結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2003−35290(T2003−35290/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4602010号商標(以下「本件商標」という。)は、「ダブルプレス」の文字を標準文字で表してなり、平成13年8月23日に登録出願され、第6類「金属製管継ぎ手」を指定商品として、同14年9月6日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番を含む。)を提出している。
請求の理由
本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号の規定に該当するから、その登録は商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。
(1)審判請求の利益
請求人は銅製継ぎ手の製造販売業者として本国ドイツのみならず世界的に著名であり、日本を含むアジア各国において幅広く営業活動を行っている。
本件商標は関連業界で普通に使用されており、商標として識別力を欠くにもかかわらず登録されたものであり、このまま登録が認められれば請求人やその他関連業界に従事する者の自由な使用が妨げられるおそれがあるほか、請求人の営業活動に損害を与えるおそれがある。
よって、請求人は本件審判を請求することにつき利害関係を有する。
(2)本件商標の登録を無効にすべき具体的理由
(ア)本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当することについて
本件商標は、「ダブルプレス」の片仮名文字を一連に左横書きしてなるが、その前半部の「ダブル」の文字は『2倍の、2重の、2重に』等の意味を、また後半部の「プレス」の文字は『圧する、圧縮する、締め付ける』等の意味を表す英語として親しまれているものである(甲第2号証)。このような語はもとより当業者が自由に使用してよいものであり、特定の者に独占させるのは妥当ではない。
更に、「ダブル」「プレス」両語の語源、となる「double」(ダブル)と「press」(プレス)の英語は、double pressingのように結合されて、「2重に」「圧する」の意味合いを表すために使用されていることが機械用語関係でしばしば見出される。したがって、「ダブルプレス」の文字からは「2重に締め付ける」の意味が容易に理解され、連想されるといわなければならない。
商標審査基準においても、機能や品質を示し識別力を欠く語が二つ以上結合されている場合は、法第3条第1項第3号に該当すると規定されている(甲第3号証)。
(イ)本件商標と指定商品との関係について
ある商標が記述的かどうかの判断は、商品との関係において相対的に判断されるので、次に本件商標を構成する文字と本件商標の指定商品との関係について考察する。
本件商標の指定商品「金属製管継ぎ手」は、文字通り機械部品をつなぎ合わせる金属製の製品であるが、配管工事において「金属製管継ぎ手」は、きちんと接続されなければ所期の目的を達しない。関連業界では、接合部に圧力を加える継手を「プレス式継手」と称しており、これは別紙添付のカタログからもみられるように、普通名称である(甲第4号証)。この「プレス式継手」には、締め付けが十分にされるよう独自の工夫が凝らされているものが多い。例えば、ある製造者によるプレス式継手は、取り付け工具の締め付け音が変わるまで継手をプレスすれば、発色シールが圧力によって発色し、一目でプレスされていることが確認できる構造であることを特徴とする(甲第5号証)。
本件商標の権利者自身の自社商品カタログ写(甲第6号証)にも、『ダブルプレスは、パイプを継手に差し込んだ後、2箇所同時に締め付けるダブルプレス方式を採用。万が一締め忘れがあっても、水圧試験で漏れて発見出来るよう凹凸リングが用いられています。』という説明が付されているが、当該商品においては、継手の2箇所を同時に(ダブル)締め付ける(プレス)ことが特徴となっており、「ダブルプレス」の語が指定商品との関係でその機能や品質について普通に使用されているといえる。また、文字での説明のみならず、カタログの上記説明個所の左側には、「ダブルプレス」の意味するところの通り、『2か所を同時に締め付ける!』旨のイラストが付されている。このカタログは請求人が調べたところ、平成14年11月の段階で配布されていたものであるが、オリジナルを入手したら追って提出する予定である。
請求人も自社の商品カタログにおいて、「ダブルプレス接合」の語を商品の説明部分で普通に使用しているものである。具体例として、本国ドイツ、米国、日本での使用例を示す(甲第7号証)。
このように、「ダブルプレス」の文字は、本件商標の指定商品「金属製管継ぎ手」について使用されても、「2重に締め付ける」「2箇所同時に締め付ける」機能を理解、把握させるにとどまり、当該商品の機能、品質を表すにすぎないものといわざるを得ない。
してみれば、本件商標「ダブルプレス」は、特定人の独占には適さず、また、指定商品「金属製管継ぎ手」に使用されても、その機能と品質を表すに過ぎず、第3条第1項第3号に該当し、自他商品識別力を欠くものである。
ちなみに、昭和43年審2534号、昭和43年審2852号、昭和47年審2429号、平成1年審2651号、平成4年審21454号の商標は本件と同様に記述的な語を結合した態様からなるものであるが、自他商標の識別力を欠くとして、いずれも第3条第1項第3号に該当すると判断されている。
(ウ)本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当することについて
本件商標の「ダブルプレス」の文字からは上述したように「2重に締め付ける」の意味が容易に理解され、連想されるため、これを指定商品「金属製管継ぎ手」のうち「シングルプレス」に使用したときは、商品について品質の誤認のおそれがある。
(エ)当業界における使用態様について
請求人は、「ダブル」「プレス」の語が金属製品を含む産業用機器を取り扱う業界において広く普通に使用されており、記述的で自他商品の識別力を欠くという主張の正当性を立証すべく、甲第8号証乃至甲第18号証を提出するものである。
(3)結論
上述したように、本件商標をその指定商品・金属製管継ぎ手について使用しても、取引者・需要者は、前記意味合いにおいて商品の品質、機能等を表示したものと認識するにすぎないから、自他商品を識別する機能を欠くものである。
「ダブル」「プレス」の語がそれぞれ良く知られた意味を有する英語であるために、金属製管継ぎ手のみならず産業機械器具全般にわたって商品との関係で普通に使用されている例が頻繁に見受けられることは上記各証拠資料からも明らかで、特定人の独占は適さないというべきである。
また、本件商標を金属製管継ぎ手の「シングルプレス」に使用したときは、品質の誤認のおそれがあるものである。
したがって、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものであり、その登録は無効にすべきものである。
被請求人は、審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)はじめに
被請求人が提出する乙号証に、株式会社ベンカンと表示されていたり、被請求人の名称が表示されていたりして、株式会社ベンカンと被請求人との関係がわかりにくいので、両社の関係を説明する。
本件商標についての商標権者である被請求人は、乙第1号証の営業譲渡契約にある通り、破産会社株式会社ベンカン、同株式会社宝幸製作所、同ツルミ工業株式会社、同株式会社弁商(平成13年10月19日破産宣告)より、平成13年(2001年)11月16日に「継手事業及びモルコ事業」に関する営業の譲渡を受け、本件商標の指定商品である「金属製管継ぎ手」その他の商品を製造販売している。そして、このことは、乙第2号証にある通り、広く当業者に知られていることである。
従って、営業譲渡の日以前、即ち、平成13年(2001年)11月16日以前における株式会社ベンカンの本件商標等の使用は、被請求人の使用と同視されねばならない。このことは、被請求人の主張の前提である。
(2)請求人は、甲第2号証を示し、本件商標を前半部の「ダブル」が「2倍の、2重の、2重に」等の意味を、後半部の「プレス」が「圧する、圧縮する、締め付ける」等の意味を表す英語として親しまれているものであり、このような語はもとより当業者が自由に使用してよいものであり、特定の者に独占させるのは妥当ではない、更に、「ダブル」の語源の「double」と「プレス」の語源の「press」は、「double pressing」のように結合されて、「2重に圧する」の意味合いを表すために使用されていることが機械用語関係でしばしば見受けられるので、「ダブルプレス」の文字からは、「2重に締め付ける」の意味が容易に理解され、連想される、と主張している。
しかし、本件商標の構成は、請求人も認めている通り、「ダブルプレス」の文字を一連に書してなるものであるから、請求人の上記前段の主張は理由がないし、上記後段の主張の誤りは、上記主張を裏付ける証拠として提出された甲第8号証〜甲第18号証から明らかである。甲第8号証は「double pressing」が成形加工時の誤動作を意味する語であることを示しているに過ぎず、甲第9号証、甲第11号証、甲第12号証は「ダブル〇〇〇〇プレス」或いは「シングル〇〇〇〇プレス」がプレス機械の構造を示している語であることを示しているに過ぎず、甲第10号証、甲第13号証〜甲第18号証には、「ダブル」或いは「プレス」の語、若しくは「ダブル」と「プレス」の語を含む語が使用されていることを示しているに過ぎず、本件商標の構成を無視した論である。尚、甲第14号証の「ダブルプレス機構」の語は、甲第14号証中でその意味内容が説明されているが、このことからも、「ダブルプレス」が、当業者にとって「2重に締め付ける」の意味に容易に理解されるものではないことを示している。
被請求人は、甲第4号証に示されている通り、接合部に圧力を加える継ぎ手が「プレス式継ぎ手」と称されていること、また、甲第5号証に示されている通り、充分に締め付けがおこなわれていればそれを目視によって確認することができるプレス式継ぎ手が提供されていることを争うものではない。しかし、甲第6号証の被請求人のカタログに「ダブルプレス方式」と記載され、かつ、「2箇所同時に締め付ける」との記載があるとしても、そのことが直ちに、本件商標が、商標法第3条第1項第3号に規定する使用方法等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と結論付けるのは、商標権者が登録商標を使用するパンフレット中の商品説明であるだけに論理に飛躍があるといわざるを得ない。また、請求人は、自らのカタログ甲第7号証を提出し、「ダブルプレス接合」の語を商品の説明部分で普通に使用していると主張するが、「ダブルプレス接合」の語を使用している日本のカタログの頒布日が本件商標の登録査定日以前かどうか不明である。しかも、「ダブルプレス接合」の語は、日本のカタログには記載されているが、本国ドイツ及び米国のカタログには該当個所の翻訳がないだけでなく、米国のカタログには、被請求人が読んでみても、「double press」又は「double pressing」の文字はなく、従って、「ダブルプレス接合」の語を商品の説明部分で普通に使用しているとの請求人の主張は根拠がないだけでなく、請求人の証拠の取扱には問題がある。
(3)「ダブルプレス」の商標は、十数年前から現在に至るまで株式会社ベンカン他と被請求人が継続して使用しており、少なくとも、本件商標の登録査定時には、使用をされた結果需要者が何人の業務に係る商品であることを認識することができる商標である。
このことは、平成10年度から平成11年度までの宣伝広告活動の内容と費用を示す乙第3号証、乙第4号証のステンレス協会が平成5年9月1日に発行したステンレス配管ガイド、及び、乙第5号証のステンレス協会が平成14年2月1日に発行したステンレス配管ガイドからも理解できることである。なお、平成12年度から平成14年度までの宣伝広告活動の内容と費用については、整理出来次第早急に提出し、使用をされた結果需要者が何人の業務に係る商品であることを認識することができる商標であることを立証する。
従って、本件商標は、自他商品識別力を備えた商標であり、無効とする理由も実益もない。
(4)請求人は、本件商標が、商標法第4条第1項第16号に該当すると主張しているが、請求人のかかる主張は、本件商標が商標法第3条第1項第3号の規定により商標登録を受けることができないものであることが前提であるから、本件商標が商標法第3条第1項第3号の規定に該当しないことが明らかである以上、理由がない。
よって、答弁の趣旨の通りの審決を求める次第である。
本件商標は、上記のとおり「ダブルプレス」の文字を書してなるものであるところ、「ダブル」の語は、「二重の、2倍の、重なった」等、「プレス」の語は、「圧する、押しをする」等の意味を有する外来語としていずれも一般によく知られているといえるものである。
そこで、請求人の提出に係る証拠についてみるに、甲第4号証の日立金属のホームページによれば、配管・設備機器部材として「プレス式管継手」の語が普通に使用されている事実を認めることができる。
また、甲第6号証のカタログによれば、「そこでベンカンは、クオリティの高い配管を誰でも簡単に施行できる、ステンレス管継手「ダブルプレス」を開発しました。」の記載及び「ダブルプレスは、パイプを継手に差し込んだ後、2ヵ所同時に締め付けるダブルプレス方式を採用。」と記載されている事実が認められる。そして、そのカタログが平成14年11月の段階で配布されていたものであると請求人は述べており、被請求人は、平成13年(2001年)11月16日に破産者株式会社ベンカンより営業の譲渡を受け、本件商標の指定商品である「金属製管継ぎ手」その他の商品を製造販売しているとのことであるから、そのカタログは、少なくとも本件商標の登録査定日である平成14年7月17日以前には作成され、使用されていたと推認し得るものである。
さらに、甲第7号証の請求人の関連会社とみられる東洋フィッテイング株式会社のカタログによれば、「ダブルプレス接合」の語を商品の説明として使用している事実が認められる。そして、そのカタログの最後の頁の右下隅に「2002.5」と印刷されており、そのカタログは、2002年5月に作成されたものと認められるから、本件商標の登録査定前に作成されたものと認めざるを得ない。
そうすると、請求人の主張及び提出に係る証拠を総合勘案すれば、「ダブルプレス」の語は、商品「金属製管継ぎ手」について「二重に締め付ける」又は「2ヵ所同時に締め付ける」等の機能を表すものと認められるものであって、本件商標を構成する「ダブルプレス」の文字に接する取引者、需要者は、これより「二重に締め付ける機能を有する金属製管継ぎ手」又は「2ヵ所同時に締め付ける機能を有する金属製管継ぎ手」等であることを容易に理解し、認識するにすぎないものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品中「二重に締め付ける機能を有する金属製管継ぎ手」又は「2ヵ所同時に締め付ける機能を有する金属製管継ぎ手」について使用するときは、単に商品の機能、品質を表示するというべきであり、また、上記以外の「金属製管継ぎ手」に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
なお、被請求人は、乙第3号証及び乙第4号証を提出し、「『ダブルプレス』の商標は、十数年前から現在に至るまで株式会社ベンカン他と被請求人が継続して使用しており、需要者が何人の業務に係る商品であることを認識することができる商標である。」と述べ、「平成12年度から平成14年度までの宣伝広告活動の内容と費用については、整理出来次第早急に提出する。」旨主張しているが、被請求人等による本件商標の使用実績が本件の判断を左右するものではなく、本件については、上記認定のとおりであるから、この点に関する被請求人の主張は採用の限りでない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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