結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2003−35265(T2003−35265/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4568200号商標(以下「本件商標」という。)は、「空中歩行」の文字を標準文字で表してなり、平成13年7月23日に登録出願され、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「遊戯用器具,囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,ビリヤード用具,おもちゃ,人形,愛玩動物用おもちゃ,運動用具,スキーワックス,釣り具」を指定商品として、同14年5月17日に設定登録されたものである。
本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、請求人が引用した登録商標は、以下1ないし9のとおりであり、いずれも、現に有効に存続しているものである。(これらの登録商標をまとめて、以下「引用商標」という。)
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第47号証を提出した。
(1)本来的な観念的同一性
引用商標は、請求人が販売している(甲第11号証)商品のブランドであり、「スケート時のポーズ(AIRWALK)」から採択されたものである。該「AIRWALK」は、日本語では「空中歩行」と呼んでいる(甲第12号証)。このように、引用商標と本件商標とは本来的に同じ意味である。上記事項はインターネット上で公開されており、需要者の誰でもが閲覧可能である。
(2)取引を通じての観念的同一性の認識
現実の取引においても、商標「AIRWALK」に商標「空中歩行」の文字が一緒に表示され、「AIRWALK」の日本語訳が「空中歩行」であることが明示されている(甲第13号証及び甲第14号証)。被請求人自身も「雪山制覇のために日本人『AIRWALK』ライダー達が企画した『空中歩行』・・・」と、2002年2月1日に発行された雑誌に広告している(甲第14号証)ことから、「空中歩行」が「AIRWALK」の日本語訳である旨を認識していたといえる。
以上のとおり、「空中歩行」が「AIRWALK」の日本語訳として使用されていた取引の状況に鑑みれば、本件商標と引用商標が同じ意味を有していることは、本件商標の登録された平成14年5月17日の時点で、需要者に認識されていたといい得る。
商標法における類似の概念は、ある商標が取引場裡に置かれた場合に、他の商標との間に出所の混同が生じることを防止するためのものであるから、両商標の観念が同一のものであるか否かの認定にあたっても、単に語学的な見地から行うべきではなく、取引の実情・商標の使用状況を勘案すべきであって、実際の取引においてその使用状況によって需要者が出所の混同が生じる場合は、出所の混同状態を放置すべきでない。
そうであるとすれば、本件商標は、引用商標と観念上同一のものとして需要者に認識されるか、そのおそれが大きい以上、その類否判断にあたっても、両商標は観念上同一のものとされるべきである。
さらに、後述するように、「AIRWALK」は著名なものであるから、需要者は、本件のおける証拠方法以外からも、「AIRWALK」の日本語訳として「空中歩行」が使用されていることを目にしていたと推測できる。
(3)英語理解力からの同一性
「AIR」は、最も基本的な英単語の一つであるから、平均的な知識水準の日本人であれば、「空中」という意味があることを知り得ているといえる。現に、わが国でも「空中庭園」を「Air Garden」、「空中工房」を「Air Factory」、「空中兵器」を「Air Weapon」というように、「AIR」を「空中」の意味で用いられている(甲第16号証)。また、「WALK」も「AIR」と同様に、平均的な知識水準の日本人であれば、該語が「歩行」を意味するものであると知り得ていることは多言を要しない。
「AIRWALK」なる語自体は、英和辞典には掲載されていないが、平均的な知識水準の需要者であれば、「AIR」と「WALK」とからなり、前者が「空中」を意味し、後者が「歩行」を意味することが認識できるといえるから、引用商標から「空中歩行」を意味することを理解できる。現に、「空中歩行」の英語訳として「AIRWALK」が使用されており(甲第17号証)。これが個人のホームページであるという事実は、特に英語の専門家でなくても、通常の日本人であれば、「AIRWALK」が「空中歩行」の英語訳であることを理解していることの証左である。
以上述べたように、現時点における日本人の英語理解力からすれば、引用商標の「AIRWALK」と本件商標の「空中歩行」とが同じ意味を有していることを理解できる。
(4)被請求人について
被請求人は、AIRWALK社(請求人の主張を総合すると、請求人の述べる「AIRWALK社」は、アメリカ合衆国の「エアーウォーク インターナショナル リミテッド ライアビリティー カンパニー」であると認められる。以下同じ。)のスノーボードの板及びバンダーを販売している(甲第14号証、甲第18号証)。そして、上述したように、このスノーボードの板には「AIRWALK」と「空中歩行」とが一緒に表示され、被請求人自身の雑誌の広告(甲第14号証)からして、被請求人は、「AIRWALK」の日本語訳が「空中歩行」であることを明らかに理解しており、本件商標が引用商標に類似することを認識していたとは明らかである。
この点で、被請求人は、本件商標が引用商標に類似しない旨の主張をすることは許されないといわざるを得ないし、また、スノーボード関係以外のAIRWALK社の商品を取り扱うことは許されていない。このことは、請求人にAIRWALK社からスキー、スノーボード関係以外の商標権が分割移転されていたことから明らかである。さらに、被請求人は、「AIRWALK」関係の商標について、日本でその取扱いに係る商品についてすら自己の名義で登録を取得することについて、AIRWALK社から何らの承諾を得ていない。このことは古くからある商標「AIRWALK」について、被請求人が全く登録を有していないことから明らかである。しかるに、被請求人は、この「AIRWALK」の日本語訳である「空中歩行」について登録をされていないことを奇貨として、AIRWALK社の承諾を得ることなく、自己の取扱いに係る商品を越えた広い範囲の商品について「空中歩行」の登録を取得したと考えられる。
(5)請求人の正当権限
請求人は、2000年4月からAIRWALK社の各種商品をオンラインを通じて販売している(甲第10号証)。また、請求人は、AIRWALK社から引用商標の分割譲渡を受け、わが国でのスノーボード関係の一部の商品を除いて、「AIRWALK」商標の権利者(但し共有者である)であり、かつ、AIRWALK関係の商品を取り扱う者である。したがって、被請求人が引用商標に類似する本件商標を被服等に使用した場合には、請求人のAIRWALK関係の商品の販売が阻害され、ひいては、AIRWALK社の利益をも阻害されることになる。
(6)まとめ
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(1)「AIRWALK」の著名性
「AIRWALK」は、1986年にカリフォルニアでスケートボードとBXM(「BMX(=バイシクル・モトクロス)」の誤記と認める。以下同じ。)のニーズに応えるフットウェアとしてスタートし、その革新的なデザインと優れた耐久性、他に追随を許さぬ機能性により、わずか1年で全米にブームを巻き起こした。その後、アクションスポーツの隆盛に伴い、スノーボーディング、BXM、マウンテンバイクのスペシャルシューズはもとより、カジュアルウェア、スノーウェア、アクセサリーまでその独自のカルチャーで若者文化を魅了し続けている。
わが国においても、「90年代を最も象徴するストリートブランド・エアウォ−ク」(甲第23号証)とされている。また、「AIRWALKが好きって人の為のAIRWALK同盟」なるホームページが存在する程の人気を誇っている(甲第21号証)。さらに、サーチエンジンの一つであるインフォシークにおけるAIRWALKをキーワードにして検索した結果、439件ものホームページが存在する(甲第20号証)。さらに、「AIRWALK」は、若者向けのファッション関係の雑誌に本件商標の出願前から継続的に取り上げられた(甲第22号証ないし甲第46号証)。
以上のように、「AIRWALK」は、本件商標の出願前には、被服、履物、バック等を中心に若者の間で、著名なものとなっていたことは明らかである。
本件商標の4ヶ月前に出願された商願2001−35342号「AIRWALK/エアウォーク」においても、その拒絶理由中で、引用商標の著名性を認めている(甲第47号証)。
(2)出所の混同
ファッション業界においては、ある商品について著名になった商標は、その著名性を生かして、様々な商品にその著名商標を使用することが多い。
「AIRWALK」もこの例に漏れず、各種の被服、履物、身飾品、バック、眼鏡等様々な商品に使用されている(甲第19号証、甲第22号証ないし甲第45号証)。
以上のことからして、「AIRWALK」の日本語訳として認識される本件商標がスノーボードの板及びバンダー以外の指定商品に使用された場合には、該商品が「AIRWALK」ないしは同社と何らかの資本的ないしは人的な関係のある者の取扱いに係るものであると商品の出所の混同を生ずるは必定である。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1号により無効とされるべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べた。
本件商標と引用商標との比較において、請求人は英語理解力からの同一性を種々述べているが、引用商標中の「AIR」の文字が「空中」、「WALK」の文字が「歩行」のそれぞれの意味合いを有する事実は認めるとしても、「AIR」には「空中」の意味以外に「空気、外気、空、大気、外見、態度、様子、雰囲気、電波、微風、旋律、飛行機」などの意味があり、「WALK」についても「歩行」の意味以外に「歩くこと、徒歩、散歩、歩き方、歩道、職業、身分、部門」などの意味があることから、「AIRWALK」が「空中歩行」のみを意味するものとはいえない。
さらに、「AIRWALK」の文字が「空中歩行」の意味合いを有する語として英和辞典等に掲載されている事実や「空中歩行」の文字が一般の国語辞典等に掲載されている事実も認められず、いずれも日常語として通用し一般に浸透しているとは認められない。
したがって、本件商標及び引用商標は、いずれも一般に認知された語とはいえず、一種の造語よりなるものであって、その観念は、簡易迅速を旨とする商取引上において、いずれも一見して直ちに一定の意義を理解させるような観念が生ずるとはいい得ないものである。
よって、本件商標と引用商標は、観念上の類否について比較すべくもないものであり、それぞれの構成に照らせば、称呼、外観上も明らかに区別し得るものであり、本件商標は、観念、称呼及び外観のいずれよりしても引用商標と紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。
なお、請求人は、被請求人が自己の名義で登録を取得することについて、AIRWALK社から何らの承諾を得ていない等と述べているが、そのような事実には根拠がなく、被請求人は、AIRWALK社から承諾を受けていることを証明することができるものである。
請求人は、引用商標の著名性を述べているが、スケートボード、BXM、マウンテンバイク、スノーボード、ストリートファッション等において、たとえ若者に人気のあるブランドとして認知されていたとしても、広く老若男女に知られているとはいい難く、著名性を認めるに足りない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではない。
(1)本件商標は、前記したとおり、「空中歩行」の漢字よりなるものであるのに対し、引用商標は、前記若しくは別掲(1)ないし(3)のとおり、普通の書体で書した「AIRWALK」の欧文字、あるいは、やゝ図案化した「AIRWALK」の欧文字よりなるものである。
そして、引用商標中の「AIR」の文字には「空中」の意味もあり、また、「WALK」の文字には「歩行」の意味もあることは、請求人主張のとおりである。
しかしながら、日常一般的に使用されている英和辞典の一つであるコンサイス英和辞典(株式会社三省堂発行)によれば、「air」の語には「空中」の意味以外に「空気、大気、空、微風、様子、態度、雰囲気、風格」等々の意味があり、また、「walk」の語についても「歩行」の意味以外に「歩み、歩きぶり、並足、競歩、散歩、歩く距離、散歩道、歩道」等々の多くの意味がある。(「air」の語については、甲第15号証(現代英和辞典)からも認めることができる。)
しかも、「air」と「walk」の各語を一連に書した「airwalk」(AIRWALK)の語は、上記の現代英和辞典及びコンサイス英和辞典に照らしても、「空中歩行」の意味合いを有する成語として掲載されている事実は認められないばかりでなく、「空中歩行」の語(文字)にしても、例えば、広辞苑(株式会社岩波書店発行)や国語大辞典(株式会社小学館発行)等の一般的な国語辞典に照らしても、成語として掲載されている事実は認められない。他に、「AIRWALK」及び「空中歩行」の語が、日常語として通用し、一般に浸透していると認めるに足りる証拠は見当たらない。
そうすると、「空中歩行」の文字よりなる本件商標及び「AIRWALK」の文字よりなる引用商標は、いずれも一般に認知された成語とはいえず、いかなる事物、事象を表現したものか、直ちには理解・認識することのできないものであるから、一種の造語よりなるものとみるのが相当である。
そして、商標の観念が同一又は類似しているというためには、商標が簡易迅速を旨とする商取引に資するものである以上、一見して世人に、直ちに一定の意義を理解させるようなものでなければならない。
しかるに、両商標は、上述したように、ともに一種の造語よりなるものとみるのが相当であり、いずれも一見して直ちに一定の意義を理解させるような観念が生ずるとはいい得ないものである。
(2)上記に関し、請求人は、現実の取引において、商品に「AIRWALK」と「空中歩行」の文字が一緒に表示されていた事実に鑑みれば、「AIRWALK」と「空中歩行」の商標が同じ意味を有していることを需要者は、本件商標の登録された平成14年5月17日の時点で、認識していたといい得る旨主張している。
確かに、甲第13号証(ホームページ打ち出し資料)及び甲第14号証(スノーボーディング2002年2月号)に掲載されているスノーボードには「AIRWALK」の文字とともに「空中歩行」の文字も表示されており、これに関する記事が掲載されていたことを認めることができる。
しかしながら、該記事を見聞した者の中には、「AIRWALK」と「空中歩行」の文字との関係を認識した者がいたとしても、この事実のみをもって、本件商標の指定商品である被服や履物、運動用具、おもちゃ等々の商品の一般的な消費者である需要者においてまで、「AIRWALK」と「空中歩行」の文字が同じ意味を表すものであることが知られていたとみるのは到底困難なことというべきである。
また、請求人は、被請求人がAIRWALK社のスノーボードの板及びバンダーを販売していたことから、「AIRWALK」の文字と「空中歩行」の文字とが一緒に表示されていた等の事情を認識していた旨の主張もしているが、このことは、本件商標と引用商標との間の類否及び出所の混同の存否に影響を与えるものとはいえない。
(3)したがって、本件商標と引用商標は、観念上の類否については比較すべくもないものであり、それぞれの構成に照らせば、称呼、外観上も明らかに区別し得るものである。
してみれば、本件商標は、観念、称呼及び外観のいずれよりしても引用商標と紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。
請求人及びAIRWALK社の使用に係る引用商標と同様の構成からなる「AIRWALK」の商標(以下「使用商標」という。)が本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る商品「スケートボード、BMX(バイシクルモトクロス)用フットウェア」等を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたものであるとしても、本件商標と使用商標とは、前記1で認定した本件商標と引用商標についての類否判断と同様の理由により、十分に区別し得る別異の商標というべきであり、他に混同を生ずるとすべき格別の事情も見出し得ないから、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、使用商標及び引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものでないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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