン」と、(e)「trazodone」(固有名詞)という薬剤について、「トラゾドン」と、それぞれ称呼している事実がある(甲第3号証)。

さらに、「薬剤」を指定商品とする登録例においても、(a)「ナイリドン/NYRIDONE」、(b)「CEFATOLIDONE/セファトリドン」、(c)「エレミドン/ELEMIDONE」、(d)「ルラシドン/LURASIDONE」が、それぞれ登録されている事実がある(甲第4号証ないし甲第7号証)。

したがって、引用商標中の「DONE」は「ドン」と称呼されから、引用商標は、「パラドン」の称呼が生じる。

(3)前記(1)及び(2)からして、本件商標と引用商標は、称呼上同一の商標である。

3 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項により、その登録を無効とされるべきものである。

【答弁に対する弁駁】

1 答弁1(1)について

薬剤の分野においては、「DONE」を「ドン」と発音する薬剤の固有名詞が数多く存在しており、かつ、「DONE」を「ドン」と発音する登録商標も複数存在しているから、引用商標中の「DONE」は、「ドン」と発音され得るものである。なお、特許庁の称呼検索は、「(参考情報)」とあるように、あくまでも一応の「参考情報」である。

2 答弁1(2)について

欧文字が発音される場合には、「母音」又は「子音プラス母音」をまとまった一音として発音するのが通常であって、引用商標を、「PALL」と「ADONE」に、又は「PALLAD」と「ONE」に区切って発音するのは、およそ異常な区切り方の発音方法であり、ほとんどあり得ないものであることは経験則上明らかである。

3 答弁1(3)について

引用商標中の「PALLA」が「パラ」と称呼されることは、引用商標の商標公報中に「称呼(参考情報)パラドーネ、パラダン」とある(甲第2号証の1)ことから明らかな事実である。

4 答弁1(4)について

引用商標の指定商品及び本件商標の指定商品は、「薬剤」であり、引用商標がいかに称呼されるかは、薬剤の取引者・需要者の観点に立って判断されるべきである(甲第3号証)。また、欧文字と片仮名文字が二段になっている商標は、取引市場においても、二段併記として使用する例も数多く存在しており、片仮名文字は、欧文字の読み方を示している。

5 答弁1(5)について

なるほど、「DONE」は「ダーン」、「ダン」、「ドーネ」などとも発音されるが、薬剤の取引者・需要者の観点に立って、引用商標を判断すれば、「DONE」は「ドン」と発音され得るものであることは明らかである。

6 答弁1(6)について

特許庁の審査では、「パラドン」の称呼と「ピラドン」の称呼とは、非類似との判断がなされている。

すなわち、先登録の「PIRADON/ピラドン」が存在するにもかかわらず、「パラドン」が登録され事実(甲第8号証)、本件商標が登録されている事実、請求人が出願した商標「パラドン」(商願2002−85738)は、本件商標のみが引用され、拒絶理由通知を受けている事実(甲第9号証の1及び2)があることから、「パラドン」の称呼と「パラノン」の称呼とは非類似である。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。

1 引用商標の称呼について

請求人は、引用商標から「パラドン」の称呼が生ずる旨主張するが、その主張は誤りである。

(1)通常の日本人であれば、特許庁の称呼検索のように、「パラダン」、「パラドーネ」と発音するのが普通である。

(2)請求人は、前半を「PALLA」、後半を「DONE」と分断しているがそのように分断する根拠がない。前半が「PALL」、後半が「ADONE」ともいえるから、そうすれば、「パルアドーネ」との称呼が生じる。

また、前半が「PALLAD」、後半が「ONE」であれば、「パラドワン」との称呼が生じる。

(3)請求人は、「PALLA」の称呼を「パラ」と決めつけているが、その証拠を何ら提出していない。

したがって、仮に「DONE」を「ドン」と発音するにしても、「パルアドン」、「パリアドン」、「ペラドン」との称呼も生じる。

(4)請求人は、甲第3号証として、難解な薬剤の固有名詞を列挙しているが、登録商標の称呼とは何ら関係がない。

また、特許庁の登録例においても、わざわざ2段書で「読み方」を表示しているのであり、「読み方」のないものは、通常の日本人の読み方をされるのである。

逆に「DONE」に「ダン」、「ドーネ」と「読み方」を表示する登録商標も以下のようにある。

(a)「スメルダン/SMELL−DONE」(b)「Saladone/サラドーネ」(乙第1号証及び乙第2号証)

(5)日本人にとって「DONE」は、「DO」の過去形、過去分子形であり、「ドゥー」、「ダーン」、「ダーン」と覚えるもので、「DONE」を「ダーン」と発音することは中学生であれば知っている。加えて、日本人に馴染深い英語として、ステーキの焼具合を示す「WELLDONE/ウエルダン」がある。これもまた、中学生であれば知っている。要するに、「ドン」は「DON」であり、「DONE」は「ダーン」、「ダン」、「ドーネ」である。

(6)引用商標の先登録に、「PIRADON/ピラドン」、「パラノン」があり(乙第3号証及び乙第4号証)、引用商標の称呼が「パラドン」であれば、上記「ピラドン」、「パラノン」の称呼が生ずる先登録により拒絶されるべきであったが、引用商標は、「パラダン」、「パラドーネ」の称呼を生ずるものであるから、登録になったものといえる。

2 むすび

以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断

1 本件商標について

本件商標は、前記したとおり、「パラドン」の文字を書してなるものであるから、これより「パラドン」の称呼を生ずるものである。

2 引用商標について

(1)引用商標は、前記したとおり、「PALLADONE」の文字を書してなるものであって、該「PALLADONE」の文字は、特定の読みを持たない造語と認められる。

(2)ところで、本件商標と引用商標の指定商品である薬剤は、医師や薬剤師等薬剤についての専門家を対象とする商品のみならず、薬局等で販売され、一般の消費者を対象とする商品も数多く存在することは取引の実情に照らして明らかである。

そうすると、ある商標からどのような称呼が生ずるかについての判断に当たっては、医師や薬剤師等の専門家のみならず、薬剤に付される商標等にさほど精通していない一般の消費者がどのような称呼をもって、商品の取引に当たるかを考慮して判断すべきものと解するのが相当である。

(3)そこで、引用商標から生ずる自然の称呼について検討するに、特定の読みを持たない欧文字よりなる商標に接する需要者は、一般的に自己の有する英語等の知識に基づいて称呼すると考えられるところ、例えば、一般に親しまれた英単語である「college」、「killer」、「illustrator」、「million」、「yellow」などを「カレッジ」、「キラー」、「イラストレイター」、「ミリオン」、「イエロー」と発音するように、「ll」の子音2字とその後に母音が続くときは、「ll」と母音とを結合して1音を形成する場合が極めて多いこと、英単語「done」は、「do」の過去分詞で、中学校で修得する基本的英単語であって、「ダン」と発音されるものであることを併せ考えると、引用商標に接する需要者は、これを「パラダン」と称呼する場合が多いというのが相当である。

そうすると、引用商標より生ずる自然の称呼は、「パラダン」であるといわなければならない。

この点に関し、被請求人は、引用商標より生ずる称呼は、「パラダン」、「パラドーネ」の称呼が生ずるとしながらも、引用商標を称呼する上で、「PALLA」と「DONE」とに区切る根拠はなく、その区切り方によっては、「パルアドーネ」、「パラドワン」の称呼が生ずるし、また、「PALLA」を「パラ」と称呼しなければならない証拠はない旨主張する。

確かに、特定の読みを持たない引用商標にあっては、常に必ず一つの称呼のみに限定されるものではないが、引用商標より「パラダン」の称呼が生ずることは、被請求人も認めるところであり、上記のとおり、「ll」の子音2字とその後に母音が続くときは、「ll」と母音とを結合して1音を形成する英語が極めて多いこと、「DONE」の部分は、英単語「do」の過去分詞と同じ綴りであり、「ダン」と発音されること、我が国の一般消費者が引用商標中の「PA」の部分を「パ」以外の音に発音することは考えにくいことを総合すると、引用商標より生ずる自然の称呼は、「パラダン」であるというべきである。

なお、被請求人は、引用商標より「パラドーネ」の称呼をも生ずると主張するが、上記認定のとおり、引用商標より生ずる自然の称呼は、「パラダン」であるとするのが相当であり、仮に、該「パラダン」の称呼以外の称呼が生ずるとすれば、例えば、一般に親しまれた英単語である「gone」、「phone」、「tone」などを「ゴーン」、「ホーン」、「トーン」と発音する用例があるように、引用商標中の「DONE」の文字部分を「ドーン」と発音し、引用商標全体を「パラドーン」と称呼する場合もあると考えられなくもないところであって、引用商標を「パラドーネ」と称呼する場合は極めて少ないとみるのが相当である。

3 本件商標と引用商標の対比

本件商標より生ずる「パラドン」の称呼と引用商標より生ずる「パラダン」の称呼について

「パラドン」と「パラダン」の称呼は、いずれも4音よりなるばかりでなく、4音中、語頭部に位置する「パラ」の音と末尾に位置する「ン」の音を共通にするものであって、わずかに第3音において「ド」の音と「ダ」の音の差異を有するにすぎないものである。

そして、該差異音は、子音「d」を共通にする50音図中の同行音であり、また、帯有する母音「o」と「a」は、母音三角形の隣同士に位置し、母音の中でも調音方法が相似た音であるから、近似した音として聴取されるものということができる。

そうすると、「パラドン」と「パラダン」の称呼は、前半部の「パラ」の音が比較的強く発音される音であることを考慮すると、「ド」と「ダ」の音の差異が両称呼全体に及ぼす影響は決して大きいものとはいえず、それぞれの称呼を全体として称呼するときは、その語調、語感が近似したものとなり、互いに聞き誤るおそれがあるものといわなければならない。

そして、本件商標と引用商標とは、いずれも造語よりなるものであるから、観念上の明確な差異を有するものではなく、観念上の差異が両商標の称呼上の類似性に影響を及ぼすものではない。

また、本件商標と引用商標は、前者が片仮名文字であり、後者が欧文字であるから、外観において差異を有するものであるとしても、これらより生ずる称呼の近似性、及び薬剤の分野で商標を表示する場合、欧文字とその読みを表す片仮名文字とを包装箱等の別個の面にそれぞれ表記する場合が多いことを考慮すれば、外観上の差異が称呼上の類似性を否定するほどのものではないというのが相当である。

したがって、本件商標と引用商標は、称呼上類似する商標であり、かつ、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、同一のものと認められる。

4 むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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