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Trademark Appeal Case

著名人名の商標登録無効

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2002−35125(T2002−35125/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4011725号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4011725号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成7年11月10日登録出願、第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘」を指定商品として、同9年6月13日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は、以下のとおりである。

1 登録第972813号商標(以下「引用商標A」という。)は、「VALENTINO」の欧文字を横書きしてなり、昭和45年4月16日登録出願、第21類「宝玉、その他本類に属する商品」を指定商品として、同47年7月20日に設定登録されたものであるが、指定商品中の「かばん類、袋物は除く」及び「洗面用具入れ」についての登録は、前者については放棄により抹消され、その登録が平成2年6月25日になされているものであり、また、後者は取り消すべき旨の審決が確定し、その登録が平成15年4月23日になされているものである。

2 登録第1793465号商標(以下「引用商標B」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同60年7月29日に設定登録されたものである。

3 登録第1786820号商標(以下「引用商標C」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日登録出願、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同60年6月25日に設定登録されたものである。

4 登録第852071号(以下「引用商標D」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、昭和43年6月5日登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同45年4月8日に設定登録されたものである。

5 登録第1415314号商標(以下「引用商標E」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同55年4月30日に設定登録されたものである。

6 登録第1402916号(以下「引用商標F」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日登録出願、第27類「たばこ、喫煙用具、マッチ」を指定商品として、同54年12月27日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第71号証(枝番を含む。)及び参考資料1ないし7を提出した。(なお、本件において、当事者双方から提出された証拠を表示する場合、枝番の全てを引用するときは、その枝番の記載を省略した。)

1 請求の理由

(1)商標法第4条第1項第8号違反について

請求人は、イタリアの服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)の同意を得て、同人のデザインに係る各種の商品を製作、販売しており、「VALENTINO GARAVANI」あるいは「VALENTINO」の欧文字からなる商標を上記各種商品について使用している者である。上記「VALENTINO GARAVANI」は、単に「ヴァレンティノ」(VALENTINO)と略称され、本件商標の登録出願日前より著名なものとなっている。

すなわち、「VALENTINO GARAVANI」は、17歳の時パリの「パリ洋裁学院」でデザインの勉強を開始し、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー」(Fashion oscar)を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同人の作品が掲載された。これ以来同人は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーとして知られている。上記ファッションオスカーは、白を基調にまとめた「白のコレクション」に与えられたものである。同人のデザイン活動は婦人用、紳士用衣服を中心にネクタイ・シャツ・ハンカチ・マフラー・ショール・ブラウスなどの衣料用小物、バンド・ベルト・ネックレス・ペンダントなどの装身具、バッグ・さいふ・名刺入れその他のかばん類、その他サングラス、傘、スリッパなどの小物からインテリア装飾にも及んでいる。

我が国においても、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」の名前は、1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品はVogue(ヴオーグ)誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。昭和49年には三井物産株式会社(千代田区大手町1−2−1)の出資により同人の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同人の作品は我が国のファッション雑誌にも数多く掲載されるようになり、同人は我が国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。

以上のとおり、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」は、世界のトップデザイナーとして、本件商標の登録出願時には、既に我が国においても著名であった。同人は「VALENTINO GARAVANI」、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」とフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられた(甲第7号証、甲第8号証ないし甲第10号証、甲第13号証の2、甲第15号証の2及び3、甲第16号証の2、甲第22号証の2、甲第25号証の3、甲第30号証の2、3及び5、甲第48号証)。

しかるところ、本件商標は、左横向きの犬のシルエット図形を上段に描き、その下に「VALENTINO」、「COUPEAU」の欧文字を二段に横書きしてなるところ、文字と図形とが観念及び構成上、一体として認識しなければならない格別の事由はないので、該図形部分及び文字部分はそれぞれ独立して自他商品の識別機能を果たすものである。そして、大きく二段に横書きされた文字中、上段の「VALENTINO」の文字部分が「ヴァレンティノ」と称呼されるものであることは明らかであるから、本件商標は、「VALENTINO GARAVANI」の著名な略称を含む商標であり、その者(他人)の承諾を得ずに登録出願されたことは明らかである。

(2)商標法第4条第1項第11号違反について

本件商標中の図形部分及び文字部分は、前記したとおり、それぞれ独立して自他商品の識別機能を果たすものである。そして、該文字部分は、全体が一つの語として知られているものではなく、その全体を称呼するときは「ヴァレンティノクーポ一」の長音を含む9音にも及ぶ冗長なものとなるばかりでなく、「VALENTINO」の文字と「COUPEAU」の文字とが二段に表示されていることもあって、「ヴァレンティノ」と「クーポー」とがそれぞれ段落をもって称呼されるものであり、しかも、「VALENTINO GARAVANI」が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることも相俟って、これに接する取引者、需要者に親しまれている「VALENTINO」の文字に相当する「ヴァレンティノ」の称呼をもって、取引に当たる場合が決して少なくないものとみるのが自然である。

したがって、本件商標は、「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものといわざるを得ない。

これに対して、引用商標Aは、その構成文字に相応して「ヴァレンティノ」の称呼を生ずるものであることは明らかである。

また、引用商標B及びCは、これらより生ずる全体の称呼が「ヴァレンティノガラヴァーニ」と冗長なものであり、また、「VALENTINO GARAVANI」が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相挨って、その構成文字中、前半の「VALENTINO」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって取引に資されている場合も決して少なくないから、いずれも「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものであるといわざるを得ない。

してみると、本件商標は、引用商標AないしCと「ヴァレンティノ」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、本件商標の指定商品は、引用商標AないしCのそれと抵触するものであることは明らかである。

(3)商標法第4条第1項第15号違反について

甲第9号証ないし甲第62号証により、引用商標Eは、婦人服、紳士服、ネクタイ等の被服について使用されていること、引用商標Fがライターについて使用されていること及び各引用商標が本件商標の登録出願日前より全世界に著名なものとなっていることは明らかである。

そして、本件商標と引用商標AないしCがその称呼を共通にする類似する商標であることは、前記(2)のとおりであるから、同様の理由により、本件商標と引用商標DないしFとは、類似する商標である。また、本件商標の指定商品と各引用商標が使用されている上記商品は、いずれも服飾品の範疇に属する、いわゆるファッション関連の商品である。

したがって、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用した場合、その商品があたかも請求人の製造、販売等の業務に係る商品であるか又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係にある者、すなわち、姉妹会社等の関係にある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ぜしめるおそれがあるものである。

2 答弁に対する弁駁

(1)利害関係について

被請求人は、請求人が本件審判を請求するについて、利害関係を有しない旨主張する。

しかしながら、本件においては、請求人は、本件商標の登録が存在することにより、自己の取扱いに係る商品と本件商標の指定商品との間に、出所の混同を生じさせるおそれがある、または、請求人の人格権が害されると主張しているところであって、本件商標の存在により、直接不利益を被る者である。

したがって、請求人は、本件商標の登録無効の審判を請求することについて、法律上の利害関係を有するものである。

(2)被請求人は、「Valentino」の名称は、イタリアでは男子の名を表すものとしてよく使われていることを理由に、各引用商標が著名であるとすることはできない旨主張する。

しかしながら、請求人は、各引用商標が、我が国の服飾品等のいわゆるファッション関連商品において、周知・著名であることについて既に主張・立証したところであり、仮に「Valentino」の名称がイタリアでは男子の名を表す名称としてよく使われているとしても、イタリアにおけるかかる事由が、各引用商標の我が国における周知・著名性を何ら妨げる事由となるものでない。

(3)被請求人は、「VALENTINO」の文字を含む商標が各引用商標とは類似しないとして有効に登録されている点からしても、本件商標が各引用商標に類似するというのは誤りである旨主張する。

しかしながら、「VALENTINO」、「Valentino」の文字を含む結合商標が他に登録されていても、それらが、取引者、需要者によりイタリアの服飾デザイナーである「VALENTINO GARAVANI」のデザインに係る商品に使用される「VALENTINO」と明確に区別され、「VALENTINO GARAVANI」とは関係のないものとして取引されているという事実はない。すなわち、「VALENTINO GARAVANI」のデザインに係る商品に使用される「VALENTINO」(「Valentino」、「ヴァレンティノ」)の商標が「ヴァレンティノ」と呼ばれて、周知・著名である事実に照らせば、取引者、需要者が、「VALENTINO」の語を含む結合商標の付された商品を、周知・著名な「VALENTINO」(「Valentino」、「ヴァレンティノ」)ブランドないしはその兄弟ブランドであるなどと誤解している可能性も十分にあるというべきである。

ところが、被請求人提出の証拠によっては、本件商標が、「Valentino」とそれ以外の他の特定の文字「Coupeau」とが結合したものとして取引者、需要者においてよく知られ、かつ、「VALENTINO GARAVANI」とは関係のないものとしてよく知られるに至っている等の特段の事情は、全く認められない。

したがって、前記「VALENTINO」の文字を含む商標が登録されていることによって、本件商標について、「VALENTINO GARAVANI」のデザインに係る商品との出所の混同のおそれが減少するものということはできない(参考資料1ないし7参照)。

3 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号に該当し、無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第23号証(枝番を含む。)を提出した。

1 本件審判を請求するについて、請求人に請求の利益があることを明確にした主張立証がなく、請求人には、本件審判を請求する利益がない。

2 引用商標等の著名性についての反論

(1)甲第2号証ないし甲第6号証は、引用商標AないしFを掲載した商標公報であって、「VALENTINO GARAVANI」及び「VALENTINO」の商標の著名性を立証するものではない。

(2)請求人は、甲第8号証ないし甲第12号証をもって、「VALENTINO GARAVANI」の著名性、及び「VALENTINO」の文字が「VALENTINO GARAVANI」の著名な略称でもあることを立証しようとしているが、前記書証をもって、前記事項を立証することはできない。

なぜなら、「Valentino」の名称は、イタリアでは男子の名を表す名称としてよく使われている名称であり(乙第1号証)、男子の氏名としてよく使われる名称であるとの判断を示した決定、審決がある。

仮に前記書証が刊行物として頒布されたとしても、それは、「VALENTINO GARAVANI」の表示、及びその略称であるとする「VALENTINO」の表示が多くの刊行物に掲載して頒布されたというだけのことである。その頒布をもってそれが直ちに前記表示が著名性獲得に結びつくとは限らない。

これが著名になったというためには、多くの刊行物に掲載して頒布されたという事実だけでなく、これとは別な立証手段が必要である。

本件では、各引用商標がどのような手段を講じて著名商標としたとの主張、立証もない。したがって、「VALENTINO GARAVANI」及び「VALENTINO」が著名であるとの請求人の主張は成り立たない。

(3)以上のとおり、本件商標は、甲第7号証ないし甲第62号証をもってしては、「VALENTINO GARAVANI」、あるいはその略称であるとする「VALENTINO」の表示が著名なものであるとして、これを理由に本件商標の登録を無効であるとすることはできない。

3 商標法第4条第1項第8号違反についての反論

(1)「VALENTINO」の名称は、イタリアの男子の名称としてよく使われる名称である(乙第1号証)。過去の審決等では、イタリアでは「VALENTINO/ヴァレンティノ」の名称は、男子の氏、あるいは、名を表示するものとして多く使われているということ並びに「VALENTINO/ヴァレンティノ」の略称が直ちに「VALENTINO GARAVANI」を示す著名な略称ということはできない(乙第2号証)。

(2)ファッション界で「VALENTINO」(ヴァレンティノ)の名称を名乗って作品を発表しているデザイナーは、「VALENTINO GARAVANI」以外に多数おり、ファッション関係の取引者、需要者の間で知られている。例えば、「RUDOLPH VALENTINO」(ルドルフ・ヴァレンティノ)、バレンティノファミリ一の名をもって知られている「MAR1O VALENTINO」(マリオ・ヴァレンティノ)とその子供である「GIOVANNI VALENTINO」(ジョバンニ・ヴァレンティノ)と「VINCENZO VALENTINO」(ビンチェンツォ・ヴァレンティノ)、「FORTUNA VALENTINO」(フォルトゥナー・ヴァレンティノ)等のデザイナーがおり、それぞれが関係する事業体が、これらのデザイナーの氏名をそれらの作品や事業体のブランドとして登録してその商標を使用している(乙第6号証ないし乙第8号証、乙第23号証)。

上記「RUDOLPH VALENTINO」は、イタリアで生まれ、アメリカに渡ってハリウッドで俳優となり、後にファッション界で名を馳せた人である。もともと「VALENTINO」(ヴァレンティノ)の名称は、同人によって有名になったものであり、その作品が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)の略称をもって指称され、著名になっていたこと及び同人の氏名並びにその略称であるヴァレンティノが著名なブランドとして取り扱われている。

また、上記したデザイナーの中、「マリオ・ヴァレンティノ」の一族を「ヴァレンティノファミリー」と称している(乙第22号証)。

(3)ファッション関係のブランドに関し、株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンは、「VALENTINO」の名称をもって仕事をしている人は多数あること、その中には「VALENTINO GARAVANI」、「MAR1O VALENTINO」がおり、両者は区別されて認識されていること、「MARIO VALENTINO」の2人の子供もそれぞれ「VALENTINO」の名称をもって仕事をしていると回答している(乙第23号証)。このことは、「VALENTINO GARAVANI」の関係機関である株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンが、「VALENTINO」の名称をもって事業を行うデザイナー、あるいは事業体が「VALENTINO GARAVANI」及びその関係団体だけでないことを認めたものであり、「VALENTINO GARAVANI」及び同人の関係者と「ヴァレンティノファミリー」を構成する人々及びその関係者は、相互に相手方のブランドを尊重して事業を遂行しているということである。

(4)したがって、「ヴァレンティノ」の称呼及び表示を含む商標は、直ちに、イタリアの著名なデザイナーであるヴァレンティノ・ガラバーニを指すとはいえず、また、「VALENTINO」の綴りが直ちに「VALENTINO GARAVANI」の略称とはいえないから、「Valentino Coupeau」の綴りからなる本件商標の登録について、「ヴァレンティノ・ガラバーニ」の承諾が必要であり、この承諾を得ないで登録された本件商標は無効であるとの請求人の主張は失当である。

4 商標法第4条第1項第11号違反についての反論

(1)「ヴァレンティノ・ガラバーニ」の氏名が著名であるなら、この表示及び称呼は、取引者、需要者に親しまれているということであり、取引者、需要者は、「VALENTINO GARAVANI」の表示をもって、無理なく「ヴァレンティイノ・ガラバーニ」と読み取ったり、称呼することは普通に行われることである。そうすると、取引者、需要者はこれをもって冗長とは感じないようになるということである。

また、甲各号証の多くは、「VALENTINO/ヴァレンティノ」商標を使用した広告、宣伝文書よりも、「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」商標を使用した広告、宣伝文書の方が多い。

この事実は、「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」商標の綴りが冗長にすぎて取引の実情に合わないから、その略称である「VALENTINO/ヴァレンティノ」が使われるという請求人の主張に反する。

もし、「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」商標を使ったり、これが認識されるのが取引の実情から冗長にすぎるというのであれば、広告、宣伝文書には「VALENTINO/ヴァレンティノ」商標を使うことに徹すべきである。しかし、「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」商標を用いるということは、「VALENTINO/ヴァレンティノ」のブランドは、「VALENTINO GARAVANI」以外の多くのデザイナーに使われており、「VALENTINO/ヴァレンティノ」のブランドから「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」のブランドと直感することができないからである。

このことは、「VALENTINO/ヴァレンティノ」の文字を併記する商標が多数登録されている事実からも明らかである。

したがって、引用商標(VALENTINO GARAVANI)及び本件商標の称呼、綴りが冗長にすぎるので、取引の実情から、引用商標及び本件商標を指すのに、それぞれその略称である「VALENTINO/ヴァレンティノ」をもって指称するものであるから、本件商標と引用商標が類似するとの請求人の主張は誤りである。

(2)ちなみに、甲第14号証ないし甲第17号証(世界の一流品大図鑑)には、「VALENTINO GARAVANI」以外の一流品と称するブランド名が掲載されている。これらに掲載された「VALENTINO GARAVANI」以外の一流品のブランド名の使用者は、その表示に当っては取引者、需要者に馴染まれている正規の表示、名称をそのまま使用しているのである。

(3)請求人は、本件商標について、「Valentino」と「Coupeau」と二段に横書きした構成からなっていると主張するが、本件商標は、前記した構成そのものが一体として取引者、需要者に認識されるよう工夫を凝らした構成となっているもので、その構成中の「Valentino」の綴りが本件商標の要部をなすものとして、「Coupeau」と離して目立つようには構成されているものではない。

(4)以上のとおり、本件商標と引用商標AないしCとは、外観を異にするだけでなく、称呼を異にし、さらに、同一人物を指すものでないところから観念を異にするものであることは明らかである。

5 商標法第4条第1項第15号違反について反論

(1)引用商標DないしFの顕著性は、争う。

引用商標Dは「VALENTINO」の綴りからなり、引用商標Eは「VALENTINO GARAVANI」の綴りからなり、引用商標Fは「VALENTINO GARAVANI」の綴りからなるものである。

そして、請求人の主張の要旨は、本件商標は、これら引用商標と類似するというものである。

しかし、本件商標と上記引用商標とは外観、称呼、観念のいずれも相違することは既に説明したとおりである。

(2)「VALENTINO/ヴァレンティノ」の略称を用いるデザイナーが多数いること及び「VALENTINO/ヴァレンティノ」の表示を用いる登録商標が多数あることは、ファッション関係の取引者、需要者の間で知られている(乙第22号証及び乙第23号証)。

そうすると、これらの人々は、作品、広告、宣伝文に表された「VALENTINO/ヴァレンティノ」の表示をもって、直ちにそれが「VALENTINO GARAVANI」の作品を示したり、同人の広告、宣伝と速断することはない。

よって、本件商標と引用商標DないしFは、混同を来たすようなことはないから、本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたという請求人の主張は誤りである。

第5 当審の判断

1 利害関係について

被請求人は、請求人が本件審判を請求するにつき、法律上正当な利益を有しない旨主張する。

しかしながら、ある商標の登録の存在によって直接不利益を被る関係にある者は、それだけで利害関係人として当該商標の登録を無効にする審判を請求ことにつき、利害関係を有する者に該当すると解するのが相当である。 本件においては、請求人は、本件商標の登録が存在することにより、自己の取扱いに係る商品と本件商標を使用した商品との間に、出所の誤認混同を生じさせるおそれがある、ないし請求人の人格権が害されると主張しているのであるから、本件商標の存在によって、直接不利益を受ける者ということができる。

したがって、請求人は、本件審判を請求するについて、法律上の利益を有するものというべきである。

2 「VALENTINO GARAVANI」及びその略称である「VALENTINO」の著名性について

甲第7号証の4ないし31、甲第13号証ないし甲第53号証、甲第63号証、甲第64号証及び甲第66号証ないし甲第71号証によれば、以下の事実を認めることができる。(なお、被請求人は、甲第7号証、甲第13号証ないし甲第43号証、甲第44号証の2、甲第45号証及び甲第46号証、甲第50号証ないし甲第62号証、甲第69号証及び甲第70号証について、その成立を不知としているところ、その主な理由は「発行所が不明。頒布された事実は不明。」とするものである。発行所については、平成15年2月27日付けの回答書により概ね明らかになったものであり、回答書に記載がなかったものについても、各号証に記載されている発行所が虚偽のもであるとする証拠はなく、また、上記書証は、これらの発行所より頒布されたみて何ら差し支えないものである。)

(1)「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴアーニ)は、1932年(昭和7年)イタリア国で生まれ、17才の時パリの洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジャン・デッセ」、「ギ・ラローシュ」の助手として働き、1959年(昭和34年)ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年(昭和42年)に、白一色のコレクションを発表して、著名な新聞、雑誌等に大きく取り上げられ、デザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion oscar)」を受賞し、一躍その名を高めた。これ以来、同人はイタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、国際的なトップデザイナーとして知られるに至っている。

(2)我が国においても、「VALENTINO GARAVANI」、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」の名前は、前記1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、昭和50年年代の初めには、同人のデザインに係る被服、ネクタイ、ベルト等が、「VALENTINO GARAVANI」、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」等の表示と共に、ファッション雑誌である「世界の一流品大図鑑」、「anan臨時増刊FALL&WINTER1976−’77」、「アイリスマガジン」、「EUROPE一流ブランドの本」などに紹介された。また、昭和51年9月から10月にかけて、我が国で同人のデザインに係る作品のファッションショーが開かれたことに関する記事が全国紙、地方紙等を通じて、「ヴァレンティノ・コレクション」、「ヴァレンティノのショーから」、「バレンチニ作品展から」、「無地が売り物のヴァレンティノ」などと紹介された。その後も、「VALENTINO GARAVANI」、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」の名前及びそのデザインに係る被服等について使用される表示は、本件商標の登録出願日に至るまでに継続的に紹介されていた。

昭和49年に、三井物産株式会社の出資により同人の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティツクジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、「VALENTINO GARAVANI」の作品は、我が国の著名なファッション雑誌などに数多く掲載されるようになり、同人は我が国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。

3 前記2で認定した事実によれば、「VALENTINO GARAVANI」及びその片仮名表記である「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」は、世界のトップデザイナーとして、また、同人のデザインに係る商品群を表示するためのものとして、本件商標の登録出願日である平成7年11月10日には、既に、我が国においても著名であったと認め得るところである。

また、同人のデザインに係る被服等の商品群に表示される商標は、「VALENTINO GARAVANI」、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」として紹介されることが多いが、同時に、単に「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」と表示して紹介されていることも少なくなく、「VALENTINO GARAVANI」、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」の表示及び「VALENTINO GARAVANI」の名前のファッション関連の商品分野における世界的著名性を考慮すれば、「VALENTINO」、「ヴァレンテイノ」といえば、同人のデザインに係る被服等の商品群に表示される商標及び同人を指すものとして、本件商標の登録出願前より、この種商品の取引者、需要者の間に広く認識されるに至っているというべきである。

そして、「VALENTINO GARAVANI」及びその片仮名表記である「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」の著名性並びにこれらの略称である「VALENTINO」及び「ヴァレンテイノ」の著名性は、本件商標の登録査定時にも継続していたものということができる。

4 出所の混同について

本件商標は、別掲のとおり、犬のシルエット図形を最上段に描き、その下に「VALENTINO」と「COUPEAU」の各文字(いずれも語頭の「V」と「C」は、他の文字に比べ、大きく表されている。)を二段に横書きしてなるものであるところ、図形部分と文字部分は、これを常に一体のものとして観念しなければらないほど、観念上密接な関係を有するものと認めることはできないから、それぞれ独立して把握、認識されるものである。

そして、本件商標中の文字部分は、全体をもって、我が国においてよく知られた氏名等を表すものとはいい難いのみならず、全体を称呼した場合の「バレンティノクーポー」の称呼も9音とやや冗長にわたるものといえるから、両文字が二段に書されていることをも考慮すれば、これらの文字部分に接する取引者、需要者は、「VALENTINO GARAVANI」のデザインに係る被服等の商品群に表示され、本件商標の登録出願前より、その取引者、需要者の間に広く認識されている「VALENTINO」と同一の綴り文字よりなり、かつ、同一の称呼を生ずる「VALENTINO」の文字部分に強く注意を引きつけられ、印象づけられるというのが相当である。

加えて、本件商標は、「VALENTINO GARAVANI」のデザインに係り、その関連会社が製造、販売に係る被服等と同様のファッション関連の商品について使用されるものである。

そうすると、本件商標は、これをその指定商品について使用するときは、その取引者、需要者をして、該商品が「VALENTINO GARAVANI」のデザインに係る商品、又は、同人と組織的、経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあったものというのが相当である。

5 被請求人の主張について

被請求人は、「VALENTINO/ヴァレンティノ」の略称を用いるデザイナー及び「VALENTINO/ヴァレンティノ」の文字を含む登録商標が多数存在するから、「VALENTINO/ヴァレンティノ」の表示が直ちに「VALENTINO GARAVANI」の作品を示したり、同人の広告、宣伝と速断することはなく、したがって、本件商標と引用商標とは、混同を来たすようなことはない旨主張する。

乙第5号証ないし乙第13号証によれば、「VALENTINO GARAVANI」と何らの関係を有しないと認められる者により、「VALENTINO」、「valentino」、「Valentino」の文字を含む商標が出願され、これら商標が出願公告ないし登録されたこと、及び「VALENTINO VASARI」、「VALENTINO ORLANDI」、「VALENTINO RUDY」なるブランド名を使用した種々の商品が市場に出回っていることが認められる。

しかし、前記認定のとおり、「VALENTINO GARAVANI」は、1967年に、白だけの服のファッションショーを開いて、ファッション界にセンセーションを巻き起こし、その名声を確立した。我が国においても、昭和50年代はじめには、同デザイナーが手がけた被服等が新聞雑誌等を通じて紹介され、商品のデザインがエレガントであることなどの理由により、その名前は、ファッション関連の業界にとどまらず、一般の消費者の間にも広く知られるようになったということができる。そして、我が国においては、「VALENTINO GARAVANI」の氏名、ないし同デザイナーのデザインに係る商品群を、単に「ヴァレンティノ」若しくは「VALENTINO」と表示している事実があることからすると、「ヴァレンティノ」若しくは「VALENTINO」との表記から、一般の消費者は、「VALENTINO GARAVANI」を想起、連想するというのが相当である。

そして、「VALENTINO GARAVANI」以外の、「VALENTINO」の文字を含むデザイナーに係る商品のブランドが、単に「ヴァレンティノ」若しくは「VALENTINO」と略称されている事実を立証する証拠は見出せない。

また、本件商標の指定商品を含んだ商品の区分及び他の商品の区分において、「VALENTINO」等の文字を含む商標が登録されている事実が存在するとしても、本件においては、本件商標をその指定商品に使用した場合に、該商品が「VALENTINO GARAVANI」のデザインに係る商品との間に、出所の混同を生ずるおそれがあったか否かを問題とすべきであるから、被請求人が挙げる登録商標等の存在により、前記認定が左右されるものではない。

6 むすび

以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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