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Trademark Appeal Case

NASとNASUの称呼類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2003−35195(T2003−35195/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4513878号商標(以下「本件商標」という。)は、商標の構成を後掲(1)のとおり、輪違図形と「NAS」の欧文字とを横一列にして表してなり、平成10年6月26日登録出願、第8類「手動工具,手動利器,くわ,鋤,レーキ(手持ち工具に当たるものに限る),組ひも機及び靴製造用靴型(手持ち工具に当たるものに限る),五徳,殺虫剤用噴霧器(手持ち工具に当たるものに限る),十能,火消しつぼ,火ばし,ピンセット」、第11類「あんどん,ガスランプ,石油ランプ,ちょうちん,ほや,ガス湯沸かし器,業務用揚物器,業務用食器乾燥機,業務用炊飯器,業務用煮炊釜,業務用焼物器,業務用レンジ,飼料乾燥装置,牛乳殺菌機,乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器,太陽熱利用温水器,浄水装置,水道蛇口用座金,水道蛇口用ワッシャー,水道用栓,タンク用水位制御弁,パイプライン用栓,汚水浄化槽,家庭用汚水浄化槽,家庭用し尿処理槽,ごみ焼却炉,し尿処理槽,あんか,かいろ,かいろ灰,化学物質を充てんした保温保冷具,湯たんぽ」、第20類「貯蔵槽類(金属製又は石製のものを除く),プラスチック製バルブ(機械要素に当たるものを除く),アングルバルブ,球バルブ,コック,自動調整弁,ちょう形バルブ,カーテン金具,金属代用のプラスチック製締め金具,くぎ・くさび・ナット・ねじくぎ・びょう・ボルト・リベット及びキャスター(金属製のものを除く),座金及びワッシャー(金属製・ゴム製又はバルカンファイバー製のものを除く),錠(電気式又は金属製のものを除く),うちわ,植物の茎支持具,食品見本模型,人工池,すだれ,せんす,装飾用ビーズカーテン,タオル用ディスペンサー(金属製のものを除く),つい立て,旗ざお,ハンガーボード,びょうぶ,麦わらさなだ」及び 第21類「 なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く),鉄瓶,やかん,魚ぐし,デンタルフロス,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,洋服ブラシ,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,家禽用リング,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,家庭用燃え殻ふるい,紙タオル取り出し用金属製箱,靴脱ぎ器,じょうろ,石炭入れ,せっけん用ディスペンサー,ねずみ取り器,はえたたき,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く),花瓶(貴金属製のものを除く),水盤(貴金属製のものを除く),風鈴」を指定商品として、平成13年10月19日に設定登録されたものである。

第2 本件引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第1091593号商標(以下「本件引用商標」という。)は、後掲(2)のとおり、線書きで「茄子」を象った図形と「NASU」の欧文字とを上下に表してなり、昭和45年8月19日登録出願、第13類「手動利器、手動工具、金具(他の類に属するものを除く)」を指定商品として、昭和49年10月7日に設定登録され、昭和59年9月17日及び平成6年11月29日に当該商標権の存続期間更新登録されているものである。

第3 請求人の主張

請求人は、本件商標中、第8類「手動工具,手動利器,くわ,鋤,レーキ(手持ち工具に当たるものに限る。)」及び第20類「カーテン金具,金属代用のプラスチック製締め金具,くぎ・くさび・ナット・ねじくぎ・びょう・ボルト・リベット及びキャスター(金属製のものを除く。),座金及びワッシャー(金属製・ゴム製又はバルカンファイバー製のものを除く。),錠(電気式又は金属製のものを除く。)」(以下「請求に係る商品」という。)についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。

1.請求の理由

(1)商標の類否について

本件商標は、連結した2つのリングの図形の右横にアルファベットで「NAS」と表してなる。航空会社の「JAL」や「JAS」が「ジャル」や「ジャス」と称呼されると同じように、この「NAS」の文字から「ナス」の称呼が生じることは明らかである。

他方、本件引用商標は、茄子の図形の下にアルファベットで「NASU」と表してなり、茄子の図形の下に一文字一文字大きなローマ字ではっきり「NASU」と書いてある。このローマ字が無視できるほど小さいものでないことは本件引用商標を見れば一目瞭然である。本件引用商標のこのような構成からすれば、本件引用商標から「ナス」の称呼が生じることは明らかである。

したがって、本件商標と本件引用商標は、共に「ナス」の称呼を生じる類似の商標である。

(2)商品の類否について

本件引用商標の指定商品は上記のとおりであるから、本件商標の指定商品中、請求に係る商品は本件引用商標の指定商品と類似である。

(3)結語

以上のとおり、本件商標と本件引用商標は、共に「ナス」の称呼を生じる類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品中、請求に係る商品は、本件引用商標の指定商品と類似するから、本件商標は、その指定商品について、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。

2.弁駁の理由

(1)高裁判決について

被請求人は答弁書の中で東京高裁の平成13年(行ケ)第363号 商標登録取消決定取消請求事件判決(以下「高裁(鳳凰・宝桜)判決」という。)を引き合いに出して、「以上の点を考察すれば、単に称呼の一致のみをもって類似と判断することができないこと明らかである。」と主張している。

しかしながら、高裁(鳳凰・宝桜)判決はその中で最高裁の判決を引用していて、この最高裁の判決は(誤認混同のおそれの有無を判断するに当たっては)「そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうる限り、その具体的取引状況に基づいて判断することを相当とする。」と判示しているものであって、高裁(鳳凰・宝桜)判決がこの最高裁の判決を引用したのは「しかもその商品の取引・・・相当とする。」の部分を適用するためであることは明らかである。

そして、高裁(鳳凰・宝桜)判決の事例は、引用商標は不使用取消審判の取り消されたことから使用の実体がないことが認められ、引用商標の商標権者は解散登記がなされて同社が引用商標を使用する可能性があったとは認められず、使用を許諾された第三者が引用商標を過去に使用し又は将来使用する可能性がないという取引の実情が明らかにされており、その具体的取引状況、すなわち、引用商標が使用される可能性がないという状況に基づいて判断すれば、この事例における本件商標と引用商標とは、出所の混同を生じる可能性が存在しないので非類似としたのである。この高裁(鳳凰・宝桜)判決は、前記最高裁の判決のいうように、現に行われている具体的取引の実情を勘案して出た結論である。高裁(鳳凰・宝桜)判決は、商標法第4条第1項第11号又は第13号の規定に違反して登録された商標が、その後、引用商標が消滅し既に出所の混同を生じる可能性がない場合は無効又は取消しされない場合があることを判示したと思われるものであって、高裁(鳳凰・宝桜)判決の事例のような特殊な取引の実情が存在しない本審判とは事案が全く異なっている。

(2)本審判の論点は本件引用商標から「ナス」の称呼が生じるか否かの問題に帰することになる。

本件引用商標は、野菜である茄子の図形の下に太くはっきりと「NASU」と書かれており、図形に対して無視できるほど小さな文字ではなく、この文字は十分に識別力を果たしている。このことは本件引用商標を見れば一目瞭然である。したがって、本件引用商標から「ナス」の称呼が生じることは明らかであるから、本件商標と本件引用商標は共に「ナス」の称呼を生じる類似の商標である。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由に対する答弁を要旨次のように述べた。

1.答弁の理由

(1)高裁判決について

高裁(鳳凰・宝桜)判決を考察すれば、単に称呼の一致のみをもって類似と判断することができないこと明らかである。

(2)「NASU」の文字について

本件引用商標における、ローマ字「NASU」は明らかに「野菜の茄子」を意味するものとして位置付けられており、その結果、本件引用商標の識別機能の本質は、看者に対し強く「野菜の茄子」を印象・連想・想起させる点にあり、ローマ字「NASU」も「野菜の茄子」を意味するものとして捉えられる態様で評価されなければ意味がない。

したがって、本件引用商標において単なる文字列「NASU」だけを取り出すことは、商標の機能を無視した空論に過ぎず、このような観察方法に立脚する請求人の主張は適切でない。

(3)商標の類否について

本件商標は、二つの円輪を横に一部鎖状にリンクさせ全体として立体的な構成よりなる幾何図形と欧文字の3字「N」「A」「S」とを調和よく一体不可分の形に連綴した構成よりなるものである。

したがって、本件商標は、観念的には二重円、称呼としては「ナス」が生ずる幾何図形と文字との結合商標と感知する以外なんら有語的な称呼及び具体的に特定した意味、観念を惹起することはできず、単に図形と「N」「A」「S」の文字を緊密に結合したもので、これら二つの部分を分離考察するを相当とする特段の理由がない商標である。

してみれば、本件商標は、図形部分と「NAS」の文字部分とが不可分一体的に連結された結合商標であるから、当然本件引用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であることが明らかである。

(4)結語

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録がなされたものではなく、請求人の述べることは何ら理由はないものであるから、無効とされるべきものではない。

第5 当審の判断

請求人は、本件商標と本件引用商標は、共に「ナス」の称呼を生じる類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品中、請求に係る商品は、本件引用商標の指定商品と類似するから、本件商標は、その指定商品について、商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は無効とされるべきであると述べているので、その当否について判断する。

1.本件商標の構成について

本件商標は、その構成後掲(1)のとおりの輪違図形と「NAS」の欧文字とを結合してなるところ、図形と欧文字とは視覚上自ずと分離して看取されるばかりでなく、意味上においてこれらを常に一体のものとして把握しなければならないような格別の事情は存しないから、両構成部分はそれぞれが独立して商品の出所を識別する標識として機能し得るものというべきであって、単に「NAS」の文字部分をもって取引に資されるものといえるから、これに相応して、本件商標からは「エヌエイエス」ないし「ナス」の称呼を生じるものというのが相当である。

2.本件引用商標の構成について

本件引用商標は、その構成後掲(2)のとおり茄子図形と「NASU」の文字からなるところ、その図形の顕著性は大きく、「NASU」の文字はこれを欧文字表記したものと容易に理解されるものであるから、図形と文字とは緊密に把握され、これに照応して「(野菜の)ナス」の称呼、及び「茄子」の観念が生じるものである。

3.商標の類否について

商標は自他商品識別をその本質的機能としているところであって、かつ、商標法第4条第1項第11号の立法趣旨はいうまでもなく商品又は役務の出所の混同防止であるから、本件商標をその指定商品について使用した場合、本件引用商標を使用した商品との間に、出所について誤認混同を生じさせるおそれがあるか、否かにによって判断しければならない。

(1)外観・観念について

両商標の外観の点は、輪違図形と茄子図形及び「NAS」と「NASU」の文字とは、その図案構成ないし文字綴りにおいて、それぞれ外観印象を異にし、全体としても彼此見誤る虞はなく、また、観念の点においては、本件引用商標からは、「茄子」の意味合いを想起させるのに対し、本件商標からは、輪違図形から「輪が打違いになって半ば重なった形の文様」の意味合いを、「NAS」の欧文字から「何れかの複合語の略語」程度を理解されるという点で、両者は観念においても判然と区別し得るものである。

(2)称呼について

本件引用商標からは「ナス」の称呼を生じ、対して本件商標の構成中「NAS」からは「エヌエイエス」の称呼ほか、「ナス」の称呼を生じること前記認定のとおりであり、両者からそれぞれ「ナス」の称呼を生じることは否定できない。

しかしながら、本件商標と本件引用商標のかかる構成自体にあって、それぞれが視覚上の印象及び記憶に困難さがあるものといい得ず、これに接する取引者、需要者は、それぞれの登録商標の構成を容易に記憶に残し、取引に資するものであって、その外観的印象を離れて両商標を「ナス」の称呼にのみ置き換え記憶し、かつ、これを商品出所の識別標識として強く認識されているような格別の取引事情は見出し得ない。

そして、本件商標の構成中「NAS」の欧文字部分を捉えてみても、その構成文字は僅か3字であって、その字形及び綴り自体は記憶し易く、また、これより生じる「エヌエイエス」と「ナス」の称呼間に軽重・主従の関係があるものとはいえない。

そうしてみると、電話等の口頭(称呼)による一般取引の場合において、その多くがカタログ、チラシ等を利用し特定の商品を目途として注文し取引に当たるか、以前に購入した商品と同等の品質(用途、サイズ等)を求めて取引に資するものといえるから、本件商標を請求に係る商品について使用し、その構成中の「NAS」の欧文字を目印として当該商品を取引きする場合を想定すれば、当該商品を注文する側は、「ナス」の称呼を連呼するばかりでなく、これを受け取る側にその目印である欧文字の整合性を伝えるべく、その綴りの1文字毎の読みに従って「エヌエイエス」の称呼をも加えて取引に資するものというのがその実際に即し相当である。

他方、茄子図形と「NASU」の文字とが緊密に把握される構成からなる本件引用商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が顕著に表された図形を無視して「NASU」の文字のみを目印として取引に資するものとはいい難いものである。そして、電話等の口頭による取引でもその認識は変わるものでなく、「ナス」と称呼しても、当該商品を注文する側は顕著に表された茄子図形ないし「(野菜の)ナス」を意識し称呼するものであって、その取引の確実性を帰するため茄子の図形を主たる取引指標とするものであることを受け取る側に伝え取引に資するものといえる。

そうすると、本件商標と本件引用商標とは「ナス」の称呼を共通にする場合があるとしても、両商標は、単に「ナス」の称呼のみをもって取引に資されるものとはいえず、「ナス」の称呼によってその出所について誤認混同を生じさせるおそれは極めて少ないから、称呼の点においてみても、非類似の商標と判断するのが相当である。

4.結語

以上のとおり、指定商品の類否について判断するまでもなく、本件商標と本件引用商標とは、その外観、観念及び称呼のいずれよりしても互いに区別し得る非類似の商標というべきであり、その他、両商標を類似のものとすべき事由は見出せない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものということはできないから、その登録は同法第46条第1項の規定により無効とすることができない。

なお、高裁(鳳凰・宝桜)判決の事案は商標の構成その他において本件とは事案を異にし、採用することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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