結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2003−35206(T2003−35206/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4149079号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示したとおりの構成よりなり、平成9年2月3日に登録出願、第18類「かばん類,袋物」を指定商品として、平成10年5月22日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第1929898号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)に表示したとおりの構成よりなり、昭和59年2月22日に登録出願、第21類「装身具,ボタン類,かばん類,袋物,宝玉およびその模造品,造花,化粧用具」を指定商品として、昭和62年1月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
同じく、登録第2286631号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)に表示したとおりの構成よりなり、昭和59年2月22日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く),布製身回品(他の類に属するものを除く),寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成2年11月30日に設定登録され、その後、平成13年9月19日に指定商品の書換登録がなされ、その指定商品が第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,靴下,スカーフ,手袋,ヘルメット,帽子」となり、現に有効に存続しているものである。
同じく、登録第1537262号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(3)に表示したとおりの構成よりなり、昭和52年5月31日に登録出願、第17類「被服,その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和57年9月30日に設定登録され、その後、平成15年1月22日に指定商品の書換登録がなされ、その指定商品が第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,靴下,ゲートル,ショール,スカーフ,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」となり、現に有効に存続しているものである。
同じく、登録第2026133号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(2)に表示したとおりの構成よりなり、昭和59年2月22日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊靴を除く),かさ,つえ,これ等の部品及び附属品」を指定商品として、昭和63年2月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
同じく、登録1967776号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(2)に表示したとおりの構成よりなり、昭和58年10月4日に登録出願、第23類「時計,眼鏡,これらの部品および附属品」を指定商品として、昭和62年7月23日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
同じく、登録1976560号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲(2)に表示したとおりの構成よりなり、昭和59年2月22日に登録出願、24類「おもちゃ,人形,娯楽用具,運動具,釣り具,楽器,演奏補助品,蓄音機(電気蓄音機を除く),レコード,これらの部品及び附属品」を指定商品として、昭和62年8月19日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
以下、これらを総称するときは「引用商標」という。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標の構成は、左上から左下に外線が角張った感じで内線が弧を描くようにして広がり、その左下から右上に跳ね上がるように外線と内線の幅が小さくなるような図形と、その左下から右上に伸びている部分の中間に、「へ」の字のように凸部が太くなるような線囲いの図形が2つ配されてなる商標である。
本件商標を全体観察した場合、全体を一つの図形とも考えることもできるが、2つの「へ」の字の図形に比べ、中央部の大きな図形が構成上中心に位置し、図形全体のコンセプトも注意を惹くように主体的に表されている。したがって、本件商標の要部は、中央部にある左上から左下へと伸び、そして左下から右上に伸びている図形である。
すなわち、商標の外観の類否について判断する際に、商標の要部を抽出して行う観察手段は、商取引が時と場所を異にするものである点に鑑みれば、類否を判断する上でも、当然に容認されるものである。しかして、本件商標について視覚上、特に注意を惹き、識別標識として強く印象に残る部分は、商標の構成上中央部にある線囲いの図形にあると考えるのが自然である。なぜなら、需要者はかかる部分が、後述するような著名な商標と極めて近似していることから、もっとも馴染み深い特徴的な図形であると看取し、また、記憶されるからである。
(イ)一方、引用商標1の構成は、左上から左下に弧を描くように黒太線が広がりながら伸び、その左下から右上に跳ね上がるように幅が小さくなるような構成からなる商標である。この商標は、請求人であるナイキ・インコーポレーテッド(NIKE,INC.)の著名商標「スウッシュ」と呼ばれる図形で、独自の着想の下に翼をイメージした流線形を図案化した独特なものとなっている。
したがって、引用商標が周知著名であることに考慮すれば、出所の混同が生じると考えられる範囲、すなわち、類似の幅は極めて広いものとなる。
(ウ)そこで、本件商標と引用商標1を対比してみると、本件商標の要部と引用商標1は、図案の着想が極めて近似していることが認められる。また、引用商標が著名性を有するものであり、本件商標の中心に位置する図形の構成が、引用商標の図形を反転させ、或いは横向きにするようなことなく、全く同一方向で構成されている点からすれば、両者の構成は相紛らわしいものとなっている。
(エ)よって、本件商標は、引用商標1と外観上類似の商標である。また、本件商標と引用商標の指定商品は、同一又は類似のものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)請求人、ナイキ・インコーポレーテッドは、運動靴、運動用特殊靴、被服、運動用特殊衣服等について世界的に著名な商標「NIKE」及び「SWOOSH」(スウッシュ)と呼ばれる図形商標の所有者である。この「スウッシュ」と呼ばれるナイキのシンボルマークは、ギリシャ神話の勝利の女神NIKEの翼を表しているものである(甲第3号証)。
この「スウッシュ」マークは、単独で請求人の登録商標となっており(引用商標1ないし引用商標6)、請求人の広告でも単独で印象的に用いられている。広告例として、本件商標出願の前年に発行された「NIKE/ナイキ完全読本」(甲第4号証)の抜粋を示す。これは請求人の商品のみを掲載した特集雑誌であり、「スウッシュ」マークが表紙に印象的に表示されている。このような広告に接した需要者は、この「スウッシュ」のマークを見ただけで、請求人の商品を直ちに想起できるに至っている。
請求人の製品は、わが国において、株式会社ナイキジャパンにより販売されており、同社は毎年、シーズン毎に製品カタログを作成し、東京本社のほか、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡の各支店又は営業所を通じて、全国の顧客向けに頒布している(甲第4号証)。これら各地での広告、販売及びテレビコマーシャル等による全国的宣伝により、引用商標は、日本中で広く知られた著名商標となっている。本件商標出願前の1996年に新聞で広く報道されたように、ナイキのシューズは、青少年の間で一つのブームになり、新しいモデルが販売されると商店の前に大行列ができ、商品もたちまち売り切れるほど人気商品となり、一つの社会現象になっていた(甲第6号証)。新聞記事では「エアマックス」というシューズが話題になっているが、「エアマックス」をはじめナイキのシューズには「スウッシュ」マークが側面等に付されている(甲第4号証)。甲第6号証の記事が掲載された新聞は東京のみならず、本件商標権者が所在する大阪をはじめ、中部地方、愛媛、静岡とあり、ナイキ商品を巡る社会現象が全国的であったことが窺える。
(イ)以上のことから、引用商標は本件商標出願前から、わが国の需要者に広く知られた著名な商標となっていたことが明らかである。本件商標は、その構成の要部となっている部分が請求人の著名商標である「スウッシュ」マークとその描法やコンセプトが酷似するもので、本件商標の指定商品に使用された場合、その商品の需要者がナイキ製品と誤認し、請求人の商品と出所について混同するおそれがあるものである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
引用商標の著名性に鑑みれば、本件商標の出願前から登録に至るまで、本件指定商品であるアパレル関係の商品について業務を行う者が、引用商標の存在を知らないということは考えられない。少なくともシューズ、アパレル関係の商品を取り扱う当業者であれば、たとえ一般的な商標の類否基準では非類似とされ得るような商標であっても、引用商標の著名性に鑑みて、引用商標と同一性ある図形或いは近似したコンセプトや表現方法をその構成中に含む商標を使用することは競業秩序の維持という観点から避けることが、良識ある商標の採択である。
よって、本件商標権者には著名な外国商標である引用商標の顧客吸引力に只乗りしようとの不正の目的が疑われても止むを得ない。また、本件商標を使用すれば請求人の著名商標の出所表示機能を希釈化させるおそれの極めて高いものである。すなわち、本件商標は引用商標を変形した亜種のように看取され、その使用によって、引用商標の洗練されたイメージが毀損されるおそれがある。
したがって、本件商標は、不正の目的をもって使用するものとみなすべきである。
被請求人は、何ら答弁していない。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標の構成は、左上から左下に外線が角張った外形で描かれ、内線が弧を描くようにして広がり、その左下から右上に跳ね上がるように外線と内線の幅が小さくなるような図形と、その左下から右上に伸びている部分の中間に、「へ」の字のように凸部が太くなるような線囲いの図形が2つ配されてなるところ、全体の構成は、まとまりよく構成されているものであり、その構成の一部を抽出して見なければならない特段の理由は見当たらない。
してみれば、本件商標は、全体が一つに構成された1個の図形と看取、認識されるものというべきである。
一方、引用商標1の構成は、左上から左下に弧を描くように黒太線が広がりながら伸び、その左下から右上に跳ね上がるように幅が小さくなるような構成からなるものである。
そこで、本件商標と引用商標1の図形とを比較すると、本件商標の構成は、左上から左下に外線が角張った外形で描かれ、さらに、その左下から右上に伸びている部分の中間に、「へ」の字のように凸部が太くなるような線囲いの図形が2つ配されてなるのに対し、引用商標1の構成は、左上から左下に弧を描くよう黒太線の外縁がなめらかな外形よりなるものである。
してみれば、両者は、本件商標の外線や引用商標の外縁部分における外形の差異、「へ」の字のような図形が2つ配されてなるか否かの差異を有するものであるから、比較的単純な構成態様の図形からなる両商標にとって、これらの差異が全体の印象に与える影響は大きく、時と所を異にし離隔観察するも、外観において相紛れるおそれはないものというのが相当である。
さらに、本件商標は、特定の称呼、観念を生ずるものとは認められないから、この点において比較することはできない。
そうとすれば、本件商標と引用商標1とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても非類似の商標といわざるを得ない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人の提出した、雑誌「NIKE/ナイキ完全読本」(甲第4号証)、ナイキ社製スポーツシューズに係る新聞記事(甲第6号証)等によれば、別掲(2)及び(3)に表示した引用商標は、本件商標の登録出願時には運動靴、運動用特殊靴、運動用特殊衣服、バッグ等について、著名な商標に至っていたことは認められる。また、その著名性は、登録査定時においても、継続していたものと認め得るものである。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、前記引用商標1との関係で述べたと同様、非類似の商標であり、別異の商標と看取、認識されるものであるから、引用商標の著名性及び取引の実情を考慮するとしても、本件商標は、その指定商品に使用する場合、請求人の引用商標を連想、想起するものとはいえないものである。
そうとすれば、本件商標は、請求人又は請求人と経済的、組織的の関係を有する者の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはないものといわざるを得ない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
本件商標と引用商標とは、前記したとおり、非類似の商標であり、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはないものであるから、被請求人(商標権者)は、本件商標をその指定商品に不正の目的をもって使用するものということはできない。
(4)結語
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反してなされたものではないから、商標法第46条第1項の規定により無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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